メインコンテンツへスキップ
就活×有報ナビ
IT/通信 2024年12月期期

楽天グループの将来性|有報で見るモバイル×経済圏の大勝負

約11分で読了
#楽天 #有価証券報告書 #有報 #楽天モバイル #フィンテック #エコシステム #就活 #企業分析

企業名

楽天グループ

業種

インターネット・フィンテック

証券コード

4755

対象事業年度

2024年12月期

楽天グループの有報分析 要点: 楽天グループは売上2兆2,792億円・5年ぶりの営業黒字(530億円)を達成。利益の柱はECではなくフィンテック(利益1,534億円)。モバイルに累計1兆円超を投じ、2024年12月に月次EBITDA初の黒字化。「ECの会社」から「モバイルに全てを賭けた複合経済圏企業」への転換が有報で見える。(2024年12月期有報に基づく)

この記事のデータは楽天グループ株式会社(証券コード: 4755)の有価証券報告書(2024年12月期・IFRS)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

楽天グループ株式会社は、売上高2兆2,792億円・連結従業員約32,000名の日本最大級のインターネットサービス企業です。「楽天市場で買い物をしたことがある」という就活生は多いでしょう。しかし有報を読むと、ECの会社と思われがちな楽天が、実は通信キャリア事業に1兆円超を投じ、70以上のサービスを束ねた「唯一無二の経済圏企業」を目指している姿が数字で浮かび上がります。

楽天グループが賭けている3つの方向性:

  • 楽天モバイル: 累計投資1兆円超・2024年12月に月次EBITDA初の黒字化を達成・契約回線数1,000万を目指す
  • 楽天エコシステム: 会員1億人超・70超サービスの相互送客・モバイル契約者は楽天市場利用額が非契約者の1.5倍
  • フィンテック: 楽天カード取扱高24.0兆円、前年比13.7%増・セグメント利益1,534億円、前年比37.9%増

IT業界全体の動向と比較すると、他のIT企業がAI・DXに投資を集中させる中で、楽天は自前の通信インフラに賭けるという異色の戦略を取っていることがわかります。

楽天グループのビジネスの実態|何で稼いでいるのか

セグメント情報とは、企業の事業部門ごとの売上高や利益を分けて示したものです。楽天グループの場合、「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の3セグメントで事業を展開しています。

セグメント売上収益構成比セグメント利益利益率
インターネットサービス1兆2,821億円約56%851億円約6.6%
フィンテック8,204億円約36%1,534億円約18.7%
モバイル4,407億円約19%-2,163億円赤字

(出典: 有価証券報告書 2024年12月期)

就活ポイント: この表を見て気づくことがあります。売上の柱はインターネットサービス(EC等)ですが、利益の柱はフィンテックです。楽天カード・楽天銀行・楽天証券などの金融サービスが、利益率18.7%という高い収益性でグループ全体を支えています。そしてモバイルは2,163億円もの赤字を計上しており、EC・フィンテックの黒字でモバイルの赤字を補填する構造になっています。

全社業績の推移|5年ぶりの営業黒字

楽天グループの連結業績推移(IFRS基準)を見ると、モバイル参入による赤字からの回復が鮮明に読み取れます。

売上収益営業利益備考
2020年12月期1兆4,555億円-1,027億円モバイル投資本格化
2021年12月期1兆6,818億円-1,947億円モバイル赤字拡大
2022年12月期1兆9,279億円-3,684億円赤字ピーク
2023年12月期2兆0,713億円-2,129億円赤字縮小開始
2024年12月期2兆2,792億円530億円5年ぶり黒字

2022年に営業赤字のピーク(-3,684億円)を記録した後、モバイルの赤字縮小により2024年に5年ぶりの黒字転換を果たしました。ただし、親会社の所有者に帰属する当期利益は依然として-1,624億円の赤字であり、完全な回復にはまだ道のりがあります。

メルカリの有報分析でも赤字期からの回復事例が見られますが、楽天のモバイル投資は規模が桁違いです。日本のIT企業が1つの新規事業に1兆円超を投じた例は前例がなく、この「賭け」の成否が楽天の将来を決定づけます。

セグメント情報の詳しい読み方はセグメント情報の読み方で解説しています。

楽天グループは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

有報から読み取れる楽天グループの投資の方向性は、他のIT企業と明確に異なっています。

投資分野内容読み方
モバイル通信累計投資1兆円超・2024年度設備投資930億円第4のキャリアとして通信インフラを自前で構築
エコシステム楽天最強配送など物流投資EC×モバイル×フィンテックの相互送客を強化
フィンテック楽天銀行上場・カード事業拡大金融サービスの収益基盤を厚くする

賭け1: 楽天モバイル|日本のIT企業史上最大の賭け

楽天モバイルへの投資は、日本のIT企業が行った新規事業投資として最大級の規模です。

  • 累計投資額: 1兆円超
  • 累計赤字: 約1兆5,629億円
  • 2024年度設備投資: 930億円
  • 2025年度設備投資計画: 1,500億円
  • 2024年12月の月次EBITDA: +23億円(携帯キャリア参入後初の黒字化)

なぜ楽天はこれほどの投資を行うのか。有報を読むと、モバイルはエコシステム全体の「接着剤」であることが見えてきます。楽天モバイル契約者は、非契約者と比べて楽天市場での流通総額が約1.5倍高い。つまり、モバイル事業単体の黒字化だけでなく、EC・フィンテック事業の成長にもモバイルが貢献する構造を狙っています。

ソフトバンクの有報分析と比較すると、ソフトバンクは既存の通信インフラからAI・DXに投資を振り向けているのに対し、楽天はゼロから通信インフラを構築しているという根本的な違いがあります。後発だからこそ完全仮想化(クラウドネイティブ)ネットワークという最新技術を採用できた点は、楽天モバイルの独自性です。

賭け2: 楽天エコシステム|70超サービスの経済圏

楽天の本質的な強みは、個々のサービスではなくエコシステム全体にあります。

指標規模
楽天会員数1億人超
国内EC流通総額5兆9,550億円(2024年)
サービス数70超
楽天ポイント発行(累計)4兆ポイント超

楽天ポイントを軸に、EC・旅行・カード・銀行・証券・モバイルを相互に送客する仕組みが「楽天経済圏」です。この経済圏の深さは、サイバーエージェントの有報分析で見られる広告×メディア型や、メルカリのマーケットプレイス特化型とは全く異なるビジネスモデルです。

ただし、国内EC流通総額は前年比1.5%減と成長が鈍化しています。Amazonや Yahoo! ショッピングとの競争に加え、SPU(スーパーポイントアッププログラム)の改定による影響が出ています。楽天はこの対策として「楽天最強配送」による物流強化を進めており、物流投資が今後のEC成長の鍵を握ります。

賭け3: フィンテック|知られざる利益の柱

就活生にとって意外かもしれませんが、楽天グループの利益の柱はECではなくフィンテックです。

フィンテック事業主な指標
楽天カードショッピング取扱高24.0兆円
楽天銀行2023年に東証プライム上場
楽天証券個人投資家向けプラットフォーム
セグメント利益1,534億円

楽天カードは取扱高24.0兆円でクレジットカード業界トップクラスの地位を確立しています。セグメント利益率18.7%は、インターネットサービスの6.6%を大きく上回ります。

設備投資・R&D費の読み方

楽天グループが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

有報の「事業等のリスク」から、楽天グループの主要リスクを確認します。

リスク項目内容就活での読み方
モバイル事業の赤字継続累計赤字1.6兆円・自己資本比率3.5%財務リスクを理解した上で入社を検討すべき
通信市場の競争3大キャリアとのネットワーク品質差後発ゆえの課題をどう克服するかを確認
EC市場の成長鈍化国内EC流通総額が前年比1.5%減楽天市場単体は成長もAmazonとの競争は激化
有利子負債の増加格付け機関からの格下げリスク資金調達コストの上昇が経営を圧迫する可能性

就活ポイント: 自己資本比率3.5%は、上場企業としては極めて低い水準です(上場企業なら10%以上が目安)。これはモバイル事業への巨額投資の結果であり、楽天が取っているリスクの大きさを端的に示しています。「安定した大企業」を求める方は、この財務状況を十分に理解した上で判断すべきです。一方で、この「賭け」が成功した場合のリターンも大きく、成長期の企業に飛び込む覚悟がある方には大きな機会です。

事業等のリスクの読み方

あなたのキャリアとマッチするか

楽天グループの投資方針と事業構造から、キャリアマッチを判断するための情報を整理します。

従業員データ

項目データ読み方
従業員数(単体)9,885名前年比465名減。効率化フェーズ
従業員数(連結)約32,000名グループ全体では大規模組織
平均年齢35.3歳IT企業として標準的
平均勤続年数5.8年人材流動性が高い
平均年間給与820万円IT業界で競争力のある水準

(出典: 有価証券報告書 2024年12月期 従業員の状況)

就活ポイント: 平均勤続年数5.8年は、楽天のスピード感のある組織文化を反映しています。社内公用語が英語(Englishnization)であることも特徴で、入社初日から英語でのコミュニケーションが求められます。グローバルな環境で働きたい人には大きなメリットですが、英語に不安がある方は入社前の準備が必要です。

合う人/合わない人

合う人合わない人
EC・フィンテック・モバイルなど複数事業を横断して経験を積みたい財務的に安定した企業環境を最優先する
1億人の会員データを使ったデータ駆動型の仕事がしたい1つの事業で深い専門性を長期間磨きたい
大企業でありながらスタートアップ的な挑戦(モバイル事業)を経験したい製造業・ものづくりに携わりたい
英語を日常的に使う環境で働きたいゆっくりとした意思決定プロセスを好む

有報のデータからはわからないこともあります。社風、部署ごとの雰囲気、上司との相性などは、OB・OG訪問やインターンシップで直接確認することをお勧めします。

有報データから逆算して今から学ぶべき分野

分野根拠(有報)具体的アクション
データサイエンス・ML楽天エコシステム1億人超の会員データが最大の資産(2024年12月期)Python・SQL・統計学入門。Kaggle等でデータ分析の経験を積む
フィンテック・決済の基礎フィンテックセグメントが利益の柱(利益率18.7%・前年比37.9%増)クレジットカードビジネスモデル・銀行業務の基礎理解
英語力(ビジネスレベル)社内公用語英語化・外国籍社員多数在籍TOEIC 800点以上を目標に。英語プレゼン・ドキュメント作成力の強化

詳しくは人的資本ランキングで他社との横断比較をしています。

面接で使える有報ポイント

志望動機での活用

「御社の有報で、利益の柱がECではなくフィンテック(利益率18.7%)であることに注目しました。モバイル事業への累計投資1兆円超は、EC×フィンテック×モバイルの三位一体エコシステムを完成させるための”大勝負”であり、2024年12月の月次EBITDA黒字化はその転換点だと考えています。このエコシステム戦略が確立される過程に参画し、データ駆動型の事業成長に貢献したいと考えています。」

逆質問での活用

「有報でモバイルセグメントの月次EBITDAが2024年12月に初の黒字化を達成されていましたが、通期黒字化に向けた最大の課題はネットワーク品質の向上と契約者獲得のどちらですか?」

「楽天カードのショッピング取扱高が24.0兆円と業界トップクラスですが、今後フィンテック事業で特に成長を見込んでいる領域はどこですか?」

「モバイル契約者の楽天市場利用額が非契約者の約1.5倍というデータを拝見しました。エコシステムの相互送客をさらに強化するために、新卒社員が関与できるプロジェクトにはどのようなものがありますか?」

同業比較のポイント

楽天グループの事業戦略を、他のIT企業と比較すると独自性がより明確になります。

比較軸楽天グループメルカリソフトバンク
事業モデルEC×フィンテック×モバイルの経済圏CtoC特化のマーケットプレイス通信インフラ×AI・DX
利益の柱フィンテック国内フリマ事業コンシューマ通信(利益率21%)
最大の賭けモバイル(累計投資1兆円超)米国展開生成AI法人DX
従業員数(連結)約32,000名2,159名約49,500名
平均年間給与820万円1,176万円916万円

(出典: 各社有価証券報告書)

楽天の独自性は「エコシステム」にあります。1つのサービスではなく、70以上のサービスを束ねた経済圏全体で勝負する戦略は、メルカリのマーケットプレイス特化やソフトバンクの通信×AI戦略とは根本的に異なります。詳しくは[IT業界の有報比較]で横断分析しています。

AI・DX投資ランキングでは、IT各社の投資方針の違いをさらに詳しく比較しています。

まとめ

項目楽天グループの特徴
財務状況売上2兆2,792億円・営業利益530億円(5年ぶり黒字・2024年12月期)
稼ぎ頭フィンテック(利益1,534億円・利益率18.7%)
最大の賭け楽天モバイル(累計投資1兆円超・月次EBITDA黒字化)
独自性70超サービス・会員1億人の楽天エコシステム
最大のリスク自己資本比率3.5%・モバイル累計赤字1.6兆円
注目指標英語公用語・平均勤続5.8年・平均年収820万円

楽天グループは「楽天市場のEC企業」というイメージで片付けてはもったいない企業です。有報を読むと、ECで集客し、フィンテックで稼ぎ、モバイルに全てを賭けた──その構造が見えてきます。このエコシステムが完成するかどうかの転換点に立つ今、有報のデータで事業構造を理解した上で、自分のキャリアとのマッチを判断しましょう。

本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。

よくある質問

楽天グループの有価証券報告書はどこで読めますか?

EDINET(金融庁の電子開示システム)で「E05080」と検索するか、楽天グループ公式IRサイトから無料で閲覧できます。証券コードは4755で、会計基準はIFRSを採用。2024年12月期(第28期)が最新です。

楽天モバイルの赤字はどのくらいですか?

2024年12月期のモバイルセグメント損失は約2,163億円で、累計赤字は約1.6兆円です。ただし、前年比で損失は約1,000億円改善し、2024年12月には月次EBITDAが携帯キャリア事業参入後初の黒字化を達成しました。

楽天は何で稼いでいますか?

売上の最大セグメントはインターネットサービス(EC等)で約1.28兆円ですが、利益の柱はフィンテック(楽天カード・楽天銀行等)でセグメント利益1,534億円・利益率18.7%です。ECで集客し、フィンテックで稼ぎ、モバイルに投資する構造です。

楽天の将来性は?今後どうなる?

有報によると、2024年12月期に5年ぶりの営業黒字(530億円)を達成しました。モバイルの赤字縮小が最大の要因です。モバイルの通期黒字化が実現すれば大きな転換点となりますが、有利子負債が大きく自己資本比率は3.5%と財務リスクも残る状況です。

楽天の面接で有報の知識はどう活かせますか?

フィンテック利益率18.7%・モバイル累計投資1兆円超・楽天カード取扱高24.0兆円・モバイル契約者の楽天市場利用額が非契約者の1.5倍という数字を引用すると、他の就活生と差がつきます。ECだけでなくエコシステム全体の構造を理解していると効果的です。

楽天は英語が必要ですか?

楽天は2012年に社内公用語を英語化(Englishnization)しており、会議やドキュメントが英語で行われる場面が多いです。有報の従業員データからも外国籍社員が多く在籍していることが読み取れます。新卒でもビジネスレベルの英語力が求められます。

楽天の強みと課題は?

強みは70超のサービスを束ねた楽天エコシステム(会員1億人超)と、フィンテックの高い収益力(利益率18.7%)です。課題はモバイル事業の累計赤字1.6兆円と自己資本比率3.5%の財務リスク、国内EC流通総額の前年比減少です。

楽天グループとメルカリ・ソフトバンクの違いは?

楽天はEC×フィンテック×モバイルの三位一体エコシステム型、メルカリはCtoC特化のマーケットプレイス×FinTech型、ソフトバンクは通信インフラ×AI・DX型です。事業の幅の広さとエコシステムの相互送客戦略が楽天の最大の特徴です。

楽天の企業研究で見るべきポイントは?

有報のセグメント情報(ECではなくフィンテックが利益の柱である構造)、モバイル投資額と赤字縮小のトレンド、従業員データ(平均年収820万円・社内公用語英語)の3つが重要です。就活サイトの口コミでは得られない客観的な分析視点です。

IT/通信の他社分析

IT/通信の全記事を見る →

関連記事

次に読む