NECの有報分析 要点: NECは売上高3.4兆円のIT・社会インフラ企業。利益の74%がITサービス事業で、防衛・宇宙・海底ケーブルにR&D費407億円を投じる独自の二刀流。生体認証はNIST世界No.1。(2025年3月期有報に基づく)
この記事のデータはNECの有価証券報告書 (2025年3月期・IFRS)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は 有価証券報告書の読み方完全ガイド をご覧ください。
NEC(日本電気)は、売上高3兆4,234億円・連結従業員約10.4万人の 総合ITベンダーです。 「パソコンのNEC」というイメージは遠い昔の話です。 有報を読むと、利益の74%をITサービスで稼ぎ、 防衛・宇宙・海底ケーブルで国を支え、 生体認証は世界No.1—— 「ITサービス×社会インフラの2本柱」企業の実態が見えてきます。
NECのビジネスの実態|何で稼いでいるのか
結論: NECの利益の74%はITサービス事業が稼いでおり、 残り26%を防衛・宇宙・海底ケーブルの社会インフラ事業が支えています。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 利益率 | 利益構成比 |
|---|---|---|---|---|
| ITサービス事業 | 2兆892億円 | 2,371億円 | 11.3% | 74% |
| 社会インフラ事業 | 1兆1,481億円 | 854億円 | 7.4% | 26% |
出典: NEC 有価証券報告書 2025年3月期 セグメント情報
ITサービス事業はBluStellarブランドで コンサルティング×テクノロジーによるDX事業を展開しています。 AI・セキュリティ・クラウド等の高収益サービスへのシフトを加速中で、 利益率は11.3%まで向上しています (2025年3月期 セグメント情報)。
社会インフラ事業は防衛システム(レーダー・ソナー・通信)、 宇宙(衛星通信・衛星画像解析)、海底ケーブルが中核です。 他のITベンダーにはない「国家安全保障を支える技術」 が最大の差別化要素です。
| 期 | 売上高 | 純利益 |
|---|---|---|
| 4期前 | 2兆9,940億円 | 1,496億円 |
| 3期前 | 3兆141億円 | 1,413億円 |
| 2期前 | 3兆3,130億円 | 1,145億円 |
| 前期 | 3兆4,773億円 | 1,495億円 |
| 当期 | 3兆4,234億円 | 1,752億円 |
出典: NEC 有価証券報告書 2025年3月期 経理の状況
5年間で売上は約14%成長し、 純利益は当期1,752億円と過去最高水準を更新しています。 前期比では売上が-1.5%とやや減少しましたが、 純利益は+17.2%と大幅増益です。 これはITサービス事業の収益性改善 (高収益サービスへのシフト・価格適正化)の成果であり、 「売上を追わず利益を追う」経営の効果が数字に表れています。
富士通と比較すると、 同じ「旧・総合電機」の出身ですが、 NECは防衛・宇宙・海底ケーブルという 独自の社会インフラの柱を持つ点が決定的に異なります。 就活生にとっては、ITサービスか社会インフラか—— 配属先で仕事の世界が全く違うことを認識しておくべきです。
NECは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性
結論: NECは3つの領域に未来を賭けています。
| 賭けている領域 | 主な投資・成果 | ポイント |
|---|---|---|
| BluStellar×国内IT変革 | AI・コンサル・セキュリティへのシフト、NECネッツエスアイ完全子会社化 | 最も配属可能性が高い成長領域 |
| 防衛・宇宙・海底ケーブル | R&D 407億円、設備投資117億円 | IT企業で防衛に携わるほぼ唯一の選択肢 |
| AI・生体認証・AI創薬 | NIST世界No.1、cotomi、NEC AI Agent、NECVAX-NEO1臨床試験 | AIの応用領域が異例に広い |
賭け1: BluStellar×国内IT事業のトランスフォーメーション
NECの経営方針ではBluStellarを中核事業として位置づけ、 従来型SIから高収益サービス (AI・コンサルティング・セキュリティ)へのシフトを 加速すると明記しています(2025年3月期 経営方針)。
さらに2025年3月にNECネッツエスアイを完全子会社化しました。 NEC・NECネッツエスアイ・NECネクサソリューションズの 3社事業再編により、全国の自治体・中堅企業(SME)向けに IT・ネットワーク統合DXソリューションを コンサルティングからSI・工事・保守まで一貫提供する体制を 構築する計画です。
ポイントとしては、 NECのIT事業は大企業だけでなく 全国の自治体・中堅企業のDXまで守備範囲が広がるということです。 配属先の選択肢が広がり、 「地方のDXを現場で支える」キャリアパスも生まれます。
賭け2: 防衛・宇宙・海底ケーブル
NECを他のITベンダーから決定的に差別化するのが 社会インフラ事業の防衛・宇宙領域です。
設備投資では「防衛システムおよび衛星システムの開発設備 および生産設備ならびに海底ケーブルの生産設備」に 117億円を投下しています (2025年3月期 設備投資等の概要)。 さらにR&D費は社会インフラ事業に407億円を配賦しており、 これはITサービス事業の394億円を上回る規模です。
つまり、NECの研究開発の最大の投資先は ITサービスではなく社会インフラなのです。 防衛システム・衛星通信・海底ケーブル・ Beyond 5Gネットワークなど、 ハードウェアの研究開発には物理的な設備と 長期の投資が必要で、それがR&D費に反映されています。
日本のIT企業で防衛・宇宙に本格的に関わるのは NECと三菱電機がほぼ2強です。 経済安全保障意識の高まりで防衛予算は増加傾向にあり、 NECにとっては追い風の環境にあります。
賭け3: AI・生体認証・AI創薬
NECのAI戦略は「幅の広さ」が際立ちます。
生体認証: NIST(米国国立標準技術研究所)のベンチマークで 顔・指紋・虹彩の3部門すべて世界No.1。 さらに世界初の顔・虹彩マルチモーダル生体認証技術を開発し、 PC・タブレットのカメラだけで 数千万人規模の認証が可能です (2025年3月期 研究開発活動)。
生成AI: 生成AI「cotomi」を活用した 「NEC AI Agent」を2025年1月から提供開始。 高度な専門知識がない利用者でも 業務を入力するだけで AIが自律的にタスクを分解・実行します 。
AI創薬: 経口投与型個別化がんワクチン 「NECVAX-NEO1」のPhase I臨床試験を欧州で実施中です。 5名の患者に投与し、免疫原性68%と安全性を確認しました 。 ITメーカーががんワクチンを開発しているという事実は、 NECの技術力の幅広さを象徴しています。
| R&D費の内訳 | 金額 | 構成比 | 主な研究テーマ |
|---|---|---|---|
| 社会インフラ事業 | 407億円 | 41.0% | 防衛・衛星・海底ケーブル・Beyond 5G |
| ITサービス事業 | 394億円 | 39.7% | 生成AI・生体認証・セキュリティ |
| その他 | 190億円 | 19.2% | AI創薬・将来事業向け先端研究 |
| 合計 | 992億円 | 100% |
出典: NEC 有価証券報告書 2025年3月期 研究開発活動
R&D費992億円の最大の特徴は、 社会インフラ事業(407億円)がITサービス事業(394億円)を上回ることです。 防衛・宇宙・海底ケーブルの技術にいかに 投資しているかが数字に表れています。
| 設備投資の内訳 | 金額 | 構成比 | 内容 |
|---|---|---|---|
| その他(不動産投資) | 950億円 | 81.8% | 本社ビル信託受益権・府中新棟建設 |
| 社会インフラ事業 | 117億円 | 10.1% | 防衛・衛星・海底ケーブル製造設備 |
| ITサービス事業 | 94億円 | 8.1% | クラウドサービス関連設備 |
| 合計 | 1,161億円 | 100% |
出典: NEC 有価証券報告書 2025年3月期 設備投資等の概要
設備投資1,161億円の約82%は 本社ビル関連の不動産投資です。 事業投資としての実態は ITサービス94億円 + 社会インフラ117億円 = 211億円です。 ソフトウェア・サービス中心の ビジネスモデルを反映したコンパクトな投資構造です。
NECが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
NECの有報では、リスクに5段階の影響度と 3段階の切迫性の数値評価を付けています。 この定量評価は、経営がリスクをどの程度深刻に 捉えているかを示す重要な指標です。
有報のリスク情報の読み方については 有報 事業等のリスクの読み方 で詳しく解説しています。
品質欠陥リスク(重点対策リスク・影響度4/切迫性3)
NECは「適正な製品・サービスの提供」を 重点対策リスクの筆頭に位置づけています。 影響度4・切迫性3は全リスク中で最も高い評価です (2025年3月期 事業等のリスク)。
製品・システム・サービスが多岐にわたり サプライチェーンもグローバルに展開する中で、 品質管理を経営の最重要課題と認識しています。 CSCO(チーフサプライチェーンオフィサー)が 品質・安全性の管理責任を持ち、 新規プロジェクトは受注前審査を多面的に実施する体制を 構築しています。
サイバーセキュリティ(影響度5・最高値)
影響度は最高の5です。 「全世界がオープンに繋がり、AI利用が拡大する現在、 サイバー攻撃の高度化やビジネス化」が進む中で、 ゼロトラストセキュリティプラットフォームの構築を推進し、 NISTのCyber Security Framework 2.0に基づく体制を 構築しています。
NECは防衛・政府系システムを手がけるため、 サイバーセキュリティは他社以上に経営の根幹です。 セキュリティ分野のキャリアを志す就活生にとって、 「守るべきものの重要度」が際立つ環境です。
人的資本経営
影響度は最高の5です。 NECは「Employer of Choice - 選ばれる会社」を目指すと 明記し、エンゲージメントスコア50%を目標に掲げています 。
ジョブ型人材マネジメントの浸透、株式報酬制度の拡充、 市場競争力の高い報酬体系の構築を推進しており、 「必要な人材に選ばれるための」施策と 記載されています。 これは裏を返せば「人材獲得競争の厳しさを強く認識している」ということでもあります。 エンゲージメントスコア50%という目標は、 現状がそこに達していないことの裏返しです。
あなたのキャリアとマッチするか
向いている人
| タイプ | なぜNECが合うのか |
|---|---|
| DXコンサル×テクノロジーで企業変革に関わりたい人 | BluStellarはコンサル×先端テクノロジーの掛け合わせ。NECネッツエスアイ完全子会社化で自治体・中堅企業DXも守備範囲に |
| 防衛・宇宙・経済安全保障に技術で貢献したい人 | 日本のIT企業で防衛・宇宙に本格関与するのはNECと三菱電機が2強。R&D費407億円を投じる「堀の深い」ビジネス |
| AI・生体認証の最先端で研究と実装の両方に携わりたい人 | NIST世界No.1の生体認証、cotomi、NEC AI Agent。グローバル研究拠点6拠点(北米・欧州・シンガポール・中国・インド・イスラエル) |
| バイオ×AIの交差領域に関心がある理系学生 | AI創薬NECVAX-NEO1はITメーカーが個別化がんワクチンに挑む唯一に近い事例。NEC Bio Therapeutics GmbHが臨床試験を推進 |
向いていない人
| タイプ | なぜ合わないのか |
|---|---|
| 安定した定型業務で手堅く働きたい人 | ジョブ型移行・エンゲージメントスコア向上など「変革」を全面に打ち出しており、「同じ仕事で評価される」環境は過去のもの |
| ベンチャー的なスピード感を求める人 | 連結10.4万人の巨大組織。防衛・宇宙プロジェクトは数年〜十数年単位。「速く壊す」文化とは対極 |
| 民生品のハードウェア製造に情熱がある人 | 収益の柱はITサービス(利益74%)。ハードウェアは防衛・宇宙の特殊領域に限定 |
従業員データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 連結従業員数 | 104,194人 |
| 単体従業員数 | 22,271人 |
| 平均年齢 | 42.6歳 |
| 平均勤続年数 | 16.6年 |
| 平均年間給与 | 963万円 |
出典: NEC 有価証券報告書 2025年3月期 従業員の状況
平均年間給与963万円は日本のIT企業としてトップクラスです。 [富士通]の929万円をやや上回りますが、 差は小さく、配属事業領域 (ITサービス vs 社会インフラ)によって 仕事内容は大きく異なります。
NECも富士通と同様にジョブ型人材マネジメントへの 移行を進めており、株式報酬制度の拡充や 市場競争力のある報酬体系の構築を推進しています。 「自分のキャリアは自分で選ぶ」自律性が求められる 環境に変わりつつあります。
今から勉強しておくべき分野
| 分野 | なぜ必要か |
|---|---|
| DX・エンタープライズAI | BluStellarの核心。cotomi、NEC AI Agent、クラウドネイティブの基礎を理解しておくと面接で説得力が増す |
| 防衛・宇宙産業と経済安全保障 | 防衛予算増額、経済安全保障推進法の動向を把握しておくと「なぜNECの社会インフラ事業が追い風にあるか」を語れる |
| 生体認証技術とNIST | NIST世界No.1の意味、マルチモーダル認証の仕組みを説明できれば技術への理解を示せる |
| ジョブ型雇用とエンゲージメント経営 | 「Employer of Choice」の背景にある人材戦略を理解しておくと、面接で制度面からも志望理由を語れる |
なお、社風・職場の雰囲気・上司との関係性などは 有報ではわかりません。 NECは連結10.4万人の巨大組織であり、 ITサービス事業と社会インフラ事業では仕事の性質も カルチャーも大きく異なります。 OB/OG訪問や口コミサイトを併用し、 志望する事業領域の具体的な働き方を確認しましょう。
面接で使える有報ポイント
トーキングポイント
2セグメントの利益構成から「2本柱」を語る
「御社の有報でセグメント情報を分析し、 ITサービス事業の利益2,371億円(利益率11.3%)が全体の74%を占め、 社会インフラ事業の854億円が残りを支える構造を把握しました。 特に注目したのは、R&D費が社会インフラ事業に407億円と ITサービスの394億円を上回っている点です。」
多くの就活生が「NEC=IT企業」としか認識していない中、 2セグメントの利益構成比とR&D配分にまで踏み込んだ分析ができれば 企業理解の深さが際立ちます。
生体認証NIST世界No.1とAI戦略の幅を語る
「御社のR&D成果で最も印象的だったのは、 生体認証がNISTベンチマークで顔・指紋・虹彩の 3部門すべてで世界No.1という事実です。 さらにNEC AI Agentの提供開始やAI創薬NECVAX-NEO1の 臨床試験と、AIの応用領域の広さに驚きました。」
NECネッツエスアイ完全子会社化の構造転換を語る
「御社が2025年3月にNECネッツエスアイを完全子会社化し、 3社事業再編で全国の自治体・中堅企業向けDXの 一貫体制を構築する計画に注目しました。 これは国内IT市場の構造的な変化を見据えた 戦略だと理解しています。」
「Employer of Choice」の人材戦略を語る
「御社の経営方針で『Employer of Choice - 選ばれる会社』を 目指すと明記されていること、 エンゲージメントスコア50%の目標、 ジョブ型人材マネジメントの浸透に、 人的資本経営への本気度を感じました。」
逆質問(面接で使える)
-
「有報でR&D費が社会インフラ事業407億円とITサービス事業394億円を上回っていますが、今後AIやDXの進展により、この配分はどのように変化していく想定ですか?」──R&D費の配分構造を正確に把握した高度な質問
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「社会インフラ事業の防衛・宇宙領域とITサービス事業のBluStellarの間で、技術やナレッジの相互活用はどの程度行われていますか?」──2セグメントのシナジーを問う構造的な質問
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「エンゲージメントスコア50%の目標を掲げていらっしゃいますが、スコア向上のために現場レベルで最も効果があった施策はどのようなものですか?」──経営方針の数値目標を踏まえ現場の実態を引き出す質問
-
「AI創薬のNECVAX-NEO1は大変興味深いですが、IT企業がバイオ領域に進出する上で、最も大きなチャレンジは何でしたか?」──有報のR&D活動を読み込んだ上で事業化の難しさを問う質問
有報データから逆算して今から学ぶべき分野
| 分野 | 根拠(有報) | 具体的アクション |
|---|---|---|
| DX・クラウド技術 | BluStellar(DX価値創造モデル)がITサービス事業の成長戦略(2025年3月期) | クラウド基礎(AWS/Azure)、DXコンサル手法の学習 |
| サイバーセキュリティ・防衛技術 | 防衛・宇宙にR&D費407億円、社会インフラ事業の核心(2025年3月期) | 情報セキュリティの基礎、ネットワーク技術の学習 |
| AI・生体認証 | NIST世界No.1の生体認証技術、AI創薬NECVAX-NEO1(2025年3月期) | 機械学習・深層学習の基礎、画像認識技術入門 |
| 社会インフラの知識 | 海底ケーブル・衛星通信・スマートシティが成長分野(2025年3月期) | 通信インフラ・社会システムの基礎知識 |
まとめ
- NECはITサービス×社会インフラの2本柱で3.4兆円規模を運営し、純利益は過去最高の1,752億円
- 防衛・宇宙・海底ケーブルは他のITベンダーにない独自の強み。生体認証NIST世界No.1、AI創薬と技術の幅も際立つ
- 「パソコンのNEC」は過去の話。有報が語るのは、国のインフラとDXの 両方を支えるテクノロジーカンパニーの姿
NECに関心がある方は、同じく「旧・総合電機」から IT企業への転換を進める [富士通の有報分析]や、 DX×社会インフラの先駆者である 日立製作所の有報分析 との比較もおすすめです。
研究開発費やAI・DX投資の AI・DX投資ランキング をご覧ください。 有報の基本的な読み方は [有価証券報告書の読み方完全ガイド]、 研究開発費の見方は 有報 設備投資・R&Dの読み方 で解説しています。