| 企業名 | セクション |
|---|---|
| 東京海上HD(8766) | 結論 | 収益構造 | 戦略 | 人的資本 | キャリアマッチ | リスク |
| SOMPOホールディングス(8630) | 同上の各セクションで比較 |
| MS&ADインシュアランスGHD(8725) | 同上の各セクションで比較 |
要点: 損保3社は東京海上が純利益1兆円超・ROE 20%超で突出し、MS&ADが6,917億円で追い、SOMPOは2,431億円ながら介護事業という独自の多角化を持つ。同じ「損保」でも収益構造と戦略の方向性には明確な差がある。
本記事の数値は各社2025年3月期の有価証券報告書に基づいています。東京海上HD・SOMPOHDはIFRS、MS&ADは日本基準です。HD(持株会社)の年収データは少人数の本社社員のみの数値であり、事業会社の水準とは異なります。
なぜ損保3社を有報で比較するのか
「損保業界」と聞くと似たような会社に見えるかもしれないが、有報を読み比べると3社の戦略的な違いが鮮明になる。東京海上は海外保険で圧倒的な規模を築き、SOMPOは介護事業を戦略の柱に据え、MS&ADは国内2社体制の統合で効率化を進める。
就活生にとって「損保に入る」のではなく「どの損保グループのどの事業に入るか」を考えるために、有報ベースの比較は不可欠だ。
結論
有報を比較した結論を先に示す。
| 指標 | 東京海上HD | SOMPO HD | MS&AD HD |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 8兆4,401億円 | 5兆4,538億円 | 6兆6,608億円 |
| 純利益 | 1兆553億円 | 2,431億円 | 6,917億円 |
| 総資産 | 31.24兆円 | 15.03兆円 | 26.24兆円 |
| ROE | 20.6% | 14.8% | 16.3% |
| 会計基準 | IFRS | IFRS | 日本基準 |
| 連結従業員数 | 51,436人 | 54,106人 | 38,247人 |
| HD平均年収 | 1,536万円 | 1,218万円 | 1,144万円 |
出典:各社 2025年3月期 有価証券報告書。HD年収は持株会社の少数社員のみの数値
東京海上の純利益1兆553億円は損保3社で突出している。ROEも20.6%と、金融業界全体で見てもトップクラスの水準だ。SOMPOの当期純利益は2,431億円で前期の5,297億円から大幅減となったが、これは一時的な要因が影響している。
収益構造の比較
5年間の純利益推移
| 期 | 東京海上HD | SOMPO HD | MS&AD HD |
|---|---|---|---|
| 4期前 | 1,618億円 | ─ | 1,444億円 |
| 3期前 | 4,205億円 | ─ | 2,628億円 |
| 2期前 | 3,746億円 | ─ | 2,110億円 |
| 前期 | 6,958億円 | 5,297億円 | 3,693億円 |
| 当期 | 1兆553億円 | 2,431億円 | 6,917億円 |
出典:各社 2025年3月期 有価証券報告書。SOMPOは前期・当期のみ開示。MS&ADは円単位を百万円に換算
東京海上は4年間で利益を6.5倍に伸ばした。海外保険事業の拡大と資産運用収益の増加が牽引している。MS&ADも当期6,917億円と前期から大幅に増加した。
一方、SOMPOは前期5,297億円から当期2,431億円へ半減以下となった。2期前にはROEが1.3%まで落ち込んだ年もあり、利益のボラティリティが他2社より高い傾向がある。
事業構造の違い
損保3社は共通して「国内損保」「海外保険」「国内生保」をセグメントに持つが、SOMPOだけが「介護事業」を報告セグメントとしている。
| セグメント | 東京海上 | SOMPO | MS&AD |
|---|---|---|---|
| 国内損保 | ○ | ○ | ○ |
| 海外保険 | ○ | ○ | ○ |
| 国内生保 | ○ | ○ | ○ |
| 介護 | ─ | ○ | ─ |
| その他 | ─ | デジタル・アセマネ等 | ─ |
SOMPOの介護事業は、少子高齢化による介護労働力の需給ギャップ拡大を見据えた独自の多角化だ。有報では「ご利用者様やそのご家族様の幸せだけでなく、寄り添う職員の働きがいと処遇を高め続けていけることが同じように大切」と記載されており、保険の枠を超えた社会課題解決型の事業を志向している。
成長戦略の比較
東京海上:グローバル保険グループとしての地位確立
東京海上はROE 20.6%という突出した数字を達成した。海外保険事業の拡大が最大のドライバーであり、M&Aを含めたグローバル展開で規模と収益力の両方を追求している。5年間で経常収益を5.46兆円から8.44兆円へ1.5倍に拡大した成長力は、3社の中で最も際立つ。
SOMPO:保険×介護×デジタルの融合
SOMPOは中期経営計画(2024〜2026年度)で修正連結ROE 13〜15%と修正EPS成長率年率+12%超を目標に掲げている。「レジリエンスのさらなる向上」と「つなぐ・つながる」をテーマに、国内損保の健全性向上、海外保険の地理的拡大、そしてAIの業務実装やデータ利活用への積極的な資本投下を進めている。
介護事業を持つことは、人口動態の変化に対する長期的なヘッジとして機能する。保険金の支払いだけでなく、介護サービスの提供を通じて顧客の生活全体を支えるビジネスモデルは、他2社にない独自の強みだ。
MS&AD:世界トップ水準の保険・金融グループへ
MS&ADは「持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険・金融グループを創造する」というビジョンを掲げている。三井住友海上とあいおいニッセイ同和の2大損保会社を傘下に持つ独自の体制で、国内損保市場での顧客基盤の厚さが特徴だ。当期のROE 16.3%は前期の9.8%から大きく改善した。
人的資本の比較
| 指標 | 東京海上HD | SOMPO HD | MS&AD HD |
|---|---|---|---|
| 連結従業員数 | 51,436人 | 54,106人 | 38,247人 |
| HD従業員数 | 1,232人 | 467人 | 453人 |
| HD平均年齢 | 41.7歳 | 43.8歳 | 47.9歳 |
| HD平均勤続年数 | 16.2年 | ─ | ─ |
| HD平均年収 | 1,536万円 | 1,218万円 | 1,144万円 |
出典:各社 2025年3月期 有価証券報告書 従業員の状況
重要な注意点: 上記のHD年収は持株会社本社の社員(経営企画・グループ管理等)のみの数値であり、実際の保険営業・アンダーライティング等に従事する事業会社社員の年収水準とは大きく異なる。就活で参考にする場合は、事業会社(東京海上日動、損害保険ジャパン、三井住友海上等)の個別データを確認すべきだ。
連結従業員数ではSOMPOが54,106人で最多。これは介護事業の現場スタッフを含むためだ。MS&ADは38,247人と最も少ない。
あなたのキャリアとマッチするか
| 志向 | 向いている企業 | 理由 |
|---|---|---|
| グローバル保険のプロ | 東京海上 | 海外保険事業が利益の成長を牽引。グローバル人材の活躍機会 |
| 社会課題解決×ビジネス | SOMPO | 保険+介護+デジタルで少子高齢化に正面から向き合う |
| 国内顧客基盤の強さ | MS&AD | 三井住友海上+あいおいニッセイの2社体制で国内市場に厚い基盤 |
| デジタル・AI活用 | SOMPO | AIの業務実装に積極的な資本投下。デジタル関連事業もセグメント化 |
| 高い資本効率の追求 | 東京海上 | ROE 20.6%達成。資本効率を最重視する経営姿勢 |
面接活用例
「東京海上HDの有報を読み、純利益が4年間で1,618億円から1兆553億円へ6.5倍に成長した点に注目しました。ROE 20.6%は金融業界でもトップクラスであり、海外保険事業の拡大が成長のエンジンとなっていることが有報から読み取れます。」
「SOMPOの有報で最も印象的だったのは、損保3社で唯一「介護事業」を報告セグメントに持っている点です。少子高齢化による介護労働力の需給ギャップという社会課題に対し、保険グループとして正面から取り組む姿勢は、他社にない独自の戦略だと感じました。」
「MS&ADの有報では、当期のROEが前期の9.8%から16.3%へ大幅に改善したことに注目しています。三井住友海上とあいおいニッセイの2社体制を活かした国内基盤の強さと、世界トップ水準の保険グループを目指すビジョンに共感しています。」
リスク要因の比較
| リスク要因 | 3社共通の課題 |
|---|---|
| 自然災害 | 気候変動による大規模災害の頻発化で保険金支払いが増加するリスク |
| 金融市場変動 | 保有有価証券の価値下落リスク。政策株式の売却が進む一方、運用収益への依存は継続 |
| 海外事業 | グローバル展開に伴う地政学リスク、為替リスク、現地規制リスク |
| コンプライアンス | 保険料調整問題を受けた業界全体の信頼回復が課題 |
| デジタル化 | InsurTech企業の台頭、AI活用の遅れによる競争力低下リスク |
| 人口動態 | 国内市場の縮小。少子高齢化による保険需要構造の変化 |
出典:各社 2025年3月期 有価証券報告書 事業等のリスク
損保業界全体として、自然災害リスクの増大が最大の課題だ。近年の気候変動による台風・豪雨等の激甚化は、保険金支払いの増加に直結する。各社ともリスク管理の高度化と再保険の活用で対応を進めている。
SOMPO固有のリスクとしては、介護事業における人材確保がある。介護労働力の需給ギャップが拡大する中、処遇改善と生産性向上の両立が求められている。
まとめ
損保3社は、東京海上がROE 20.6%・純利益1兆円超でグローバル保険グループとしての地位を確立し、MS&ADが国内2社体制の強みを活かして6,917億円の利益を達成し、SOMPOが介護事業という独自の多角化で差別化を図っている。
就活生にとっては、「損保」という共通の看板の裏にある事業構造と戦略の違いを理解することが、入社後のキャリアを左右する。有報が示す数字と戦略の方向性は、各社の説明会やOB訪問では得られない客観的な判断材料となる。
損保vs生保の業界構造については「損保 vs 生保を有報で比較」、金融業界全体の比較は「メガバンク3行を有報で比較」や「日本郵政グループの有報分析」も参照してほしい。
免責事項: 本記事は有価証券報告書の公開情報に基づく企業分析であり、投資勧誘を目的としたものではありません。就職活動における企業研究の参考資料としてご活用ください。東京海上HD・SOMPOHDはIFRS、MS&ADは日本基準であり、会計基準の違いにより一部指標の直接比較が困難な場合があります。HD年収は持株会社の少数社員のみの数値です。