メインコンテンツへスキップ
就活×有報ナビ
インフラ 2025年03月期期

鹿島建設の将来性|有報で見る海外売上1兆円超のグローバル戦略

約11分で読了
#鹿島建設 #ゼネコン #建設業 #インフラ #有価証券報告書

企業名

鹿島建設

業種

建設業

証券コード

1812

対象事業年度

2025年03月期

鹿島建設の有報分析 要点: 鹿島建設は売上高2兆9,118億円・連結従業員21,029名のスーパーゼネコン。海外関係会社の売上が1兆1,143億円(構成比38.3%)で全セグメント最大となり、「国内ゼネコン」のイメージを超えるグローバル企業に成長。開発事業等は売上979億円ながら利益率28.4%で収益を牽引。R&D費222億円で建設ロボット・CO2コンクリートから月面居住研究まで展開。5年間で売上52.7%成長、平均年収約1,185万円(2025年3月期有報)。

この記事のデータは鹿島建設の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

この記事でわかること

鹿島建設(1812)の有価証券報告書(2025年3月期)を分析し、就活生が知るべき「この会社が賭けているもの」を明らかにします。

この会社が賭けているもの有報の根拠
海外事業の急拡大海外関係会社の売上1兆1,143億円(構成比38.3%)で全セグメント最大、前期比29.7%増、米国でロジャーズ・ビルダーズ社を買収
技術立社R&D費222億円、建設ロボット・CO2コンクリート「CO2-SUICOM」・立体音響「OPSODIS」・月面居住研究
不動産開発事業の高収益化開発事業等の利益率28.4%(売上979億円で利益278億円)、設備投資751億円は賃貸事業用不動産が中心

鹿島建設のビジネスの実態|何で稼いでいるのか

鹿島建設の有報で最も目を引くのは、海外関係会社の売上が建築事業を上回り全セグメント最大になっている点です。「スーパーゼネコン=国内で建物を造る会社」というイメージとは大きく異なり、売上の約4割を海外で稼ぐグローバル建設・不動産企業が鹿島建設の実態です(2025年3月期有報)。

5期業績推移

指標4期前3期前2期前前期当期(2025年3月期)
売上高1兆9,071億円2兆796億円2兆3,915億円2兆6,651億円2兆9,118億円
純利益985億円1,038億円1,117億円1,150億円1,258億円
EPS193.13円208.00円227.98円238.76円266.49円
自己資本比率40.4%40.5%38.0%38.6%36.4%
ROE11.8%11.4%11.2%10.2%10.2%
営業CF1,530億円302億円△291億円1,237億円306億円

出典: 2025年3月期有報「主要な経営指標等の推移」

5年間で売上は52.7%成長(1兆9,071億円から2兆9,118億円)、純利益も27.7%増、EPSは193.13円から266.49円へ37.9%成長しています。ROEは10.2%を2期連続で維持し、中計目標の「ROE10%以上の継続」を達成。2025年3月期に純利益1,258億円を記録し、当初2027年3月期の目標であった1,300億円を1年前倒しで達成する見込みです。

セグメント別利益構造

セグメント外部売上セグメント利益利益率
土木事業4,041億円357億円8.8%
建築事業1兆529億円512億円4.9%
開発事業等979億円278億円28.4%
国内関係会社2,424億円164億円6.8%
海外関係会社1兆1,143億円200億円1.8%

出典: 2025年3月期有報「セグメント情報」

注目すべきは、売上最大の海外関係会社(1兆1,143億円)の利益率が1.8%と最も低い一方、売上構成比わずか3.4%の開発事業等が利益率28.4%で全セグメント最高の収益性を誇る点です。利益構成で見ると、建築が33.9%、土木が23.6%、開発事業等が18.4%を占めます。同じスーパーゼネコンでも、大林組は不動産利益率22.08%、大成建設は土木事業が利益の70%を占めるなど、収益構造は各社で大きく異なります。配属先によって携わる事業の収益構造が全く異なることを、有報は示しています。

鹿島建設は何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

鹿島建設は「鹿島グループ中期経営計画(2024〜2026)」で3年間の投資総額1兆2,700億円(ネット投資額5,400億円)を計画しています。R&D投資600億円、デジタル投資600億円という規模から、その投資の方向性を読み解きます(2025年3月期有報)。

賭け1: 海外事業の急拡大|売上1兆1,143億円で最大セグメントに

海外関係会社の売上は1,114,353百万円(構成比38.3%)で、前期の859,371百万円から29.7%増と急成長しました。北米・欧州・アジア・大洋州で建設事業と不動産開発事業を展開し、米国では医療・教育分野に強みを持つロジャーズ・ビルダーズ社を買収しています。海外での不動産開発は投資と売却による回収のサイクルが確立しつつあり、設備投資125億円を海外関係会社に投下しています(2025年3月期有報)。

ただし、セグメント利益率は1.8%(利益200億円)と国内事業に比べ低い水準です。規模の拡大と利益率の改善を同時に進められるかが、今後の焦点です。

賭け2: 技術立社|R&D費222億円の投資先

研究開発費222億円を投下し、建設の枠を超えた技術開発を展開しています(2025年3月期有報「研究開発活動」)。

生産性向上の分野では、鉄骨梁の製作手間と現場溶接量を削減する「鹿島式ストレート梁工法」、柱一本を全自動で溶接するマニピュレータ型現場溶接ロボット、70年ぶりの新工法「型枠一本締め工法」(歩掛20%向上)、山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」など、現場の省人化・自動化を急速に進めています。

環境技術では、大気中から回収したCO2を用いたコンクリート製造を実証し、低炭素型「ECMコンクリート」をダム堤体へ導入。CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM」の普及も促進しています。

さらに、立体音響スピーカー「OPSODIS 1」がクラウドファンディングで支援総額6億円を突破、自律飛行ドローンと森林管理サービス「Forest Asset」の提供開始、月面人工重力居住施設の成立性に関する京都大学との共同研究など、建設業の枠を大きく超えた領域にも投資しています。中計ではR&D投資600億円・デジタル投資600億円を計画しており、「技術立社」は経営方針の中核です。

賭け3: 不動産開発事業|利益率28.4%の高収益事業を拡大

開発事業等は売上979億円(構成比3.4%)ながら、セグメント利益278億円で利益率28.4%と全セグメント最高の収益性です。前期比で売上19.5%増・利益51.0%増と大幅に成長しています(2025年3月期有報)。

設備投資751億円の使途を見ると、当社分373億円は賃貸事業用建物の建設が中心、国内関係会社の264億円は賃貸事業用土地建物の購入が中心です。建設技術を活かしながら不動産を自ら開発・保有し、ストック型の安定収益を拡大する戦略が読み取れます。八重洲二丁目中地区再開発事業も着工しており、都市再開発と不動産事業の連動が今後も加速する見通しです。

鹿島建設が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

有報の「事業等のリスク」には、就活サイトや企業PRでは出てこない構造的課題が記載されています(2025年3月期有報)。

リスク有報の記載要旨就活生への影響
建設コスト変動主要資材価格や労務単価の急騰を請負契約に反映できない場合、工事採算が悪化建築事業4.9%・海外1.8%の薄利構造でコスト吸収余地が小さい
担い手不足建設技能労働者の減少で施工体制の維持が困難、売上減少や労務コスト上昇の可能性自動化施工(溶接ロボット・A4CSEL)で対応中だが、現場の業務負荷に直結
海外の政治・経済リスク北米・欧州・アジア・大洋州の進出国の政治・経済情勢、為替相場等の変化売上38.3%が海外のため、為替・地政学リスクが全社業績を左右する規模

出典: 2025年3月期有報「事業等のリスク」

特に注目すべきは、保有資産のリスクです。販売用不動産2,807億円、賃貸等不動産3,437億円、投資有価証券3,974億円を保有しており、不動産市場の急激な縮小や時価の著しい下落が生じた場合、評価損や減損損失が発生する可能性があると明記されています。不動産開発事業の拡大は高収益だが、バランスシートへのリスクも同時に積み上がっている構造です。

あなたのキャリアとマッチするか

従業員データ

項目数値
連結従業員数21,029名
単体従業員数8,854名
平均年齢41.9歳
平均勤続年数16.4年
平均年間給与約1,185万円

出典: 2025年3月期有報「従業員の状況」

平均年収約1,185万円はスーパーゼネコンの中でも最高水準です。平均勤続年数16.4年は長期雇用が定着していることを示しています。連結21,029名に対し単体8,854名で、グループ会社・海外子会社の人員が約58%を占めるグローバル組織です。中計では時間外労働上限規制への対応として働き方改革を推進中です。

清水建設(平均年収約1,011万円)と比較すると、年収水準・海外売上比率ともに鹿島建設が上回っていますが、清水建設は水素エネルギーや宇宙開発に注力するなど、技術投資の方向性は異なります。

キャリアマッチ表

マッチする人理由
海外の大規模建設プロジェクトに携わりたい人海外売上38.3%が最大セグメント、M&Aによる海外子会社も拡大中
建設ロボティクス・自動化施工に関わりたい技術系志望者R&D費222億円、溶接ロボット・A4CSEL等の実用化が進行中
建設×不動産開発の複合キャリアに関心がある人開発事業の利益率28.4%、八重洲再開発など都市開発を推進
先端半導体工場など国内大型案件に携わりたい人Rapidus IIM-1(先端半導体工場)の施工が進捗中
安定した報酬と長期キャリアを重視する人平均年収約1,185万円、平均勤続16.4年
マッチしにくい人理由
短期間で事業を立ち上げるスピード感を求める人建設プロジェクトは数年単位、不動産開発も長期サイクル
純粋なIT・ソフトウェアキャリアを志向する人デジタル投資600億円はあるが、建設DXが主で純粋なIT企業ではない
海外で高収益事業に関わりたい人海外関係会社の利益率1.8%は薄利段階で改善途上
建設現場での業務を避けたい人技術系は現場経験がキャリアの基本ルート

鹿島建設の投資方向性から考える学習テーマ

鹿島建設の有報が示す投資の方向性から、志望者が事前に触れておくと差がつくテーマを整理します。

投資の方向性学習テーマ理由
海外売上38.3%・M&A推進海外建設市場の動向(北米インフラ投資法・欧州グリーンディール等)、クロスボーダーM&Aの基本的な仕組み海外関係会社が最大セグメントであり、入社後に海外プロジェクトやM&A統合に関わる可能性が高い
R&D費222億円・建設ロボティクス建設DX・自動化施工の最新事例(A4CSEL、BIM/CIM)、CO2削減技術の概要中計でR&D投資600億円・デジタル投資600億円を計画しており、技術系の志望動機と結びつけやすい
開発事業等の利益率28.4%不動産開発の基本(ストック型ビジネスモデル、開発と賃貸の収益サイクル)建設会社でありながら不動産開発が利益の18.4%を占め、複合的なキャリアパスが広がっている
設備投資751億円・賃貸事業用不動産中心設備投資と減価償却の関係、不動産ポートフォリオの基本的な考え方面接で「設備投資の使途を有報で確認した」と言えると、企業研究の深さを示せる

面接で使える有報ポイント

有報データを面接で活かす具体的な方法も参考にしてください。

NG: 「鹿島建設はスーパーゼネコンで安定しているので志望しました」

OK: 「有報で海外関係会社の売上が1兆1,143億円で全セグメント最大(構成比38.3%)であることを確認しました。中計の3年間投資総額1兆2,700億円とR&D投資600億円の規模から、技術立社と海外拡大を同時に進める経営の意志を感じ、自分もその成長に携わりたいと考えています」

逆質問例

  1. 「海外関係会社のセグメント利益率が1.8%と国内事業に比べ低い水準ですが、今後の利益率改善に向けた具体的な取り組みを教えてください」(2025年3月期有報「セグメント情報」)

  2. 「R&D費222億円の中で、OPSODISや月面居住研究のような建設業の枠を超えた研究テーマは、今後どの程度拡大する見通しですか」(2025年3月期有報「研究開発活動」)

  3. 「米国でロジャーズ・ビルダーズ社を買収されましたが、海外M&Aの今後の方針と、若手社員が海外事業に関わる機会について教えてください」(2025年3月期有報「経営方針」)

まとめ

鹿島建設の有報が示すのは、「国内ゼネコン」のイメージとは大きく異なるグローバル建設・不動産企業の姿です。売上の38.3%を海外で稼ぎ、利益率28.4%の不動産開発で収益を底上げし、R&D費222億円で建設ロボットから月面研究まで手がける。5年間で売上52.7%成長を達成し、中計の利益目標を前倒しで達成する経営実行力も際立ちます。

一方で、海外関係会社の利益率1.8%という薄利構造、担い手不足と建設コスト変動という業界共通の構造的課題、不動産保有拡大に伴うバランスシートリスクは、有報だからこそ見える情報です。海外事業の拡大フェーズで自分がどう貢献できるか、222億円のR&D投資のどこに関わりたいか。その具体性が、鹿島建設を志望する上での差別化ポイントになります。

関連記事: 有報の読み方ガイド / 清水建設の有報分析 / 大林組の有報分析 / 大成建設の有報分析 / インフラ業界まとめ / 日揮の有報分析 / 東京電力の有報分析 / 面接で使える有報ポイント / 設備投資ランキング / 研究開発費ランキング


本記事のデータは有価証券報告書(2025年3月期・EDINET)に基づいています。企業の将来の業績を保証するものではなく、投資判断を目的としたものではありません。最新情報は企業の公式IR資料をご確認ください。

よくある質問

鹿島建設の有報で最も注目すべきポイントは?

海外関係会社の売上が1兆1,143億円(構成比38.3%)で全セグメント最大である点です。建築事業(1兆529億円)を上回り、前期比29.7%増と急成長しています。一方で利益率は1.8%と国内事業より低く、規模と収益性のギャップが今後の経営課題です(2025年3月期有報)。

鹿島建設の将来性は?

中期経営計画(2024〜2026)で3年間の投資総額1兆2,700億円(ネット5,400億円)を計画。R&D投資600億円・デジタル投資600億円を掲げ、2027年3月期の純利益1,300億円目標を1年前倒しで達成する見込みです。海外事業拡大・不動産開発・技術革新の3軸で成長を図っています(2025年3月期有報)。

鹿島建設の年収水準は?

有報によると単体の平均年間給与は約1,185万円(8,854名)です。平均年齢41.9歳、平均勤続年数16.4年で、スーパーゼネコンの中でも最高水準の処遇です(2025年3月期有報)。

鹿島建設の海外事業はどの地域に展開している?

有報には北米・欧州・アジア・大洋州で建設事業及び開発事業を展開していると記載されています。米国では医療・教育分野に強みを持つロジャーズ・ビルダーズ社を買収し、海外での不動産開発は投資と売却の回収サイクルが確立しつつあります(2025年3月期有報)。

鹿島建設の研究開発は何をしている?

R&D費222億円を投じ、建設ロボット(溶接ロボット・A4CSEL for Tunnel)、CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM」、立体音響スピーカー「OPSODIS 1」、さらに京都大学との月面人工重力居住施設研究まで、建設の枠を超えた多角的な技術開発を展開しています(2025年3月期有報)。

インフラの他社分析

インフラの全記事を見る →

関連記事

次に読む