大成建設の有報分析 要点: 大成建設は売上高2兆1,542億円・連結従業員16,382名のスーパーゼネコン。建築事業が売上の63.7%を占めるが利益率はわずか0.8%で、前期は561億円の損失を計上。一方、土木事業が利益率13.9%でグループ利益の70%を稼ぎ出し、営業利益は前期264億円から当期1,201億円へV字回復。R&D費195億円で自動運転ダンプ・CO2吸収コンクリート・木質建築技術を展開。平均年収約1,058万円(2025年3月期有報)。
この記事のデータは大成建設の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
この記事でわかること
大成建設(1801)の有価証券報告書(2025年3月期)を分析し、就活生が知るべき「この会社が賭けているもの」を明らかにします。
| この会社が賭けているもの | 有報の根拠 |
|---|---|
| 土木事業の高収益化 | 利益率13.9%(875億円)でグループ利益の70%を創出、自動運転ダンプ「T-iROBO Rigid Dump」等で施工効率追求 |
| 技術革新への195億円投資 | CO2吸収コンクリート「T-eConcrete」、ワイヤレス給電「T-iPower Floor」、木質建築「T-WOOD TAIKA」、デジタルツイン「T-TwinVerse」 |
| 開発事業の安定収益 | 利益率17.1%(234億円)、設備投資77億円が賃貸用ビル取得等、ゼネコンの技術力を活かした不動産開発 |
大成建設のビジネスの実態|何で稼いでいるのか
大成建設の有報を読んで最も驚くのは、売上と利益の構造的な乖離です。建築事業が売上の63.7%を占める「建築主体のゼネコン」に見えますが、利益を実際に稼いでいるのは土木事業と開発事業です。この売上構成と利益構成のギャップが、大成建設を理解する最大の鍵です(2025年3月期有報)。
5期業績推移
| 指標 | 4期前 | 3期前 | 2期前 | 前期 | 当期(2025年3月期) |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,801億円 | 1兆5,432億円 | 1兆6,427億円 | 1兆7,650億円 | 2兆1,542億円 |
| 純利益 | 925億円 | 714億円 | 471億円 | 402億円 | 1,238億円 |
| EPS | 442.66円 | 350.88円 | 241.24円 | 215.75円 | 682.78円 |
| 自己資本比率 | 44.9% | 44.4% | 41.1% | 36.0% | 35.7% |
| ROE | 11.6% | 8.4% | 5.6% | 4.6% | 13.8% |
| 営業CF | 674億円 | 805億円 | 301億円 | 406億円 | △138億円 |
出典: 2025年3月期有報「主要な経営指標等の推移」
5年間で売上は45.5%成長(1兆4,801億円から2兆1,542億円)しています。ただし純利益は特徴的な推移をたどっており、4期前の925億円から3期連続で減少し、前期は402億円まで落ち込みました。当期は1,238億円へ急回復し、EPSも215.75円から682.78円へ3倍以上に改善。ROEは4.6%から13.8%へ跳ね上がり、中計目標の8.5%を大幅に上回りました。一方、営業CFは当期△138億円とマイナスに転じており、V字回復の持続性を注視する必要があります。
セグメント別利益構造
| セグメント | 外部売上 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 土木事業 | 6,306億円 | 875億円 | 13.9% |
| 建築事業 | 1兆3,725億円 | 113億円 | 0.8% |
| 開発事業 | 1,375億円 | 234億円 | 17.1% |
| その他 | 134億円 | 23億円 | 17.3% |
出典: 2025年3月期有報「セグメント情報」
ここが大成建設の最大の特徴です。建築事業は売上1兆3,725億円(構成比63.7%)と圧倒的な規模を持ちますが、利益率はわずか0.8%(113億円)。前期は561億円の損失を計上していました。一方、土木事業は売上6,306億円(構成比29.3%)で利益875億円(利益率13.9%)を稼ぎ出し、セグメント利益合計1,247億円の70.2%を占めます。開発事業も売上1,375億円(構成比6.4%)で利益234億円(利益率17.1%)と高収益です。
つまり、大成建設の収益エンジンは建築ではなく土木と開発です。鹿島建設が海外売上38.3%でグローバル展開を進め、大林組が不動産開発で高収益を追求し、清水建設が投資開発事業(利益率31.8%)で収益を下支えするのに対し、大成建設は土木事業の圧倒的な利益創出力が際立っています。スーパーゼネコン各社のセグメント別利益構造の読み方を押さえておくと、この違いがより明確になります。
大成建設は何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性
大成建設は中期経営計画(2024-2026)で3か年投資3,500億円(成長投資1,700億円・事業投資1,200億円・基盤維持投資600億円)を計画し、環境・エネルギー関連投資750億円も別枠で設定しています。設備投資の読み方を踏まえて、設備投資329億円とR&D費195億円の中身を読み解きます(2025年3月期有報)。
賭け1: 土木事業の高収益化|利益率13.9%を支える技術力
土木事業はグループ利益の70%を稼ぐ収益の柱です。中計では国土強靭化・カーボンニュートラル・インフラリニューアルを事業領域の拡大先に位置付けています(2025年3月期有報「経営方針」)。
この高収益を支えるのが自動化施工技術です。自動運転リジッドダンプ「T-iROBO Rigid Dump」と施工管理支援システム「T-iDigital Field」の連携で、オペレーター2名による自動運転と遠隔操縦を実現しています。さらに、SLAM技術を活用した「T-iDraw Map」をトンネル建設現場で検証し、時速20kmでの自動運転を実証。道路床版取替技術「Head-barジョイント」を橋軸直角方向にも適用可能にし、トンネル掘削出来形3次元計測システム「T-ファストスキャン」で計測時間を最大87%削減しました(2025年3月期有報「研究開発活動」)。
設備投資329億円のうち251億円が土木・建築事業の研究開発設備の新設・更新と工事用機械の投資に充てられています。
賭け2: 技術革新への195億円|環境・デジタル・木質建築
R&D費195億円の投資先は、建設業の枠を超えた多角的なテーマに広がっています(2025年3月期有報「研究開発活動」)。
環境技術では、CO2吸収コンクリート「T-eConcrete」の普及促進、再エネ需給一体型管理システム「T-Green BEMS RE Optimizer」の実証開始、ZEBリノベーション診断ツール「ZEBリノベ@診断」の運用開始と、カーボンニュートラルに直結する技術群を展開しています。
デジタル技術では、屋内外ワイヤレス給電技術「T-iPower Floor」の実証を開始し、生成AIを活用した「建築施工技術探索システム」と360度カメラ×AI画像認識による「工事進捗確認システム」を本格運用。デジタルツインバースシステム「T-TwinVerse」も開発しました。
木質建築技術にも注力しており、1時間耐火木質柱・梁「T-WOOD TAIKA」の大臣認定を取得し、木質網代構法「T-WOOD Goo-nyaize」を開発。音対策技術「TSounds-Wind」「TSounds-Lab」も実用化しています。中計では環境・エネルギー関連投資750億円を3か年で計画しており、技術投資の規模拡大が続く見通しです。
賭け3: 開発事業の安定収益|利益率17.1%の不動産開発
開発事業は売上1,375億円(構成比6.4%)ながら、セグメント利益234億円(利益率17.1%)と高い収益性を安定的に維持しています。前期も売上1,297億円で利益233億円(利益率18.0%)を確保しました(2025年3月期有報)。
設備投資329億円のうち77億円が開発事業の賃貸用ビル取得等に投下されています。中計では「培ってきた開発ノウハウとゼネコンとしての技術力を武器に、付加価値の高いまちづくりに貢献」を掲げ、グループシナジーの最大化を目指しています。建設と不動産開発を一体化し、ストック型の安定収益を拡大する方向性が読み取れます。
大成建設が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
有報の「事業等のリスク」には、就活サイトや企業PRでは出てこない構造的課題が記載されています(2025年3月期有報)。
| リスク | 有報の記載要旨 | 就活生への影響 |
|---|---|---|
| 建築事業の収益性 | 資材価格の高騰を請負代金に反映できない場合、工事収支が悪化。前期は561億円の損失 | 売上の63.7%を占める建築の利益率0.8%はコスト変動に極めて脆弱 |
| リニア排除措置命令 | 2020年12月に排除措置命令、2025年5月控訴棄却で最高裁へ上告中。独禁法違反による営業活動制限リスク | 指名停止リスクが大型案件の受注に影響する可能性。コンプライアンス体制強化が経営課題 |
| 施工不良・品質リスク | 施工不良時の手直し工事に伴う追加コスト・損害賠償、工程遅延(労務不足・資機材調達遅延等) | 建築利益率0.8%の薄利構造では品質問題が直接赤字リスクに直結 |
出典: 2025年3月期有報「事業等のリスク」
特にリニア中央新幹線に係る排除措置命令は、他のスーパーゼネコンにはない大成建設固有のリスクです。2020年12月に排除措置命令を受け、取消訴訟を提起しましたが2025年5月に東京高裁で控訴棄却となり、最高裁判所に上告中です。独占禁止法違反の経緯は、コンプライアンスに関する面接質問に備える上でも把握しておくべき情報です。
あなたのキャリアとマッチするか
従業員データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 連結従業員数 | 16,382名 |
| 単体従業員数 | 8,994名 |
| 平均年齢 | 42.4歳 |
| 平均勤続年数 | 17.2年 |
| 平均年間給与 | 約1,058万円 |
出典: 2025年3月期有報「従業員の状況」
平均年収約1,058万円はスーパーゼネコンの中でも高水準です。平均勤続年数17.2年は鹿島建設(16.4年)、清水建設(16年)を上回り、長期雇用が根付いた組織です。2024年7月に社長直轄の風土改革推進部を設置し、2025年4月から新人事制度を順次実施するなど、組織変革の過渡期にあります。目指す姿として「人生を尊重する企業風土」を掲げています。
| マッチする人 | 理由 |
|---|---|
| インフラ更新・国土強靭化の大規模土木に携わりたい人 | 土木事業が利益率13.9%でグループ利益の70%を占める主力事業 |
| 自動化施工・環境技術に関わりたい技術系志望者 | R&D費195億円、自動運転ダンプ・CO2吸収コンクリート・木質建築等の実用化が進行 |
| 建設×不動産開発の複合キャリアに関心がある人 | 開発事業の利益率17.1%、安定的に高収益を維持 |
| 企業風土改革の過渡期に新しい組織づくりへ参画したい人 | 2024年風土改革推進部設置、2025年新人事制度開始 |
| 安定した報酬と長期キャリアを重視する人 | 平均年収約1,058万円、平均勤続17.2年 |
| マッチしにくい人 | 理由 |
|---|---|
| 短期間で事業を立ち上げるスピード感を求める人 | 建設プロジェクトは数年単位、不動産開発も長期サイクル |
| 海外事業をメインキャリアにしたい人 | 鹿島建設(海外売上38.3%)と比べ、海外セグメントの個別開示がなく規模が見えにくい |
| 建築部門で安定的な高収益を期待する人 | 建築事業の利益率0.8%(前期は561億円の損失)、収益性改善が喫緊の課題 |
| 建設現場での業務を避けたい人 | 技術系は現場経験がキャリアの基本ルート |
大成建設の投資方向性から考える学習テーマ
有報が示す投資の方向性から、選考前に押さえておくべき学習テーマを整理しました。企業研究の進め方と併せて活用してください。
| 学習テーマ | 投資方向性との関連 | 学習の理由 |
|---|---|---|
| 国土強靭化・インフラリニューアル政策 | 土木事業が利益率13.9%でグループ利益の70%を創出、国土強靭化を成長領域に位置付け | 大成建設の収益の柱である土木事業の成長基盤を理解するため。政策動向が受注に直結する |
| 建設DX・自動化施工技術 | R&D費195億円で自動運転ダンプ「T-iROBO Rigid Dump」、デジタルツイン「T-TwinVerse」等を開発 | 技術系志望者は特に、自動化施工・生成AI活用など具体的な技術トレンドを把握することで面接の解像度が上がる |
| カーボンニュートラル・環境技術 | CO2吸収コンクリート「T-eConcrete」、環境・エネルギー関連投資750億円を3か年で計画 | 中計で別枠750億円を確保するほど経営の最重要テーマ。建設業の脱炭素動向を知ることが企業理解の鍵 |
| 不動産開発ビジネスモデル | 開発事業の利益率17.1%(234億円)、設備投資77億円が賃貸用ビル取得等 | ゼネコンが「造るだけ」から「造って持つ」へ移行する戦略を理解し、建設×開発の複合キャリアの可能性を知るため |
面接で使える有報ポイント
有報データを面接で活用する方法は面接で差がつく有報活用術も参考にしてください。
NG: 「大成建設はスーパーゼネコンで安定しているので志望しました」
OK: 「有報で建築事業が売上の63.7%を占めながら利益率0.8%であるのに対し、土木事業は利益率13.9%でグループ利益の70%を稼いでいることを確認しました。前期264億円から当期1,201億円への営業利益V字回復の構造を理解した上で、R&D費195億円が示す技術投資の方向性に自分のキャリアを重ねたいと考えています」
逆質問例
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「建築事業のセグメント利益率が0.8%と土木事業の13.9%に比べ大きく低い水準ですが、建築事業の収益性改善に向けた具体的な取り組みを教えてください」(2025年3月期有報「セグメント情報」)
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「R&D費195億円でCO2吸収コンクリート『T-eConcrete』やワイヤレス給電『T-iPower Floor』など多角的な研究を展開されていますが、今後最も事業化が期待される技術は何ですか」(2025年3月期有報「研究開発活動」)
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「2024年7月に風土改革推進部を設置され、2025年4月から新人事制度を開始されるとのことですが、若手社員にとってどのような変化が期待できますか」(2025年3月期有報「経営方針」)
まとめ
大成建設の有報が示すのは、「建築のスーパーゼネコン」というイメージとは大きく異なる収益構造です。売上の63.7%を占める建築事業の利益率がわずか0.8%である一方、土木事業が利益率13.9%でグループ利益の70%を稼ぎ出す。前期264億円から当期1,201億円への営業利益V字回復は、この土木事業の安定した高収益と、建築事業の損失解消によるものです。
R&D費195億円は自動運転ダンプ「T-iROBO Rigid Dump」からCO2吸収コンクリート「T-eConcrete」、ワイヤレス給電「T-iPower Floor」、木質建築「T-WOOD TAIKA」まで、建設業の未来を切り拓く技術群に投じられています。開発事業は利益率17.1%で安定的に高収益を維持し、ゼネコンの技術力を活かした不動産開発を拡大中です。
一方で、建築事業の収益性改善という構造的課題、リニア排除措置命令に係る訴訟の帰趨、施工不良・品質リスクは、有報だからこそ見える情報です。土木事業の高収益構造のどこに自分が貢献できるか、195億円のR&D投資のどの技術テーマに関わりたいか。その具体性が、大成建設を志望する上での差別化ポイントになります。
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本記事のデータは有価証券報告書(2025年3月期・EDINET)に基づいています。企業の将来の業績を保証するものではなく、投資判断を目的としたものではありません。最新情報は企業の公式IR資料をご確認ください。