この記事を読み終えるころ、あなたは面接で「大和証券さんが2024年度から3部門体制に組織を作り直した狙いをどう捉えているか」を、有報の数値で語れるようになります。「証券会社=株の売買仲介」というよくある志望動機の一段先、組織再編とあおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携という最新の戦略アクションまで踏み込んで話せると、面接官の食いつき方は明らかに変わります。
大和証券グループ本社は、国内2位の独立系証券グループです。2024年度を初年度とする中期経営計画『Passion for the Best 2026』に合わせて、従来の「リテール/ホールセール/アセット・マネジメント/投資」の4部門を「ウェルスマネジメント/アセットマネジメント/グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング」の3部門に再編しました(2025年3月期有報のセグメント情報より)。看板の掛け替えではなく、富裕層資産管理(WM)と運用ビジネス(AM)を独立した利益責任単位として可視化し、市況に振らされない収益基盤を太くするための組織改造です。
| この会社が賭けているもの |
|---|
| 1. ウェルスマネジメント(富裕層向け資産管理ビジネスへの構造転換) |
| 2. アセットマネジメント(あおぞら銀行・かんぽ生命提携を含む運用基盤拡大) |
| 3. DX・IT投資381億円(生成AIオペレーター/Web3.0/オペレーショナル・レジリエンス) |

この記事のデータは大和証券グループ本社の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。 金融業界全体の分析は金融業界比較|銀行・証券・保険の将来性をご覧ください。
大和証券のビジネスの実態|3部門体制で何を稼いでいるのか
大和証券グループの業績は、どの部門がどれだけ利益を出しているかを知ることで初めて理解できます。2024年度から3部門体制に変わったため、就活サイトに残っている古い「4部門」情報のままで臨むと面接でズレた話をしてしまうリスクがあります。

セグメント別業績(2025年3月期有報、新3部門区分)
| 部門 | 純営業収益 | 前期 | セグメント利益 | 前期 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウェルスマネジメント部門 | 2,558億円 | 2,281億円 | 806億円 | 662億円 | 約31.5% |
| アセットマネジメント部門 | 1,025億円 | 977億円 | 774億円 | 664億円 | 約75% |
| グローバル・マーケッツ&IB部門 | 2,341億円 | 2,204億円 | 427億円 | 440億円 | 約18.2% |
| その他(大和総研グループ等) | 383億円 | 346億円 | 34億円 | △12億円 | ― |
出典: 2025年3月期有報のセグメント情報。前期数値は新区分にて遡及表示、億円未満は四捨五入
注目すべきは、各部門の性質が全く異なる点です。
ウェルスマネジメント部門は受入手数料1,668億円(前期1,463億円)を稼ぎ出し、セグメント利益は806億円(前期662億円から+21.8%)と大きく伸びました(2025年3月期有報)。新NISAの追い風に加えて、富裕層・法人向けのオーダーメイド商品やデジタルマーケティングによる顧客基盤拡大が業績を押し上げています。
アセットマネジメント部門は純営業収益1,025億円に対してセグメント利益774億円で、利益率は約75%に達します(2025年3月期有報)。投資信託の信託報酬や運用フィーといったストック型収益(資産残高に連動して継続的に入る収入)が中心であり、市況の変動に左右されにくい安定収益の柱です。中期経営計画で『ベース利益1,500億円』という独自指標を打ち出している主役は、実質この部門と言えます。
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は、機関投資家・事業法人向けの株式/債券/為替/デリバティブのセールス&トレーディングと、有価証券引受け・M&Aアドバイザリーを束ねた部門です。当期のセグメント利益は427億円で、前期440億円から微減となりました(2025年3月期有報)。ホールセール領域は市況次第で振幅が大きいため、収益構造の多様化が継続課題です。
連結業績推移(2025年3月期有報)
| 指標 | 4期前 | 3期前 | 2期前 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 4,666億円 | 5,020億円 | 4,642億円 | 5,909億円 | 6,459億円 |
| 経常利益 | 1,151億円 | 1,358億円 | 869億円 | 1,745億円 | 2,247億円 |
| 純利益 | 1,083億円 | 948億円 | 638億円 | 1,215億円 | 1,543億円 |
| ROE | 8.5% | 7.0% | 4.6% | 8.3% | 9.8% |
| 自己資本比率 | 5.1% | 5.0% | 5.3% | 4.8% | 4.6% |
当期の営業収益は6,459億円(前期比+9.3%)、経常利益2,247億円(同+28.7%)、純利益1,543億円(同+27.0%)と過去最高水準です(2025年3月期有報)。「金利のある世界」への転換と新NISAの追い風という外部環境を取り込み、組織再編による事業のアクセル踏み込みが業績に直結した1年でした。
地域別の純営業収益では日本が5,591億円(全体の86.5%)を占め、欧州485億円、アジア・オセアニア321億円、アメリカ64億円と続きます(2025年3月期有報)。国内中心の事業構造であることがわかります。
大和証券は何に賭けているのか|投資と戦略の方向性
経営戦略とは、会社が限られた経営資源をどこに集中させるかという意思決定です。大和証券グループは中期経営計画『Passion for the Best 2026』で、連結経常利益2,400億円以上、連結ROE10%程度、ベース利益(ウェルスマネジメント部門+証券アセットマネジメント+不動産アセットマネジメントの経常利益合計)1,500億円を数値目標に掲げています(2025年3月期有報の経営方針より)。中計2年目の2025年3月期で経常利益2,247億円(目標比93.6%)、ROE9.8%とすでにほぼ目標水準に達しており、目標達成に向けた進捗は良好です。
賭け1: ウェルスマネジメントへの構造転換
大和証券グループは2024年度から報告セグメントを再編し、従来の「リテール部門」を「ウェルスマネジメント部門」へ作り直しました(2025年3月期有報のセグメント情報より)。これは単なる看板の掛け替えではなく、ビジネスモデルそのものの転換を意味します。
従来の証券リテール営業は「株を売買してもらい、その都度手数料を得る」フロー型ビジネスでした。ウェルスマネジメントは「顧客の資産全体を設計・管理し、資産残高に応じたフィーを継続的に得る」ストック型ビジネスです。
当期のウェルスマネジメント部門の受入手数料は1,668億円と前期比+14.0%で増加し、セグメント利益は前期662億円から806億円へ+21.8%増となりました(2025年3月期有報)。新NISAの追い風もありますが、富裕層・法人向けのオーダーメイド商品やデジタルマーケティングによる顧客基盤拡大、職域(ワークプレイス)ビジネスの強化、銀行ビジネスを活用した富裕層向けソリューション提供が業績好調の背景にあります。
就活生にとって、この転換は入社後の仕事内容に直結します。単なる株式売買の仲介ではなく、富裕層の資産全体を設計するコンサルティング型の営業が主流になりつつあるということです。
賭け2: アセットマネジメント事業の拡充とインオーガニック戦略
アセットマネジメント部門は利益率約75%と突出して高い部門です(2025年3月期有報、純営業収益1,025億円に対しセグメント利益774億円)。投資信託の設定・運用、機関投資家向け投資助言、不動産投資法人の運用、さらにプライベート・エクイティ、ベンチャー、再生可能エネルギー、インフラ等のオルタナティブ資産への投資まで幅広く手がけています。
特筆すべきは2025年3月期に実現した非連続成長の動きです。あおぞら銀行の株式を取得して持分法適用関連会社とし、負ののれん相当額を持分法投資利益に計上しました(2025年3月期有報のセグメント情報より)。また、かんぽ生命保険とも資産運用分野での協業を軸とした資本業務提携を実現しています(2025年3月期有報の経営方針より)。これらは中計が掲げる「非連続な成長戦略」「インオーガニック戦略」の具体形であり、運用残高や顧客基盤を一気に拡大する設計図です。
中期経営計画ではオルタナティブ商品の拡充、国内外の投資顧問領域への基盤構築、不動産アセットマネジメント事業の運用力・物件ソーシング力の強化を掲げています。政府が掲げる「資産運用立国」の方針も追い風であり、運用人材の需要は今後さらに高まる可能性があります。資産運用ビジネスに関心がある就活生にとって、大和証券グループは投信設定から不動産REIT運用、PE/ベンチャー投資まで幅広い運用機能を持つ点が特徴です。
賭け3: DX・IT投資381億円の中身
当期の設備投資額は約381億円で、その全額がIT投資として計上されています(2025年3月期有報の設備投資概要より)。前期(354億円)からさらに増額しており、主な投資先は次の通りです。
- 総資産データベースの整備および営業員向けコンサルティングツールの拡充
- 顧客との面談時の会話内容を自動記録・要約するシステムの導入
- ダイワのオンライントレード上で多様な商品・銘柄受付を可能にするオンライン販売プラットフォームの構築
- 2024年10月導入の「AIオペレーターサービス」(生成AIを活用し、音声でマーケット情報や事務手続きの問い合わせに会話形式で応対)
- 広域自然災害に備えた遠隔地データセンターの整備(オペレーショナル・レジリエンスの確保)
有報では「生成AIやWeb3.0などを活用したデジタル・イノベーションの追究」を設備投資の目的として明記しており(2025年3月期有報)、テクノロジーを経営戦略の中核として位置付けていることがわかります。金融×テクノロジーのキャリアを志望する人にとって、グループ会社の大和総研も含めた開発環境は注目に値します。SBIホールディングスの有報分析で取り上げる「ゼロ革命」(手数料無料化)のようなネット証券のデジタル攻勢への対抗軸として、生成AI・Web3.0領域に踏み込んでいる点が特徴的です。
大和証券が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
有報のリスク情報欄は、会社が自ら認識する経営リスクを開示する法定セクションです。採用サイトや会社説明会では語られにくい内容が記載されています。

リスク1: 業績の変動性リスク|ストック収益化の挑戦
有報の事業等のリスクの中で「業績の変動性に伴うリスク」が独立項目として明記されています。「有価証券関連業務をはじめ、その他の主要業務であるアセットマネジメント業務、投資業務は、お客様との取引から得られる手数料、トレーディング損益、営業投資有価証券関連損益等が大幅に変動するという特性を持っております」と会社自身が認めています(2025年3月期有報)。
中期経営計画で「ベース利益1,500億円」を独立目標として掲げ、ウェルスマネジメント部門の預り資産拡大やアセットマネジメント部門の契約資産残高拡大、グローバル・マーケッツ&IB部門の収益構造多様化を進めているのは、まさにこの業績変動性を経営陣自身が課題として認識しているからです。マーケッツ・トレーディング系の部門への就職を検討する際は、市況次第で賞与や人員配置が変動しうる点を理解しておくことが重要です。
リスク2: サイバー攻撃・情報セキュリティ・マネロン対応
有報のトップリスクには「サイバー攻撃」「情報セキュリティリスク」「マネロン・テロ資金供与への対応不備」「役職員による不適切な行為(インサイダー取引等)」が並んでいます(2025年3月期有報)。IT投資381億円のうち、遠隔地データセンター(オペレーショナル・レジリエンスの確保)に投じている部分は、これらのリスクへの直接的な備えです。
証券業界全体でデジタル化競争が激化しており、ネット証券各社の手数料無料化のような破壊的な変化への対応は継続的な課題です。テクノロジー人材の需要は高まる一方、レガシーシステムとの共存という実務的な課題もあります。
リスク3: 地政学リスクと日本市場への高依存
トップリスクに「国際紛争・対立の深刻化(台湾海峡軍事衝突・ウクライナ情勢のエスカレーション)」「トランプ2.0(米国新政権の通商政策・関税強化)」「中国経済危機」「日本の財政不安による国債格下げや円資産の暴落」「日本のスタグフレーションリスク」を列挙しています(2025年3月期有報)。
純営業収益の86.5%が日本国内で発生しており(2025年3月期有報)、海外拠点(欧州/アジア/米国)の収益はまだ補完的な位置づけです。日本の金融市場や経済環境の変動が、キャリアに直接影響する可能性が高い構造であることは把握しておくべきです。
あなたのキャリアとマッチするか
キャリアマッチとは、自分の志向と企業の方向性が合っているかどうかの判断です。大和証券グループの投資方針と事業構造から、以下のような適性が見えてきます。
| 合う可能性が高い人 | 合わない可能性がある人 |
|---|---|
| 顧客の資産全体を設計するコンサルティング型営業に興味がある人 | 業績の安定性を最重視する人(有報自身が業績変動性をリスクとして明記) |
| 投信・REIT・オルタナティブなど運用ビジネスに携わりたい人 | グローバルキャリアを最優先する人(純営業収益の86.5%が国内) |
| 金融市場のダイナミズムに魅力を感じる人 | ものづくりや技術開発そのものに関わりたい人 |
| 金融×生成AI/Web3.0領域でキャリアを築きたい人 | ― |
なお、企業文化や職場の雰囲気は有報ではわかりません。OpenWorkなどの口コミサイトやOB・OG訪問で補完することをおすすめします。
従業員データ(2025年3月期有報)
- 連結従業員数: 14,783人
- 持株会社単体: 616人
- 平均年齢: 40.9歳
- 平均勤続年数: 13.7年
- 平均給与: 約1,626万円(16,264,750円)
平均勤続年数13.7年は証券業界としては比較的長い水準です。平均給与約1,626万円は持株会社単体616人の数値であり、事業子会社である大和証券株式会社や大和アセットマネジメント等の水準とは異なる点にご注意ください。
今から学ぶべき分野
大和証券グループの投資方向性から逆算すると、以下の知識が就活・入社後に役立つ可能性があります。
- ファイナンシャルプランニング(FP)・資産運用の基礎: ウェルスマネジメント部門が成長の中核であり、配属先を問わず有用な知識です
- 新NISAやiDeCoなどの資産形成制度: 「貯蓄から資産形成へ」の国策が追い風であり、面接でもこのテーマが問われる可能性があります
- オルタナティブ投資(PE/不動産/インフラ/再エネ)の基礎: アセットマネジメント部門が拡充している領域であり、運用ビジネス志望者には差別化材料になります
- 生成AIとWeb3.0の基礎: 会社がIT投資の重点領域として明記しており、次世代金融インフラの理解は面接でも武器になります
同じ証券業界の野村ホールディングスの有報分析と比較すると、大和証券は「ベース利益1,500億円」という独自の安定収益指標を中計で明確化している点と、あおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携で運用基盤を非連続的に拡大している点が特徴的です。規模で野村が上回る一方、安定収益とインオーガニック成長の組み合わせという戦略の違いが有報から読み取れます。
面接で使える有報ポイント
面接で有報データを活用すると、「企業研究の深さ」を具体的に示せます。以下は志望動機や逆質問に使えるポイントです。
志望動機での活用例
3部門体制への再編に注目する切り口: 「有報を読み、2024年度から報告セグメントを4部門から『ウェルスマネジメント/アセットマネジメント/グローバル・マーケッツ&IB』の3部門に再編されたことに注目しました。アセットマネジメント部門のセグメント利益が774億円、利益率約75%と突出している一方、ウェルスマネジメント部門の利益も662億円から806億円へ+21.8%伸びており、組織再編が業績に直結していることが読み取れます。市況に左右されにくいベース利益1,500億円という中計目標と組織再編の連動性に魅力を感じています」(数値は2025年3月期有報)
非連続成長戦略に注目する切り口: 「2025年3月期にあおぞら銀行を持分法適用関連会社にされたこと、かんぽ生命保険と資産運用分野での協業に踏み切られたことに注目しました。中計で掲げる『インオーガニック戦略』の具体形であり、運用基盤を一気に拡大する経営の意志を感じます。アセットマネジメント部門で運用残高拡大に貢献したいと考えています」(2025年3月期有報の経営方針より)
生成AIとWeb3.0への投資に注目する切り口: 「IT投資381億円のうち、2024年10月に導入されたAIオペレーターサービスや、Web3.0を活用したデジタル・イノベーションの追究を有報で明記されている点に興味があります。金融サービスのデジタル化が競争力を左右する重要な要素だと考えています」(2025年3月期有報の設備投資概要より)
逆質問の例
- 「2024年度からの3部門体制再編によって、ウェルスマネジメント部門の若手社員に求められるスキルセットはどう変化していますか?」
- 「あおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携によって、アセットマネジメント部門の業務やキャリアパスはどのように変わっていきますか?」
- 「IT投資381億円のうち、生成AIやWeb3.0関連の領域に若手のうちから関わる機会はありますか?」
有報から企業の経営戦略を読む方法も参考にしてみてください。
まとめ
大和証券グループ本社の有報からは、3つの経営の賭けが浮かび上がります。第一に、リテール部門からウェルスマネジメント部門への転換による資産管理型ビジネスの確立。第二に、利益率約75%のアセットマネジメント部門を中核とした安定収益基盤の拡充と、あおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携による非連続成長。第三に、生成AIとWeb3.0を含むIT投資381億円によるデジタル化の推進です。
「証券会社=株の売買仲介」というイメージと、有報が示す実態には大きなギャップがあります。中期経営計画で掲げる経常利益2,400億円・ROE10%・ベース利益1,500億円の達成に向けて、当期は経常利益2,247億円(目標比93.6%)・ROE9.8%とすでにほぼ目標水準に到達しています(全て2025年3月期有報に基づく)。中計最終年度に向けた残りの伸びしろをどこから生み出すかが、今後の見どころです。
当記事は有価証券報告書の公開データに基づく企業分析であり、投資勧誘を目的としたものではありません。