| この記事でわかること |
|---|
| 1. 主要企業の営業利益率ランキング──業界別に見える「稼ぐ力」の違い |
| 2. 営業利益率の高低を生み出す事業構造の読み解き方 |
| 3. 利益率データを就活(ES・面接)で活用する方法 |
「この会社は本当に稼げているのか」──企業の収益力を最もシンプルに示す指標が営業利益率です。
有報のデータから主要11社の営業利益率を横断比較し、「なぜその利益率なのか」を事業構造から読み解きます。
有報の読み方は有価証券報告書の読み方完全ガイドで押さえておくと、この記事がさらに活きます。
営業利益率とは
営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合(営業利益÷売上高×100)です。
| 指標 | 計算式 | わかること |
|---|---|---|
| 営業利益率 | 営業利益÷売上高 | 本業で稼ぐ力 |
| 純利益率 | 純利益÷売上高 | 最終的な利益効率 |
| ROE | 純利益÷自己資本 | 株主資本に対する稼ぐ力 |
就活で最も使いやすいのは営業利益率です。本業の稼ぐ力を端的に示し、企業間比較が直感的にできるためです。
全社ランキング|営業利益率
| 順位 | 企業 | 営業利益率 | 営業利益 | 売上高 | 業界 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | キーエンス | 51.9% | 5,498億円 | 1兆0,591億円 | FA機器 |
| 2 | 任天堂 | 24.2% | 2,825億円 | 1兆1,649億円 | ゲーム |
| 3 | ソニーグループ | 10.6% | 1兆2,800億円 | 約12.1兆円 | エンタメ・テクノロジー※ |
| 4 | トヨタ自動車 | 9.8% | 4兆8,000億円 | 49兆1,300億円 | 自動車 |
| 5 | 丸紅 | 8.1% | 6,292億円 | 7兆7,900億円 | 総合商社 |
| 6 | デンソー | 7.2% | 5,190億円 | 7兆1,600億円 | 自動車部品 |
| 7 | NTTデータグループ | 6.5% | 3,055億円 | 4兆6,800億円 | ITサービス |
| 8 | 三菱商事 | 6.1% | 1兆1,534億円 | 18兆8,789億円 | 総合商社 |
| 9 | 三井物産 | 5.8% | 7,803億円 | 13兆5,062億円 | 総合商社 |
| 10 | 伊藤忠商事 | 5.6% | 7,505億円 | 13兆4,530億円 | 総合商社 |
| 11 | 住友商事 | 4.9% | 3,367億円 | 6兆8,178億円 | 総合商社 |
出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期。会計基準(IFRS/日本基準)の違いにより、利益の定義が異なる場合があります ※ソニーグループは金融事業を除くベース
キーエンスの51.9%が圧倒的ですが、この数字を他社と単純比較するのは危険です。なぜなら、営業利益率は業界の構造によって決まる部分が大きいからです。
なぜ利益率は企業ごとに違うのか|4つの構造要因
要因1: ビジネスモデル|ファブレス vs 装置産業
| モデル | 特徴 | 利益率 | 代表企業 |
|---|---|---|---|
| ファブレス | 工場を持たず、開発と販売に集中 | 高い(30-50%) | キーエンス |
| プラットフォーム | コンテンツの流通基盤を提供 | 高い(25-40%) | 任天堂 |
| 自社製造 | 企画から製造・販売まで一貫 | 中程度(8-15%) | トヨタ、ソニー |
| 人月ビジネス | 人員×稼働率で稼ぐ | 低め(5-10%) | NTTデータ |
| トレーディング | 取引の仲介で稼ぐ | 低い(3-7%) | 五大商社 |
キーエンスの51.9%は「工場を持たない」ことで固定費を極限まで削り、「付加価値の高い商品を直販する」ことで高い粗利を実現した結果です。トヨタの9.8%は「工場を持つ」製造業としては高い水準です。
要因2: 規模の経済|売上規模と利益率の関係
売上規模が大きいほど利益率が高いとは限りません。
| 企業 | 売上高 | 営業利益率 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| トヨタ | 約49兆円 | 9.8% | 規模は圧倒的だが利益率は中程度 |
| キーエンス | 約1.1兆円 | 51.9% | 規模は小さいが利益率は圧倒的 |
| 任天堂 | 約1.2兆円 | 24.2% | IPの力で高利益率 |
トヨタは「規模で勝つ」モデル、キーエンスは「利益率で勝つ」モデルです。どちらが優れているかではなく、自分がどちらの環境で力を発揮できるかが重要です。
要因3: セグメント構成|高利益セグメントの比率
企業全体の利益率は、セグメントごとの利益率の加重平均です。
ソニーの例:
| セグメント | 営業利益率 | 売上構成比 | 全体への影響 |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 19.4% | 14.2% | 全体利益率を引き上げ |
| G&NS(ゲーム) | 8.9% | 36.0% | 売上最大だが利益率は中程度 |
| 金融 | 14.0% | 7.2% | 高利益率だが売上比率が小さい |
ソニー全体(金融除く)の10.6%は、高利益率の音楽事業と中利益率のゲーム事業の組み合わせで形成されています。
→ ソニーの有報分析
要因4: 投資フェーズ|成長投資が利益率を押し下げる
積極的に投資している企業は、一時的に利益率が低下することがあります。
| 企業 | 営業利益率 | 投資状況 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| NTTデータ | 6.5% | DC投資4,130億円/年 | 攻めの投資で利益率が一時的に低下 |
| デンソー | 7.2% | R&D費6,194億円(売上比8.6%) | 技術投資の負担が利益率を圧迫 |
利益率が低い企業が「稼げない」とは限りません。NTTデータはDC投資でストック型ビジネスを構築中であり、投資が回収フェーズに入れば利益率は改善する可能性があります。
業界別の比較
製造業|トヨタ vs キーエンス vs デンソー
| 指標 | トヨタ | キーエンス | デンソー |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 | 9.8% | 51.9% | 7.2% |
| R&D費 売上比 | 2.7% | 2.7% | 8.6% |
| 設備投資 売上比 | 4.3% | 1.4% | 3.2% |
| ビジネスモデル | 自社製造 | ファブレス | 自社製造 |
キーエンスの51.9%は製造業では異次元です。ファブレスモデルで固定費を抑え、直販で中間マージンを排除し、「世界初」の高付加価値製品で価格競争を回避しています。
デンソーの7.2%はR&D費8.6%という重い技術投資が利益率を圧迫しています。しかしこの投資がADAS半導体の競争力を生んでおり、将来の利益率改善の種になっています。
→ 製造業の有報比較
IT・エンタメ|ソニー vs NTTデータ vs 任天堂
| 指標 | ソニー | NTTデータ | 任天堂 |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 | 10.6% | 6.5% | 24.2% |
| 最大利益源 | 音楽(19.4%) | 国内ITサービス | ゲーム専用機 |
| 成長投資 | IP取得1.8兆円 | DC投資4,130億円 | Switch 2準備 |
| リスク | 生成AI/配信寡占 | 人月依存 | プラットフォームサイクル |
任天堂の24.2%はIPの力です。自社開発のマリオ・ゼルダ等がソフトの高利益率を支え、プラットフォーム型で流通コストも低いです。ただしハードの世代交代で業績が大きく変動するリスクがあります。
五大商社|利益率だけでは語れない世界
| 商社 | 営業利益率 | 純利益 | 一人当たり純利益 |
|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 6.1% | 9,507億円 | 約1,530万円 |
| 三井物産 | 5.8% | 9,003億円 | 約1,600万円 |
| 伊藤忠 | 5.6% | 8,017億円 | 約1,570万円 |
| 住友商事 | 4.9% | 5,619億円 | 約670万円 |
| 丸紅 | 8.1% | 5,030億円 | 約970万円 |
出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期
商社の営業利益率は5〜8%台で製造業と同等の水準ですが、これは商社のビジネスモデルの特性を反映しています。商社は少人数で大きな取引を動かすため、一人当たり純利益で見ると三井物産は約1,600万円と高い水準です。
利益率を就活で使うテクニック
テクニック1: 「利益率の構造」を面接で語る
「御社の営業利益率{X}%は、{事業構造の特徴}によるものだと理解しています。特に{高利益率セグメント}が全体を牽引しており、{自分の関心}との接点を感じています。」
具体例(キーエンスの場合):
「御社の営業利益率51.9%は、ファブレスモデルと直販体制、そして『世界初・業界初』の付加価値商品によるものだと有報から読み取りました。この圧倒的な収益力を支える技術営業の仕事に、大学で培った課題解決力を活かしたいです。」
テクニック2: 同業2社の利益率を比較する
「御社と○○社の有報を比較し、営業利益率に{X}ポイントの差があることに注目しました。この差は{構造的要因}に起因すると理解しています。」
テクニック3: 利益率×投資で将来性を語る
利益率が高い企業が投資も積極的なら、将来の成長が期待できます。逆に利益率が高くても投資が少なければ、現在の収益力を食いつぶすリスクがあります。
| パターン | 読み方 | 代表企業 |
|---|---|---|
| 高利益率×高投資 | 攻めながら稼ぐ。理想的 | キーエンス |
| 高利益率×低投資 | 現在は強いが将来に不安 | ─ |
| 低利益率×高投資 | 投資回収で化ける可能性 | NTTデータ |
| 低利益率×低投資 | 構造的な課題の可能性 | ─ |
まとめ
営業利益率は「企業の稼ぐ力」を最もシンプルに示す指標ですが、業界構造・ビジネスモデル・投資フェーズによって大きく異なるため、異業種の単純比較は意味がありません。
| 読み方 | わかること | 就活での使い方 |
|---|---|---|
| 絶対値 | 稼ぐ力の水準 | 業界内の位置づけを把握 |
| 業界比較 | 事業モデルの差 | 自社の強みを構造的に語る |
| セグメント別 | 真の稼ぎ頭 | 高利益セグメントへの関心を示す |
| 利益率×投資 | 将来の成長余地 | キャリアの長期展望を語る |
「利益率が高い=良い会社」ではなく、「なぜその利益率なのか」を構造から説明できることが、有報を読む就活生の強みです。
- 設備投資ランキング → 設備投資で見る「攻めている企業」
- R&D費ランキング → 研究開発費で見る「技術で勝負する企業」
- 企業別分析 → キーエンス | トヨタ | [ソニー]
本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。ランキングは参考情報であり、投資判断を目的としたものではありません。