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金融 2024年03月期期

SBIホールディングスの将来性|有報で見る「第4のメガバンク構想」と手数料ゼロ戦略の実態

約10分で読了
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企業名

SBIホールディングス

業種

証券・金融

証券コード

8473

対象事業年度

2024年03月期

この会社が賭けているもの
1. 銀行事業の飛躍的拡大(第4のメガバンク構想)
2. 金融サービスのデジタルプラットフォーム(ゼロ革命・企業生態系)
3. 半導体事業への異業種参入

この記事のデータはSBIホールディングスの有価証券報告書(2024年3月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

SBIホールディングスは、「ネット証券最大手」として知られる総合金融グループです。しかし有報を読むと、銀行事業の利益寄与度が既に証券事業を上回り、設備投資830億円のうち737億円をシステム開発に投じ、さらに半導体ファウンドリ事業にまで異業種参入するなど、「ネット証券」の枠を大きく超えた企業の姿が見えてきます。

SBIのビジネスの実態|何で稼いでいるのか

SBIホールディングスの業績を理解するには、収益規模の急拡大と事業ポートフォリオの多角化を把握する必要があります。IFRS(国際財務報告基準)を適用しており、日本基準の証券会社とは財務諸表の構成が異なる点にご注意ください。

連結業績推移(2024年3月期有報)

指標4期前3期前2期前前期当期
収益3,680億円5,411億円7,636億円9,569億円1兆2,105億円
親会社株主帰属純利益374億円810億円3,668億円354億円872億円

収益は4期前の3,680億円から当期1兆2,105億円へ3.3倍に急拡大しました(2024年3月期有報)。ただし純利益は872億円であり、収益規模に比べて利益率は必ずしも高くありません。2期前の純利益3,668億円は一時的な要因による高水準で、前期には354億円まで落ち込んでいます。利益のブレ幅が大きい点は押さえておくべきです。

なお、SBIの有報ではセグメント別の収益・利益データが構造的に開示されていません。そのため、経営方針の記述から事業構造を読み解く必要があります。主な事業領域は以下の4つです。

  • 金融サービス事業: 証券(SBI証券)、銀行(SBI新生銀行等)、保険
  • 資産運用事業: 投資信託の設定・運用
  • 投資事業: プライベート・エクイティ投資等
  • 次世代事業: バイオ・ヘルスケア、半導体等

経営方針では「銀行事業の連結業績への利益寄与度が証券事業を上回っている」と明記されています(2024年3月期有報)。SBI証券の口座数は1,245万件で国内最多(2024年3月末時点)、グループ全体の顧客基盤は5,000万件を超えます。

SBIは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

SBIホールディングスの経営理念は「金融を核に金融を超える」です。有報からは、この理念を本気で実行している姿が浮かび上がります。設備投資は830億円(2024年3月期有報)で、R&D費は19.8億円(2024年3月期有報)を計上しています。

賭け1: 第4のメガバンク構想|銀行事業への傾斜配分

SBIグループが現在最も経営資源を集中させているのが銀行事業です。経営方針で「日本の金利上昇局面を見据え、銀行事業へ経営資源を傾斜配分し、収益力の徹底強化を推進」と明記しています(2024年3月期有報)。

SBI新生銀行の実質業務純益が13年ぶりに1,000億円を突破したことは、この戦略が成果を上げ始めている証拠です(2024年3月期有報の経営方針より)。「第4のメガバンク構想」として、地域金融機関との連携強化による「広域地域プラットフォーマー化」とM&Aによる資産規模拡大を同時に推進しています。公的資金の返済を「大義」と位置づけている点も特徴的です。

就活生にとって重要なのは、SBIグループの収益の重心が証券から銀行に移りつつあるという点です。銀行業務(法人融資・リテール預金・住宅ローン等)への配属可能性は従来以上に高まっていると考えられます。

賭け2: ゼロ革命とエコシステム戦略

SBI証券は2023年9月にオンライン国内株式売買手数料の無料化(ゼロ革命)を開始しました。約158億円の収益を逸失しましたが、前期比で増収増益を達成しています(2024年3月期有報の経営方針より)。

手数料収入を失ってなぜ増収増益が可能だったのか。有報の経営方針によると、信用取引建玉残高、投信残高、FX収益、外債販売、トレーディング収益が軒並み過去最高を記録しました(2024年3月期有報)。つまり、株式売買手数料をゼロにして顧客基盤を拡大し、その顧客に対して多様な金融商品を提供する「エコシステム戦略」で補完したということです。

設備投資830億円のうち、737億円が金融サービス事業のシステム開発に充てられています(2024年3月期有報)。この数字はSBIがテクノロジーカンパニーとしての側面を持つことの最も強い証拠です。プラットフォームビジネスの企画・運営、データ分析、UX設計など、テクノロジー×金融の人材需要が高い企業です。大和証券グループの有報分析と比較すると、大和証券のIT投資354億円に対しSBIは737億円と、テクノロジーへの投資規模の差は歴然です。

賭け3: 半導体ファウンドリ事業への参入

2023年7月に台湾PSMC(力晶積成電子製造)と提携し、宮城県大衡村に半導体ファウンドリの建設を発表しました。2025年着工・2027年稼働開始を計画しています(2024年3月期有報の経営方針より)。経営方針では「日本政府が国家産業と位置付けている半導体関連事業へ参入」として5つの注力領域の1つに明記されています。

金融グループが製造業に参入するのは極めて異例です。金融・投資機能を半導体事業に活かすと位置づけていますが、技術・人材・オペレーションの全てが未知の領域であり、リスクも大きい戦略です。

なお、R&D費19.8億円(2024年3月期有報)はバイオ・ヘルスケア領域(5-アミノレブリン酸を活用した医薬品開発、抗体医薬・核酸医薬の研究等)に充てられており、金融グループとしては珍しい研究開発投資です。デジタルアセット事業(暗号資産取引、ステーブルコイン、セキュリティトークン)にも同時に注力しています。

SBIが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

有報のリスク情報欄は、企業が法的義務として自らの経営リスクを開示するセクションです。SBIの有報には、採用活動では語られにくいリスクが率直に記載されています。

リスク1: 多角化・急拡大に伴う統合リスク

有報のリスク項目で「複数事業領域への事業展開に伴うリスク」を筆頭に記載しています(2024年3月期有報)。金融・バイオ・半導体と全く異なる業界に同時に事業を展開しており、「様々な事業環境における変化をモニタリングし、適切な戦略を持って対応できるよう、リソースを配分する必要がある」と自ら認めています。

M&Aも積極的で、「買収先企業の統合が困難」「期待される成果が得られない可能性」を明記しています(2024年3月期有報)。連結従業員19,097名(2024年3月期有報)を擁する巨大グループの管理は容易ではなく、事業領域が広い分、配属先によって仕事内容が大きく異なる可能性があります。

リスク2: キーパーソン(北尾吉孝氏)への依存リスク

有報のリスク項目で「当社代表取締役である北尾吉孝とその他のキーパーソンのリーダーシップに依存しており、現在の経営陣が継続して当企業グループの事業を運営できない場合、当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります」と明記しています(2024年3月期有報)。

創業者であるトップへの依存は、迅速な意思決定というメリットの裏返しです。トップダウン型の経営スタイルは、スピード重視の企業文化につながりますが、経営方針が創業者個人のビジョンに強く紐づいている点は理解しておくべきです。

リスク3: 半導体事業の不確実性と巨額投資リスク

半導体ファウンドリの建設には巨額の投資が見込まれます。リスク項目の「新規事業への参入に係るリスク」で「初期投資に見合うだけの十分な収益を将来において計上できない場合」の可能性を認めています(2024年3月期有報)。

金融グループが製造業に参入する前例はほぼなく、提携先PSMCとの関係や地政学リスク(台湾)も影響しうる要因です。この不確実性を「チャンス」と捉えるか「リスク」と捉えるかが、SBIグループとの相性を測る一つの判断材料になります。

あなたのキャリアとマッチするか

キャリアマッチとは、自分の志向と企業の方向性の一致度です。SBIグループは事業領域が極めて広いため、「どの事業に配属されるか」でキャリアの方向性が大きく変わる可能性があります。

合う可能性が高い人合わない可能性がある人
変化のスピードが速い環境でチャレンジしたい人安定・保守的な企業文化を求める人
テクノロジー×金融のキャリアに興味がある人一つの専門領域を深く極めたい人
グループ全体の企業生態系の中で幅広い経験を積みたい人創業者・トップへの依存が気になる人
顧客数・規模でNo.1を目指す文化に共感する人

SBIグループの経営理念には「起業家精神」「スピード重視」「イノベーション促進」「自己進化」の4つのDNAが明記されています(2024年3月期有報)。企業文化や職場の雰囲気の詳細は有報では把握できないため、OpenWorkなどの口コミサイトやOB・OG訪問で補完してください。

従業員データ(2024年3月期有報)

  • 連結従業員数: 19,097人
  • 親会社単体: 330人
  • 平均年齢: 39.8歳
  • 平均勤続年数: 5.5年
  • 平均給与: 約897万円(8,979,260円)

平均勤続年数5.5年は金融業界としては短い水準です。これは組織の歴史が比較的浅いことや、変化の速さ・人材の流動性の高さを反映していると考えられます。なお、この数値は持株会社単体(330人)の数値であり、SBI証券やSBI新生銀行などグループ各社の水準とは異なります。

今から学ぶべき分野

SBIグループの投資方向性から逆算すると、以下の知識が差別化につながります。

  • FinTech・デジタルアセットの基礎知識: ブロックチェーン、ステーブルコイン、セキュリティトークンなど。注力領域5つのうち1つがデジタルアセットです
  • 銀行業務の基礎と金利の仕組み: 第4のメガバンク構想が最大の注力領域であり、金利上昇が銀行収益にどう影響するかの理解は必須です
  • SBIグループの企業生態系の全体像: どの会社がどのサービスを提供し、グループ内でどうシナジーを生んでいるかを理解すると、面接で圧倒的な差がつきます

野村ホールディングスの有報分析と比較すると、野村は証券業務の専門性と海外展開を軸にする一方、SBIはグループ全体のエコシステム(企業生態系)で顧客のライフタイムバリューを最大化する戦略をとっています。アプローチの違いは明確です。

面接で使える有報ポイント

面接で有報データを活用すると、「企業研究の質」を具体的な数値で示せます。以下は志望動機や逆質問に使えるポイントです。

志望動機での活用例

プラットフォーム戦略に注目する切り口: 「有報を読み、SBI証券のゼロ革命が約158億円の収益逸失にもかかわらず、信用取引建玉残高・投信残高・FX収益が軒並み過去最高を達成して増収増益を実現した点に注目しました。手数料を犠牲にしてでもプラットフォームの顧客基盤を拡大し、多角化収益で補う戦略の実行力に感銘を受けました」(2024年3月期有報の経営方針より)

銀行事業の成長に注目する切り口: 「経営方針で印象的だったのは、銀行事業の連結業績への利益寄与度が既に証券事業を上回っているという記述です。SBI新生銀行の実質業務純益が13年ぶりに1,000億円を突破したことは、第4のメガバンク構想が着実に進展していることを示していると理解しています」(2024年3月期有報の経営方針より)

テクノロジー投資に注目する切り口: 「設備投資830億円のうち737億円が金融サービス事業のシステム開発に充てられている点から、御社がテクノロジーカンパニーとしての側面を持つことがわかりました。経営理念の『革新的技術に対する徹底的な信奉』が投資額にも表れていると感じています」(2024年3月期有報の設備投資概要より)

逆質問の例

  • 「銀行事業の利益寄与度が証券事業を上回る中で、若手社員がSBI新生銀行や地域金融機関との連携業務に携わる機会はどの程度ありますか?」
  • 「デジタルアセット領域の急成長促進を注力領域に掲げていますが、セキュリティトークン流通市場(START)やステーブルコイン事業に若手が携わる機会はありますか?」
  • 「半導体事業のように異業種参入を決断する際のグループ内の意思決定プロセスはどのようなものですか?若手社員が新規事業の企画に関わる機会はありますか?」

有報から企業の経営戦略を読む方法も参考にしてみてください。

まとめ

SBIホールディングスの有報からは、「ネット証券最大手」というイメージとは異なる3つの経営の賭けが浮かび上がります。第一に、銀行事業への傾斜配分による第4のメガバンク構想の推進。第二に、手数料無料化を起点とした5,000万件超の顧客基盤に基づくエコシステム戦略。第三に、半導体ファウンドリ事業という金融グループとして前例のない異業種参入です。

収益は4期で3.3倍に急拡大し1兆2,105億円に達していますが、純利益872億円で利益率は高くなく、また利益のブレ幅も大きい(2期前は3,668億円、前期は354億円)という実態があります。「金融を核に金融を超える」という経営理念を実行に移すスピード感と、それに伴う不確実性の両方を理解した上でキャリア選択をすることが重要です(全て2024年3月期有報に基づく)。

当記事は有価証券報告書の公開データに基づく企業分析であり、投資勧誘を目的としたものではありません。

よくある質問

SBIホールディングスの有報で最も注目すべきポイントは?

銀行事業の利益寄与度が証券事業を上回っている点です。「SBI=ネット証券」のイメージとは異なり、SBI新生銀行の実質業務純益が13年ぶりに1,000億円を突破するなど、総合金融グループへの変貌が有報から明確に読み取れます(2024年3月期有報)。

SBI証券の手数料無料化で経営は大丈夫?

約158億円の収益を逸失しましたが、信用取引建玉残高・投信残高・FX収益・トレーディング収益が軒並み過去最高を達成し、前期比で増収増益を実現しています(2024年3月期有報の経営方針より)。手数料ゼロはプラットフォーム拡大戦略であり、多角化収益モデルで補完しています。

SBIの半導体事業参入はどうなっている?

台湾PSMCと提携し、宮城県大衡村に半導体ファウンドリを建設予定です(2025年着工・2027年稼働予定)。有報では経営方針の5つの注力領域の1つに明記されていますが、「新規事業への参入に係るリスク」として収益化の不確実性も認めています(2024年3月期有報)。

SBIホールディングスに向いている就活生は?

変化のスピードが速い環境でチャレンジしたい人、テクノロジー×金融のキャリアに興味がある人に向いています。一方、親会社の平均勤続年数5.5年(金融業界としては短い)が示すように、安定・保守的な企業文化を求める人には合わない可能性があります(2024年3月期有報)。

SBIと野村証券・大和証券の違いは有報から分かる?

SBIは設備投資830億円のうち737億円をシステム開発に投じるテクノロジー主導型で、銀行・保険・バイオ・半導体と事業多角化が進んでいます。証券業務の専門性を軸にするか、グループ全体のエコシステムに魅力を感じるかが選択の分かれ目です(2024年3月期有報)。

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