「証券会社=株の売買仲介」というよくある志望動機の一段先、2024年度の3部門体制再編とあおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携を、有報の数値で語れるようになります。中計目標の経常利益2,400億円・ROE10%に対し当期は2,247億円(93.6%)・9.8%とほぼ到達済み。看板の掛け替えではなく、組織を作り直して稼ぐ力を入れ替えている会社の姿が、セグメント情報から鮮明に読み取れます。
大和証券グループ本社(8601)は、銀行系列に属さない独立系の総合証券グループです。2024年度を初年度とする中期経営計画『Passion for the Best 2026』に合わせて、従来の「リテール/ホールセール/アセット・マネジメント/投資」の4部門を「ウェルスマネジメント/アセットマネジメント/グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング」の3部門に再編しました(2025年3月期有報のセグメント情報より)。看板の掛け替えではなく、富裕層資産管理(WM)と運用ビジネス(AM)を独立した利益責任単位として可視化し、市況に振らされない収益基盤を太くするための組織改造です。

この記事のデータは大和証券グループ本社の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。 金融業界全体の分析は金融業界比較|銀行・証券・保険の将来性をご覧ください。
出典: 大和証券グループ本社 有価証券報告書 2025年3月期 主要な経営指標等の推移
大和証券のビジネスの実態|3部門体制で何を稼いでいるのか
大和証券グループの業績は、どの部門がどれだけ利益を出しているかを知ることで初めて理解できます。2024年度から3部門体制に変わったため、就活サイトに残っている古い「4部門」情報のままで臨むと面接でズレた話をしてしまうリスクがあります。

セグメント別業績(2025年3月期有報、新3部門区分)
| 部門 | 純営業収益 | 前期 | セグメント利益 | 前期 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウェルスマネジメント部門 | 2,558億円 | 2,281億円 | 806億円 | 662億円 | 約31.5% |
| アセットマネジメント部門 | 1,025億円 | 977億円 | 774億円 | 664億円 | 約75% |
| グローバル・マーケッツ&IB部門 | 2,341億円 | 2,204億円 | 427億円 | 440億円 | 約18.2% |
| その他(大和総研グループ等) | 383億円 | 346億円 | 34億円 | △12億円 | ― |
出典: 2025年3月期有報のセグメント情報。前期数値は新区分にて遡及表示、億円未満は四捨五入
ここからは利益率と性格が大きく異なる3部門を順に見ていきます。
ウェルスマネジメント部門|フロー型からストック型への作り直し
ウェルスマネジメント部門は受入手数料1,668億円(前期1,463億円)を稼ぎ出し、セグメント利益は806億円(前期662億円から+21.8%)と大きく伸びました(2025年3月期有報)。新NISAの追い風に加えて、富裕層・法人向けのオーダーメイド商品やデジタルマーケティングによる顧客基盤拡大が業績を押し上げています。看板を「リテール」から「ウェルスマネジメント」へ掛け替えた裏側で、フロー型(売買都度の手数料)からストック型(預り資産連動のフィー)へとビジネスモデルそのものを作り直している部門です。
アセットマネジメント部門|利益率約75%のストック型エンジン
アセットマネジメント部門は純営業収益1,025億円に対してセグメント利益774億円で、利益率は約75%に達します(2025年3月期有報)。投資信託の信託報酬や運用フィーといったストック型収益(資産残高に連動して継続的に入る収入)が中心であり、市況の変動に左右されにくい安定収益の柱です。中期経営計画で「ベース利益1,500億円」という独自指標を打ち出している主役は、実質この部門と言えます。あおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携で運用残高基盤を一気に積み増しに行く設計図も、ここに集約されています。
グローバル・マーケッツ&IB部門|市況に振られる稼ぎ手
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は、機関投資家・事業法人向けの株式/債券/為替/デリバティブのセールス&トレーディングと、有価証券引受け・M&Aアドバイザリーを束ねた部門です。当期のセグメント利益は427億円で、前期440億円から微減となりました(2025年3月期有報)。ホールセール領域は市況次第で振幅が大きいため、3部門のなかでは最も外部環境に振られる稼ぎ手であり、収益構造の多様化が継続課題として中計でも言及されています。
連結業績推移(2025年3月期有報)
| 指標 | 4期前 | 3期前 | 2期前 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 4,666億円 | 5,020億円 | 4,642億円 | 5,909億円 | 6,459億円 |
| 経常利益 | 1,151億円 | 1,358億円 | 869億円 | 1,745億円 | 2,247億円 |
| 純利益 | 1,083億円 | 948億円 | 638億円 | 1,215億円 | 1,543億円 |
| ROE | 8.5% | 7.0% | 4.6% | 8.3% | 9.8% |
| 自己資本比率 | 5.1% | 5.0% | 5.3% | 4.8% | 4.6% |
当期の営業収益は6,459億円(前期比+9.3%)、経常利益2,247億円(同+28.7%)、純利益1,543億円(同+27.0%)と過去最高水準です(2025年3月期有報)。「金利のある世界」への転換と新NISAの追い風という外部環境を取り込み、組織再編による事業のアクセル踏み込みが業績に直結した1年でした。地域別の純営業収益では日本が5,591億円(全体の86.5%)を占め、欧州485億円、アジア・オセアニア321億円、アメリカ64億円と続きます。
3部門再編とAM 75%利益率は、国内86.5%依存とセットで読む。WMをストック型、AMを利益率約75%のエンジンとして可視化した一方で、純営業収益の86.5%は日本国内で発生しています。「ベース利益1,500億円」を国内の家計金融資産と機関投資家マネーで作り込みに行く戦略は、円資産・日本市場が機能する前提に乗っているということです。海外比率を伸ばす銀行系・米系投資銀行とは賭ける土俵が違うと理解した上で志望することが必要になります。
では、この3部門構造は次の3年で何に賭けて伸ばされていくのか。続く章で投資と戦略の中身を見ていきます。
大和証券は何に賭けているのか|投資と戦略の方向性
経営戦略とは、会社が限られた経営資源をどこに集中させるかという意思決定です。大和証券グループは中期経営計画『Passion for the Best 2026』で、連結経常利益2,400億円以上、連結ROE10%程度、ベース利益(ウェルスマネジメント部門+証券アセットマネジメント+不動産アセットマネジメントの経常利益合計)1,500億円を数値目標に掲げています(2025年3月期有報の経営方針より)。中計2年目の2025年3月期で経常利益2,247億円(目標比93.6%)、ROE9.8%とすでにほぼ目標水準に達しており、目標達成に向けた進捗は良好です。

| 賭けの領域 | 定量的根拠(2025年3月期) | 期間 | 中計との対応 |
|---|---|---|---|
| ウェルスマネジメント転換 | WM部門セグメント利益806億円(前期比+21.8%)・受入手数料1,668億円 | 中長期(『Passion for the Best 2026』継続) | ベース利益1,500億円の主軸 |
| AM拡充とインオーガニック成長 | AM部門セグメント利益774億円・利益率約75% / あおぞら銀行を持分法適用関連会社化・かんぽ生命と資本業務提携 | 中長期(非連続成長戦略) | ベース利益1,500億円の運用残高エンジン |
| IT投資381億円 | 設備投資約381億円(全額IT) / 生成AIオペレーター・遠隔地DC・面談自動要約 | 単年(前期354億円→当期381億円) | 経常利益2,400億円・ROE10%の競争力源泉 |
出典: 大和証券グループ本社 有価証券報告書 2025年3月期 セグメント情報・経営方針・設備投資等の概要
賭け1: ウェルスマネジメントへの構造転換
大和証券グループは2024年度から報告セグメントを再編し、従来の「リテール部門」を「ウェルスマネジメント部門」へ作り直しました(2025年3月期有報のセグメント情報より)。これは単なる看板の掛け替えではなく、ビジネスモデルそのものの転換を意味します。従来の証券リテール営業は「株を売買してもらい、その都度手数料を得る」フロー型ビジネスでした。ウェルスマネジメントは「顧客の資産全体を設計・管理し、資産残高に応じたフィーを継続的に得る」ストック型ビジネスです。
当期のウェルスマネジメント部門の受入手数料は1,668億円と前期比+14.0%で増加し、セグメント利益は前期662億円から806億円へ+21.8%増となりました(2025年3月期有報)。新NISAの追い風もありますが、富裕層・法人向けのオーダーメイド商品やデジタルマーケティングによる顧客基盤拡大、職域(ワークプレイス)ビジネスの強化、銀行ビジネスを活用した富裕層向けソリューション提供が業績好調の背景にあります。就活生にとって、この転換は入社後の仕事内容に直結します。単なる株式売買の仲介ではなく、富裕層の資産全体を設計するコンサルティング型の営業が主流になりつつあるということです。
富裕層コンサル志向での行動 → 本記事冒頭の大和証券の業績推移に戻り、WMセグメント利益が前期662億円→当期806億円へ+21.8%伸びた数字を、面接で「自分が乗りたい潮流」として語れるようにしておきましょう。
賭け2: アセットマネジメント事業の拡充とインオーガニック戦略
アセットマネジメント部門は利益率約75%と突出して高い部門です(2025年3月期有報、純営業収益1,025億円に対しセグメント利益774億円)。投資信託の設定・運用、機関投資家向け投資助言、不動産投資法人の運用、さらにプライベート・エクイティ、ベンチャー、再生可能エネルギー、インフラ等のオルタナティブ資産への投資まで幅広く手がけています。
特筆すべきは2025年3月期に実現した非連続成長の動きです。あおぞら銀行の株式を取得して持分法適用関連会社とし、負ののれん相当額を持分法投資利益に計上しました(2025年3月期有報のセグメント情報より)。また、かんぽ生命保険とも資産運用分野での協業を軸とした資本業務提携を実現しています(2025年3月期有報の経営方針より)。これらは中計が掲げる「非連続な成長戦略」「インオーガニック戦略」の具体形であり、運用残高や顧客基盤を一気に拡大する設計図です。中期経営計画ではオルタナティブ商品の拡充、国内外の投資顧問領域への基盤構築、不動産アセットマネジメント事業の運用力・物件ソーシング力の強化を掲げています。
運用ビジネス志向での行動 → 本記事のセグメント別業績(AM部門)で利益率約75%の構造を確認した上で、野村ホールディングスの有報分析と運用残高拡大の手段(自社運用 vs 提携)を比較しましょう。
賭け3: DX・IT投資381億円の中身
当期の設備投資額は約381億円で、その全額がIT投資として計上されています(2025年3月期有報の設備投資概要より)。前期(354億円)からさらに増額しており、主な投資先は次の通りです。
- 総資産データベースの整備および営業員向けコンサルティングツールの拡充
- 顧客との面談時の会話内容を自動記録・要約するシステムの導入
- ダイワのオンライントレード上で多様な商品・銘柄受付を可能にするオンライン販売プラットフォームの構築
- 2024年10月導入の「AIオペレーターサービス」(生成AIを活用し、音声でマーケット情報や事務手続きの問い合わせに会話形式で応対)
- 広域自然災害に備えた遠隔地データセンターの整備(オペレーショナル・レジリエンスの確保)
有報では「生成AIやWeb3.0などを活用したデジタル・イノベーションの追究」を設備投資の目的として明記しており(2025年3月期有報)、テクノロジーを経営戦略の中核として位置付けていることがわかります。
金融×テクノロジー志向での行動 → SBIホールディングスの有報分析で取り上げる「ゼロ革命」(手数料無料化)のようなネット証券のデジタル攻勢への対抗軸として、生成AI・Web3.0領域に踏み込んでいる本記事の賭け3の項目を逆質問の素材にしましょう。
ただし、これらの賭けには裏側のリスクもあります。次章では大和証券自身が有報で開示しているリスクを見ていきます。
大和証券が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
事業等のリスクとは、企業自身が「経営上の脅威」として認識している項目を有報に開示するセクションです。採用サイトや会社説明会では語られにくい内容が記載されています。大和証券グループが開示しているリスクのうち、就活生のキャリア選択に直結する3つを抽出します。

リスク1: 業績の変動性リスク|ストック収益化の挑戦
有報の事業等のリスクの中で「業績の変動性に伴うリスク」が独立項目として明記されています。「有価証券関連業務をはじめ、その他の主要業務であるアセットマネジメント業務、投資業務は、お客様との取引から得られる手数料、トレーディング損益、営業投資有価証券関連損益等が大幅に変動するという特性を持っております」と会社自身が認めています(2025年3月期有報)。実際、連結経常利益は2023年3月期869億円から2025年3月期2,247億円へ2.6倍に振れており、市況次第で短期的な業績がぶれる構造はそのまま残っています。
中期経営計画で「ベース利益1,500億円」を独立目標として掲げ、ウェルスマネジメント部門の預り資産拡大やアセットマネジメント部門の契約資産残高拡大、グローバル・マーケッツ&IB部門の収益構造多様化を進めているのは、まさにこの業績変動性を経営陣自身が課題として認識しているからです。マーケッツ・トレーディング系の部門への就職を検討する際は、市況次第で賞与や人員配置が変動しうる点を理解しておくことが重要です。
リスク2: サイバー攻撃・情報セキュリティ・マネロン対応
有報のトップリスクには「サイバー攻撃」「情報セキュリティリスク」「マネロン・テロ資金供与への対応不備」「役職員による不適切な行為(インサイダー取引等)」が並んでいます(2025年3月期有報)。IT投資381億円のうち、遠隔地データセンター(オペレーショナル・レジリエンスの確保)に投じている部分は、これらのリスクへの直接的な備えです。
証券業界全体でデジタル化競争が激化しており、ネット証券各社の手数料無料化のような破壊的な変化への対応は継続的な課題です。テクノロジー人材の需要は高まる一方、レガシーシステムとの共存という実務的な課題もあります。
リスク3: 地政学リスクと日本市場への高依存
トップリスクに「国際紛争・対立の深刻化(台湾海峡軍事衝突・ウクライナ情勢のエスカレーション)」「トランプ2.0(米国新政権の通商政策・関税強化)」「中国経済危機」「日本の財政不安による国債格下げや円資産の暴落」「日本のスタグフレーションリスク」を列挙しています(2025年3月期有報)。
純営業収益の86.5%が日本国内で発生しており(2025年3月期有報)、海外拠点(欧州7.5%/アジア5.0%/米国1.0%)の収益はまだ補完的な位置づけです。日本の金融市場や経済環境の変動が、キャリアに直接影響する可能性が高い構造であることは把握しておくべきです。
リスクの活用 → リスクを「ネガティブ情報」として避けるのではなく、面接で「なぜそのリスクを受け入れた上で志望するのか」を語れる材料に変えてください。有報のリスク欄の読み方ガイドで、リスク開示の構造を理解しておくと、面接での返答に厚みが出ます。
ここまでの内容を踏まえて、大和証券があなたのキャリアにマッチするかを次章で確認します。
あなたのキャリアとマッチするか
キャリアマッチとは、自分の志向と企業の方向性が合っているかどうかの判断です。大和証券グループの投資方針と事業構造から、以下のような適性が見えてきます。
| あなたの志向 | 該当する大和の特徴 | 詳しく見る |
|---|---|---|
| 富裕層コンサルティング志向 | WM部門への構造転換・受入手数料1,668億円 | → 本記事の賭け1 |
| 運用ビジネス志向 | AM部門利益率約75%・あおぞら/かんぽ提携 | → 本記事の賭け2 |
| 金融×テクノロジー志向 | IT投資381億円・生成AIオペレーター | → 本記事の賭け3 |
| 安定収益重視・グローバル志向 | 業績変動性リスク・国内86.5%依存 | → 本記事のリスク1・3 |
合いそうな人
- 顧客の資産全体を設計するコンサルティング型営業に興味がある人
- 投信・REIT・オルタナティブなど運用ビジネスに携わりたい人
- 金融市場のダイナミズムに魅力を感じる人
- 金融×生成AI/Web3.0領域でキャリアを築きたい人
合わないかもしれない人
- 業績の安定性を最重視する人(有報自身が業績変動性をリスクとして明記)
- グローバルキャリアを最優先する人(純営業収益の86.5%が国内)
- ものづくりや技術開発そのものに関わりたい人
- ゆっくり確実に進める社風を好む人(中計2年目で進捗93.6%のスピード感)
従業員データ(2025年3月期有報)
- 連結従業員数: 14,783人
- 持株会社単体: 616人
- 平均年齢: 40.9歳
- 平均勤続年数: 13.7年
- 平均給与: 約1,626万円(16,264,750円)
平均年収1,626万円・勤続13.7年は持株会社616人の数字。この数値は持株会社単体616人のデータであり、事業子会社である大和証券株式会社や大和アセットマネジメント等の従業員水準とは異なります。勤続13.7年という長さは証券業界としては安定的に映りますが、持株会社で長期に残っている管理人材を多く含む数値である点も含めて、入社後に自分が配属される子会社の実態と切り分けて見る必要があります。「年収が高い証券」という入口で志望すると、当期+28.7%・前々期からは経常利益869億円→2,247億円という業績振幅(変動性リスク)に向き合う覚悟と、期待のギャップが大きくなります。
今から学ぶべき分野
大和証券グループの投資方向性から逆算すると、以下の知識が就活・入社後に役立つ可能性があります。
| 投資方針 | 今から学ぶべきこと | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| WM部門の構造転換 | ファイナンシャルプランニング(FP)・資産運用の基礎 | FP3級テキストを読む・新NISA関連の制度概要を整理 |
| AM部門の運用拡充 | オルタナティブ投資(PE/不動産/インフラ/再エネ)の基礎 | 投信協会・不動産証券化協会の入門資料を読む |
| 生成AI・Web3.0投資 | 生成AIとWeb3.0の基礎 | 生成AIの実務活用事例・ステーブルコインの規制動向を新聞で追う |
| あおぞら/かんぽ提携 | 銀行・保険の業務範囲と規制の基礎 | 金融庁の業態別規制の概観をガイドで把握 |
同じ証券業界の野村ホールディングスの有報分析と比較すると、大和証券は「ベース利益1,500億円」という独自の安定収益指標を中計で明確化している点と、あおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携で運用基盤を非連続的に拡大している点が特徴的です。規模で野村が上回る一方、安定収益とインオーガニック成長の組み合わせという戦略の違いが有報から読み取れます。
最後に、ここまでの分析を面接で実際に語れる形に落とし込みます。
面接で使える有報ポイント
ここまでの分析を面接の場で実際に使えるフレーズに変換します。「有報を読みました」と伝えるだけでも企業研究の深さは伝わります。さらに、具体的な数値とストーリーを結びつけることで面接官の印象に残るレベルになります。
大和証券の面接── 「なぜ野村ではなく大和か」と聞かれたとき
セグメント情報を拝見し、2024年度から4部門→3部門へ再編されたことに注目しました。アセットマネジメント部門のセグメント利益が774億円、利益率約75%と突出している一方、ウェルスマネジメント部門の利益も662億円から806億円へ+21.8%伸びており、組織再編が業績に直結していることが読み取れます。野村ホールディングスとは規模で差がありますが、市況に左右されにくい「ベース利益1,500億円」という独自指標と組織再編の連動性に魅力を感じ、大和さんを志望しています。
大和証券の面接── 「あおぞら/かんぽ提携をどう評価するか」と聞かれたとき
2025年3月期にあおぞら銀行を持分法適用関連会社にされたこと、かんぽ生命保険と資産運用分野での協業に踏み切られたことに注目しました。中計で掲げる「インオーガニック戦略」「非連続な成長」の具体形であり、利益率約75%のアセットマネジメント部門の運用残高基盤を一気に拡大する経営の意志を感じます。一方で純営業収益の86.5%が国内であることもあり、これらの提携は国内資金フローを取り切るための布石だと理解しています。アセットマネジメント部門で運用残高拡大に貢献したいと考えています。
面接で伝えるべき3つの軸
- 志望分野と大和の3部門を1対1で結びつける。WM・AM・GMIBのどの軸を選んだかを、有報のセグメント利益・利益率で裏付けて語る
- 中計の「ベース利益1,500億円」を自分の言葉で再定義する。WM+証券AM+不動産AMという定義を理解した上で、なぜこの指標を経営陣が掲げたかをリスク欄(業績変動性)とセットで説明する
- 業績変動性・国内86.5%依存にも触れる。強みだけでなく弱みも同時に語ることで、PR情報に依存しない判断ができる姿勢を示す
逆質問の例
- 「2024年度からの3部門体制再編によって、ウェルスマネジメント部門の若手社員に求められるスキルセットはどう変化していますか」
- 「あおぞら銀行・かんぽ生命との資本業務提携によって、アセットマネジメント部門の業務やキャリアパスはどのように変わっていきますか」
- 「IT投資381億円のうち、生成AIやWeb3.0関連の領域に若手のうちから関わる機会はありますか」
避けるべきこと: 「年収が高い」「待遇がよい」など、有報の給与データだけに言及する志望理由です。有報の本質は企業の戦略とリスクの開示であり、就活生が読むべきはその会社が何に賭けているかです。
面接での有報活用法の詳細は有報を面接で活かす方法、有報から企業の経営戦略を読む方法もあわせてご覧ください。
まとめ
この記事のポイント3選
- 大和証券は2024年度に4部門→3部門へ再編。WM(806億円・+21.8%)・AM(774億円・利益率約75%)・GMIB(427億円)で性格が異なり、組織再編が業績に直結している
- 中計『Passion for the Best 2026』の経常利益2,400億円・ROE10%目標に対し当期は2,247億円(93.6%)・9.8%とほぼ到達済み。あおぞら銀行・かんぽ生命提携でAM運用残高を非連続拡大に行く設計
- 強みの裏側には3つのリスク──業績の変動性・サイバー/マネロン対応・国内86.5%依存と地政学。強みとリスクをセットで理解して志望する姿勢が面接で評価される
次のアクション →
- 同業他社と比較したい方は → 野村ホールディングスの有報分析
- ネット証券との戦略の違いを見たい方は → SBIホールディングスの有報分析
- 有報を面接で使える武器に変えたい方は → 有報から企業の経営戦略を読む方法
本記事は有価証券報告書(2025年03月期)に基づく企業分析であり、投資判断を目的としたものではありません。就活におけるキャリアマッチの判断材料としてご活用ください。