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小売業界を有報で読み解く|4社比較でわかる業界構造と戦略の違い

約17分で読了
#小売業界 #業界研究 #有報 #就活 #イオン #ファーストリテイリング #セブン&アイ #オリエンタルランド
この記事でわかること
1. 小売業界の収益構造と、4社の有報比較で見える業界の全体像
2. 同じ「小売業」でもビジネスモデルと収益性が根本的に異なる4社の戦略
3. 国内市場縮小・海外展開・DXなど業界共通の課題と各社の対応策

この記事のデータはイオン(2024年2月期)、セブン&アイHD(2024年2月期)、ファーストリテイリング(2024年8月期)、オリエンタルランド(2025年3月期)の有価証券報告書に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

小売業界は「お店で物を売る」というシンプルなイメージで語られがちですが、有報を開くとその実態は驚くほど多面的です。

セブン&アイHDは売上9兆8,505億円の約60%が北米7-Eleven事業であり、実態は「グローバルガソリン×コンビニ企業」。ファーストリテイリングは営業利益率16.1%のSPA(製造小売業)で、売上の54%が海外ユニクロから生まれるグローバルブランド企業。イオンは売上8兆3,373億円の「スーパー」に見えて、金融セグメントが利益の約25%を叩き出す「金融複合体」。オリエンタルランドは営業利益率25.3%という小売・サービス業界随一の高収益を、ディズニーライセンス×自社運営モデルで実現しています。有報を読むことで初めて見える「4社4様の本当の姿」を、この記事で俯瞰します。

小売業界の全体像|有報で見える業界構造

小売業界の全体像とは、「消費者に商品・サービスを直接届ける」という共通点を持ちながら、業態・収益モデル・グローバル化の度合いが企業ごとに根本的に異なる産業構造のことです。有報のセグメント情報を読むと、「小売業」という一つの業種分類では到底括れない多様性が浮かび上がります。

業界の特徴

特徴内容
ビジネスモデル店舗・ECで消費者に商品を販売する。業態によりGMS・コンビニ・SPA・テーマパークなど多種多様
市場構造国内市場は人口減少で縮小傾向。成長は海外展開・高付加価値化・非小売事業への多角化が鍵
利益の源泉業態により大きく異なる。薄利多売(GMS)から高収益(SPA・テーマパーク・金融)まで幅広い
共通課題国内市場縮小、人手不足、消費者のEC移行、原材料・物流コスト上昇

国内小売市場は約150兆円規模ですが、人口減少と少子高齢化により中長期的に縮小圧力がかかっています。この構造的課題に対して、4社はそれぞれ全く異なるアプローチで成長を目指しています。

小売業界の有報を読む際に最も注目すべき指標は、業態の違いから生まれる3つの特有項目です。

有報で見るべき指標小売業界での意味
セグメント別利益構成比売上と利益の「乖離」に注目。イオンの金融セグメント(売上5%→利益25%)のように、本業以外の高収益事業が隠れていることが多い
海外売上比率0%から60%まで企業間で極端な差がある。グローバル化の度合いが就活の企業選びの重要な軸
設備投資額店舗・物流・DXへの投資額と方向性が「会社の未来」を示す。イオン約4,000億円、セブン&アイ約3,000億円と巨額

有報で読む小売業界の「利益率格差」

小売業界の有報を初めて読む就活生が最も驚くのが、同じ「小売業」に分類される企業間の営業利益率の格差です。オリエンタルランドの25.3%とイオンの約3.0%では、約8倍の差があります。

この差の主因はビジネスモデルの違いです。GMS(総合スーパー)は薄利多売が宿命であり、営業利益率1〜3%が標準的です。一方、SPAモデルのファーストリテイリングは中間マージンを排除して16.1%を実現し、ライセンス型テーマパークのオリエンタルランドは体験価値への対価として25.3%を達成しています。面接で「小売業界の利益率格差とその構造的要因」を説明できると、業界理解の深さが伝わります。

4社の基本指標比較|数字で見える業界地図

基本指標比較とは、同一業界の企業を定量データで並べることで、規模・収益性・投資姿勢の違いを可視化する分析手法です。小売4社の有報データを一覧すると、同じ業界とは思えないほど各社の特徴が鮮明に分かれます。

指標イオンセブン&アイファーストリテイリングオリエンタルランド
売上高8兆3,373億円9兆8,505億円3兆1,038億円6,794億円
営業利益2,508億円5,342億円5,009億円1,721億円
営業利益率約3.0%約5.4%16.1%25.3%
海外売上比率約15%約60%約54%ほぼ0%
連結従業員数163,584名77,902名60,454名6,068名(正社員)
平均年収(単体)約862万円約819万円約1,179万円約601万円
決算期2024年2月期2024年2月期2024年8月期2025年3月期

出典: 各社 有価証券報告書(イオン・セブン&アイは2024年2月期、ファーストリテイリングは2024年8月期、オリエンタルランドは2025年3月期)

企業タイプの違い

有報の事業構造から、4社は全く異なるタイプの小売企業であることがわかります。

タイプ特徴企業
金融複合×GMS型大規模店舗網を基盤に金融・不動産で高利益を確保。東南アジアへのモール展開イオン
グローバルコンビニ×金融型北米7-Elevenが売上の60%。セブン銀行の高収益金融インフラ。非中核事業売却でコンビニ特化セブン&アイ
SPA×グローバルブランド型企画から販売まで垂直統合。素材技術×デジタルで高収益。海外が過半ファーストリテイリング
ライセンス×高収益テーマパーク型ディズニーライセンス×自社運営で利益率25%超。体験価値の引き上げで量より質オリエンタルランド

「小売業界を志望する」と言うとき、この4社の違いを理解しているかどうかで、面接官に与える印象は大きく変わります。

各社の「何に賭けているか」|4つの異なる戦略

投資方向性とは、企業が将来の成長に向けて「何にお金と人材を集中しているか」を示すデータであり、有報の設備投資・経営方針の項目から読み取ることができます。4社が「小売の先」に何を見ているかは、驚くほど異なります。

イオン: 金融複合体 × 東南アジアモール × DX

イオンの賭けは「小売の顔をした金融・不動産複合体」です。売上8兆3,373億円の約38%を占めるGMSが営業利益の約10%しか稼がない一方、売上構成比わずか約5%の金融セグメント(イオン銀行・イオンクレジット)が営業利益の約25%を叩き出しています(2024年2月期)。

設備投資額は年間約4,000億円(2024年2月期)。その一部が東南アジア(マレーシア・ベトナム・カンボジア等)への大型ショッピングモール出店に向かっています。東南アジアは2030年代にかけて中間層が急拡大する「人口ボーナス地域」であり、海外売上比率約15%の拡大余地は大きいと考えられます。

さらにiAEONスーパーアプリで金融・ポイント・買い物を一元化するDX戦略を推進中。「巨大な店舗網で集めた顧客基盤を、金融・デジタルで収益化する」というのがイオンの成長モデルです。

セブン&アイ: 北米7-Eleven × セブン銀行 × コンビニ特化

セブン&アイHDの賭けは「グローバルコンビニ企業」への一本化です。2021年のSpeedway買収(約210億ドル)で北米のガソリンスタンド併設コンビニを傘下に収め、海外コンビニセグメントが連結売上の約60%を占める構造に変貌しました(2024年2月期)。

国内ではセブン-イレブン・ジャパンが売上の約15%ながら利益の約35%を担う高収益コアです。セブン銀行はATM約2.6万台で売上の約3%・利益の約8%を稼ぐ金融インフラ事業です。一方、そごう・西武の売却(2023年)とイトーヨーカドーの店舗縮小は「コンビニ特化」への構造転換の明確な証拠です。

設備投資は年間約3,000億円(2024年2月期)で、北米店舗の改装・食品設備強化が主な用途。Couche-Tard(カナダ)の買収提案を拒否し、独立経営でグローバルコンビニの覇権を目指す戦略が有報から読み取れます。

ファーストリテイリング: SPA × グローバルブランド × デジタル物流

ファーストリテイリングの賭けは「SPAモデルの垂直統合で世界No.1のアパレル企業」になることです。企画・素材調達・製造委託・販売を自社で一貫して管理するSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)モデルで、中間マージンを排除し、営業利益率16.1%(2024年8月期)という小売業では異質の高収益を実現しています。

海外ユニクロは売上の54%・利益の55%を占め、実態はすでにグローバルブランド企業です。中国が最大市場(約850店舗)ですが、2030年売上10兆円目標に向けて欧米・インドへの展開が加速中です。ヒートテック・エアリズム等の機能性素材を東レとの共同開発で生み出す素材技術力も差別化の源泉です。

設備投資は年間約710億円(2024年8月期)で、RFID全商品タグ付与・AI需要予測・倉庫自動化に向かっています。「小売業」の外見とは異なり、テクノロジー投資を怠らない企業です。

オリエンタルランド: ディズニーライセンス × 客単価戦略 × リゾート総合体

オリエンタルランドの賭けは「テーマパーク企業からリゾート滞在型総合体への進化」です。ディズニーライセンス×自社運営という世界で唯一のモデルで営業利益率25.3%(2025年3月期)を達成。入園者数がコロナ前を約17%下回る約2,700万人でも、客単価17,833円(コロナ前の約1.5倍)への引き上げにより過去最高益を更新し続けています。

ファンタジースプリングス約3,010億円、スペースマウンテン大規模改修約750億円、ディズニークルーズ約3,300億円と、数千億円規模の投資を継続中。2035年に売上1兆円を目指す長期経営戦略のもと、パーク・ホテル・クルーズを組み合わせた「リゾート総合体」への進化が有報に明示されています。ライセンス契約は2076年まで延長済みであり、長期的なビジネス基盤の安定性も特筆すべき点です。

投資指標の横断比較

指標イオンセブン&アイファーストリテイリングオリエンタルランド
最大の賭け金融複合体×東南アジアモール北米7-Elevenのグローバルコンビニ化SPA×10兆円グローバルブランド客単価×リゾート総合体
設備投資額約4,000億円約3,000億円約710億円約902億円
海外戦略東南アジア大型モール出店Speedway買収で北米コンビニ支配海外ユニクロ拡大(欧米・インド)国内リゾート価値の最大化
高収益の源泉金融(利益比25%)・デベロッパー(利益比20%)国内コンビニ(利益比35%)・セブン銀行SPA垂直統合(利益率16.1%)ディズニーライセンス×自社運営(利益率25.3%)
中期目標DXスーパーアプリ×東南アジア拡大コンビニ特化・非中核事業売却完了2030年売上10兆円2035年売上1兆円

出典: 各社 有価証券報告書

「同じ小売業界でもこれほど賭けの方向が異なる」という発見は、面接で業界理解の深さを示す武器になります。4社のどの戦略に共感するかを自分の言葉で語れることが、志望動機の説得力を決定的に高めます。

業界共通のリスク|有報が語る小売業の現実

事業等のリスクとは、有価証券報告書の中で企業が自ら開示する経営上のリスク要因であり、採用サイトやPRでは語られない率直なリスク認識が記載されています。4社の有報に共通して登場するリスクを3つに整理します。

リスク1: 国内市場の構造的縮小|小売業最大の課題

国内市場縮小とは、日本の人口減少と少子高齢化により、小売市場の総需要が中長期的に減少していく構造的な問題です。この課題は4社すべてが「事業等のリスク」に記載しています。

企業国内市場縮小への対策
イオン金融・不動産の高収益事業で国内小売の薄利を補完。東南アジアへの出店拡大
セブン&アイ北米7-Elevenを成長エンジンに据え、国内はコンビニに特化・非中核事業を売却
ファーストリテイリング海外ユニクロが既に売上の54%。2030年10兆円目標の大半は海外成長で達成
オリエンタルランド入園者数ではなく客単価の引き上げで「量から質」への転換。クルーズ等の新事業開発

4社に共通するのは、「国内だけでは成長しない」という認識です。ただしその対応策は海外展開(セブン&アイ・ファーストリテイリング)、事業多角化(イオン)、付加価値向上(オリエンタルランド)と三者三様です。

リスク2: 人手不足と人件費上昇|現場オペレーションの壁

小売業は店舗運営に大量の人員を必要とする労働集約型産業です。イオンは連結16万人超、セブン&アイは約7.8万人、ファーストリテイリングは約6万人、オリエンタルランドは正社員+準社員で約2.7万人の従業員を抱えています。

最低賃金の上昇と労働力人口の減少は、全社の収益を直接圧迫するリスクです。これに対しファーストリテイリングはRFID・AI・倉庫自動化で省力化を進め、イオンは無人レジ・ネットスーパーでDXを推進しています。オリエンタルランドは準社員(キャスト)の比率が正社員の約3.4倍と高く、人材確保と定着率の維持が経営上の重要課題です。

リスク3: 海外事業リスク|為替・地政学・規制

海外売上比率が高い企業ほど、為替変動・地政学リスク・現地規制の影響を受けます。

企業主な海外リスク
セブン&アイ北米ガソリン需要の変動、EV普及による事業構造転換リスク
ファーストリテイリング中国市場への依存、地政学リスク、為替変動
イオン東南アジアの政治・経済リスク、現地消費者嗜好への適応
オリエンタルランドインバウンド需要の変動リスク(為替・入国規制)。海外事業はほぼゼロ

ファーストリテイリングは中国に約850店舗を展開しており、中国経済の減速や日中関係の変化が業績に直接影響するリスクがあります。セブン&アイは北米事業がガソリン販売に大きく依存しており、EV(電気自動車)の普及が進む中、ガソリン事業の将来性が構造的課題です。

就活生にとっての示唆は、小売業界は「安定した消費関連産業」というイメージよりも、国内縮小・人手不足・海外リスクという三重の課題に直面する産業であるということです。有報のリスク情報を読んだ上で、それでもこの業界を志望する理由を自分の言葉で語れることが、面接での差別化につながります。

キャリアマッチ|小売業界が合う人・合わない人

キャリアマッチとは、企業の事業方向性と自分のキャリア志向が合っているかを確認する作業のことです。有報のデータから小売業界で求められる人材像を読み解き、自分との相性を見極めましょう。

合う人・合わない人

小売業界に合う人合わない可能性がある人
消費者の生活に直接貢献する仕事にやりがいを感じる人消費者接点のない仕事(素材・インフラ等)を希望する人
変化のスピードが速い環境で柔軟に対応できる人(消費トレンドの変化が早い)ゆっくりとした変化の中で専門性を深めたい人
現場でのオペレーション改善や効率化に興味がある人研究開発や基礎技術に没頭したい人
海外事業に興味がある人(セブン&アイ・ファーストリテイリングは海外50%超)国内完結型のキャリアを希望する人(ただしオリエンタルランドは国内中心)
デジタル技術で小売の変革に関わりたい人(DX投資が活発)ITの活用よりも対人業務を中心にしたい人

キャリアマッチ比較|自分に合う企業はどれか

志向最もマッチする企業理由(有報根拠)
金融×小売の複合ビジネスに関わりたいイオン金融セグメントが利益の約25%。イオン銀行・クレジットの高収益モデル(2024年2月期)
東南アジアで小売事業を拡大したいイオンマレーシア・ベトナム等に大型モール展開。海外比率15%の拡大余地が大きい(2024年2月期)
北米市場でコンビニ事業のグローバル展開に挑みたいセブン&アイ北米7-Elevenが売上の約60%。Speedway買収後の統合・成長が進行中(2024年2月期)
金融インフラ×小売のビジネスモデルに興味があるセブン&アイセブン銀行ATM約2.6万台。売上3%で利益8%の高収益金融事業(2024年2月期)
グローバルブランドのマーケティング・商品企画をしたいファーストリテイリング海外ユニクロが売上54%。2030年10兆円目標に向けて欧米・インド展開加速(2024年8月期)
テクノロジー×小売で業界を変革したいファーストリテイリングRFID全商品タグ・AI需要予測・倉庫自動化に継続投資(2024年8月期)
高収益の体験型ビジネスで人に感動を届けたいオリエンタルランド営業利益率25.3%。ファンタジースプリングス3,010億円の大型投資(2025年3月期)
大規模プロジェクトの企画・推進に関わりたいオリエンタルランドクルーズ3,300億円、2035年売上1兆円の長期戦略(2025年3月期)

職種の幅広さ

小売業界の有報を読むと、「店舗スタッフ」のイメージだけでは見えない多様な職種が存在することがわかります。

職種領域具体的な仕事有報からの根拠
店舗運営・マネジメント店長・エリアマネージャー・SV(スーパーバイザー)イオン16万人超・セブン&アイ7.8万人の巨大組織を現場で支える
海外事業海外店舗展開・現地法人経営・M&A推進セブン&アイ北米60%・ファーストリテイリング海外54%のグローバル事業
金融・フィンテック銀行業務・クレジット事業・決済システム開発イオン銀行・セブン銀行の金融セグメントが高収益
デジタル・ITAI需要予測・RFID・EC・スーパーアプリ開発ファーストリテイリングのデジタル投資、イオンのiAEON
商品企画・バイヤープライベートブランド開発・素材開発ファーストリテイリングのヒートテック・エアリズム等の機能性素材
不動産・施設開発ショッピングモール開発・テーマパーク施設建設イオンモール・オリエンタルランドのファンタジースプリングス
ホスピタリティパーク運営・ゲスト体験設計・ホテル運営オリエンタルランドの客単価17,833円を支える体験価値の設計

有報でわからないこと

社風・職場の雰囲気・上司との関係性・実際の配属先の業務内容といった情報は有報からは読み取れません。特に小売業界は現場での店舗勤務・シフト制・転勤が発生しやすい傾向がありますが、職種・配属先によって大きく異なります。4社の組織規模も6,000名(オリエンタルランド正社員)から16万名(イオン連結)まで大きな幅があり、組織文化・意思決定のスピードも異なります。OpenWork等の口コミサイトやOB/OG訪問を併用して、自分に合う環境かどうかを多角的に判断しましょう。

面接で使える業界知識|有報の数字で差がつく

面接で使える業界知識とは、就活サイトや企業パンフレットには載っていない、有報という公式一次情報から読み取った数字に基づく発言のことです。小売業界の面接では「お客様に喜びを届けたい」という志望動機だけでは差がつきません。

4社比較で語る業界理解

面接で小売業界の理解度を示すには、4社の違いを構造的に語ることが効果的です。

  1. 利益率格差の構造 — オリエンタルランド25.3%とイオン約3.0%で約8倍の差がある。同じ「小売業界」でもビジネスモデルによってこれほど収益性が異なるという業界構造を知っているかが鍵
  2. セグメント構造の読み方 — イオンは売上5%の金融が利益25%、セブン&アイは売上15%の国内コンビニが利益35%。売上と利益の乖離に注目することで「会社の本当の稼ぎ方」がわかると有報で確認した
  3. 海外戦略の違い — セブン&アイはSpeedway買収で北米60%、ファーストリテイリングは自力出店で海外54%、イオンは東南アジアモール15%、オリエンタルランドは国内特化。海外展開の手法と度合いが四者四様
  4. 国内縮小への対策 — 海外展開・金融多角化・客単価向上・DXと、同じ課題に対する回答が企業ごとに根本的に異なることを有報で確認した

逆質問で使えるネタ

小売4社それぞれの面接で使える、有報データに基づく逆質問の例です。

イオン向け: 「有報で金融セグメントが営業利益の約25%を占めることを確認しました。今後iAEONスーパーアプリと金融事業の融合がさらに進むと思いますが、デジタル人材にはどのようなスキルが求められていますか?」

セブン&アイ向け: 「有報で北米7-Elevenが連結売上の約60%を占めることを確認しました。EV普及に伴うガソリン需要の構造変化に対して、北米コンビニ事業はどのような対応を計画していますか?」

ファーストリテイリング向け: 「有報で2030年売上10兆円目標を確認しました。現在の約3倍の規模達成には欧米・インドでの急拡大が必要ですが、各地域で最も重要な成功要因は何だとお考えですか?」

オリエンタルランド向け: 「有報で入園者数がコロナ前を下回っても客単価1.5倍で過去最高益を達成していることを確認しました。この『量から質への転換』は今後どこまで続けられるとお考えですか?」

投資方針から逆算した「今から学ぶべき分野」

志望先学ぶべき分野根拠(有報データ)
イオン金融ビジネスの基礎金融セグメントが利益の約25%。イオン銀行・クレジット事業が高収益の柱(2024年2月期)
イオン東南アジアの消費市場マレーシア・ベトナム等への大型モール出店が成長戦略の核(2024年2月期)
セブン&アイ英語力・北米市場の知識海外売上比率約60%。北米コンビニ事業が中核化(2024年2月期)
セブン&アイフィンテック・決済の基礎セブン銀行ATM2.6万台の金融インフラ事業。インバウンド対応も成長領域(2024年2月期)
ファーストリテイリンググローバルマーケティング・英語力海外ユニクロが売上54%。2030年10兆円目標は海外拡大が前提(2024年8月期)
ファーストリテイリングデータ分析・AI活用の基礎RFID・AI需要予測・倉庫自動化への継続投資(2024年8月期)
オリエンタルランドホスピタリティ・サービス設計客単価17,833円を支える体験価値の設計力が競争力の源泉(2025年3月期)
オリエンタルランドプロジェクトマネジメントファンタジースプリングス3,010億円等の大型投資を継続推進中(2025年3月期)

まとめ

ポイント内容
業界の構造同じ「小売業」でも業態・収益モデル・海外比率が根本的に異なる。利益率は3%〜25%と約8倍の差
イオンの特徴売上8.3兆円の流通グループ。金融セグメントが利益の25%を稼ぐ「金融複合体」。東南アジアモール展開とDXが成長軸
セブン&アイの特徴売上9.9兆円だが実態は「北米コンビニ企業」。海外60%・セブン銀行の高収益金融・コンビニ特化への構造改革
ファーストリテイリングの特徴SPA垂直統合で利益率16.1%。海外54%のグローバルブランド企業。2030年売上10兆円を目指す
オリエンタルランドの特徴ディズニーライセンス×自社運営で利益率25.3%。客単価1.5倍で量から質へ転換。2035年売上1兆円を目指す
共通リスク国内市場縮小、人手不足・人件費上昇、海外事業リスク(為替・地政学)
就活のポイント「小売業が好き」を超えた数字に基づく企業理解で差がつく

小売業界の有報を読むと、「お店で物を売る」というイメージの裏にある経営のリアルが見えてきます。セブン&アイは売上の60%が北米のグローバルコンビニ企業、ファーストリテイリングは製造業水準の高収益を叩き出すSPA企業、イオンは金融と不動産で利益を支える複合体、オリエンタルランドはディズニーの力を高収益に変換するライセンスモデル企業。表面的な「小売業」のイメージを超えた企業理解を示しましょう。

本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。企業の将来の業績を保証するものではなく、最新情報は各社の公式IR資料をご確認ください。

よくある質問

小売業界の有報は他の業界と何が違いますか?

小売業界の有報ではセグメント別の売上と利益の乖離が最大の特徴です。イオンは金融セグメントが売上5%で利益25%、セブン&アイは北米コンビニが売上60%を占めるなど、「小売=店舗で物を売る」というイメージとは異なる収益構造が浮かび上がります。加えて、設備投資額(店舗・物流)が巨額であること、海外展開の度合いに大きな差があることも小売業界の有報の特徴です。

小売4社の中で売上・利益率が最も高いのはどこですか?

売上高ではセブン&アイHDが9兆8,505億円で最大です(2024年2月期)。一方、営業利益率ではオリエンタルランドが25.3%(2025年3月期)、ファーストリテイリングが16.1%(2024年8月期)と突出しています。イオンは約3.0%、セブン&アイは約5.4%と、業態によって利益率に大きな差があります。規模と収益性が比例しない点は、製薬業界と同様に有報を読む面白さです。

小売業界の海外売上比率はどのくらいですか?

セブン&アイHDは北米7-Eleven事業で海外売上比率約60%、ファーストリテイリングは海外ユニクロで約54%と、いずれも過半が海外です。イオンは東南アジア展開で約15%、オリエンタルランドはほぼ国内事業のみ(約0%)です。同じ小売業界でもグローバル化の度合いに極端な差がある点が、有報で確認すべきポイントです。

小売業界の面接で有報の知識はどう活かせますか?

小売業界の志望動機は『お客様に喜びを届けたい』に偏りがちです。有報から読み取れる数字──イオンの金融セグメント利益構成比25%、ファーストリテイリングの営業利益率16.1%、セブン&アイの北米売上比率60%、オリエンタルランドの客単価1.5倍──を引用しながら各社の戦略の違いを語れると、他の就活生との差別化になります。

小売4社の平均年収はどのくらいですか?

有報記載の単体平均年収は、ファーストリテイリングが約1,179万円(2024年8月期)で突出しています。イオンは約862万円(持株会社単体488名、2024年2月期)、セブン&アイは約819万円(持株会社単体1,074名、2024年2月期)、オリエンタルランドは約601万円(単体正社員6,068名、2025年3月期)です。ただし持株会社の年収は実際の配属先と異なるため注意が必要です。

小売業界で就活するなら何を勉強しておくべきですか?

有報から逆算すると、4社に共通して求められるのは消費者行動の理解とデジタル技術の基礎です。加えて各社の賭けに応じた専門性が有効です。イオンなら金融ビジネスの基礎、ファーストリテイリングならグローバルマーケティングとサプライチェーン、セブン&アイなら北米市場の知識と英語力、オリエンタルランドならホスピタリティとプロジェクトマネジメントです。

小売4社のうち自分に合う企業はどう見極めればよいですか?

有報の投資方向性から逆算するのが有効です。金融×小売の複合ビジネスに興味があるならイオン、SPAモデルのグローバルブランド企業で働きたいならファーストリテイリング、北米コンビニ事業というグローバル小売に関わりたいならセブン&アイ、高収益の体験型ビジネスで働きたいならオリエンタルランドがマッチします。各社の個社記事で詳細を確認しましょう。

小売業界は今後も成長しますか?

国内小売市場は人口減少で構造的に縮小圧力がかかっています。しかし有報を読むと、4社はそれぞれ異なる成長戦略で対応しています。セブン&アイとファーストリテイリングは海外展開、イオンは金融・東南アジア・DX、オリエンタルランドは客単価引き上げとクルーズ等の新事業です。『小売業界の成長性』を一括りに論じるのではなく、各社の戦略を個別に評価することが重要です。

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