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インフラ 2025年03月期期

日揮の将来性|受注残高1.4兆円の強みとリスク

最終更新: 約12分で読了
#日揮 #有価証券報告書 #有報 #就活 #企業分析 #プラントエンジニアリング #LNG #SAF

日揮の有報分析 要点: 日揮ホールディングスは売上高8,580億円のグローバルEPC企業。受注残高1兆4,128億円(過去最高水準)、海外売上75%超。SAF国内初の大規模製造プラント竣工と機能材(半導体・EV向け)の増収増益で脱炭素×先端素材の二刀流戦略を推進。(2025年3月期有報に基づく)

「日揮=石油プラントを作る建設会社」──そのイメージで面接に臨むと、この企業の本質を見落とします。有報(2025年3月期)を読むと、日揮ホールディングスは受注残高1兆4,128億円・海外売上75%超のグローバルEPC企業であり、SAF(持続可能な航空燃料)の国内初大規模製造プラントを竣工させ、触媒やファインセラミックスで半導体・EV市場にも参入するテクノロジー企業の姿が見えてきます。

この記事では、有報の数字から日揮が「何に賭けているのか」を読み解きます。

有報の読み方は有価証券報告書の読み方完全ガイドで押さえてからこの記事を読むと効果的です。

この会社が賭けているもの数値的根拠(2025年3月期有報)就活での注目点
LNG・エネルギートランジション受注残高1兆4,046億円(総合エンジニアリング)、海外受注86.5%海外の大型プラント建設でグローバルなキャリアを築ける
SAF・水素・アンモニア国内初SAF大規模プラント竣工、CO2ガス発酵研究所建設開始、グリーンボンド100億円充当脱炭素技術の事業化最前線に携われる
機能材製造の拡大売上546億円・利益81億円(増収増益)、半導体向けセラミックス・EV向け窒化ケイ素基板が好調エンジニアリング×先端素材の二刀流キャリア

データソース: EDINET 有価証券報告書(2025年3月期、証券コード: 1963)

日揮のビジネスの実態|何で稼いでいるのか

日揮ホールディングスの事業は「総合エンジニアリング」と「機能材製造」の2つの報告セグメントで構成されています(2025年3月期有価証券報告書セグメント情報より)。

セグメント売上高構成比営業利益特徴
総合エンジニアリング7,949億円92.6%△145億円石油・LNG・石油化学プラントのEPC(設計・調達・建設)
機能材製造546億円6.4%81億円触媒、ファインケミカル、ファインセラミックス
その他84億円1.0%24億円コンサルティング、造水、原油・ガス生産販売等

セグメント情報の詳しい読み方は有報のセグメント情報の読み方で解説しています。

ここで注目すべきは、売上の92.6%を占める総合エンジニアリング事業が営業損失を計上している一方、売上構成比6.4%の機能材製造事業が利益81億円を稼いでいる点です。規模ではエンジニアリングが圧倒的ですが、利益面では機能材が全社の収益を支えている構造です。

地域別売上|海外75%超のグローバル企業

日揮の地域別売上構成は以下のとおりです(2025年3月期有報より)。

地域売上高構成比
日本2,119億円24.7%
中東2,926億円34.1%
北米1,630億円19.0%
東南アジア1,339億円15.6%
アフリカ342億円4.0%
その他223億円2.6%

海外売上が75%を超えており、特に中東が34.1%と最大の市場です。中東ではサウジアラビア向けが1,503億円、イラク向けが1,212億円を占めています(2025年3月期有報より)。北米ではカナダ向け938億円がLNGプロジェクトによるものです。

主要顧客を見ると、サウジアラムコ社向け1,466億円(売上の17.1%)、サウスリファイナリーズ社向け1,212億円(同14.1%)、LNGカナダ社向け938億円(同10.9%)の3社で売上の42.2%を占めます(2025年3月期有報より)。少数の超大型プロジェクトに収益が依存する構造です。

業績推移|売上は倍増、しかし利益は不安定

日揮の5期分の業績推移です(2025年3月期有報より、百万円単位)。

売上高当期純利益自己資本比率ROE
4期前4,339億円51億円59.4%1.3%
3期前4,284億円△355億円55.8%△8.8%
2期前6,068億円306億円55.7%7.8%
前期8,325億円△78億円48.7%△2.0%
当期8,580億円△3億円49.8%△0.1%

売上高は5期で4,339億円から8,580億円へと約2倍に成長しています。一方で当期純損益は5期中3期で赤字を計上しており、利益の振れ幅が大きいのが特徴です。自己資本比率は49.8%と財務基盤自体は健全に保たれています(2025年3月期有報より)。

当期は売上高8,580億円(前期比3.1%増)、営業損失114億円(前期は営業損失189億円)、経常利益113億円(受取配当金・持分法利益で営業外損益が貢献)、当期純損失3億円という決算でした(2025年3月期有報より)。営業赤字でも経常黒字という構造は、日揮が保有する投資有価証券からの配当収入が大きいためです。

日揮は何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

日揮の設備投資は年間154億円、研究開発費は年間97億円です(2025年3月期有報より)。この投資配分から「何に賭けているか」が見えてきます。

投資項目設備投資R&D費
総合エンジニアリング52億円25億円
機能材製造84億円31億円
全社・その他18億円41億円
合計154億円97億円

設備投資では機能材製造事業(84億円)がエンジニアリング事業(52億円)を上回っています。売上構成比6.4%の事業に設備投資の54.5%を配分していることは、日揮がこの事業の拡大に本気であることを示します。R&D費はセグメント配分不能分が41億円と最大で、SAFや水素などの全社横断的な先端技術開発に充てられています(2025年3月期有報より)。

設備投資の読み方の詳細は設備投資・R&Dの読み方で、他社との比較は設備投資ランキングで確認できます。

賭け1: LNG・エネルギートランジション

日揮の中核事業は、石油精製・石油化学・LNGプラントのEPC(設計・調達・建設)です。当期の受注高は9,225億円(前年同期比313.9%)で、受注残高は1兆4,046億円(総合エンジニアリング事業)に達しています(2025年3月期有報より)。

受注の内訳を見ると、海外が86.5%を占め、エネルギーソリューションズ関連(石油・ガス、LNG、化学等)が圧倒的な割合です。有報には「エネルギー安全保障と低・脱炭素化の両立の観点から、天然ガス(LNGを含む)の需要は引き続き高い」と記載されており、LNGを軸としたエネルギートランジション分野が成長の柱です(2025年3月期有報より)。

受注残高1兆4,128億円は当期売上高8,580億円の約1.6年分に相当し、将来の売上基盤が充実していることを意味します。

賭け2: SAF・水素・アンモニア

中計「BSP2025」の重点戦略③「将来の成長エンジンの確立」で、日揮は脱炭素分野に集中投資しています。有報には以下の具体的な成果が記載されています(2025年3月期有報より)。

SAF(持続可能な航空燃料): 国内初となる国産SAF大規模製造プラントを竣工。原料となる廃食用油回収促進のパートナリングを加速し、国内初の本格的な大規模SAF製造の共同事業が順調に進展しています。

バイオものづくり: NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクト採択を2件受け、微生物を活用した素材・食料・エネルギーの製造プロセスを開発中。神戸市ポートアイランドにCO2を原料とした世界初のガス発酵プロセス研究所の建設を開始しました。

さらに水素・燃料アンモニア、CCS(CO2の回収・貯留)の領域で設備投資計画が実現に向けて前進しているとの記載があります。グリーンボンド100億円をカーボンリサイクル・エネルギートランジション事業に充当完了しており、脱炭素への投資は具体的な実行段階に入っています(2025年3月期有報より)。

賭け3: 機能材製造事業の拡大

機能材製造事業は、売上546億円(前期比5.1%増)、セグメント利益81億円(同13.1%増)と増収増益です(2025年3月期有報より)。

この事業の成長を支えているのは以下の領域です。

ファインセラミックス分野: 半導体製造装置向けセラミックス部品、生成AI用データセンター向け電子材料の需要が増加。EV(電気自動車)やハイブリッド車向けの高熱伝導窒化ケイ素基板は中国向け出荷が拡大しました(2025年3月期有報より)。

ファインケミカル分野: 半導体やエレクトロニクス市場の余剰在庫が解消されつつあり、需要が回復基調。化粧品材料の需要も増加しています(2025年3月期有報より)。

設備投資84億円を機能材の製造設備に投下しており、中計BSP2025で「高機能材製造事業の拡大」を重点戦略②に位置づけています。EPCだけでなく、先端素材の製造メーカーとしての側面が強まっています。

日揮が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

有価証券報告書の「事業等のリスク」には、日揮が認識する13のリスク項目が記載されています(2025年3月期有報より)。就活の観点で特に重要な3つを取り上げます。

リスク項目内容就活での読み方
プロジェクト採算悪化台湾・サウジ・カナダの4案件で工事採算悪化。2期連続営業損失大型案件の変動が業績を左右する構造を理解する
カントリーリスク海外75%超。中東34.1%集中。戦争・テロ・経済制裁の影響グローバルな働き方と表裏一体のリスク
脱炭素移行リスク化石燃料関連投資の抑制で受注機会が減少する可能性脱炭素事業への転換スピードを確認

リスク情報の読み方の詳細は事業等のリスクの読み方で解説しています。

プロジェクトの採算悪化リスク

日揮の最大のリスクは、大型プロジェクトの採算変動です。有報には「受注後のプロジェクトの計画変更、中止、中断又は延期等のリスクの見積りは複雑性を伴い、高度な技術力及び豊富な経験を要します」と記載されています(2025年3月期有報より)。

当期は台湾、サウジアラビア、カナダで遂行中の4プロジェクトで工事採算が悪化し、総合エンジニアリング事業は2期連続の営業損失(△145億円)を計上しました。契約締結からプラント引渡しまで複数年にわたるため、その間の政治情勢変化、資機材費高騰、為替変動が予測困難な不確実性となります(2025年3月期有報より)。

就活の観点では、この採算変動の大きさは業績の不安定さに直結します。一方で、受注残高1兆4,128億円は将来の売上基盤が充実していることを示しており、短期の損益と中長期の事業基盤を分けて理解することが重要です。

カントリーリスク・地政学リスク

海外売上が75%を超え、中東が34.1%を占める日揮にとって、カントリーリスクは事業の根幹に関わります。有報には「仕向地や現地工事を行う国や地域で不安定な政情、戦争、革命、内乱、テロ、経済政策・情勢の急変」がリスクとして明記されています(2025年3月期有報より)。

主要顧客のサウジアラムコ(1,466億円)やイラクのサウスリファイナリーズ(1,212億円)は地政学リスクの高い地域に所在する企業です。日揮はこのリスクに対して、貿易保険の利用、不可抗力条件の設定、海外駐在員の安全対策強化(危機管理統括部による支援)を実施しています(2025年3月期有報より)。

エネルギー価格変動と脱炭素移行リスク

有報には「パリ協定の長期目標を踏まえた脱炭素化社会の実現に向けた動きが国際的に進む中、化石燃料関連への投資抑制」により受注機会が減少するリスクが記載されています(2025年3月期有報より)。

日揮は「2040年ビジョン」に基づき、エネルギートランジション・資源循環・高機能材等へのトランスフォーメーション(変革)に取り組んでいると有報に記載しています。化石燃料関連のEPCから脱炭素関連のEPCへ、どのスピードで事業構造を転換できるかが中長期の経営課題です(2025年3月期有報より)。

あなたのキャリアとマッチするか

従業員データ

有価証券報告書「従業員の状況」セクションより、日揮の従業員データを抽出します(2025年3月期)。

項目データ(2025年3月期)読み方
従業員数(連結)8,365名エンジニアリング企業として中規模
従業員数(単体)248名ホールディングス本体のみ
平均年齢43.7歳エンジニアリング業として標準的
平均勤続年数12.3年プロジェクトベースの仕事環境
平均年間給与約930万円エンジニアリング業として高い水準

連結従業員8,365名のうち、単体(日揮ホールディングス本体)はわずか248名です。実際のプラント建設を担うのは日揮グローバル、日揮など事業子会社の従業員で、グループ全体でプロジェクトを遂行する体制です。平均年間給与約930万円はホールディングス本体の数値であり、高水準の処遇です(2025年3月期有報より)。

キャリアマッチ

合う人合わない人
海外の大規模プラント建設にエンジニアとして携わりたい人業績の安定性を最優先する人
SAF・水素・アンモニア等の脱炭素技術の事業化に関わりたい人国内勤務を希望する人
中東・東南アジア・北米でグローバルに活躍したい人BtoC商材やサービスに関わりたい人
触媒・先端素材の製造開発で半導体・EV市場に関わりたい人少数精鋭よりも大組織で働きたい人

日揮は海外売上75%超のグローバル企業であり、海外プロジェクトへの配属や駐在の機会が多い環境です。一方で、大型プロジェクトの採算変動による業績の振れ幅が大きく、5期中3期で赤字を計上している事実は把握しておくべきです(2025年3月期有報より)。

面接で使える有報ポイント

NG例とOK例

NG: 「海外で働きたいので御社を志望しました」

OK: 「有報で受注残高1兆4,128億円が過去最高水準であること、SAF国内初の大規模製造プラントを竣工させた実行力に注目しています。化石燃料のEPCで培った技術力を脱炭素分野に転用する戦略に共感し、エネルギートランジションの最前線で働きたいです」

逆質問での活用

事業戦略について:

「総合エンジニアリング事業で2期連続の営業損失が計上されていますが、プロジェクトリスク管理の強化策として新卒社員が学べる機会にはどのようなものがありますか?」

脱炭素戦略について:

「2040年ビジョンで脱炭素分野を将来の成長エンジンに位置づけていますが、SAFや水素・アンモニア分野の売上が総合エンジニアリング事業に占める割合は今後どう推移する見通しですか?」

キャリアパスについて:

「海外プロジェクトへの配属は入社何年目からが一般的ですか。また、中東・北米・東南アジアの中で特に人材を強化したい地域はありますか?」

機能材事業について:

「機能材製造事業が利益面で全社を支えていますが、今後のエンジニアリングと機能材の事業ポートフォリオ戦略について教えてください。」

同業・関連企業との比較のポイント

日揮はプラントエンジニアリング企業ですが、エネルギー分野という共通点でENEOSの有報分析東京ガスの有報分析と併せて読むと、エネルギーバリューチェーンの中での日揮の立ち位置が見えてきます。

比較軸日揮千代田化工建設東洋エンジニアリング
事業の核LNG・石油精製EPCLNG技術に強み石油化学・肥料EPC
海外比率75%超高い高い
第二の柱機能材製造(利益の柱)O&M(運転・保守)IT・DX
脱炭素の軸SAF・水素・バイオものづくり水素・アンモニアSCグリーンケミカル

日揮の特徴: エンジニアリング3社の中で、機能材製造という「モノを作る」事業を持つ点が独自です。エンジニアリングの利益変動が大きい中で、機能材が安定収益源として機能しています。

インフラ業界全体の比較はインフラ業界の有報比較で確認できます。同じインフラ業界の清水建設の有報分析(ゼネコンの視点)や東京電力の有報分析(電力インフラの視点)も併せて読むと、インフラ業界内での各社の立ち位置がより明確になります。

まとめ

項目日揮の特徴
事業の本質LNG・石油精製プラントのEPC+機能材製造のグローバル企業
最大の強み受注残高1兆4,128億円の将来売上基盤と海外75%超のグローバルネットワーク
最大の賭け脱炭素分野(SAF・水素・アンモニア)を将来の成長エンジンに育成
成長ドライバーエネルギートランジションEPC+機能材(半導体・EV向け先端素材)
注意すべき点大型プロジェクトの採算変動で5期中3期赤字。カントリーリスクが常に存在

本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。

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よくある質問

日揮の有価証券報告書はどこで読めますか?

EDINET(金融庁の電子開示システム)または日揮ホールディングス公式IRサイトで無料公開されています。EDINETでは「E01575」で検索すると最新の有報にアクセスできます。

日揮の有報から就活に使える情報は何がわかりますか?

受注残高1兆4,128億円の将来売上基盤、地域別売上構成(海外75%超)、SAFや水素など脱炭素分野への投資方針の3つが特に就活に直結します。

日揮はどんな会社ですか?

LNG・石油精製・石油化学プラントの設計・調達・建設(EPC)を行う総合エンジニアリング企業です。売上高8,580億円、従業員約8,400名。海外売上比率75%超のグローバル企業で、機能材(触媒・ファインセラミックス)の製造事業も展開しています。

日揮の将来性は?今後どうなる?

2040年ビジョンで脱炭素分野(SAF・水素・アンモニア・CCS)を将来の成長エンジンに位置づけています。SAF国内初の大規模製造プラントを竣工させ、機能材では半導体・EV向け製品が好調。ただし大型プロジェクトの採算リスクと地政学リスクがあります。

日揮の面接で有報の知識はどう活かせますか?

受注残高1.4兆円の将来基盤やSAF・水素分野の成長戦略、海外売上75%超のグローバル事業構造に触れると、単なるプラント建設会社ではない企業理解を示せます。

日揮の年収水準は?

有報によると単体の平均年間給与は約930万円です。ただし単体従業員数は248名でホールディングス本体のみの数値です。連結従業員数は8,365名です。

日揮の営業損失の原因は?

2025年3月期の有報によると、台湾・サウジアラビア・カナダで遂行中の4プロジェクトの工事採算が悪化したことが主因です。総合エンジニアリング事業で2期連続の営業損失を計上しています。

企業名

日揮ホールディングス

業種

プラントエンジニアリング

証券コード

1963

対象事業年度

2025年03月期

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