JALを志望するあなたが本当に語るべきなのは、『国際線と国内線のバランスがよい安定企業』という表層ではありません。2025年3月期有報でJALはセグメント区分を『フルサービスキャリア(FSC)/LCC/マイル・金融コマース/その他』の4区分に改定し、非航空領域の高収益化を可視化しました。この記事を押さえれば、あなたは面接で『自分はこの4セグメントのどこで価値を出したいか』を有報の数字を根拠に語れるようになります。
JALは、日本の2大航空会社グループのうち収益性と非航空成長の両立を前面に押し出した会社です。FSC単独で世界と戦う時代から、LCCとマイル・金融コマースを含む複層ポートフォリオで稼ぐ時代へ移行しつつあります。
| この会社が賭けているもの(2025年3月期有報・新セグメント構造) |
|---|
| 1. FSC国際線成長×国内線収益性向上(A350-1000・B737-800の機材更新) |
| 2. LCC事業の急拡大(ジェットスター・ジャパン/ZIPAIR、利益前期比約4.3倍) |
| 3. マイル/金融・コマース事業の高収益化(利益率約29%で独立セグメント化) |
この記事のデータは日本航空株式会社の有価証券報告書(2025年3月期・IFRS基準)に基づいています。有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
2025年3月期の連結売上収益は1兆8,440億円と前期(1兆6,518億円)比で約+11.6%伸長し、税引前利益は1,589億円、当期純利益は1,070億円に達しました。自己資本比率は34.9%、ROEは11.4%で、コロナ禍を経た事業構造改革が数値の上でも機能していることが読み取れます。
JALのビジネスの実態|FY2025/3から変わったセグメント構造

JALのセグメント構成は、2025年3月期の有報から大きく改定されました。従来の『国際線旅客/国内線旅客/貨物/その他』という航空運送事業中心の区分ではなく、『フルサービスキャリア事業/LCC事業/マイル・金融コマース事業/その他』の4区分で開示される形に変更されています。これは『事業構造改革の推進と経営管理の体制整備を踏まえ、類似した経済的特徴に基づき事業セグメントを集約した』ものであると有報に明記されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 日本航空株式会社 |
| 証券コード | 9201(東証プライム) |
| EDINETコード | E04236 |
| 決算期 | 3月期 |
| 業種分類 | 空運業 |
| 会計基準 | IFRS |
| 主要グループ会社 | ジェットスター・ジャパン、ZIPAIR Tokyo、JAL貨物等 |
セグメント構成|何で稼ぎ、何が一番儲かっているか
| セグメント | 外部売上収益 | 構成比 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| フルサービスキャリア事業 | 1兆3,962億円 | 75.7% | 1,111億円 | 8.0% |
| LCC事業 | 919億円 | 5.0% | 116億円 | 12.6% |
| マイル/金融・コマース事業 | 1,317億円 | 7.1% | 381億円 | 28.9% |
| その他(旅行等) | 2,241億円 | 12.2% | 123億円 | 5.5% |
| 連結合計 | 1兆8,440億円 | 100.0% | 1,724億円 | 9.4% |
(2025年3月期有報・セグメント情報・財務・法人所得税前利益ベース。利益率は外部売上収益に対する比率。連結合計はセグメント間調整額△8億円を反映。)
このセグメント表を読み解くと、JALの戦略の主軸が見えてきます。売上規模で見ると主力はフルサービスキャリア事業(全体の約76%)ですが、利益率では『マイル/金融・コマース事業』が約29%と圧倒的に高く、LCC事業(12.6%)も航空主力のFSC(8.0%)を上回っています。つまり『航空会社の外側』に軸足を伸ばすほど収益性が高まる構造に変化してきているということです。セグメント情報の読み方自体は有報のセグメント情報の読み方で解説しています。
地域別外部収益|国際線の収益はどこから来ているか
2025年3月期の地域別外部収益は以下のとおりです。
| 地域 | 外部収益 | 構成比 |
|---|---|---|
| 日本 | 9,246億円 | 50.1% |
| アジア・オセアニア | 3,530億円 | 19.1% |
| 米州 | 4,250億円 | 23.0% |
| 欧州 | 1,413億円 | 7.7% |
(2025年3月期有報・セグメント情報・地域に関する情報より)
特徴的なのは『米州が欧州の約3倍』という構造です。北米路線がFSC国際線収益の柱になっており、ビジネスクラス・プレミアムエコノミーといった高単価需要の取り込みが利益貢献していることが地域別の数字から読み取れます。
業績推移|コロナ禍から事業構造改革へ
| 事業年度 | 連結売上収益 | 状況 |
|---|---|---|
| 2021年3月期 | 4,812億円 | コロナ禍最悪期(需要ほぼ消滅) |
| 2022年3月期 | 6,827億円 | 国内線先行回復 |
| 2023年3月期 | 1兆3,755億円 | 国際線本格回復 |
| 2024年3月期 | 1兆6,518億円 | コロナ前水準超え |
| 2025年3月期 | 1兆8,440億円 | FSC・LCC両輪が成長(YoY +11.6%) |
(有価証券報告書 各年度・連結売上収益より)
『1兆8,440億円』という数字の大きさだけでなく、この5年間が『需要消滅 → 国内線回復 → 国際線回復 → セグメント再編』というストーリーで進んできていることを押さえておくと、面接で語りやすくなります。
JALは何に賭けているのか|投資と経営計画の方向性

JALが何に力を入れているかを理解するには、設備投資の中身と2025年3月に策定された中期経営計画ローリングプラン2025を組み合わせて読む必要があります。設備投資の読み方そのものは設備投資・R&D費の読み方も参考にしてください。
賭け1: FSC国際線成長×国内線収益性向上
2025年3月期の設備投資は総額2,899億円。主な内容はエアバスA350-1000を5機・ボーイング737-800を2機の新規購入、そしてボーイング767-300型1機を貨物専用機に改修したことです。これは『国際線基幹機のA350-1000』と『国内線主力のB737-800』に同時投資しながら、貨物輸送にも備えるという構成になっています。
ローリングプラン2025では、事業構造改革の5重点項目の筆頭に『国際線の成長』と『国内線の収益性向上』が置かれています。短期的な課題として『2025年度 EBIT目標2,000億円の達成』、財務目標として『EBITマージン10%以上・ROIC9%・EPS290円レベル』が掲げられており、売上規模ではなく収益性を優先する姿勢が明確です。
就活ポイント: 航空会社の収益性を押し上げるためには、路線ごとの単価と需要を細かく管理する収入管理(レベニューマネジメント)が欠かせません。『高単価需要をどう取り込むか』『国内線の収益性をどう上げるか』という問いに自分の言葉で答えられる人は、FSC領域での価値を発揮しやすいと有報は示しています。
賭け2: LCC事業の急拡大
2025年3月期からLCC事業が独立セグメントとして開示され、その勢いが数字で可視化されました。
| 指標 | 前期(2024年3月期) | 当期(2025年3月期) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 外部売上収益 | 694億円 | 919億円 | +32.5% |
| 財務・法人所得税前利益 | 27億円 | 116億円 | 約4.3倍 |
(2025年3月期有報・セグメント情報より)
ローリングプラン2025ではLCC事業を『国際線の成長に加え、JALグループ全体でのシナジー創出』を担うセグメントと位置付けており、FSCと並ぶ成長ドライバーとして明記されています。
就活ポイント: 注意しておきたいのは、同じ『JALグループ』の中でもFSC(JAL本体)とLCC(ジェットスター・ジャパン・ZIPAIRなど)は採用ルート・給与体系・企業文化が異なる別会社だということです。志望時にはFSCとLCCの戦略的な役割分担を有報の数字で説明できるようにしつつ、『自分はどちらの体験価値を作りたいのか』を言語化しておくと面接で軸がぶれません。
賭け3: マイル/金融・コマース事業の高収益化
2025年3月期のマイル/金融・コマース事業の外部売上収益は1,317億円、セグメント利益は381億円で、利益率は約29%と全セグメント中最高です。ローリングプラン2025では『マイル・ライフ・インフラ』領域を事業構造改革の中核として位置付け、『強みである顧客基盤やヒューマンスキルを活かした成長により、事業構造改革を牽引する』と明記されています。
就活ポイント: この領域は『航空会社の移動の外側』で収益を作るビジネスです。マーケティング、データ分析、金融・決済、ECといった領域の知見が活きる部署で、航空会社=運航という先入観を持たない就活生には特にフィットしやすい領域になります。面接で『JALで航空以外の事業に関わりたい』と胸を張って言える根拠が、今年の有報にははっきり書かれています。
JALが自ら語るリスクと課題|有報の『事業等のリスク』より

投資家向けに有報が列挙しているリスクの中で、就活生が押さえておくべきものを整理します。
リスク1: 航空安全に関わるリスク
有報は冒頭で『ひとたび死亡事故を発生させてしまった場合、当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼および社会的評価が失墜するだけでなく、死傷した旅客等への補償等に対応しなければならないことから、当社グループの業績に極めて深刻な影響を与える可能性があります』と明示しています。社長を議長とする『グループ安全対策会議』をグループ全体に設置し、業界水準の損害賠償保険にも加入していることが記されています。
リスク2: 世界的な疫病の蔓延(パンデミック)
有報は『航空運送事業は、航空機材費や人件費等の固定費比率が高いことから、短期的な需要の急減は、当社グループを含む航空運送事業者の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります』と記載しています。JALはこのリスクへの対応として、LCC事業やマイル・ライフ・インフラ領域の強化による事業リスク分散、および旅客機に加えた貨物専用機の保有を挙げています。B767-300型の貨物改修は、このリスク対応とも整合します。
リスク3: 気候変動・環境規制
航空業界は化石燃料を大量に消費するため、排出量取引などの環境規制強化が業績に影響する可能性があると明記されています。JALは2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指し、省燃費機材への更新・SAF(持続可能な航空燃料)の調達・運航の工夫・ネガティブエミッション技術活用を進める方針です。ローリングプラン2025ではESG戦略を『価値創造・成長を実現する最上位の戦略』と位置付けています。
リスク4: 国際情勢・外部経営環境
有報は『世界の経済動向、テロ攻撃や地域紛争、戦争等により』航空需要が大幅に減少する可能性を指摘しています。また整備業者・空港職員・燃油取扱業者・警備会社など第三者の提供するサービスに業務が一定程度依存していることもリスクとして明記されています。
リスクの読み方に慣れていない方は有報のリスク情報の読み方も合わせて参照してください。
あなたのキャリアとマッチするか
JALに向いている人・向いていない人
向いている人
- 航空×ビジネス思考を両立できる人: 『飛行機が好き』だけでなく、路線ごとの収益性や採算を数字で議論できる人。2025年3月期有報のセグメント情報を読み解ける素地があれば強みになります
- FSCとLCCの役割分担を論理的に語れる人: 同じグループでも別会社であるFSC/LCCの戦略的な位置付けを理解し、自分がどちらの体験価値を作りたいかを選べる人
- 非航空領域(マイル・金融・コマース)で事業を広げたい人: 利益率約29%の新セグメントを成長させる役割に興味を持てる人
- 英語力を活かしてグローバルに働きたい人: 米州外部収益が欧州の約3倍という国際線構造のもとで、英語圏を主軸にした業務に携われる可能性があります
- ESG・脱炭素・SAFを事業として語れる人: 2050年CO2排出量実質ゼロの目標をビジネスの中で具体化したい人
向いていない人
- 最初から本社企画職でデスクワークを希望する人: 総合職でも現場(空港・整備・CS)からスタートするケースが多く、現場経験を前向きに受け入れられることが求められます
- 完全在宅・リモートワーク志向の人: 運航・整備・空港業務はリモート不可。社内ITや経営管理部門でもある程度の出社が基本です
- 短期間でのキャリアアップを目指す人: 長期的な設備投資と人材育成が前提のインフラ企業であり、スタートアップ的なスピード感とは異なります
- 航空=パイロット・CA・整備のイメージだけで志望する人: 今年の有報ではマイル/金融・コマース事業が独立セグメント化されており、非航空領域の存在を無視したままでは戦略理解が浅く見られます
従業員データ
有価証券報告書『従業員の状況』セクションより、JALの従業員データを示します(2025年3月期)。
| 項目 | データ | 読み方 |
|---|---|---|
| 従業員数(連結) | 38,433名 | インフラ企業として中規模 |
| 従業員数(単体) | 14,431名 | 本体は比較的スリム |
| 平均年齢 | 39.7歳 | 業種標準的 |
| 平均勤続年数 | 15.2年 | 安定した就業環境 |
| 平均年間給与 | 949万円 | 職種構成を踏まえて読む必要あり |
(2025年3月期有報・従業員の状況より)
『平均年収949万円』の読み方に注意: 有報の平均年収は全従業員の平均値で、機長をはじめとするパイロットなど高収給職種を含みます。総合職(事務系)の実際の初任給・年収は個別に確認が必要で、この数値は職種構成の影響を大きく受けています。社風・職場環境についても有報ではわかりません。日常の雰囲気・上司との関係・働きやすさ等はOB・OG訪問やOpenWork等の口コミサービスで補完することをおすすめします。
今から学んでおくとよいこと
- 収入管理(レベニューマネジメント)の基礎: 航空会社がどのように座席単価を最大化するかを理解する
- 有報でのセグメント情報の読み方: FY2025/3からFSC/LCC/マイル金融コマース/その他の4区分で開示が変わった点を自分で読み解けるようにする
- SAF・GX関連の最新動向: 2050年CO2排出量実質ゼロ目標に関連する航空業界のカーボンニュートラル動向を把握する
- 英語力の実践的強化: 米州向け外部収益が欧州の約3倍という国際線構造に対応するため、スコアだけでなく実務で使える英語力を高める
- マイル会員基盤を金融・コマースへ展開するビジネスモデル: ポイント/マイレージを核に金融・決済・ECへ広がる仕組みに関する基礎知識
面接で使える有報ポイント
志望動機での活用
2025年3月期の有報で最も差別化に使いやすいのは、『セグメント区分が新しくなった』という事実そのものです。JALは事業構造改革の進捗を踏まえて『フルサービスキャリア事業/LCC事業/マイル・金融コマース事業/その他』の4区分で開示を行うようになり、『航空会社が航空以外の領域でも稼ぐ』構造が数字で見えるようになりました。その象徴が利益率約29%のマイル/金融・コマース事業です。
「御社の2025年3月期有価証券報告書を拝見し、セグメント区分がフルサービスキャリア・LCC・マイル/金融コマース・その他の4区分に改定された点に注目しました。特にマイル/金融・コマース事業は外部売上1,317億円に対してセグメント利益381億円、利益率約29%と全セグメント中最高で、航空会社の強みである顧客基盤を非航空領域の収益へ転換する事業構造改革の成果が数字で表れていると感じました。私はこの領域で、JALのマイル会員向けの新しい体験価値の設計に貢献したいと考えています。」
逆質問で使えるネタ
- 2025年3月期からマイル/金融・コマース事業が独立セグメントになりましたが、このセグメントを担う社員はどのようなバックグラウンドの方が多いのでしょうか?
- 中期経営計画ローリングプラン2025の5重点項目のうち『生産性向上』は、具体的にどの現場のどのKPIで測定されていますか?
- 今期の設備投資ではエアバスA350-1000を5機新規購入されていますが、新機材の就航拡大に伴う乗員訓練や路線配置の意思決定はどの部署が主導しているのでしょうか?
- 2050年CO2排出量実質ゼロに向けたSAFの調達は現在どのフェーズにあり、新卒社員が関われる余地はどこにありますか?
まとめ
| 項目 | JALの特徴(2025年3月期有報ベース) |
|---|---|
| 事業の本質 | FSC・LCC・マイル金融コマース・その他の4区分で収益性と非航空成長を同時に取りに行く航空グループ |
| セグメント構造 | FSC(76%)/マイル金融コマース(7%)/LCC(5%)/その他(12%)。利益率ではマイル金融コマースが最高 |
| 最大の成長賭け | FSC国際線成長×国内線収益性向上、LCC事業拡大、マイル金融コマースの高収益化 |
| 設備投資の主軸 | A350-1000を5機・B737-800を2機の新規購入、B767-300の貨物改修(総額2,899億円) |
| 経営計画 | 中期経営計画ローリングプラン2025(2025年3月策定)。EBIT目標2,000億円、EBITマージン10%、ESG戦略最上位 |
| 2050年目標 | CO2排出量実質ゼロ(SAF調達・省燃費機材・運航工夫・ネガティブエミッション活用) |
本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)および公開IRデータに基づいています。投資判断を目的としたものではありません。