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テルモ vs シスメックス vs HOYA|医療機器3社の将来性と賭けている分野

最終更新: 約11分で読了
#テルモ #シスメックス #HOYA #医療機器 #有報 #企業比較 #就活 #医療機器メーカー
この比較でわかること
1. 3社とも「医療機器」だが、治療(テルモ)・診断(シスメックス)・素材(HOYA)と事業領域が全く異なる
2. R&D費・設備投資の配分先から各社の「賭けている分野」の違いが明確
3. 海外売上比率・組織規模・年収水準からキャリアマッチの判断が可能

「医療機器メーカーに就職したいけど、テルモ・シスメックス・HOYAはどう違うの?」就活生からよく聞かれる質問です。 3社は同じ「医療機器」に分類されますが、有報を読むと、治療・診断・素材と事業の中身が全く異なることがわかります。

この記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。テルモ・シスメックスは2025年3月期、HOYAは2024年3月期と決算期が異なる点にご注意ください。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

医療機器3社を有報で比較してわかった3つの違い

医療機器3社比較とは、テルモ・シスメックス・HOYAの有報データを横断的に分析し、就活のキャリア選択に活かせる判断材料を提供するものです。

3社は「医療機器」というくくりで同じ業界に見えますが、事業の本質はそれぞれ「治療機器メーカー」「診断機器メーカー」「光学素材メーカー」と全く異なります。

企業売上規模賭けている分野特徴
テルモ1兆361億円カテーテル治療の全身展開R&D費率7.2%・治療特化
シスメックス5,086億円血液検査×ロボット手術×再生医療海外売上86.7%・少数精鋭
HOYA7,626億円メガネレンズ×半導体マスクブランクス純利益1,825億円・超高収益

出典: テルモ・シスメックス有価証券報告書 2025年3月期、HOYA有価証券報告書 2024年3月期

最大の違いは「何で勝負しているか」です。テルモはカテーテルやステントなど体の中に入れる治療デバイスが主力で、R&D費742億円の約69%(509億円)を心臓血管カンパニーに集中投下しています。シスメックスは血液検査装置で世界トップシェアを持ち、売上の86.7%が海外という圧倒的なグローバル展開が特徴です。HOYAはメガネレンズと半導体マスクブランクスという一見無関係な2事業を柱とし、売上ではテルモに大きく劣るものの純利益1,825億円はテルモ(1,169億円)を上回る高収益体質です。

主要指標比較表|数字で見る3社の実力

指標テルモ(4543)シスメックス(6869)HOYA(7741)
決算期2025年3月期2025年3月期2024年3月期
売上高1兆361億円5,086億円7,626億円
純利益1,169億円536億円1,825億円
R&D費742億円(売上比7.2%)314億円(6.2%)330億円(4.3%)
設備投資825億円486億円569億円
連結従業員数30,689人10,533人35,702人
平均年収(単体)778万円913万円821万円
平均年齢40.3歳42.3歳47.8歳
平均勤続年数15.7年12.7年19.7年
会計基準IFRSIFRSIFRS

出典: 各社有価証券報告書。3社ともIFRS適用だが、セグメント区分が異なるため純利益で比較。テルモ・シスメックスは2025年3月期、HOYAは2024年3月期

数字から読み取れるポイントは3つあります。

まず収益力に注目すると、HOYAの純利益1,825億円は売上1兆361億円のテルモ(1,169億円)を上回ります。HOYAはポートフォリオ経営で高収益事業に経営資源を集中する方針を有報で明記しており、その結果が数字に表れています。

研究開発への資源配分では、テルモのR&D費率7.2%が3社中最高です。カテーテル治療や脳動脈瘤デバイスなど体内に入れる製品は安全性の要求が極めて高く、承認取得にも時間がかかるため、研究開発への持続的な投資が不可欠です。

組織規模と年収水準では、シスメックスは連結10,533人と3社中最小ですが、平均年収913万円は最高水準です。少数精鋭の組織で専門性の高い人材を確保している構造が読み取れます。

設備投資やR&Dの読み方を理解しておくと、投資の配分先から企業の方向性を読み取りやすくなります。

各社の「賭けている分野」|投資の方向性比較

テルモ|カテーテル治療の全身展開×デバイスと薬剤の融合

テルモの有報分析記事でも解説していますが、テルモの経営資源の中心は心臓血管カンパニーです。

投資指標心臓血管メディカルケア血液・細胞テクノロジー
設備投資436億円185億円178億円
R&D費509億円130億円103億円

出典: テルモ有価証券報告書 2025年3月期(全社共通の設備投資26億円等は除く)

テルモの5カ年成長戦略「GS26」では「デバイスからソリューションへ」をビジョンに掲げ、3つの「D」を推進しています。Delivery(低侵襲治療の普及率を60%から100%へ)、Deviceuticals(医療機器と薬剤の融合)、Digital(データ活用による治療最適化)です(2025年3月期有報 経営方針)。

特筆すべきは心臓血管カンパニーで、これまで心臓の血管治療で培った「ラジアル手技」(手首からカテーテルを挿入する低侵襲治療)を脳血管・下肢血管・腹部血管など全身に展開しようとしています。薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster Nagomi」「Ultimaster Tansei」の適応範囲拡大に関するMDR承認取得により、出血性合併症リスクの高いPCI患者への1カ月DAPT適応が拡大するなど、研究開発の成果が着実に形になっています(2025年3月期有報 研究開発活動)。

血液・細胞テクノロジーカンパニーでは原料血漿採取市場への参入を進めており、テルモBCTを中心に生産能力増強と設備投資を継続しています(2025年3月期有報 設備投資等の概要)。

シスメックス|血液検査の世界トップシェア×ロボット手術×再生医療

シスメックスの有報分析記事でも解説していますが、シスメックスの強みは血球計数検査(ヘマトロジー)で世界トップシェアを持ち、190以上の国・地域に製品を展開していることです。

投資指標金額備考
設備投資合計486億円本社統括299億円が最大
R&D費314億円(売上比6.2%)セグメント別配分は非開示
海外売上比率86.7%190以上の国・地域
診断薬の売上比率61.7%機器設置後の継続的な試薬販売がストック型収益

出典: シスメックス有価証券報告書 2025年3月期

シスメックスの長期経営戦略「VA33」(2033年度最終)では、既存の検体検査に加えて3つの新領域に賭けています。1つ目は免疫検査分野の拡大とアルツハイマー診断支援の事業化で、抗アミロイドβ抗体薬の副作用リスクを予測するAPOE遺伝型判定検査試薬の製造販売承認申請を行っています。2つ目は川崎重工業との合弁会社メディカロイドが開発する手術支援ロボット「hinotori™」のグローバル展開で、呼吸器外科への適応拡大の承認も取得しています。3つ目は再生細胞医療の産業化で、J-TECとの製造自動化の基本合意書を締結しています(2025年3月期有報 経営方針・研究開発活動)。

シスメックスのビジネスモデルの特徴は、検査機器を医療機関に設置した後、検査試薬を継続的に販売するストック型収益構造です。診断薬が売上の61.7%を占めるこの構造は、一度シェアを獲得すると安定した収益が見込める強みがあります。

HOYA|メガネレンズ×半導体マスクブランクス×ポートフォリオ経営

HOYAの有報分析記事でも解説していますが、HOYAは「ライフケア」と「情報・通信」の2事業を柱とするポートフォリオ経営企業です。

セグメント設備投資R&D費主要製品
ライフケア370億円(全体の65%)222億円(67%)メガネレンズ・医療用内視鏡・眼内レンズ
情報・通信198億円(35%)97億円(29%)半導体マスクブランクス・HDD用サブストレート

出典: HOYA有価証券報告書 2024年3月期

HOYAの有報で最も注目すべきは、経営方針に明記された「事業ライフサイクルの見極めと撤退」の方針です。成長性の高い領域に経営資源を配分し、衰退期の事業からは撤退するという考え方で、過去にクリスタル事業やペンタックスのカメラ事業から撤退した実績があります(2024年3月期有報 経営方針)。

ライフケア事業では設備投資が前年比51.3%増の370億円に急拡大しており、メガネレンズの増産に積極投資しています。世界的な高齢化と若年層の近視増加を背景に、累進レンズ・調光レンズ・小児向け近視進行抑制レンズなどの高付加価値製品を開発しています。情報・通信事業ではEUV(極端紫外線)露光用マスクブランクスで世界的に高いシェアを持ち、半導体の微細化に不可欠な材料を供給しています(2024年3月期有報 設備投資等の概要・研究開発活動)。

経営指標としてSVA(株主価値創造)を採用し、資本コストを上回る利益を生むことを重視している点も、テルモやシスメックスとは異なるHOYA独自の経営スタイルです。

キャリアマッチ観点での選び方

3社の投資方向性の違いは、そのまま「どんな人に合うか」の違いにつながります。

志向・関心テルモシスメックスHOYA
治療機器の開発・製造○ カテーテル・ステント△ hinotori™のみ△ 内視鏡のみ
検査・診断領域△ 血糖管理○ ヘマトロジー世界首位
半導体関連○ EUVマスクブランクス
海外で働きたい○ 三極生産体制○ 海外売上86.7%○ 海外売上77%
R&D・研究開発志向○ R&D費率7.2%○ R&D費率6.2%△ R&D費率4.3%
高年収△ 778万円○ 913万円○ 821万円
少数精鋭の組織△ 連結30,689人○ 連結10,533人△ 連結35,702人
安定的な長期勤務○ 勤続15.7年△ 勤続12.7年○ 勤続19.7年
高収益企業で働きたい○ 純利益率23.9%
再生医療・細胞治療○ iPS細胞培養自動化○ 細胞治療支援

従業員データ比較

指標テルモシスメックスHOYA
連結従業員数30,689人10,533人35,702人
単体従業員数5,633人2,876人3,042人
平均年齢40.3歳42.3歳47.8歳
平均勤続年数15.7年12.7年19.7年
平均年収778万円913万円821万円

出典: 各社有価証券報告書 従業員の状況。テルモ・シスメックスは2025年3月期、HOYAは2024年3月期

HOYAの平均年齢47.8歳・平均勤続19.7年はベテラン層が厚い組織構成を示しています。一方、テルモの平均年齢40.3歳は3社中最も若く、シスメックスは連結10,533人ながら平均年収913万円と処遇が厚い傾向があります。

今から学んでおくと差がつくこと

テルモ志望シスメックス志望HOYA志望
カテーテル治療・低侵襲医療の基礎臨床検査・体外診断の基礎知識光学技術・レンズ設計の基礎
薬機法・FDA承認プロセスの概要個別化医療・リキッドバイオプシー半導体リソグラフィとマスクブランクス
医療DX・デジタルヘルスの動向ロボティクス・メカトロニクスポートフォリオ経営・SVA経営指標

社風や職場の雰囲気は有報からは読み取れません。OpenWorkなどの口コミサイトやOB・OG訪問で補完することをおすすめします。

面接で使える医療機器3社比較の切り口

テルモの面接で使える視点

「御社の有報を読み、R&D費742億円のうち心臓血管カンパニーが509億円と約69%を占めている点に注目しました。ラジアル手技を心臓血管から全身の血管治療に展開するという戦略に、低侵襲治療のリーダーとしての御社の方向性を感じています。」

逆質問例: 「GS26で掲げた『デバイスからソリューションへ』のビジョンの中で、Deviceuticals(機器と薬剤の融合)は若手社員にどのような関わり方の機会がありますか?」

シスメックスの面接で使える視点

「御社の有報を読み、海外売上比率86.7%というグローバル展開の規模と、ヘマトロジー世界首位のポジションに注目しました。さらに手術支援ロボットhinotori™やアルツハイマー診断支援など、診断から治療領域へ事業を拡大されている戦略に将来性を感じています。」

逆質問例: 「長期経営戦略VA33で掲げた再生細胞医療の産業化について、J-TECとの製造自動化はどの段階まで進んでいるのでしょうか?」

HOYAの面接で使える視点

「御社の有報を読み、ライフケア事業の設備投資が前年比51.3%増の370億円に拡大している点に注目しました。メガネレンズの増産投資の積極性と、SVA経営で高い資本効率を追求する姿勢に、御社のポートフォリオ経営の本質を感じています。」

逆質問例: 「有報で『事業ライフサイクルの見極めと撤退を含む経営資源の配分』を方針として掲げていらっしゃいますが、新規事業開発部門では現在どのような領域を探索されていますか?」

まとめ

テルモ・シスメックス・HOYAの有報を比較して見えてきたことは、以下の3点です。

  • 事業領域の違い: 同じ「医療機器」でもテルモは治療(カテーテル)、シスメックスは診断(血液検査)、HOYAは素材(メガネレンズ・半導体マスクブランクス)と本質が異なる
  • 投資の方向性: テルモはR&D費率7.2%で心臓血管に集中投資、シスメックスは診断→治療への領域拡大、HOYAはライフケア事業への増産投資を急拡大
  • 経営スタイル: テルモは「デバイスからソリューションへ」の転換型、シスメックスは海外86.7%のグローバル型、HOYAは事業の取捨選択を行うポートフォリオ型

医療機器業界の就活では「医療に貢献したい」という志望動機が多くの学生に共通します。有報を読み、3社それぞれが「どの医療課題に、どれだけの経営資源を投じて取り組んでいるか」を具体的に語れれば、それだけで他の就活生との差別化になります。

各社の詳しい分析は、テルモの有報分析記事シスメックスの有報分析記事HOYAの有報分析記事をご覧ください。志望企業が決まったら、各社の有報(EDINET)でセグメント別のR&D費・設備投資の内訳を自分で確認してみましょう。R&D費や設備投資の読み方は有価証券報告書の投資家目線での読み方で体系的に学べます。


本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。

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よくある質問

テルモ・シスメックス・HOYAの違いは?

3社は同じ「医療機器」に分類されますが、事業領域が全く異なります。テルモはカテーテル治療など「治療」に特化(R&D費742億円・売上比7.2%)、シスメックスは血液検査など「診断」で世界首位(海外売上比率86.7%)、HOYAはメガネレンズと半導体マスクブランクスの「素材・部品」が強みです(各社有報に基づく)。

医療機器業界の将来性は?

3社とも有報で世界的な高齢化と慢性疾患の増加を成長ドライバーとして挙げています。テルモは低侵襲治療の普及率がまだ60%であることを成長余地と位置づけ、シスメックスは個別化医療と再生細胞医療を次の柱に据え、HOYAは若年層の近視増加を背景にメガネレンズの増産に370億円を投じています。

3社の年収差は?

有報データではシスメックス913万円(単体2,876人)、HOYA821万円(単体3,042人)、テルモ778万円(単体5,633人)の順です。ただし単体の母集団が異なるため単純比較には限界があります。シスメックスは連結10,533人と3社で最も少数精鋭の組織です。

医療機器メーカーの就活で有報をどう活かす?

R&D費と設備投資の配分先を確認し「どの製品・技術に経営資源を集中しているか」を把握するのが有効です。テルモのR&D費742億円のうち心臓血管カンパニーが509億円と約69%を占めるように、投資の偏り方から企業の本気度と方向性が読み取れます。面接で「有報の投資配分を見て御社の方向性を理解した」と語れると差別化になります。

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