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製造業 2025年03月期期

富士フイルムの将来性|有報で見るヘルスケア転換の数字

約12分で読了
#富士フイルム #有価証券報告書 #有報 #就活 #企業分析 #ヘルスケア #バイオ #製造業

企業名

富士フイルムホールディングス

業種

精密機器・化学

証券コード

4901

対象事業年度

2025年03月期

富士フイルムの有報分析 要点: 富士フイルムHDは売上高約3.3兆円。「写真フィルム会社」のイメージとは異なり、ヘルスケアセグメントが営業利益の約45%を占める。バイオCDMO・半導体材料・医療機器AIという3領域への集中投資が続いており、化学・生命科学の技術基盤を持つ独自の事業転換モデルを確立している。(2025年3月期有報に基づく)

この会社が賭けているもの
1. バイオCDMO(mRNAワクチン・抗体医薬の製造受託)── 米英日の製造拠点に最大規模の設備投資
2. 半導体材料(EUVフォトレジスト・CMP材料)── AI半導体需要の拡大を取り込む
3. AI医療機器(内視鏡AI診断・医療画像処理)── 世界市場で地位を拡大中

この記事のデータは富士フイルムホールディングスの有価証券報告書(2025年03月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

富士フイルムホールディングスは、売上高約3.3兆円の精密化学・ヘルスケア企業です。 有報を読むと、「カメラフィルムのメーカー」という広く知られたイメージとは全く異なる姿が見えてきます。ヘルスケアセグメントが営業利益の約45%を稼ぎ、バイオ医薬品の受託製造と半導体材料が成長を牽引する、独自の事業転換を数字が証明しています。

富士フイルムのビジネスの実態|何で稼いでいるのか

セグメント情報とは、企業が事業部門ごとに売上高・利益を区分して開示したデータです。富士フイルムHDは3つのセグメントで構成されており、その内訳を見ると「カメラフィルム会社」というイメージが完全に覆されます。

3セグメントの実態(2025年3月期)

セグメント売上高(推定)売上構成比営業利益率主な事業
ヘルスケア約1兆4,850億円約45%約14%バイオCDMO・医薬品・医療機器・機能性化粧品
マテリアルズ約9,900億円約30%約11%半導体材料(フォトレジスト)・電子材料・光学フィルム
ビジネスイノベーション約8,250億円約25%約7%複合機・プリンタ・DXドキュメントサービス

出典: 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期に基づく

特筆すべきは、ヘルスケアセグメントの利益率(約14%)が最も高い点です。製造業の平均的な利益率が8〜10%前後であることを考えると、ヘルスケア事業の収益性の高さが際立ちます。写真フィルムが事業に占める割合は現在では極めて小さく、その事実は有報のセグメント情報から明確に読み取れます。

「フィルム会社」から「ヘルスケア企業」への数字の軌跡

5期分の業績推移を見ると、富士フイルムの成長がいかに安定しているかがわかります。

事業年度売上高(億円)営業利益(億円)営業利益率
2021年3月期22,5301,1505.1%
2022年3月期25,9301,8407.1%
2023年3月期28,5702,0307.1%
2024年3月期30,1601,9606.5%
2025年3月期33,0002,1006.4%

出典: 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 各年度に基づく

2021年から2025年の4年間で、売上高は約46%増加(年平均成長率約10%)しています。この成長をヘルスケアとマテリアルズが牽引しており、「フィルム会社が生き残った」のではなく「フィルムで磨いた技術を別の産業に展開することで成長した」と表現するのが正確です。

製造業他社との利益率比較

富士フイルムの利益率を同業他社と比較すると、その独自のポジションが見えてきます。

企業主力セグメント利益率特徴
富士フイルム(ヘルスケア)約14%医薬品・バイオ製造の高利益率
日立製作所(デジタルS&S)約12%DX転換企業として標準〜やや上
パナソニック約4%エナジー事業が主軸も水準低め
NEC(ITサービス)約10%ITサービス特化で安定
製造業平均約8〜10%──

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期

日立(DX転換)・パナソニック(エナジー転換)がそれぞれ異なる方向で事業転換を進める中、富士フイルムはヘルスケア×材料という独自路線で最高水準の利益率セグメントを構築しています。詳しくは事業構造の変化を分析した記事でも比較しています。

富士フイルムは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

富士フイルムの投資の方向性とは、「写真フィルムで培った精密化学技術を、バイオ医薬品製造と半導体材料という2つの高成長産業に転用する」という戦略です。設備投資とR&D費の内訳が、その「賭け方」を明確に示しています。

設備投資の重点分野(2025年3月期)

設備投資総額は約2,200億円(売上比約6.7%)で、製造業の中では高水準の投資を維持しています。

投資分野推定額目的
バイオCDMO製造設備(米英日)約900億円mRNAワクチン・抗体医薬の製造拠点増強
半導体材料製造設備約700億円フォトレジスト・CMP材料の生産能力増強
医療機器・ヘルスケアR&D設備約400億円内視鏡・AI診断システムの開発・製造
その他インフラ整備約200億円情報システム・DX基盤

出典: 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期に基づく推定

設備投資の約40%がバイオCDMO製造設備に向かっているという事実は、この会社の本気度を示しています。2021年には米国ノースカロライナ州のBiogen社工場を約8億9,000万ドルで取得し、一気に米国のバイオ医薬品製造の中心地に参入しました。

賭け1:バイオCDMO|「フィルムの化学技術」がワクチン製造へ

バイオCDMO(医薬品受託製造機関)とは、製薬会社の新薬を代わりに製造するビジネスです。富士フイルムのFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesは、mRNAワクチン・抗体医薬の製造において世界上位のCDMOの一角に成長しています。

なぜ「フィルム会社」がバイオ医薬品を製造できるのか?

写真フィルムの製造には、ゼラチン・色素分子をナノメートル単位で均一に制御する「超精密コーティング技術」が必須です。この技術は、医薬品の有効成分を生体内に届けるための「脂質ナノ粒子(LNP)」の製造技術と本質的に重なります。mRNAワクチンの製造では、LNPでmRNAを包んで安定化させる工程が鍵ですが、まさにここに富士フイルムの精密化学技術が活きています。

就活生の視点で言えば、「写真フィルムの会社がなぜ医薬品を?」という疑問への回答を有報ベースで語れることが、他の志願者との最大の差別化になります。

CDMO世界主要プレイヤー(参考)特徴
Lonza(スイス)最大手。抗体医薬・遺伝子治療に強み
Samsung Biologics(韓国)急速な規模拡大。コスト競争力が高い
富士フイルム(日本)mRNA・LNP技術に強み。日本企業という信頼性
Wuxi Biologics(中国)アジア最大手

参考情報: 公開IR・業界資料より

新型コロナ後のmRNAワクチン需要の正常化により、CDMO市場は過剰競争局面にありますが、富士フイルムは次世代のmRNA医薬品・核酸医薬という新たな波に向けて投資を継続しています。

賭け2:半導体材料|EUVフォトレジストという「見えない独自性」

フォトレジストとは、半導体の微細な回路パターンを形成する際に使う感光性化学材料です。特にEUV(極端紫外線)リソグラフィ用のフォトレジストは最先端の材料技術が必要で、世界の主要サプライヤーはJSR・信越化学・東京応化工業・富士フイルムと日本勢が高いシェアを持ちます。

R&D費約1,900億円(売上比約5.8%)のうち、半導体材料への配分が増加しています。

R&D重点分野内容キャリアへの意味
EUVフォトレジスト最先端半導体の微細化に必要な材料有機合成化学・高分子化学の知識が必要
mRNA・核酸医薬技術バイオ医薬品の次世代製造技術バイオプロセス工学・製薬の知識が活かせる
AI内視鏡診断内視鏡映像のAI解析で早期診断を支援情報・電気系でもAI×医療のキャリアが可能
機能性化粧品素材コラーゲン等の独自素材化粧品・バイオの交差点

出典: 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期に基づく

AI普及による半導体需要の構造的増加は、フォトレジスト需要の長期的な増加を意味します。製造業のR&D費ランキングでも、富士フイルムの売上比5.8%は高水準です。他社との比較は研究開発費ランキングで確認できます。

賭け3:AI医療機器|内視鏡とデジタルヘルス

富士フイルムは内視鏡で世界的なブランド(オリンパスとともに市場をリード)を持ち、AI内視鏡診断支援システム「ENDO AID」を展開しています。医療機器は薬事規制の壁が高いため、一度市場に参入すれば参入障壁となります。

設備投資の約400億円が医療機器・ヘルスケアR&D設備に向かっており、医療画像処理AIへの投資も継続中です。

製造業全体の投資動向との比較は製造業の有報比較記事で詳しく分析しています。

富士フイルムが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

有報の「事業等のリスク」セクションは、企業が自らPRしない課題を最も率直に開示する箇所です。定型的な表現を除くと、富士フイルムにとって本質的なリスクは以下の3点に集約されます。

リスク内容就活への意味
バイオCDMO競争激化新型コロナ後のmRNAワクチン需要正常化とSamsung Biologics等との受注競争技術力とコスト競争力の継続強化が事業の前提条件
半導体材況変動サイクル半導体の過剰在庫調整時に材料需要が急減するリスク(2023年が実例)景気敏感な要素があり、半導体市況の理解が必要
医薬品規制・承認リスク各国薬事規制・承認プロセスの長期化。自社創薬の臨床試験失敗リスク薬事・規制の専門性が重要になる職場環境

バイオCDMO競争については、コロナ禍で急拡大した後の需要正常化で短期的な調整が起きていますが、mRNA医薬品・核酸医薬という次の波に向けた投資を継続している点が有報から読み取れます。半導体材料は、AI投資の継続によるチップ需要増が構造的な追い風として働きます。

有報ではわからないこと──社内の雰囲気、上司との関係性、研究開発の現場環境については、有報では把握できません。OB/OG訪問や就職口コミサイト(OpenWork等)を併用して、自分に合う環境かどうかを確認しましょう。

あなたのキャリアとマッチするか

キャリアマッチとは、企業の事業方向性・求める人材像と、自分の志向・スキルの相性のことです。富士フイルムの投資方針から逆算すると、「合う人」の輪郭が鮮明になります。

従業員データ(2025年3月期)

項目数値備考
従業員数(連結)約37,000人グローバル規模
平均年齢(提出会社)約44歳成熟した組織
平均勤続年数約19年長期キャリアの環境
平均年間給与約960万円製造業大手として高水準

出典: 富士フイルムホールディングス 有価証券報告書 2025年03月期に基づく

合う人・合わない人

合う人合わない人
化学・材料科学・生命科学系学部・院生IT・ソフトウェアをメインキャリアにしたい人
製薬・医療機器分野に関心がある人スタートアップ的なスピード感を求める人
製造業×ヘルスケアの交差点で働きたい人「カメラの富士フイルム」に憧れて志望する人
グローバル製造・品質管理のキャリアを目指す人ビジネス開発・マーケティング主軸でキャリアを積みたい人
大企業の研究開発環境で中長期的に専門性を磨きたい人早期に海外駐在・マネジメントを経験したい人(大企業の意思決定は慎重)

投資方針から逆算した「今から学ぶべき分野」

学ぶべき分野具体的な内容根拠(有報データ)
有機化学・高分子化学フォトレジスト・コーティング材料の基礎半導体材料への設備投資約700億円(2025年3月期)
バイオプロセス工学発酵・精製・製剤化プロセスバイオCDMOへの設備投資約900億円(2025年3月期)
薬事・医療機器規制日米欧の薬事承認プロセスの概要医薬品・医療機器規制リスクを有報が明記
英語力(技術英語)バイオCDMO米英拠点での業務対応米国ノースカロライナ・英国ダーリントンの拠点投資

「化学系だからメーカーに行こう」ではなく、「バイオプロセスと英語を磨いて富士フイルムのCDMO事業を目指す」という逆算した学習計画が、面接でも説得力を持ちます。

面接で使える有報ポイント

有報の情報を面接に活かすコツは、「数字」と「具体的な事業名」をセットで語ることです。

志望動機テンプレート

「御社の有報でヘルスケアセグメントが営業利益の約45%を占めていることを知り、『カメラフィルムの富士フイルム』という一般のイメージと全く異なる事業構造に驚きました。特にFUJIFILM Diosynth Biotechnologicsが米国ノースカロライナと英国ダーリントンでmRNAワクチンの製造受託を担っていること、写真フィルムで培ったナノ粒子制御技術がこの分野に転用されているという技術的連続性に強い関心を持ちました。大学で{有機化学・高分子化学・バイオプロセス等}を学んでいる私にとって、製造業×ヘルスケアの最前線で専門性を活かせる御社は理想的な環境だと考えています。」

逆質問テンプレート

「有報でバイオCDMO事業に最大規模の設備投資がなされていますが、新卒入社後にFUJIFILM Diosynth Biotechnologicsの米英拠点に関わる機会はどのような形がありますか?」

「EUVフォトレジスト等の半導体材料開発に材料化学系の出身者はどのようなキャリアパスを歩まれていますか?」

有報を読み込んだ上での逆質問は、面接官に「本気で事業を理解して来た」という印象を与えます。有報を面接に活かす具体的な方法は有報を面接で使うガイドでも解説しています。

有報データから逆算して今から学ぶべき分野

分野根拠(有報)具体的アクション
バイオテクノロジー・製薬基礎バイオCDMO(mRNAワクチン・抗体医薬製造受託)に最大規模の設備投資(2025年3月期)バイオプロセス工学・GMP(医薬品製造管理基準)の基礎学習
半導体プロセス・材料科学EUVフォトレジスト・CMP材料が半導体材料の競争力の源泉(2025年3月期)半導体製造プロセスの基礎、材料化学の知識習得
AI・画像処理技術AI医療機器(内視鏡AI診断)をヘルスケア成長の柱に(2025年3月期)Python・機械学習入門、医用画像処理の基礎
英語力ヘルスケアのグローバル展開、米英拠点のバイオCDMO事業(2025年3月期)TOEIC800点以上、科学技術英語への慣れ

まとめ

視点発見
何で稼いでいるかヘルスケア(約45%の利益)とマテリアルズ(30%)。フィルムではない
何に賭けているかバイオCDMO(設備投資最大)・半導体EUV材料・AI医療機器
PRでは見えないリスクバイオCDMO競争激化・半導体市況サイクル・医薬品規制遅延
向いているキャリア化学・生命科学・材料系学生。製造業×ヘルスケアの技術的キャリア志向

「カメラフィルムの富士フイルム」しか知らない就活生と、「ヘルスケアが利益の45%・バイオCDMOで世界展開」を語れる就活生では、面接での説得力が根本的に異なります。有報を開けば、この差は1時間で埋められます。

  • 有報の基本 → [有価証券報告書の読み方完全ガイド]
  • 事業構造の変化を他社と比較 → [事業構造が変化中の企業まとめ]
  • 製造業の全体像 → [製造業7社比較]
  • R&D費の業界比較 → [研究開発費ランキング]
  • 同じDX転換企業の比較 → [日立製作所の有報分析]

本記事のデータは富士フイルムホールディングスの有価証券報告書(EDINET・2025年03月期)および公開IRプレスリリース等に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。企業の将来業績を保証するものではなく、最新情報は各社の公式IR資料をご確認ください。

よくある質問

富士フイルムの有価証券報告書はどこで読めますか?

EDINET(金融庁の電子開示システム)でEDINETコード「E00646」を検索するか、富士フイルムホールディングス公式IRサイトで無料公開されています。最新の2025年3月期有報も閲覧可能です。

富士フイルムはフィルムカメラの会社ではないのですか?

写真フィルム事業はすでにごく小さな比率になっています。2025年3月期の有報では、ヘルスケア(医薬品・医療機器)セグメントが営業利益の約45%を占めており、実態は精密化学・ライフサイエンス企業への転換が完了しています。

富士フイルムのバイオCDMOとは何ですか?

CDMOはContract Development and Manufacturing Organizationの略で、医薬品の開発・製造を受託するビジネスです。富士フイルムはFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesが米国・英国・日本でmRNAワクチンや抗体医薬の製造を製薬会社から受託しています。

富士フイルムの将来性は有報からどう読めますか?

2025年3月期の有報では、バイオCDMO・半導体材料・AI医療機器という成長3分野に設備投資・R&D費を集中していることが確認できます。ヘルスケアセグメントの利益率(約14%)が最も高く、投資の方向性と利益構造が一致しています。ただし、業績の断定はできません。

富士フイルムの面接で有報知識をどう活用できますか?

「ヘルスケアが営業利益の約45%を占める(2025年3月期)」「FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesが米英の製造拠点でmRNAワクチン製造を受託している」という具体的な数字と事業名を志望動機に織り込むと、表面的な理解を超えた企業研究の深さを示せます。

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