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FA・ロボット4社を有報で比較|営業利益率51%と3%が共存する構造の違い

約17分で読了
#キーエンス #ファナック #オムロン #横河電機 #有価証券報告書 #企業比較 #FA #就活
この記事の目次
この記事でわかること
1. キーエンス・ファナック・オムロン・横河電機の「稼ぎ方の根本的な違い」──有報の財務データで比較
2. 営業利益率51.9%と3.6%の格差、設備投資額22倍の差が映すビジネスモデルの構造的違い
3. FA・制御機器メーカーのキャリア選択に活かせる「合う人・合わない人」の判断基準

この記事のデータはキーエンス(2025年3月期)・ファナック(2024年3月期)・オムロン(2025年3月期)・横河電機(2025年3月期)の有価証券報告書に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

「FA(ファクトリーオートメーション)メーカーに入りたい」──就活でこの分野を調べると、キーエンス・ファナック・オムロン・横河電機の名前が並びます。4社はいずれも「工場の自動化」に関わる企業ですが、有報を横断比較すると、稼ぎ方がまったく異なることが見えてきます。

キーエンスはファブレス×直販で営業利益率51.9%を実現する「超高収益型」。ファナックはCNC・ロボット・ロボマシンを一体化した「工場自動化のトータルサプライヤ」。オムロンはFA制御機器を核にヘルスケアや社会インフラまで展開する「多角化型」。横河電機はプラント制御に特化し中東・アフリカでトップシェアを持つ「プロセス制御特化型」。この違いは、入社後のキャリアの中身を大きく左右します。

結論|4社の比較サマリー

主要指標を横並びで見ると、4社のビジネスモデルの違いが数字に鮮明に表れます。

指標キーエンスファナックオムロン横河電機
売上高1兆591億円7,952億円8,017億円5,624億円
利益率指標営業利益率51.9%経常利益率22.9%税引前利益率3.6%経常利益率15.2%
当期純利益3,986億円1,331億円162億円521億円
R&D費288億円498億円443億円320億円
R&D費 売上比率2.7%6.3%5.5%5.7%
設備投資143億円524億円503億円321億円
海外売上比率64.8%86.8%──74.4%
連結従業員数12,261人9,970人26,614人17,670人
平均年収(単体)2,039万円1,238万円820万円926万円
ビジネスモデルファブレス×直販型CNCロボット一体型FA×多角化型プロセス制御特化型

※キーエンス・ファナック・横河電機は日本基準、オムロンは米国基準。ファナックのみ2024年3月期。利益率指標は会計基準の違いにより項目が異なるため単純比較に注意。オムロンは海外売上比率を単一指標として開示していないため非掲載。

ここから、4社の違いを「事業構造」「財務構造」「投資の方向性」「キャリア選択」の4つの視点で掘り下げます。

事業構造の違い|4社はFA分野で何を売っているのか

4社は「FA・制御機器」という共通の領域に属しながら、事業の中身が大きく異なります。

キーエンス|単一セグメントのファブレス直販

キーエンスは「電子応用機器の製造・販売」の単一セグメントです(2025年3月期有報)。FAセンサー、計測機器、画像処理システム、レーザーマーカー、マイクロスコープ、コードリーダーなどの製品を、自社工場を持たず協力工場に製造委託し、代理店を一切使わず自社営業社員が直接販売するモデルです。

売上の10%以上を占める単一顧客がおらず、特定の業種や顧客への依存を意図的に回避しています。受注残は実質ゼロの即納体制を敷いており、「注文≒売上」という極めてシンプルな事業構造です。

ファナック|FA・ロボット・ロボマシンの三本柱

ファナックは単一セグメントですが、製品別に4つの事業を展開しています(2024年3月期有報)。

製品区分売上高構成比
FA(CNC・サーボ)1,803億円22.7%
ロボット3,809億円47.9%
ロボマシン1,033億円13.0%
サービス1,305億円16.4%

(出典:ファナック 2024年3月期有報 関連情報・製品及びサービスごとの情報)

全製品にCNC(コンピュータ数値制御)とサーボモータの技術が共通基盤として使われています。「一貫して工場の自動化を追求」という経営方針のもと、FA・ロボット・ロボマシンを一体化した「one FANUC」のトータルソリューションを強みとしています。

オムロン|FAを核にヘルスケア・社会インフラまで多角化

オムロンは5つの事業セグメントで構成されています(2025年3月期有報)。

セグメントR&D費設備投資
インダストリアルオートメーション(IA)215億円60億円
ヘルスケア81億円51億円
ソーシアルシステムズ46億円46億円
デバイス&モジュール44億円67億円
データソリューション1億円38億円

(出典:オムロン 2025年3月期有報 研究開発活動・設備投資等の概要)

FA制御機器のIA事業がR&D費の約半分を占めるコア事業ですが、血圧計のヘルスケア事業、太陽光発電・駅務システムの社会システム事業など、他の3社にはない事業の幅が特徴です。一方で、この多角化が強みにも弱みにもなっています。

横河電機|プラント制御に集中した3セグメント

横河電機は「制御事業」「測定器事業」「新事業他」の3セグメントですが、実質は制御事業が圧倒的です(2025年3月期有報)。

セグメント売上高構成比営業利益
制御事業5,283億円93.9%775億円
測定器事業299億円5.3%62億円
新事業他41億円0.7%△2億円

(出典:横河電機 2025年3月期有報 セグメント情報)

制御事業は、プラント向けの分散形生産制御システム(DCS)、流量計、差圧伝送器、プロセス分析計などを提供しています。石油・ガス・化学・電力・医薬品といったプロセス産業の制御に特化している点が、ディスクリート製造業(組立加工業)向けのキーエンスやファナックと大きく異なります。

財務構造の違い|なぜ利益率にここまで差が生まれるのか

営業利益率51.9%|キーエンスの利益構造

キーエンスの営業利益率51.9%は製造業として世界トップクラスです(2025年3月期有報)。この数字を支える構造は3つあります。

第一に、ファブレスによる低固定費。設備投資は143億円(売上比1.4%)に過ぎず、ファナックの524億円、オムロンの503億円と比較して圧倒的に少額です。工場を持たないことで、景気後退時の固定費負担も軽く済みます。

第二に、直販による高粗利率。代理店マージンが発生しないため、売上総利益率は83.8%を実現しています。開発と営業が一体化し、顧客の潜在ニーズを直接捕捉して「世界初」「業界初」の製品を生み出す仕組みになっています。

第三に、無借金・超高自己資本比率。自己資本比率94.5%、有利子負債ゼロ。総資産3兆2,892億円のうち約2兆7,640億円(84%)が現金・有価証券・投資有価証券という金融資産です。支払利息の負担がなく、利益がそのまま蓄積されます。

ファナック|自社工場型でも高収益を維持

ファナックの経常利益率は22.9%(2024年3月期有報、経常利益1,817億円÷売上高7,952億円)。自己資本比率88.6%と高水準で、堅実な財務体質を維持しています。

キーエンスとは対照的に自社工場を持つ製造業ですが、全製品にCNC・サーボという共通技術基盤を使うことでスケールメリットを効かせ、生産設備の自社内ロボット化を徹底することで高い生産効率を実現しています。

ただし、売上高は前期比6.6%減の7,952億円と減収しました。FA事業の売上が前期比27.9%減の1,803億円と大きく落ち込んでおり、設備投資の景気感応度が高い生産財メーカーとしての構造的なリスクも垣間見えます。

オムロン|構造改革で利益率が大きく低下

オムロンの税引前利益率は3.6%(2025年3月期有報、税引前利益290億円÷売上高8,017億円)に低下しています。前々期(2023年3月期)の税引前利益率は11.2%(984億円÷8,760億円)でしたが、中国経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱で急激に悪化しました。

自己資本比率は56.7%と、4社の中では最も低い水準です。構造改革プログラム「NEXT2025」で制御機器事業の立て直しと収益基盤の再構築に取り組んでいますが、次期中期経営計画(SF 2nd Stage、2026年度〜)までの回復が課題です。

横河電機|プロセス制御の安定収益

横河電機は制御事業の営業利益率14.7%(2025年3月期有報、営業利益775億円÷売上高5,283億円)と安定しています。全社の経常利益率は15.2%(経常利益853億円÷売上高5,624億円)。自己資本比率65.1%で健全な財務基盤を維持しています。

プロセス産業向けの制御システムは、プラント稼働中は継続的にメンテナンス・更新が必要になるため、一度納入すれば長期的なリカーリング収益が見込めます。横河電機が掲げるIA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)戦略は、この顧客基盤の上にデジタルサービスを重ねることで収益性をさらに高める方向を示しています。

利益率の比較まとめ

指標キーエンスファナックオムロン横河電機
売上総利益率83.8%──────
利益率営業51.9%経常22.9%税引前3.6%経常15.2%
自己資本比率94.5%88.6%56.7%65.1%
ROE13.5%8.0%2.1%11.5%

※会計基準・利益指標の違いに注意(キーエンス・ファナック・横河電機は日本基準、オムロンは米国基準)。出典:各社有価証券報告書。

ROEで見ると、キーエンスは13.5%とトップですが、自己資本が3兆1,085億円と巨額であるため、利益額の大きさがROEを押し上げています。横河電機の11.5%は4社中2位で、制御事業の安定収益がROEにも表れています。オムロンの2.1%は構造改革途上を反映した数字です。

投資の方向性|何に賭けているのか

R&D費の比較|ファナックが金額で最大

企業R&D費売上比重点領域
キーエンス288億円2.7%AI搭載画像センサー、高精度センシング
ファナック498億円6.3%新CNCシリーズ、ロボット新機種、IoT・AI
オムロン443億円5.5%IA制御機器、ヘルスケア、社会システム
横河電機320億円5.7%DCS機能強化、IA2IA、Smart Manufacturing

(出典:各社有価証券報告書 研究開発活動)

ファナックはR&D費498億円(売上比6.3%)でFA・ロボット・ロボマシンの全商品群でAI機能を開発しています。2024年3月期の具体的成果として、新CNCシリーズ「ファナック シリーズ 500i-A」のリリース、セキュリティ国際規格IEC62443認証取得のロボット制御装置、500kg可搬の重可搬ロボット「M-950iA/500」の開発など、ハードウェアの刷新が目立ちます。

キーエンスのR&D費288億円(売上比2.7%)は金額・比率とも最も低いですが、売上高あたりの営業利益で見ればR&D投資効率は圧倒的です。AI搭載画像センサーや除電精度10倍のイオナイザなど、少額投資で高付加価値製品を生み出す構造は有報の数字に明確に表れています。

オムロンはR&D費443億円のうちIA事業に215億円(約49%)を集中投資。「人を超える自働化」「人と機械の高度協調」「デジタルエンジニアリング革新」の3コンセプトで製品開発を進めています。卓球ロボット「FORPHEUS」第9世代ではマルチモーダルAI技術「ViLaIn」を搭載し、次世代ロボティクスの研究成果をIROS2024で8件発表するなど、基礎研究にも力を入れています。

横河電機はR&D費320億円のうち制御事業に288億円(約90%)を投下。DCSの機能強化、バッテリ電極厚さ計、洋上風力発電の海底ケーブル監視システムなど、プラント制御の高度化に特化した投資が特徴です。

設備投資の比較|ビジネスモデルの違いが最も鮮明に表れる

企業設備投資額売上比投資の性格
キーエンス143億円1.4%金型等の工具、器具及び備品中心
ファナック524億円6.6%FA・ロボットの製造設備更新、海外拠点拡張
オムロン503億円6.3%生産設備増強、ITインフラ刷新
横河電機321億円5.7%制御事業の生産設備(前期比22.1%増)

(出典:各社有価証券報告書 設備投資等の概要)

設備投資額の差はビジネスモデルの違いそのものです。キーエンスの143億円はファナック524億円の約4分の1。キーエンスがファブレスモデルで固定費を極限まで抑えているのに対し、ファナックは山梨県の本社工場をはじめ壬生・筑波の国内工場やスペイン・ドイツ等の海外拠点に継続投資しています。有形固定資産だけで6,077億円を保有する重厚な製造業です。

横河電機の設備投資321億円は前期比22.1%増と積極的で、中期経営計画GS2028のもと成長投資を加速しています。M&A・アライアンス枠として2024〜2026年度の3年間で1,000億円以上を計画しており、オーガニック成長だけでなくM&Aによる事業拡大を明確に打ち出しています。

海外売上構成の比較|4社はどこで稼いでいるのか

地域キーエンスファナック横河電機
日本3,727億円(35.2%)1,051億円(13.2%)1,437億円(25.6%)
米州1,975億円(18.7%)2,273億円(28.6%)542億円(9.6%)
中国1,578億円(14.9%)1,715億円(21.6%)732億円(13.0%)
中東・アフリカ────977億円(17.4%)
その他海外3,309億円(31.2%)2,911億円(36.6%)1,934億円(34.4%)

(出典:キーエンス 2025年3月期、ファナック・横河電機 各有報 地域別売上高)

ファナックは海外売上比率86.8%で4社中最もグローバルです。米州(2,273億円)が最大の海外市場で、中国向けの主要顧客SHANGHAI-FANUC Robotics社への売上は874億円(全体の11.0%)を占めます。中国依存のリスクが顕在化した場合の影響は大きいと言えます。

横河電機は中東・アフリカが最大の海外市場(977億円)という独自の地域構成を持ちます。石油・ガスプラントが集中するこの地域で約60年のグローバル展開により確立した顧客基盤は、他のFA3社には無い強みです。一方で、地政学リスクの影響を受けやすい地域でもあります。

キーエンスの海外売上比率64.8%は4社中最も低いですが、経営陣は有報で「市場規模に対しまだ小さく、大きな成長余地がある」と明言しています。国内で確立した直販モデルを海外で再現する戦略で、米国が最も高い成長率(+15.7%)を記録しています。

経営戦略の違い|4社は何に賭けているのか

キーエンス|「最小の資本と人で最大の付加価値」

キーエンスの経営方針は2つの核心原則に集約されます。「会社を永続させる」と「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」です(2025年3月期有報)。

重要な点は、キーエンスが公式な業績目標を設定していないことです。「合理的な業績予想・目標を算出することは困難」として、「経営指標の最大化を常に目指す」と表明しています。M&Aについても「あらゆる可能性を追求」と初めて有報で言及しており、これまでオーガニック成長一本だった姿勢にわずかな変化が見られます。

ファナック|「狭い路を真っ直ぐに」

ファナックは「工場の自動化」という領域に一貫して絞り込む戦略です(2024年3月期有報)。基本理念は「厳密と透明」で、「企業の永続性は厳密から生まれ、組織の腐敗は不透明から始まる」という考え方を根底に置いています。

差別化の柱は「生涯保守」です。顧客がファナック商品を使い続ける限り保守を続けるという方針です。有報では「競合他社が追随することが難しい」と明確に自信を示しています。IoT技術「ZDT(ゼロダウンタイム)」で世界35,000台のロボットをネットワーク接続し、故障予知で2,000件以上のダウンタイムを防止した実績は、この戦略の具体的な成果です。

オムロン|「NEXT2025」で構造改革

オムロンは長期ビジョン「SF2030」のもと、「センシング&コントロール+Think」をコア技術として社会課題の解決を目指しています(2025年3月期有報)。しかし2023年度に業績が急激に悪化したため、中期経営計画(SF 1st Stage)を取り下げ、2024年4月〜2025年9月を構造改革期間として「NEXT2025」を実行中です。

重要な点は、オムロンがJMDC社との資本業務提携でデータソリューション事業を新たな柱として育てようとしていることです。血圧計等のヘルスケア機器から取得するデータと、JMDC社の医療ビッグデータを組み合わせた疾患予防ソリューションの開発を進めており、FA以外の事業で新たな収益源を構築する方向性を明確にしています。

横河電機|IA2IAで「自動から自律」へ

横河電機は中期経営計画「GS2028」で、IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)とSmart Manufacturingの2軸で事業を展開しています(2025年3月期有報)。「自動化」から「自律化」への進化を掲げ、AI・デジタルツイン・ロボティクス等のDX技術を取り込む方針です。

特徴的なのは、M&A・アライアンスに3年間で1,000億円以上の投資枠を設定していることです。エネルギー・資源分野の課題対応やDX/OTデータ活用のための投資を加速する方針で、キーエンスのオーガニック成長型やファナックの「狭い路」型とは対照的に、M&Aによる非連続な成長を明確に志向しています。

あなたのキャリアとマッチするか|働く環境の違い

指標キーエンスファナックオムロン横河電機
連結従業員数12,261人9,970人26,614人17,670人
単体従業員数3,205人4,689人3,873人2,242人
平均年齢34.8歳40.0歳44.5歳44.6歳
平均勤続年数11.1年14.1年15.2年17.1年
平均年収2,039万円1,238万円820万円926万円

(出典:各社有価証券報告書 従業員の状況)

年収格差は最大で約2.5倍です。キーエンスの2,039万円は日本企業トップクラスの水準であり、2位のファナック1,238万円に対しても800万円以上の差があります。この差はビジネスモデルの利益構造に直結しています。キーエンスは連結12,261人という少数精鋭で、1人あたり営業利益は約4,480万円。ファブレス×直販モデルで生み出した利益を少人数の社員に還元する仕組みです。

平均年齢にも大きな差があります。キーエンスの34.8歳は4社中最も若く、オムロン44.5歳・横河電機44.6歳とは約10歳の差があります。平均勤続年数もキーエンス11.1年に対し横河電機17.1年と6年の開きがあり、人材の流動性やキャリアパスの性格が異なることを示しています。

キーエンスの人的資本に関する有報開示も特徴的です。社内で役職呼称を使わないフラットな文化、パーティションのないオープンフロア、役員・社員の3親等以内の親族の入社禁止(縁故採用禁止)、接待・贈答の授受禁止など、独自の制度が記載されています。

リスク構造の違い

4社のリスク構造は事業モデルの違いを反映しています。

キーエンスの最大リスクは為替変動です。海外売上比率64.8%のもと、2025年3月期は為替差損42億円を計上しました。ただし、ファブレスモデルで設備投資が少なく顧客分散も徹底しているため、景気後退時の下振れリスクは他3社より構造的に小さいと考えられます。

ファナックの最大リスクは景気循環です。「商品は景気変動の影響を大きく受けやすい生産財」と有報で認めており、実際にFA事業が前期比27.9%減と大きく落ち込みました。拠点集中リスク(本社地区集中・富士山噴火リスク)に対しては壬生・筑波の工場新設で分散化を進めています。

オムロンのリスクは事業ポートフォリオの偏りです。有報で「成長の牽引役が一部に偏っていた」と認めており、中華圏エリアの需要減退が業績悪化の主因となりました。構造改革中の人員最適化に伴う品質リスクへの対応として、現場品質点検を実施しモニタリング体制を強化しています。

横河電機のリスクは地政学リスクです。中東・アフリカが最大海外市場であるため、地域紛争や経済制裁の影響を受けやすい構造です。これに対し、約60年のグローバル展開で培った現地密着型の事業基盤と、偏りのない地域構成(日本25.6%が最大、次点が中東・アフリカ17.4%)でリスク分散を図っています。

キャリア選択のポイント|「合う人・合わない人」

有報データから見える4社の違いをキャリア選択の判断材料として整理します。

キーエンスが合う人

  • 高い成果を出して高報酬を得たい人。平均年収2,039万円は日本企業トップクラスだが、平均年齢34.8歳に表れるように長時間高密度で成果を求められる環境
  • 営業力を武器にキャリアを築きたい人。直販モデルのため、顧客の潜在ニーズを直接捕捉する営業スキルが鍛えられる
  • フラットな組織で即戦力として働きたい人。役職呼称を使わない文化、パーティションのないオープンフロア

ファナックが合う人

  • ロボット・CNC技術の最前線でモノづくりに関わりたい人。R&D費498億円、CNC・ロボット・ロボマシンの全商品群でAI機能を開発
  • 一つの分野を長期的に深掘りしたい人。「狭い路を真っ直ぐに」の理念、平均勤続14.1年の安定した組織
  • グローバルに製品を提供したい人。海外売上比率86.8%、世界35,000台のロボットをIoT接続する規模

オムロンが合う人

  • FA以外にもヘルスケア・社会インフラなど幅広い事業に関わりたい人。5セグメントの多角化経営で異動やキャリアの選択肢が多い
  • 構造改革期を成長の機会と捉えられる人。NEXT2025の改革途上だからこそポジションが空く可能性がある
  • データソリューションやAI分野で社会課題を解決したい人。JMDC連携の医療ビッグデータ活用、卓球ロボットFORPHEUSのAI研究

横河電機が合う人

  • プロセス産業のグローバルプラントで制御技術を極めたい人。世界4万件以上のプロジェクト納入実績
  • 中東・アフリカ・東南アジアでグローバルに働きたい人。海外売上比率74%、中東・アフリカが最大海外市場
  • 安定した顧客基盤の上で長期キャリアを築きたい人。平均勤続17.1年、プラント制御のリカーリング収益モデル

まとめ|4社は「FA」の看板が同じでも中身は別物

有報データで横断比較すると、4社は「FA・制御機器」という共通の看板を掲げながら、稼ぎ方・投資の方向性・リスク構造・働き方のすべてが構造的に異なることがわかります。

視点キーエンスファナックオムロン横河電機
稼ぎ方ファブレス×直販CNCロボット一体型FA×多角化プロセス制御特化
利益率営業51.9%経常22.9%税引前3.6%経常15.2%
投資の方向少額×高効率R&Dロボット・AI・IoT構造改革+データIA2IA×M&A
地理的強み海外成長余地大米州・中国──中東・アフリカ
年収水準2,039万円1,238万円820万円926万円

就活で「FA業界」とひとくくりにするのではなく、自分がどのビジネスモデルに惹かれるか、どの地域で、どんな技術に関わりたいかを軸に企業を選ぶことが、後悔しないキャリア選択につながります。有報はそのための最も信頼できるデータソースです。


免責事項: 本記事は各社の有価証券報告書(EDINET開示データ)に基づく情報提供を目的としており、投資判断や特定企業への就職を推奨するものではありません。キーエンス(2025年3月期・日本基準)・ファナック(2024年3月期・日本基準)・オムロン(2025年3月期・米国基準)・横河電機(2025年3月期・日本基準)と決算期・会計基準が異なるため、数値の単純比較には限界があります。最新情報は各社の公式開示資料をご確認ください。

よくある質問

FA・ロボット業界で就活するならどの企業が向いていますか?

4社はビジネスモデルが根本的に異なるため、自分の志向で選ぶべきです。少数精鋭・高年収の成果主義環境ならキーエンス(平均年収2,039万円・営業利益率51.9%)、ロボット技術の最前線でモノづくりに関わりたいならファナック(ロボット売上47.9%・R&D費498億円)、FA×ヘルスケア×社会インフラの多角化経営ならオムロン(5事業セグメント)、プラント制御でグローバルに働きたいなら横河電機(海外売上比率74%・中東アフリカが最大海外市場)が軸になります。

キーエンスの営業利益率が4社で突出して高いのはなぜですか?

ファブレス(製造外注)と直販(代理店ゼロ)のビジネスモデルにより、売上総利益率83.8%・設備投資は売上比1.4%(143億円)と極小です。自己資本比率94.5%・有利子負債ゼロで、R&D費も売上比2.7%(288億円)と少額ながら高付加価値製品を生み出す効率の高さが利益率の源泉です(2025年3月期有報)。

ファナックのロボット事業はどのくらいの規模ですか?

ロボット事業の売上高は3,809億円で全体の47.9%を占めます(2024年3月期有報)。FA事業1,803億円、ロボマシン事業1,033億円、サービス事業1,305億円と合わせた4製品群で構成され、全てにCNC・サーボ技術が共通基盤として使われています。IoT技術「ZDT」で世界35,000台のロボットを接続し、故障予知を実現しています。

オムロンが構造改革中なのはなぜですか?

中国経済の成長鈍化とサプライチェーン混乱で業績が悪化し、中期経営計画を取り下げて構造改革プログラム「NEXT2025」(2024年4月〜2025年9月)を実行中です。2025年3月期の税引前利益率は3.6%に低下しています。制御機器事業の立て直しと収益基盤の再構築が柱で、次期中期経営計画は2026年度からの予定です(2025年3月期有報)。

横河電機が中東・アフリカで強い理由は?

横河電機は制御事業(プラント向けDCS・センサ等)が売上の93.9%を占め、石油・ガス・化学プラントの制御に強みがあります。中東・アフリカ地域の売上は977億円で最大の海外市場です。約60年のグローバル展開で世界4万件以上のプロジェクト納入実績があり、偏りのない地域構成を実現しています(2025年3月期有報)。

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