りそなの有報分析 要点: りそなホールディングスは純利益2,133億円・ROE9.3%を達成した国内リテール特化の銀行グループ。銀行・信託・不動産を一体提供するモデルでフィー収益2,279億円(4期連続過去最高)を稼ぐ。メガバンクとは戦略の方向性が根本的に異なる。(2025年3月期有報に基づく)
この記事のデータはりそなホールディングスの有価証券報告書(2025年03月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
りそなホールディングスは「メガバンクの下位互換」と見られがちですが、有報を読むと全く異なる実態が浮かび上がります。 純利益2,133億円・ROE9.3%(中計目標8%を超過達成)を実現し、フィー収益2,279億円は4期連続で過去最高を更新中です。 メガバンクが海外展開や投資銀行業務に投資する中、りそなは国内リテールに特化し、銀行・信託・不動産を一体で提供する独自のビジネスモデルで高収益を実現しています。
| この会社が賭けているもの | 数値的根拠(2025年3月期有報) | 就活での注目点 |
|---|---|---|
| リテール×信託・不動産一体モデル | フィー収益2,279億円(4期連続過去最高)、信託関連業務442億円(前期比+57億円) | 銀行員でありながら信託・不動産の専門性を若手から身につけられる |
| 金利上昇の追い風を最大活用 | 国内預貸金利益が前期比177億円増、貸出金利回り前期比+8bps | 金利正常化の中で預金獲得・貸出営業の両面で活躍の場が拡大 |
| 関西みらいFG統合 | 総資産77兆3,708億円、預金63兆4,184億円、首都圏×関西圏の二大拠点 | 首都圏・関西圏の両方でキャリア構築が可能 |
りそなのビジネスの実態|何で稼いでいるのか
財務ハイライト: 5年で純利益71.5%成長
りそなの有報から5年間の財務推移を見ると、着実に収益力を高めている実態が確認できます。なお、銀行業では一般事業会社の「売上高」にあたる指標として「経常収益」を使用します。
| 指標 | 4期前 | 3期前 | 2期前 | 前期 | 当期(2025/3) | 成長率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 8,236億円 | 8,447億円 | 8,679億円 | 9,416億円 | 1兆1,174億円 | 35.7% |
| 親会社株主純利益 | 1,244億円 | 1,099億円 | 1,604億円 | 1,589億円 | 2,133億円 | 71.5% |
| ROE | 5.66% | 4.62% | 6.47% | 6.02% | 7.77% | ─ |
| 総資産 | 73.7兆円 | 78.2兆円 | 74.8兆円 | 76.2兆円 | 77.4兆円 | 5.0% |
| EPS | 54.19円 | 45.42円 | 67.49円 | 67.78円 | 92.40円 | 70.5% |
出典: りそなホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期
当期の親会社株主純利益2,133億円は通期目標1,750億円に対し121.8%の達成率です。株主資本ROEは9.3%(中計目標8%を超過)に到達しています。5年間で経常収益は35.7%、純利益は71.5%成長しており、収益の「質」が改善していることがわかります。
セグメント別の収益構造
りそなのセグメントは「個人部門」「法人部門」「市場部門」の3つです。銀行業の収益指標として、業務粗利益(資金利益+手数料等)と、与信費用控除後業務純益(銀行本来の利益)を使用しています。
| セグメント | 業務粗利益 | 与信費用控除後業務純益 | 主な事業内容 |
|---|---|---|---|
| 個人部門 | 3,561億円 | 1,284億円 | 個人ローン・資産運用・資産承継コンサルティング |
| 法人部門 | 4,579億円 | 2,313億円 | 企業向貸出・信託活用の資産運用・不動産・企業年金・事業承継 |
| 市場部門 | △1,147億円 | △1,193億円 | 資金・為替・債券・デリバティブの調達と運用 |
| 合計 | 6,921億円 | ─ | ─ |
出典: りそなホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期
ここで注目すべき点が2つあります。
1つ目は、法人部門の与信費用控除後業務純益が2,313億円と全セグメント最大で、前期比889億円の大幅増を記録していること。法人向け貸出だけでなく、信託活用の資産運用や不動産業務、事業承継サポートなど、フィービジネスが利益を押し上げています。
2つ目は、市場部門の損失1,147億円です。これは仕切りレートの変更による収益移転の影響が△1,231億円含まれているためで、個人・法人部門の金利収益に振り替えられている部分があります。つまり、個人・法人部門の利益を支える機能を市場部門が担っている構造です。
フィー収益2,279億円の中身
りそなの収益構造で最も注目すべきは、信託報酬と役務取引等利益を合わせた「フィー収益」が2,279億円で、4期連続過去最高を更新している点です。
フィー収益とは、金利に依存しない手数料収入のこと。りそなは信託併営銀行として、不動産仲介・企業年金・資産承継・事業承継など、通常の銀行では扱えない領域のサービスを提供しています。具体的には、信託関連業務が442億円(前期比57億円増)、預金・貸出業務が799億円(同63億円増)を記録しています。
このフィービジネスこそが、りそなをメガバンクと異なるポジションに押し上げている原動力です。金融業界の有報比較を見ると、りそなのリテール特化戦略がより鮮明に理解できます。
りそなは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性
| 投資分野 | 内容 | 戦略的意義 |
|---|---|---|
| 信託・不動産一体モデル | 承継関連業務・法人ソリューション・不動産仲介の強化 | メガバンクとの差別化、フィー収益の継続的拡大 |
| 国内リテール深耕 | 預貸金利益の拡大、貸出金残高の増加(前期比1.8兆円増) | 金利上昇局面での収益最大化 |
| デジタル投資 | システム関連を含む設備投資523億円 | リアル×デジタル一体化、コンサルティング強化 |
| グループ統合 | 関西みらいFG吸収合併(2024年4月) | 首都圏×関西圏の二大営業基盤の効率化 |
出典: りそなホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期
賭け1: 信託・不動産一体モデル|メガバンクにない武器
りそなの最大の特徴は、銀行・信託・不動産を一体で提供できるビジネスモデルです。りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行はいずれも信託併営銀行であり、通常の銀行業務に加えて、信託や不動産の業務も扱えます。
有報で確認できる成果として、フィー収益2,279億円のうち信託関連業務が442億円。不動産等の承継関連業務、法人ソリューション業務等を中心に幅広い領域で収益が伸長しています。
ここで重要なのは、三菱UFJや三井住友FGのようなメガバンクは、銀行と信託銀行が別法人であるのに対し、りそなは同一法人内で銀行・信託・不動産サービスを提供できることです。お客さまから見ると「一人の担当者が融資も信託も不動産もワンストップで対応する」ことが可能であり、これがフィー収益の持続的成長を支えています。
賭け2: 金利上昇の恩恵|国内リテール特化の構造的優位性
日銀は2024年度に追加利上げを実施し、政策金利は0.5%と17年ぶりの水準に引き上げられました。りそなの有報には、この金利環境の変化がどれだけ業績に貢献したかが明確に記載されています。
国内預貸金利益は前期比177億円増加の3,499億円。貸出金平残は前期比4.80%増加し、貸出金利回りは8bps(0.08ポイント)上昇しました。預金についても、預金利回りが0.04%から0.10%に上昇していますが、貸出金利回りの上昇幅がそれを上回っており、利ざやが拡大しています。
メガバンクが海外収益でリスク分散する一方、りそなは経常収益の90%以上が国内です。つまり国内金利上昇の恩恵を最も直接的に受ける構造にあるということです。金利正常化が継続する限り、この構造的優位性は続きます。
賭け3: 関西みらいFG統合|リテール基盤の拡大
2024年4月に、りそなホールディングスを存続会社、関西みらいフィナンシャルグループを消滅会社とする吸収合併を実施しました。これにより報告セグメントが再編され、りそな銀行・埼玉りそな銀行(首都圏)と関西みらい銀行・みなと銀行(関西圏)が一体的に管理される体制になりました。
設備投資等の総投資額は523億円で、システム関連を含むデジタル投資にも注力しています。有報には「リアルチャネルとデジタルチャネルの一体化、データ利活用の高度化を通じたお客さまへのコンサルティングの強化」と記載されており、店舗網のデジタル化が進行中です。
りそなが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
| リスク | 内容 | 就活への影響 |
|---|---|---|
| 国内リテール集中 | 経常収益の90%以上が国内。海外事業はほぼゼロ | 海外志向の人には合わない |
| 金利変動リスク | 金利低下時は預貸金利益が直撃を受ける構造 | 金利環境への理解が求められる |
| 不動産与信集中 | 不動産業向け貸出が全体の約22%(約9.9兆円) | リスク管理の知識が活きる |
| 競争激化 | デジタル化やフィンテック参入による預金獲得競争 | DX人材の需要増 |
出典: りそなホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期
リスク1: 国内リテール特化の裏側
りそなの有報には「本邦の外部顧客に対する経常収益が連結損益計算書の経常収益の90%を超える」と明記されています。海外連結子会社の規模は限定的で、海外事業による収益分散がほとんどありません。
国内の人口減少や地方経済の縮小は長期的なリスクです。有報のトップリスクにも「社会構造・産業構造の変容に伴う競争力低下等」が掲げられており、「預金獲得競争激化による預金調達力の低下」「必要な人財の不足や生産性向上の遅れ」が具体的なリスクシナリオとして記載されています。
ただし、これは「海外展開していないリスク」であると同時に、「意図的にリテールに集中している戦略的選択」でもあります。りそなは三菱UFJのように海外M&Aに巨額投資するのではなく、国内リテールの深耕にリソースを集中する道を選んでいます。
リスク2: 金利は追い風だが、逆回転のリスクもある
金利上昇は現在のりそなにとって明確な追い風ですが、有報では「保有有価証券の評価損益悪化」をトップリスクに挙げています。当期は金利上昇に備えたポートフォリオ入替を実施し、債券関係損益は386億円の損失を計上しました。
金利環境は日銀の政策判断次第であり、将来の金利低下局面では預貸金利益が縮小するリスクがあります。有報では米国のFRBが利下げを開始し、世界経済の不透明感が高まっていることにも触れています。
リスク3: 不動産向け貸出の集中度
有報の業種別貸出状況を見ると、不動産業向け貸出は約9兆8,600億円で全体の22.22%を占めています(2025年3月期)。うちアパート・マンションローンが約2兆9,336億円(6.61%)、不動産賃貸業向けが約5兆3,578億円(12.07%)です。住宅ローン(自己居住用)も約14兆1,454億円(31.87%)あり、不動産市況への依存度が高い構造です。
不動産価格が下落した場合、これらの貸出から与信費用が増加するリスクがあります。有報には「特定の業種等に与信が集中することにより、景気や経済の構造的な変動等が生じた際、それら特定分野の業績や資産価格が影響を受け、当グループの不良債権や与信費用が増加する可能性があります」と記載されています。
あなたのキャリアとマッチするか
| 合う人 | 合わない人 |
|---|---|
| 国内リテールで個人・中小企業と深く関わりたい人 | 海外で働きたい・グローバル金融に携わりたい人 |
| 信託・不動産・承継の専門性を身につけたい人 | 投資銀行業務やM&Aアドバイザリーに関わりたい人 |
| 首都圏・関西圏で地域に根ざした金融キャリアを築きたい人 | メガバンク規模の大型海外案件に携わりたい人 |
| 金利上昇局面の預貸ビジネスの最前線に立ちたい人 | 海外展開の成長余地が大きい環境を求める人 |
従業員データ
| 項目 | データ(2025年3月期) | 読み方 |
|---|---|---|
| 従業員数(連結) | 20,174名 | メガバンク比で小規模だがリテール特化 |
| 従業員数(単体) | 1,974名 | 持株会社のため少数 |
| 平均年齢 | 44.9歳 | 金融業として標準的 |
| 平均勤続年数 | 15.0年 | 安定した就業環境 |
| 平均年間給与 | 約889万円(HD) | 持株会社のため参考値 |
出典: りそなホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期
持株会社(HD)の従業員は1,974名と少数です。実際に多くの新卒が配属されるりそな銀行や埼玉りそな銀行の待遇は、各銀行の有報で確認する必要があります。連結従業員20,174名はメガバンク(三菱UFJ約15.6万名、三井住友FG約12万名)と比べると小規模ですが、その分、リテール領域に人材を集中投入している体制です。
面接で使える有報ポイント
NG例とOK例
NG: 「銀行業界に興味があり、安定した企業で働きたいです」
OK: 「有報でフィー収益2,279億円が4期連続過去最高を更新していることを確認し、メガバンクとは異なる信託・不動産一体のリテールモデルに共感しています。銀行員でありながら信託・不動産の専門性を身につけられる点に魅力を感じています」
逆質問テンプレート
「有報でフィー収益が4期連続過去最高と確認しましたが、信託・不動産一体モデルの中で新卒が早期に関われる領域はどこでしょうか?」
「金利上昇局面で預貸金利益が大きく伸びていますが、将来の金利環境が変化した場合に備えた収益構造の多角化についてどのようにお考えですか?」
「関西みらいFGとの統合後、首都圏と関西圏のシナジーとして具体的に進んでいる取り組みがあれば教えてください。」
「不動産業向け貸出が全体の約22%と有報で確認しましたが、与信ポートフォリオの分散に向けた方針をお聞かせください。」
メガバンクとの面接でありがちな「グローバル」「投資銀行」ではなく、「信託一体」「フィー収益」「リテール特化」というりそな固有のキーワードで語ることが差別化になります。メガバンク比較も参考にすると、りそなを選ぶ理由がより明確になります。
まとめ
| 視点 | 発見 |
|---|---|
| 何で稼いでいるか | フィー収益2,279億円(4期連続過去最高)。法人部門の与信費用控除後業務純益2,313億円が最大 |
| 何に賭けているか | 信託・不動産一体モデル、金利上昇の最大活用、関西みらいFG統合 |
| PRでは見えないリスク | 国内リテール集中(海外ほぼゼロ)、金利逆回転、不動産与信集中22% |
| メガバンクとの違い | 海外ではなく国内深耕。信託一体モデルは他行にない独自の武器 |
「りそなはメガバンクの下位互換」という認識と、「ROE9.3%・フィー収益4期連続過去最高の独自戦略を持つリテール銀行グループ」と語れる就活生では、面接での説得力が全く異なります。
有報から読み取れるりそなの将来性は、メガバンクと同じ土俵で戦わず、国内リテール×信託・不動産一体という独自のポジションで高収益を実現する戦略にあります。公的資金完済からROE9.3%到達までの道のりは、りそなが「再建」ではなく「成長」のフェーズにいることを示しています。
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本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。