関西電力の有報分析 要点: 関西電力は連結売上高約4兆3,371億円の総合エネルギー企業。国内最多級の原子力7基稼働で経常利益5,316億円を確保しつつ、情報通信(オプテージ・利益率21%)とデータセンター事業で非電力収益の多角化を推進中。(2025年3月期有報に基づく)
この記事のデータは関西電力の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
電力会社=安定のインフラ企業。その認識は関西電力の半面しか捉えていません。有報を読むと、原子力の稼働率で利益が数千億円単位で振れるダイナミックな事業構造と、電力以外の分野で着実に育つ新たな収益の柱が見えてきます。
東京ガスが脱炭素技術で事業転換を進め、JR東日本が鉄道×不動産の二刀流で稼ぐ中、関西電力は「原子力」と「非電力多角化」の組み合わせで独自のポジションを築いています(2025年3月期有報)。
関西電力のビジネスの実態|何で稼いでいるのか
関西電力の事業は4つのセグメントで構成されています(2025年3月期有報セグメント情報より)。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 経常利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー事業 | 3兆5,407億円 | 81.6% | 4,113億円 | 11.6% |
| 送配電事業 | 3,891億円 | 9.0% | 557億円 | 14.3% |
| 情報通信事業 | 2,235億円 | 5.2% | 469億円 | 21.0% |
| 生活・ビジネスソリューション事業 | 1,836億円 | 4.2% | 262億円 | 14.3% |
(出典: 2025年3月期有報セグメント情報。売上高は外部顧客向け、経常利益はセグメント利益。単位: 百万円を億円に換算)
売上の8割超はエネルギー事業ですが、注目すべきは残り2割の構成です。情報通信事業は利益率21.0%と全セグメントで最高水準です。生活・ビジネスソリューション事業は売上前年比+17.4%・利益前年比+17.1%と最も高い成長率を記録しています(2025年3月期有報)。
エネルギー事業|原子力7基が利益の柱
関西電力最大のセグメントであるエネルギー事業の核心は、国内最多級となる原子力発電所7基の稼働です。
| 発電所 | 基数 | 状況 |
|---|---|---|
| 高浜発電所 | 4基 | 全基稼働中 |
| 大飯発電所 | 2基 | 稼働中 |
| 美浜発電所 | 1基 | 40年超運転延長で稼働 |
(出典: 2025年3月期有報)
原子力発電は建設費が巨額ですが、稼働後の燃料費は火力発電と比べて圧倒的に低コストです。有報には「原子力利用率が1%悪化すると費用が53億円増加する」と明記されています(2025年3月期有報 事業等のリスク)。原子力の稼働率がそのまま利益に直結する構造です。
ただし前期(2024年3月期)の経常利益5,838億円から今期は4,113億円へ29.5%減益しています。これは前期に燃料費調整の時間差効果で利益が膨らんだ反動であり、絶対額としては依然として高水準です。
情報通信事業|オプテージの利益率21%
子会社オプテージが展開する「eo光」は関西圏で高いシェアを持つ光回線サービスです。売上高2,235億円に対して経常利益469億円、利益率21.0%です(2025年3月期有報)。この収益力は「電力会社の子会社」のイメージを覆します。
電力インフラ(電柱・管路)を活用して通信網を構築しているため、通信専業会社とは異なるコスト構造を持っています。中期経営計画では2025年度の経常利益目標を450億円以上としていますが、既にこの目標を上回っています。
生活・ビジネスソリューション事業|データセンターが急成長
関電不動産開発やハイパースケールデータセンターを含むこのセグメントは、売上高前年比+17.4%、経常利益前年比+17.1%と4セグメント中で最も高い成長率です(2025年3月期有報)。
AI需要の拡大に伴うデータセンター需要の急増は、大規模な電力供給インフラを持つ関西電力にとって追い風です。電力会社だからこそ提供できる安定電源とデータセンターの組み合わせは、今後の成長ドライバーとして注目に値します。
関西電力は何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性
設備投資5,130億円|電力インフラの維持に巨額が必要
関西電力の設備投資総額は5,130億円です(2025年3月期有報)。
| セグメント | 設備投資額 | 構成比 |
|---|---|---|
| エネルギー事業 | 2,556億円 | 49.8% |
| 送配電事業 | 1,622億円 | 31.6% |
| 生活・ビジネスソリューション事業 | 722億円 | 14.1% |
| 情報通信事業 | 446億円 | 8.7% |
(出典: 2025年3月期有報 設備投資等の概要。調整額-217億円を含む合計が5,130億円)
エネルギー事業と送配電事業で全体の8割超を占めています。電力インフラの維持・更新に巨額の投資が必要な装置産業の特徴がはっきりと表れています。他社と比較すると、設備投資ランキングで業界全体の投資動向が確認できます。
注目すべきは生活・ビジネスソリューション事業の722億円です。売上構成比4.2%のセグメントに設備投資の14.1%を振り向けています。データセンターや不動産への成長投資が加速している証拠です。
研究開発費118億円|3つの変革軸
研究開発費は118億円で前年比+21.5%増加しています(2025年3月期有報)。売上比0.3%と低く見えますが、電力業界としては標準的な水準です。研究開発の方向性は中期経営計画の3本柱に沿っています。
| 変革軸 | 内容 | 就活視点 |
|---|---|---|
| EX(ゼロカーボンへの挑戦) | 原子力安全性向上、水素・再エネ活用 | 脱炭素が事業の前提条件になる |
| VX(サービス・プロバイダーへの転換) | EVバス運行管理、VPP、蓄電池 | 電力の「売り方」が変わる |
| BX(強靭な企業体質への改革) | 設備レジリエンス、発電効率向上 | DX推進でコスト構造を改革 |
(出典: 2025年3月期有報 研究開発活動)
「ゼロカーボンビジョン2050」では、2050年までにCO2排出量を全体としてゼロにすることを宣言しています。原子力はCO2を排出しないため、脱炭素と原発の両立が関西電力の経営の核心です。
2024年4月にはロードマップを改定し、Scope3を含むGHG排出量目標を新たに設定しました(2025年3月期有報 経営方針)。
中期経営計画の財務目標
| 指標 | 2025年度目標 | 2025年3月期実績 |
|---|---|---|
| 経常利益 | 3,600億円以上 | 5,316億円 |
| 自己資本比率 | 28%以上 | 31.8% |
| ROA | 4.4%以上 | — |
| ROIC | 4.3%以上 | — |
(出典: 2025年3月期有報 経営方針。実績値は有報連結財務データ)
経常利益・自己資本比率ともに中期経営計画の目標を既に上回っています。財務基盤が大きく改善したことで、次の中期経営計画ではより積極的な成長投資に踏み込む余地が生まれています。
設備投資・R&D費の読み方ガイドで投資データの読み方を詳しく解説しています。
関西電力が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
関西電力の有報には8つのリスクカテゴリが記載されています(2025年3月期有報 事業等のリスク)。特に就活生が注目すべき4つを取り上げます。
| リスク項目 | 影響度 | 就活での読み方 |
|---|---|---|
| 原子力関連リスク | 高 | 7基全てが福井県に集中立地。局所災害で複数同時停止の可能性 |
| ガバナンス・コンプライアンスリスク | 高 | 金品受取り・独禁法違反・顧客情報不適切取扱いが相次いで発生 |
| 気候変動リスク | 高 | 脱炭素規制の強化と分散型電源の普及が系統電力需要を減少させる |
| 法規制・規制政策変更リスク | 高 | カーボンプライシング導入で火力発電に追加費用負担 |
(出典: 2025年3月期有報 事業等のリスク)
原子力リスク|有報で最も紙幅が割かれるテーマ
関西電力の有報で最も詳細に記載されているのが原子力リスクです。重大事故時は「長期的な環境汚染・社会的信用失墜で存続可能性に疑義が生じうる」と記載されており、経営の存続に関わるリスクとして認識されています。
さらに注目すべきは、7基全てが福井県に集中立地しているという地理的リスクです。広域災害が発生した場合、複数基が同時に停止する可能性があります。原子力利用率1%の悪化で53億円のコスト増です(2025年3月期有報)。稼働率のわずかな変動が業績に直結する構造といえます。
コンプライアンスリスク|過去の不祥事と改革
金品受取り問題(2019年)、独占禁止法違反、新電力顧客情報の不適切取扱い、子会社での不正。関西電力は複数のコンプライアンス問題が有報に記載されています(2025年3月期有報)。
これらの問題を受け、関西電力は指名委員会等設置会社に移行し、CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を設置しました。経営理念も2021年3月に刷新し、「公正」「誠実」「共感」「挑戦」を価値観として掲げています。面接でこの点に触れる場合は、「問題そのもの」ではなく「その後の改革の取り組み」に焦点を当てましょう。
有報でのリスク記載の読み方は事業等のリスクの読み方で解説しています。
あなたのキャリアとマッチするか
関西電力の方向性は「原子力を基盤とした安定収益+非電力事業の成長」です。この方向性に合う人・合わない人を整理します。
| 合う人 | 合わない人 |
|---|---|
| 社会インフラを支える使命感がある | 短期間で事業を変える環境を求める |
| 長期的なキャリア形成を志向する | スピード重視のベンチャー志向 |
| 原子力・脱炭素など技術領域に関心がある | 規制産業の意思決定速度に馴染めない |
| 関西圏で働くことに抵抗がない | 首都圏中心のキャリアを希望する |
従業員データ
| 項目 | データ(2025年3月期) | 読み方 |
|---|---|---|
| 従業員数(連結) | 31,428名 | 前年とほぼ横ばい。大規模インフラ企業 |
| 従業員数(単体) | 8,258名 | 全員エネルギー事業セグメントに所属 |
| 平均年齢 | 42.6歳 | インフラ企業として標準的 |
| 平均勤続年数 | 19.8年 | 業界トップクラスの定着率 |
| 平均年間給与 | 973万円 | インフラ業界で高水準 |
(出典: 2025年3月期有報 従業員の状況。給与は単体ベース)
平均年間給与973万円はインフラ業界でも高水準です。平均勤続年数19.8年は長期的なキャリア形成が可能な環境を示しています。2025年度からは定年が65歳に延長され、賃金改定・初任給引き上げも実施されました(2025年3月期有報)。
セグメント別の従業員配置を見ると、エネルギー事業13,132名、送配電事業10,519名と、この2事業で全体の75%を占めています。一方、情報通信事業4,167名、生活・ビジネスソリューション事業3,610名です。非電力事業にも相応の人材が配置されています。
離職率ランキングでインフラ企業の定着率を比較できます。
今から学ぶべき分野
| 分野 | 根拠(有報) | 具体的アクション |
|---|---|---|
| 原子力・エネルギー工学 | 原子力7基が収益基盤(2025年3月期) | エネルギー工学の基礎、電気主任技術者の学習 |
| 脱炭素・水素技術 | ゼロカーボンビジョン2050を推進(2025年3月期) | カーボンニュートラル技術の動向、水素エネルギーの基礎 |
| 情報通信・IT | オプテージが利益率21%の高収益事業(2025年3月期) | ネットワーク技術の基礎、基本情報技術者試験 |
| コンプライアンス・ガバナンス | 指名委員会等設置会社へ移行(2025年3月期) | 企業法務の基礎、コーポレートガバナンスの知識 |
面接で使える有報ポイント
志望動機での活用
「御社の有報で、原子力7基の安定稼働を基盤としつつ、ゼロカーボンビジョン2050で脱炭素との両立を目指していることを確認しました。原子力というCO2を排出しない電源を最大限活用しながら、水素や再エネにも投資する御社の戦略は、エネルギー転換期において現実的かつ意欲的だと考えています。」
逆質問での活用
「有報で生活・ビジネスソリューション事業が売上+17.4%と最も高い成長率でしたが、データセンター事業の拡大に向けた人材配置はどのように計画されていますか?」
「中期経営計画のVX(サービス・プロバイダーへの転換)でEVバス運行管理やVPPが挙げられていますが、新卒にはどのようなキャリアパスが想定されていますか?」
「有報のリスク欄で原子力発電所7基が福井県に集中立地していると記載されていますが、発電所の地理的分散について検討されていますか?」
インフラ業界内での比較
| 比較軸 | 関西電力 | 東京ガス | JR東日本 |
|---|---|---|---|
| 事業の本質 | 発電(原子力中心)+送配電 | 都市ガス+脱炭素技術 | 鉄道+不動産 |
| 多角化の方向 | 情報通信・データセンター | 水素・メタネーション | Suica経済圏・まちづくり |
| 規制の影響 | 極めて高い(原子力規制) | 中程度 | 中程度 |
| 設備投資規模 | 5,130億円 | — | — |
| 平均勤続年数 | 19.8年 | — | — |
(出典: 各社2025年3月期有報)
関西電力の特徴は、規制の影響度が他のインフラ企業と比べて極めて高いことです。原子力規制委員会の判断ひとつで稼働率が大きく変わるため、規制当局との関係構築が事業の根幹に関わります。一方、オプテージやデータセンターといった非規制事業の育成で、規制リスクの分散を図っています。
インフラ業界の有報比較で業界全体の構造を確認できます。
まとめ
| 項目 | 関西電力の特徴 |
|---|---|
| 事業の本質 | 原子力発電を中心とした総合エネルギー企業 |
| 最大の強み | 国内最多級の原発7基稼働による低コスト発電 |
| 隠れた収益源 | オプテージ(利益率21%)とデータセンター事業 |
| 最大のリスク | 原子力安全リスクとコンプライアンス問題 |
| 会社が賭けているもの | 原子力×脱炭素の両立と非電力事業の成長 |
| 働き方の特徴 | 平均給与973万円・勤続19.8年。長期安定型 |
関西電力は「安定の電力会社」と「変革を求められるエネルギー企業」という二つの顔を持っています。原子力7基という他社にない武器を収益の柱としながら、データセンターや情報通信で非電力収益を育てています。脱炭素時代の電力会社像を再定義しようとしている企業です。この構造を有報の数字で理解した上で志望理由を語ることが、面接での差別化につながります。
本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。