| この記事でわかること |
|---|
| 1. ドラッグストア4社の売上・利益構造の違い |
| 2. 調剤戦略・出店戦略・経営統合で見る4社の方向性 |
| 3. 就活・キャリアマッチの観点から4社をどう選ぶか |
「ドラッグストアはどこも同じ」──就活生からよく聞く言葉ですが、有報を読むと4社はまったく異なる経営戦略を持つ企業であることがわかります。
ウエルシアは全店舗の77.3%に調剤薬局を併設する「健康ステーション」型。マツキヨココカラは経常利益率8.1%という小売業では異例の高収益企業。ツルハは年間128店舗を出す「ドミナント出店」型。スギは中部圏から全国へ拡大し、I&Hとの統合で売上1兆円を目指す。この違いを面接で語れれば、「なぜこの会社を選んだのか」の説得力は格段に上がります。
さらにドラッグストア業界は、イオン×ウエルシア×ツルハの経営統合という大再編のさなかにあります。有報にはその動きが具体的に記載されています。
有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
この記事のデータは各社の有価証券報告書に基づいています。ウエルシアHD・スギHDは2025年2月期、マツキヨココカラ&カンパニーは2025年3月期、ツルハHDは2024年5月期を参照しています。決算期が異なる点にご注意ください。
結論|4社は「異なる成長モデル」
まず4社の主要指標を横並びで確認しましょう。同じドラッグストア業界でも、規模・収益性・戦略の方向性がまったく異なります。
| 比較項目 | ウエルシアHD | マツキヨココカラ | ツルハHD | スギHD |
|---|---|---|---|---|
| 連結売上高 | 1兆2,850億円 | 1兆616億円 | 1兆274億円 | 8,780億円 |
| 経常利益 | 408億円 | 862億円 | 493億円 | 419億円 |
| 経常利益率 | 3.2% | 8.1% | 4.8% | 4.8% |
| 自己資本比率 | 42.8% | 73.1% | 51.3% | 50.6% |
| 連結従業員数 | 16,611名 | 12,753名 | 11,620名 | 11,820名 |
| 会計基準 | 日本基準 | 日本基準 | 日本基準 | 日本基準 |
| 参照有報 | 2025年2月期 | 2025年3月期 | 2024年5月期 | 2025年2月期 |
出典: 各社有価証券報告書。ツルハHDは2024年5月期決算のため、他3社と約9か月の時期差がある点に注意。
売上規模ではウエルシアが首位ですが、利益で見るとマツキヨココカラが862億円で圧倒しています。経常利益率8.1%はウエルシアの約2.5倍です。この差はどこから来るのか、有報データで掘り下げます。
売上・利益の推移で見る4社の成長軌道
各社の直近5期の売上高推移を見ると、成長の軌道が異なることがわかります。
ウエルシアHD(2025年2月期)
| 期間 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 4期前 | 9,496億円 | 458億円 | 279億円 |
| 3期前 | 1兆259億円 | 475億円 | 264億円 |
| 2期前 | 1兆1,442億円 | 521億円 | 270億円 |
| 前期 | 1兆2,173億円 | 477億円 | 264億円 |
| 当期 | 1兆2,850億円 | 408億円 | 149億円 |
出典: ウエルシアHD有価証券報告書(2025年2月期)
売上は5期連続で増収を続けていますが、経常利益は当期408億円と2期前の521億円から大きく減少しています。当期純利益は149億円と前期の264億円からほぼ半減しました。典型的な増収減益の構造です。
マツキヨココカラ&カンパニー(2025年3月期)
| 期間 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 4期前 | 5,447億円 | 341億円 | 216億円 |
| 3期前 | 7,299億円 | 445億円 | 343億円 |
| 2期前 | 9,512億円 | 667億円 | 405億円 |
| 前期 | 1兆225億円 | 804億円 | 523億円 |
| 当期 | 1兆616億円 | 862億円 | 546億円 |
出典: マツキヨココカラ&カンパニー有価証券報告書(2025年3月期)
2021年10月のココカラファインとの経営統合を経て、売上は4期前の5,447億円から1兆616億円へと約2倍に成長しました。利益も右肩上がりで、経常利益率は5期を通じて上昇を続けています。
ツルハHD(2024年5月期)
| 期間 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 4期前 | 8,410億円 | 462億円 | 278億円 |
| 3期前 | 9,193億円 | 476億円 | 262億円 |
| 2期前 | 9,157億円 | 400億円 | 213億円 |
| 前期 | 9,700億円 | 456億円 | 252億円 |
| 当期 | 1兆274億円 | 493億円 | 241億円 |
出典: ツルハHD有価証券報告書(2024年5月期)
売上は当期に初めて1兆円を突破しました。ただし経常利益は462億円~493億円の狭いレンジで推移しており、売上成長ほどには利益が伸びていません。
スギHD(2025年2月期)
| 期間 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 4期前 | 6,028億円 | 353億円 | 211億円 |
| 3期前 | 6,254億円 | 330億円 | 193億円 |
| 2期前 | 6,676億円 | 323億円 | 190億円 |
| 前期 | 7,444億円 | 380億円 | 219億円 |
| 当期 | 8,780億円 | 419億円 | 256億円 |
出典: スギHD有価証券報告書(2025年2月期)
4社の中で唯一、売上・利益ともに右肩上がりの成長を続けています。当期の売上急拡大は2024年9月のI&H(阪神調剤薬局グループ)子会社化の影響が大きいと考えられます。
収益性の違い|マツキヨはなぜ高収益なのか
4社の経常利益率を並べると、マツキヨココカラの突出した収益性が際立ちます。
| 企業 | 経常利益率 | ROE | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|
| マツキヨココカラ | 8.1% | 10.6% | 73.1% |
| ツルハHD | 4.8% | 8.6% | 51.3% |
| スギHD | 4.8% | 10.6% | 50.6% |
| ウエルシアHD | 3.2% | 6.2% | 42.8% |
出典: 各社有価証券報告書(直近期)
マツキヨココカラが高収益を実現している理由は、有報のセグメント情報から読み取れます。2025年3月期のセグメント別営業利益は、マツモトキヨシグループ事業が579億円、ココカラファイングループ事業が238億円です。マツモトキヨシブランドの都心型店舗がインバウンド需要を取り込み、PB商品の開発力で利益率を押し上げています。
有報の戦略方針には「アジアNo.1のドラッグストアとなり、美と健康の分野でのリーディングポジションの確立を目指す」と記載されており、ドラッグストアの中でも「美と健康」のブランド価値で勝負するモデルです。
一方、ウエルシアは経常利益率3.2%と4社中最低ですが、これは調剤事業の比重の大きさに起因すると考えられます。調剤事業は薬価基準・調剤報酬という公定価格に縛られ、物販ほどの利益率を確保しにくい構造があります。
財務の健全性では、マツキヨココカラの自己資本比率73.1%が突出しています。ウエルシアは42.8%でM&Aによる規模拡大の影響が見えます。
出店戦略の違い
ドラッグストアの成長は店舗網の拡大と直結しています。各社の設備投資と出店戦略を比較します。
| 企業 | 設備投資額 | 新規出店数 | 出店戦略の特徴 |
|---|---|---|---|
| スギHD | 201億円 | 130店舗 | 関東・中部・関西の3エリア集中 |
| マツキヨココカラ | 190億円 | — | 大都市圏重点・出店+改装で101億円 |
| ウエルシアHD | 159億円 | 78店舗 | 全国展開・3,001店舗体制 |
| ツルハHD | 454億円 | 128店舗 | ドミナント戦略・北海道発全国 |
出典: 各社有価証券報告書。設備投資額は差入保証金等を含む各社公表ベース。
ツルハの設備投資額454億円は突出していますが、これは有形固定資産368億円、差入保証金51億円、ソフトウエア34億円の合計であり、他社と集計方法が異なる可能性があります。出店数ではスギの130店舗とツルハの128店舗がほぼ同水準です。
スギHDの有報には出店エリアの内訳が具体的に開示されています。関東53店舗、中部30店舗、関西40店舗、北陸・信州7店舗と、中部圏を基盤に関東・関西へ積極拡大していることがわかります。
ツルハの有報では「ドミナントエリアの形成促進および販売シェアの拡大を図るべく地域集中出店を推進」と明記されており、既存エリアの密度を高めて競合を排除する戦略です。
調剤戦略|4社で最も分かれるポイント
ドラッグストアにとって、調剤事業をどう位置づけるかは経営の根幹に関わる戦略判断です。
ウエルシアは調剤を経営の柱に据えています。有報によると、全3,001店舗のうち77.3%にあたる2,282店舗で調剤を併設し、薬剤師8,550名を擁しています。「地域No.1の健康ステーション」を2030年のありたい姿として掲げ、「未病・予防・治療・介護」のワンストップサービスを目指すと有報に記載されています。メディカル戦略としてヘルスケアデータの活用にも言及しています。
スギHDも調剤を重要な成長エンジンとしています。有報では「トータルヘルスケア戦略」として調剤併設型ドラッグストアと調剤薬局チェーンの二本立てで展開していることがわかります。2024年9月にI&H(阪神調剤薬局グループ)を子会社化したのも調剤基盤の強化が目的で、訪問看護事業や医療機関の開業支援事業にまで領域を広げています。
マツキヨココカラは調剤を強化しつつもブランド型で差別化しています。有報では「将来の社会保障、法改正を見据え『専門医療機関連携薬局』への対応や『地域包括ケアモデル』の拠点拡大」を進めると記載されています。ただし、経営の主軸はPB商品とインバウンド需要の取り込みです。
ツルハHDは「既存店舗への併設を中心とした調剤薬局の新規出店を引き続き推進」と記載されており、調剤を成長ドライバーとして位置づけています。DXの取り組みとして自社アプリを起点としたデータ連携にも触れています。
業界再編|イオン×ウエルシア×ツルハ統合の衝撃
ドラッグストア業界の最大のトピックは、イオン×ウエルシア×ツルハの経営統合です。これは各社の有報に明確に記載されています。
ウエルシアHDの有報(2025年2月期)には、「株式会社ツルハホールディングスとの経営統合を予定しており、2025年11月27日をもって上場廃止になる予定」と記載されています。この統合に伴い、業績予想は2026年2月期の第2四半期(中間期)のみの公表にとどまっています。
ツルハHDの有報(2024年5月期)にも、「イオン株式会社とウエルシアホールディングス株式会社と経営統合の協議を開始しており、各社の経営資源を最大限に活用して連携し、様々な分野でシナジーを発揮することを目指す」と記載されています。
仮に統合が実現すれば、ウエルシア(売上1兆2,850億円)とツルハ(売上1兆274億円)を合わせた売上2兆円超の巨大チェーンが誕生します。これはマツキヨココカラ(1兆616億円)やスギ(8,780億円)を大きく引き離す規模です。
就活生として注目すべきは、この統合が各社の組織・人事・出店戦略にどう影響するかです。ウエルシアの有報には「グループ横断的な組織の最適化」が明記されており、統合後は大規模な組織再編が行われる可能性があります。
経営リスクの比較
有報の「事業等のリスク」には、各社が認識する経営課題が記載されています。4社に共通するリスクと、各社固有のリスクを整理します。
4社共通のリスク
- 薬価基準・調剤報酬の改定: 調剤事業の収入は公定価格に依存するため、改定の方向性が業績に直結する
- 薬剤師・登録販売者の確保: 全社が人材確保を重要課題として記載。ウエルシアは「業界全体の課題」と明言
- 競合激化: 同業だけでなくスーパー・コンビニ・EC・ディスカウントストアとの競争
- 自然災害・感染症: 地域のライフラインとしての事業継続
各社固有のリスク
ウエルシア: のれん残高約360億円(36,072百万円)の減損リスクを開示。M&Aで規模拡大してきたため、のれん処理が業績を左右する可能性があります。
マツキヨココカラ: インバウンド需要の減少リスクを明記。大都市圏の店舗で海外観光客の利用が多く、渡航規制等による訪日外国人の減少が業績に影響する可能性があります。ココカラファインとの統合で発生したのれん残高は992億円と巨額です。
ツルハHD: 持株会社としてのリスクを記載。グループ各社の業績変動がHDに影響する構造であり、各子会社ののれん減損リスクにも言及しています。
スギHD: 2024年9月のI&H子会社化に伴う固定資産の減損リスクを新たに抱えています。また「医薬品の販売規制緩和」リスクとして、他業種の新規参入による競争激化への警戒を示しています。
あなたのキャリアとマッチするか
従業員データで見る組織の特徴
有報の従業員データ(提出会社単体)から、各社の組織的な特徴を比較します。
| 企業 | 連結従業員数 | 提出会社従業員 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年収 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウエルシアHD | 16,611名 | 39名 | 53.1歳 | 1.9年 | 866万円 |
| マツキヨココカラ | 12,753名 | 74名 | 45.2歳 | 15.6年 | 727万円 |
| ツルハHD | 11,620名 | 192名 | 45.8歳 | 17.8年 | 695万円 |
| スギHD | 11,820名 | 44名 | 46.0歳 | 8.5年 | 881万円 |
出典: 各社有価証券報告書。ウエルシアHD・スギHDは2025年2月期、マツキヨココカラは2025年3月期、ツルハHDは2024年5月期。
提出会社(持株会社)の従業員数は各社39~192名と少数です。これは持株会社の管理部門のデータであり、実際の店舗勤務者の数値ではありません。就活で参考にする場合は、年収・勤続年数が店舗スタッフの実態を反映していない点を理解しておく必要があります。
連結従業員数ではウエルシアの16,611名が最大で、3,001店舗網を支える大規模な組織です。
4社の戦略方向性まとめ
各社が有報で掲げている戦略方針を整理します。
ウエルシアHD「ウエルシア2.0」
- プロダクト戦略: PB開発・地域特性に合った品揃え
- メディカル戦略: ヘルスケアデータ活用・医療との連携
- リージョン戦略: データに基づく出店・改装の最適化
- DX: 顧客データ基盤のハブ化で3戦略を横断支援
- 2030年のありたい姿は「地域No.1の健康ステーション」
マツキヨココカラ「3つの重点戦略」
- お客様価値の共創: PB・ブランド力・インバウンド・ASEAN展開
- プラットフォーム強化: DX・大都市圏重点出店・M&A・調剤併設化・海外事業拡大
- サステナブル経営: 累進配当・配当性向50%・ROE12%以上を目標
- 2031年3月期のグループ経営目標でEBITDAマージンを新指標に設定
ツルハHD「5つの重点方針」
- 収益性重視の店舗展開: KPI管理強化・スクラップ&ビルド
- 調剤薬局の新規開設・機能向上
- PB「くらしリズム」の開発・ブランド育成
- デジタル戦略: 顧客データプラットフォーム活用
- サステナブル経営・人的資本経営
- イオン・ウエルシアとの経営統合でシナジー追求
スギHD「トータルヘルスケア戦略」
- 調剤併設型ドラッグストア+調剤薬局チェーンの二本立て
- I&Hとの合併でシナジー創出・中期計画を1年前倒し
- インバウンド需要取り込み: 都心店舗出店・品ぞろえ拡充
- スギ薬局アプリで製配販連携・DX化推進
- 2025年度に売上1兆円を目標
就活生へ|4社の選び方
有報データを踏まえると、4社は以下のように整理できます。
ウエルシアHDが向いている人
- 調剤・ヘルスケアを軸にしたキャリアに関心がある
- 大規模な経営統合(ツルハHD統合)の渦中で新しい組織づくりに関わりたい
- DXで医療と小売をつなぐ仕事に興味がある
マツキヨココカラが向いている人
- ブランド戦略やマーケティングに関心がある
- インバウンド需要の取り込みや海外事業(ASEAN展開)に興味がある
- 高収益企業で、自己資本比率73.1%という安定した財務基盤のもとで働きたい
ツルハHDが向いている人
- 地域に根ざしたドミナント戦略に興味がある
- PB商品の開発やブランド育成に携わりたい
- 経営統合後の巨大チェーンで、スケールの大きな仕事をしたい
スギHDが向いている人
- 調剤と物販を一体で運営する「トータルヘルスケア」に共感する
- 中部圏を基盤とした着実な成長企業で働きたい
- 訪問看護・医療機関支援など、ドラッグストアの枠を超えた医療事業に関心がある
面接では「有報のどの部分を見て志望したのか」を具体的に語ることが重要です。ドラッグストアの有報は単一セグメントで読みやすい反面、差別化のポイントが見えにくいため、経営戦略・設備投資・リスク情報から各社の違いを読み取ったことを示せれば、他の就活生との差別化になります。
まとめ
ドラッグストア4社を有報データで比較した結果、同じ業界でも経営モデルが大きく異なることが明らかになりました。売上首位のウエルシアは調剤併設77.3%の「健康ステーション」型、マツキヨココカラは経常利益率8.1%の「高収益ブランド」型、ツルハは128店出店の「ドミナント」型、スギは調剤×物販一体の「トータルヘルスケア」型です。
さらにイオン×ウエルシア×ツルハの経営統合は業界の勢力図を塗り替える可能性があります。どの企業を選ぶかは「自分が何をしたいか」で決まります。有報の経営戦略・設備投資・リスク情報を読み込み、面接で具体的な根拠とともに志望動機を語ることが、他の就活生との差別化につながります。
ウエルシアHDの詳細分析はウエルシアの将来性|有報で見る調剤併設77%の健康ステーション戦略をご覧ください。
小売業界全体の比較は小売3社を有報で比較|イオン・セブン&アイ・ユニクロもあわせてご確認ください。
本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。ウエルシアHD・スギHDは2025年2月期、マツキヨココカラ&カンパニーは2025年3月期、ツルハHDは2024年5月期を参照しています。決算期が異なるため数値の単純比較には限界があります。最新の有報はEDINETで確認できます。本記事は投資判断を目的としたものではありません。