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製薬 2024年03月期期

テルモの将来性|有報で見るカテーテル×3D戦略×グローバル医療機器

約12分で読了
#医療機器 #有報 #就活 #テルモ #カテーテル #GS26 #グローバル

企業名

テルモ

業種

医療機器

証券コード

4543

対象事業年度

2024年03月期

テルモの有報分析 要点: テルモは売上9,218億円のグローバル医療機器メーカー。心臓血管カンパニーにR&D費406億円・設備投資415億円を集中投下し、ラジアル手技(手首からのカテーテル治療)の全身血管への展開に賭けている。5カ年成長戦略GS26では「デバイスからソリューションへ」を掲げ、3D(Delivery・Deviceuticals・Digital)で事業構造の転換を推進中。(2024年3月期有報に基づく)

テルモ=体温計の会社。そのイメージは過去のものです。有報を読むと、売上9,218億円の中核は心臓血管カテーテル・脳血管デバイス・血液自動製剤システムといった高度医療機器であり、グローバルに三極生産体制(コスタリカ・日本・ベトナム)を構築する医療機器メーカーとしての姿が浮かび上がります。

この記事のデータはテルモ株式会社の有価証券報告書(2024年3月期・EDINET)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

テルモのビジネスの実態|何で稼いでいるのか

テルモ株式会社とは、心臓血管カテーテル・輸液ポンプ・血液自動製剤システムなどの医療機器をグローバルに展開する企業です。3つのカンパニー(心臓血管・メディカルケアソリューションズ・血液・細胞テクノロジー)で事業を構成しています。

項目内容
社名テルモ株式会社
証券コード4543(東証プライム)
EDINETコードE01630
決算期3月期(IFRS採用)
業種分類医療機器
主要事業心臓血管カテーテル、輸液ポンプ・シリンジポンプ、血液自動製剤システム
売上収益(2024年3月期)9,218億円(連結)
当期純利益(2024年3月期)1,063億円
従業員数(連結)30,591名

売上の推移が示す安定成長

テルモの売上は5年間で約47%成長しています。この成長率は医療機器業界のなかでも堅調な水準です。

期間売上収益
4期前6,288億円
3期前6,138億円
2期前7,033億円
前期8,202億円
当期(2024年3月期)9,218億円

出典: テルモ株式会社 有価証券報告書(2024年3月期)

3期前に一時的な減収があるものの、それ以降は毎期増収を続けています。当期は初めて9,000億円を超え、1兆円企業が視野に入る規模です。

テルモの特徴は3カンパニー体制にあります。心臓血管カンパニー(カテーテル・ステント・脳血管デバイス)、メディカルケアソリューションズカンパニー(輸液ポンプ・CDMO・糖尿病管理)、血液・細胞テクノロジーカンパニー(血液自動製剤・細胞治療支援)の3つが、それぞれ異なる成長ドライバーを持っています。

テルモは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

「何に賭けているか」とは、その企業が有限のリソース(資本・人材・時間)をどこに集中投下しているかを指します。テルモの設備投資784億円・R&D費691億円の内訳を見ると、経営資源の配分先が明確に読み取れます。

カンパニー設備投資R&D費主な投資内容
心臓血管415億円406億円愛鷹工場の増強、テルモメディカルCorp.、マイクロベンション,Inc.の生産能力増強
メディカルケアソリューションズ156億円77億円甲府工場CDMO新棟建設、富士宮工場・テルモ山口の生産設備
血液・細胞テクノロジー173億円128億円テルモBCT, Inc.、テルモBCTベトナムの増強、原料血漿採取設備
全社共通40億円79億円(基礎研究)業務システム機能向上、中長期テーマ探索
合計784億円691億円

出典: テルモ株式会社 有価証券報告書(2024年3月期)設備投資等の概要・研究開発活動

有報の設備投資・R&D費の読み方については有報の設備投資・R&D費の読み方で詳しく解説しています。

賭け1: 心臓血管カンパニーへの圧倒的集中

心臓血管カンパニーは、R&D費406億円(全体の59%)・設備投資415億円(全体の53%)と、テルモ全体の過半数の経営資源を集中させている事業です。

この投資の中心にあるのがラジアル手技(TRI)の拡大です。ラジアル手技とは、患者の手首の血管(橈骨動脈)からカテーテルを挿入する低侵襲治療法で、従来の大腿部(太ももの付け根)からのアプローチに比べて患者の負担が少ない方法です。テルモはGS26の中で、これまで心臓血管を中心に行われてきたラジアル手技を、下肢血管・腹部血管・脳血管など全身の血管に展開する戦略を明示しています。

TIS事業では、薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster Nagomi」が欧州でCEマーク認証を取得し販売を開始しています。欧州の医療機関60施設・患者3,000名規模の市販後臨床フォローアップ調査も開始されています(2024年3月期有報)。

ニューロバスキュラー事業では、脳動脈瘤用袋状塞栓デバイス「Woven EndoBridge」が7つのGCP試験と200以上の査読付き論文を持つ、最も研究されたデバイスとして位置づけられています。血管事業では、胸部大動脈用ステントグラフト「RelayPro」が米国FDAから大動脈解離への適用承認を取得しました(2024年3月期有報)。

賭け2: GS26「デバイスからソリューションへ」

テルモは5カ年成長戦略「GS26」で「デバイスからソリューションへ」というビジョンを掲げています。このビジョンを実現する手段が3つの”D”です。

1つ目のDeliveryは、低侵襲治療の普及率が60%にとどまっている現状に対し、カテーテル技術を武器に低侵襲治療100%の世界を目指すという方向性です。テルモの強みである生体内へのアクセス・デリバリー技術がその基盤となります。

2つ目のDeviceuticals(テルモの造語、Device+Pharmaceuticals)は、医療機器と薬剤の融合を目指す概念です。具体的には、メディカルケアソリューションズカンパニーがCDMO(コンビネーション製品の開発製造受託)事業を強化しており、甲府工場に新棟を建設中です(設備投資156億円の一部)。テルモ山口ではCDMO増設設備での生産稼働が既に開始されています(2024年3月期有報)。薬剤充填用シリンジ「PLAJEX」のグローバル展開も、Deviceuticals戦略の具体例です。

3つ目のDigitalは、データ活用による治療の最適化です。血糖値管理アプリ「メディセーフデータシェア for Home」のGoogleヘルスコネクト連携や、メドコム社との資本業務提携による医療従事者向けプラットフォーム構築が進行しています(2024年3月期有報)。GS26では慢性疾患の治療完遂率100%をデジタルで目指すという目標が設定されています。

GS26の財務目標は、売上1桁後半の成長、営業利益率20%以上、ROIC10%以上、ROE10%以上です(2024年3月期有報)。

賭け3: 血液・細胞テクノロジーの成長投資

血液・細胞テクノロジーカンパニーには設備投資173億円・R&D費128億円が投じられています。

最大のトピックは、血液自動製剤システム「Reveos」のFDA認証取得です。Reveosは全血採血から血小板・血漿・赤血球への分離と充填を完全自動化するシステムで、世界52カ国で使用されています。今回のFDA認証により、米国初の全血用血液自動製剤システムとして米国市場への拡販が始まります(2024年3月期有報)。

もう一つの注目点が、京都大学iPS細胞研究財団との共同研究です。細胞増殖システム「Quantum Flex」を用いて、iPS細胞培養の自動化を確立する研究が開始されました。iPS細胞の製造は専門家の手作業に依存しており、時間とコストが課題です。この共同研究はiPS細胞の大規模自動生産を目指すもので、再生医療の製造支援という新たな成長領域への布石です(2024年3月期有報)。

さらに、原料血漿採取システムを米国からスタートさせ、他の市場にも展開する戦略が掲げられています。GS26では「Blood and Beyond(血液からの発展)」として、採血業務の効率化から細胞治療プロセス全体へのアプローチを目指しています。

有報の事業リスクの読み方については有報の事業等のリスクの読み方を参考にしてください。

テルモのリスク|有報から読み取れる課題

有報から読み取れるリスクを整理します。

1つ目は、心臓血管カンパニーへの依存度の高さです。R&D費の59%(406億/691億円)、設備投資の53%(415億/784億円)が心臓血管カンパニーに集中しています。この事業の成長が鈍化した場合、テルモ全体の成長に直接影響します(2024年3月期有報)。

2つ目は、原料血漿採取市場での後発参入リスクです。この市場にはCSLベーリングやグリフォルスといった先行大手が存在します。テルモの血液・細胞テクノロジーカンパニーが掲げる「Blood and Beyond」戦略は成長余地の大きい領域ですが、既存プレーヤーとの競争が避けられません。

3つ目は、CDMO事業における設備投資先行のリスクです。甲府工場の新棟建設をはじめとする大型投資が含まれていますが、CDMO事業は受注が安定するまでのリードタイムが長い事業です(2024年3月期有報)。

4つ目は、グローバル三極生産体制(コスタリカ・日本・ベトナム)のオペレーションリスクです。拠点分散は供給安定性の向上に寄与する一方で、品質管理・人材確保・為替の複合的な管理が必要になります。GS26では個別工場の自動化・省力化ノウハウをグローバル展開することで生産イノベーションを推進するとしています(2024年3月期有報)。

あなたのキャリアとマッチするか

キャリアマッチとは、企業の投資方向性・事業構造・組織文化と、就活生の志向性の合致度を判断する軸です。

従業員データ

項目データ(2024年3月期)読み方
従業員数(連結)30,591名グローバルに展開する医療機器メーカーとして相応の規模
従業員数(単体)5,554名日本国内の本社・工場に在籍する社員数
平均年齢40.3歳医療機器メーカーとして標準的な水準
平均勤続年数15.9年長期勤続傾向。安定した雇用環境を示す
平均年間給与755万円医療機器業界の中で標準的な水準

出典: テルモ株式会社 有価証券報告書(2024年3月期)従業員の状況

平均勤続年数15.9年は定着率の高さを示しています。平均年収755万円は製薬企業と比較すると控えめに見えますが、テルモは製薬ではなく医療機器メーカーであり、業界の報酬水準が異なる点に注意が必要です。業界の年収水準との詳細比較は平均年収ランキング(有報データ)で確認できます。

有報では読み取れないこと: 職場の雰囲気・配属先の文化・海外赴任の実際の頻度・研究開発職と営業職の社風の違い等は有報では把握できません。OB/OG訪問や社内説明会で補完することを推奨します。

有報の人的資本情報の読み方については有報の人的資本情報の読み方を参考にしてください。

テルモに合うと考えられる人

志向性テルモとの対応
医療機器の開発・製造とテクノロジーの融合に携わりたい3D戦略(Delivery・Deviceuticals・Digital)で機器と薬剤・デジタルの融合を推進中
グローバルに事業展開する日本企業で海外経験を積みたいコスタリカ・日本・ベトナムの三極生産体制。連結30,591名のうち海外拠点が多い
カテーテル治療・脳血管治療など低侵襲医療の最前線に関わりたいラジアル手技の全身展開にR&D費406億円を投下。低侵襲治療100%を目標に掲げる
デジタルヘルスや医療DXに関心がある血糖管理アプリ、医療従事者向けプラットフォーム、DX推進室の米国拠点設置が進行中
細胞治療・再生医療の製造支援に関わりたいQuantum Flexによるips細胞培養自動化の共同研究が開始。成長領域への布石

テルモに合わないと考えられる人

志向性理由
新薬の創薬研究をしたい人テルモは医療機器メーカーであり、創薬企業ではない。製薬企業とは事業構造が異なる
短期間で大きな売上成長を体感したい人GS26の売上目標は1桁後半成長。堅実だが急拡大路線ではない
日本国内のみのキャリアを想定している人グローバル三極生産体制。事業の成長は海外市場が牽引しており、国内完結のキャリアは限定的
大規模M&Aによる急成長を期待する人テルモは自前開発と段階的なM&A型の成長戦略。一気に規模を倍増させるスタイルではない

面接で使える有報ポイント

志望動機での活用

テルモを志望する際に最も効果的な有報データは、R&D費691億円(売上比7.5%)の内訳です。心臓血管カンパニーだけで406億円(全体の59%)を占めるという事実は、テルモが何に経営資源を集中しているかを端的に示しています(2024年3月期有報)。

設備投資784億円の内訳も有効です。心臓血管カンパニー415億円(53%)、血液・細胞テクノロジーカンパニー173億円(22%)、メディカルケアソリューションズカンパニー156億円(20%)という配分は、各カンパニーの優先度を明確に表しています(2024年3月期有報)。

GS26の3D戦略(Delivery・Deviceuticals・Digital)の具体例として、Deviceuticalsの文脈でCDMO事業の甲府新棟建設や「PLAJEX」のグローバル展開、Digitalの文脈で血糖管理アプリのGoogleヘルスコネクト連携を挙げられると、戦略と投資の整合性を語れる就活生として差別化できます。

「有報でテルモのR&D費691億円のうち心臓血管カンパニーが406億円で59%を占めることを確認しました。ラジアル手技の全身血管への展開という戦略に最も多くのリソースを賭けている点に注目し、低侵襲医療の普及を通じて患者の負担を減らすという事業の社会的意義に共感しています。GS26のDeviceuticals——機器と薬剤の融合——という方向性も、CDMO新棟建設という具体的な投資に裏付けられており、テルモが目指す未来像が明確だと感じています。」(2024年3月期有報)

逆質問で使えるネタ

  • 「有報の設備投資でCDMO新棟(甲府工場)への投資が記載されていました。Deviceuticals戦略のなかで、製薬企業とのパートナーシップはどのように拡大しているのでしょうか?(2024年3月期有報)」
  • 「有報で血液自動製剤システムReveosがFDA認証を取得したと記載されていました。米国市場での血液センターへの拡販は、若手社員がどのような形で関わる機会がありますか?」
  • 「有報で京都大学iPS細胞研究財団との共同研究が記載されていましたが、Quantum Flexを活用した細胞培養自動化は、今後どのような事業規模を想定しているのでしょうか?」
  • 「GS26ではDX推進室の活動拠点を米国に移したと記載されていましたが、デジタルヘルスのスタートアップ探索・投資の実績について教えていただけますか?(2024年3月期有報)」

まとめ

視点テルモの特徴
事業の核心心臓血管カテーテル・脳血管デバイス・血液自動製剤の3カンパニー体制(2024年3月期)
成長の方向GS26「デバイスからソリューションへ」——3D戦略(Delivery・Deviceuticals・Digital)で事業構造を転換
投資配分設備投資784億円+R&D費691億円=合計1,475億円。心臓血管カンパニーが最大シェア(2024年3月期)
売上規模9,218億円(5年で約47%成長)。1兆円企業が視野に入る規模(2024年3月期)
年収水準755万円(単体平均・2024年3月期)
キャリアの特徴医療機器の開発・製造・グローバル展開。三極生産体制で海外勤務の機会あり

テルモは「体温計の会社」ではなく、心臓血管カテーテルの世界的リーダーを目指すグローバル医療機器メーカーです。有報の設備投資・R&D費の内訳で心臓血管カンパニーへの集中投下を、経営戦略欄でGS26の3D戦略を、研究開発の欄でReveosのFDA認証やiPS細胞培養自動化を確認することで、テルモの将来像を根拠をもって語れるようになります。

関連記事:

本記事のデータはテルモ株式会社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。

よくある質問

テルモの有価証券報告書はどこで読めますか?

EDINET(金融庁の電子開示システム)またはテルモ公式IRサイトで無料公開されています。EDINETでは「E01630」で検索すると最新の有報にアクセスできます。テルモはIFRS(国際財務報告基準)を採用しています。有報の「設備投資等の概要」「研究開発活動」「従業員の状況」を重点的に確認すると、3カンパニーの投資配分とグローバル戦略が把握できます。

テルモの有報から就活に使える情報は何ですか?

有報から読み取れる就活活用ポイントは3つです。①心臓血管カンパニーにR&D費406億円・設備投資415億円を集中投下している事実(全体の53〜59%)、②GS26の3D戦略(Delivery・Deviceuticals・Digital)で「デバイスからソリューションへ」の転換を目指していること、③血液自動製剤システムReveosのFDA認証取得やiPS細胞培養自動化の共同研究など、血液・細胞テクノロジー分野の成長投資です。(2024年3月期有報)

テルモは体温計の会社ですか?

テルモの創業事業は体温計ですが、現在の売上9,218億円のうち経営資源の中心は心臓血管カテーテル・脳血管デバイス・血液自動製剤システムなどの高度医療機器事業です。心臓血管カンパニーだけでR&D費406億円・設備投資415億円を投じており、ラジアル手技(手首からのカテーテル治療)の全身血管への展開がグローバル成長の柱です。(2024年3月期有報)

テルモの面接で有報データをどう活かせますか?

「有報でR&D費691億円のうち心臓血管カンパニーが406億円(59%)を占めること、GS26の3D戦略でDeviceuticals(機器と薬剤の融合)を推進していることを確認しました。CDMO新棟建設への設備投資や、Reveos(血液自動製剤システム)のFDA認証取得など、具体的な投資内容まで把握しています」という形で有報データを根拠に使うと、他の就活生との差別化になります。(2024年3月期有報)

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