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五大商社を有報で徹底比較|将来性と強みの違い

約11分で読了
#商社 #有価証券報告書 #有報 #就活 #企業比較 #五大商社 #業界研究 #総合商社
この記事でわかること
1. 五大商社の利益構造の違い──「資源の三井」「非資源の伊藤忠」の実態
2. 各社が何に賭けているか──投資戦略の比較で見える未来の方向性
3. 自分のキャリア志向に合う商社を見極める視点

有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。記事中の専門用語は用語集で確認できます。

「商社」と一括りにされがちですが、有報を開くと五大商社の中身は驚くほど異なります。

利益の60%を資源で稼ぐ三井物産と、80%を非資源で稼ぐ伊藤忠商事。純利益9,507億円の三菱商事と3,865億円の住友商事。穀物バリューチェーンに賭ける丸紅と、LNG権益に賭ける三井物産。

この記事では、五大商社の有価証券報告書を横並びで比較し、各社の稼ぎ方・賭け方・リスクの違いと自分に合う商社を見極める視点を提供します。

企業概要|数字で見る五大商社の全体像

まず、有報の基本データを並べてみましょう。

指標三菱商事伊藤忠商事三井物産住友商事丸紅
純利益9,507億円8,803億円7,898億円3,865億円4,543億円
セグメント数887610
連結従業員数約4.5万人約11.5万人約4.4万人約7.8万人約5.0万人
単体従業員数4,477人4,200人約5,400人約5,100人約4,400人
平均年齢42.4歳42.2歳約42歳約43歳約42歳
平均年間給与約1,805万円約1,550万円約1,600万円約1,550万円

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期

数字を並べると、いくつかの特徴が見えてきます。

三菱商事が純利益で首位。伊藤忠は連結従業員数が最多で、コンビニ(ファミリーマート)を含むBtoC事業の大きさを反映しています。三井物産は連結約4.4万人と少数精鋭で大きな利益を出す構造。住友商事は利益規模では5位ですが、メディア・デジタル分野に独自のポジションがあります。丸紅はセグメント数10と最も多角的で、穀物・電力に特徴があります。

ただし、これらの数字だけでは各社の本質は見えません。次のセグメント比較で「何で稼いでいるか」を掘り下げます。

セグメント構造の比較|「何で稼いでいるか」が全く違う

セグメント別の純利益構成を見ると、五大商社の性格の違いが鮮明になります。

三菱商事|8セグメントの分散型ポートフォリオ

セグメント純利益構成比前年比
金属資源2,278億円24.0%-22.9%
地球環境エネルギー1,986億円20.9%-16.8%
S.L.C.(ローソン等)1,850億円19.5%+80.1%
モビリティ1,124億円11.8%-20.5%
食品産業924億円9.7%黒字転換

出典: 三菱商事 有価証券報告書 2025年03月期

三菱商事の特徴は分散です。上位3セグメントがそれぞれ20%前後を占め、特定事業への偏りが小さい。S.L.C.(ローソン・食品流通)の+80.1%成長は、KDDIとの共同経営による非資源強化の成果です。

詳しくは → 三菱商事の有報分析

伊藤忠商事|非資源80%、消費者に最も近い商社

セグメント純利益構成比前年比
金属1,784億円20.3%-21.1%
機械1,365億円15.5%+3.7%
その他(CITIC等)1,099億円12.5%+22.9%
食料851億円9.7%+28.4%
情報・金融832億円9.5%+22.7%
繊維738億円8.4%+173.3%

出典: 伊藤忠商事 有価証券報告書 2025年03月期

伊藤忠の最大の特徴は非資源比率約80%。金属セグメント以外はすべて非資源で、食料・繊維・情報といった消費者に近い事業が利益を支えています。繊維の+173.3%はデサント完全子会社化の効果です。「利は川下にあり」という社是が数字に表れています。

詳しくは → 伊藤忠の有報分析

三井物産|資源60%、LNG・鉄鉱石の権益型ビジネス

セグメント純利益構成比
金属資源約2,700億円34%
エネルギー約2,000億円25%
機械・インフラ約1,300億円16%
生活産業約600億円8%
次世代・機能推進約500億円6%

出典: 三井物産 有価証券報告書 2025年03月期

三井物産は五大商社で最も資源依存度が高い(約60%)。LNG権益(モザンビーク・豪州・カナダ)と鉄鉱石(Vale権益)が利益の柱です。資源価格が上がれば最も恩恵を受け、下がれば最も影響を受ける構造です。

詳しくは → 三井物産の有報分析

住友商事|メディア・デジタルに独自の立ち位置

セグメント純利益構成比
金属資源約1,600億円41.4%
資源・化学品約700億円18.1%
メディア・デジタル約650億円16.8%
インフラ約400億円10.4%
リビング関連約300億円7.8%

出典: 住友商事 有価証券報告書 2025年03月期

住友商事の独自性はメディア・デジタルセグメント(純利益約650億円)。JCOM(約550万世帯)やT-Gaia(携帯販売最大手)など、他の商社にはない顧客接点を持ちます。一方、金属資源が41.4%と利益への依存度が高い点が課題です。

詳しくは → 住友商事の有報分析

丸紅|穀物×電力、10セグメントの最多角化

セグメント純利益構成比
エネルギー・金属約1,600億円35.2%
電力・インフラ約900億円19.8%
食料約700億円15.4%
アグリ事業約350億円7.7%
ライフスタイル約300億円6.6%

出典: 丸紅 有価証券報告書 2025年03月期

丸紅は食料+アグリ合計で約23%を占め、穀物バリューチェーンに最も深くコミットしています。さらに海外電力IPP事業12GW超は世界最大級の規模。10セグメントと最も多角的なポートフォリオですが、Gavilon買収時の減損という「賭けの失敗」の教訓も有報に記録されています。

詳しくは → 丸紅の有報分析

資源依存度の比較|景気感応度が全く違う

五大商社を理解する上で最も重要な軸が資源依存度です。これが各社の業績の振れ幅を決めます。

商社資源依存度非資源の強み景気感応度
三井物産約60%ヘルスケア・モビリティ最も高い
住友商事約60%メディア・デジタル高い
三菱商事約45%S.L.C.・食品・モビリティ中程度
丸紅約35%穀物・電力IPP中程度
伊藤忠約20%食料・繊維・情報・金融最も低い

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期 セグメント情報から推計

この違いは就活生にとって「入社後にどんな景気局面を経験するか」に直結します。三井物産に入社すれば資源価格の上下に一喜一憂する事業環境で働き、伊藤忠に入社すれば消費者ビジネスの安定感の中で働く可能性が高い。どちらが良い悪いではなく、自分の志向との相性です。

投資の方向性比較|「何に賭けているか」が違う

各社の中期経営計画と有報の投資データから、未来への賭け方を比較します。

商社賭けている領域象徴的な投資
三菱商事エネルギートランジションLNG Canada(1,400万トン/年)、Eneco(再エネ、約5,000億円)
伊藤忠川下・消費者ビジネスファミマ×リテールメディア、デサント完全子会社化
三井物産LNG・資源権益の深掘りモザンビークLNG、IHH Healthcare(ヘルスケア)
住友商事メディア・デジタル+非鉄金属JCOM事業転換、銅・ニッケル鉱山(EV時代対応)
丸紅穀物バリューチェーン+電力Gavilon統合深化、海外IPP 12GW超

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期 および中期経営計画

注目すべきは、五大商社が全く異なる方向に賭けていることです。

三菱商事はGC2027で3年間に約4兆円の成長投資を計画。LNG Canadaへの巨額投資は「エネルギートランジションの橋渡し役」としてのポジションを狙うものです。

伊藤忠は消費者接点の強化に賭けています。ファミリーマートを広告メディア事業へ転換する構想は、コンビニを「リテールメディア」として再定義する試みです。

三井物産は資源権益の深掘りを続けています。モザンビークLNGは巨大プロジェクトですが地政学リスクも高く、まさに「ハイリスク・ハイリターン」の賭けです。

住友商事はEV時代の非鉄金属に着目。銅・ニッケルは電動化で需要が急増する金属であり、他の商社とは異なる切り口で資源事業を再定義しています。

丸紅は食料安全保障という長期テーマに賭けています。Gavilon統合で北米穀物取引のプラットフォームを手にし、世界の食料バリューチェーンの中に深く入り込む戦略です。

リスクの比較|「何を恐れているか」が違う

有報の「事業等のリスク」は、企業の経営課題が最も率直に書かれるセクションです。

リスク領域三菱商事伊藤忠三井物産住友商事丸紅
資源価格原油1USD→約20億円金属20%依存利益60%が資源金属41%依存穀物市況変動
地政学LNG Canada建設リスク中国・アジア依存モザンビーク治安・サハリン2インドネシア政策新興国電力規制
固有リスク4兆円投資の回収減損実績(Dome等)LNG座礁資産化DX投資リターンGavilon減損の教訓
気候変動Transform事業70%がLNG・原料炭比較的影響小エネルギー転換加速脱炭素移行コストグリーン投資の収益性

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期 事業等のリスク

五大商社のリスクプロファイルで際立つのは、三菱商事と三井物産の「市況感応度」の具体的開示です。三菱商事は「原油1ドルの変動で約20億円、銅100ドルで約25億円、為替1円で約40億円」と具体的に記載しています。就活生にとっては、入社後の業績変動を肌感覚で理解できる重要なデータです。

丸紅の有報にはGavilon買収時の減損処理の経緯が記録されています。過去の失敗を隠さず開示している姿勢は、同社の「賭けの作法」を理解する上で参考になります。

キャリアマッチ比較|自分に合う商社はどこか?

各社の投資方針と組織データから逆算すると、「合う人」の像が浮かび上がります。

志向最もマッチする商社理由(有報根拠)
資源・エネルギーの大型案件三井物産利益の60%が資源。LNG・鉄鉱石の権益ビジネスが中核
消費者に近いビジネス伊藤忠非資源80%。食料・繊維・ファミマなど川下事業に強み
幅広い事業領域を経験三菱商事8セグメント分散型。利益が特定事業に偏らない
メディア・デジタル住友商事JCOM・T-Gaiaなど独自の顧客接点を保有
食料・農業・インフラ丸紅穀物バリューチェーン+海外電力12GW超
安定的な業績環境伊藤忠資源依存度20%で景気変動の影響が最も小さい
ダイナミックな業績変動三井物産資源依存度60%でハイリスク・ハイリターン

従業員データから読む「会社の性格」

指標三菱商事伊藤忠三井物産住友商事丸紅
平均年齢42.4歳42.2歳約42歳約43歳約42歳
平均勤続年数17年10ヶ月18.0年約18年約18年約17年
平均年間給与約1,805万円約1,550万円約1,600万円約1,550万円

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期 従業員の状況

五大商社は平均年齢・勤続年数がほぼ同水準です。これは業界として長期雇用・年功的な人事制度がまだ根強いことを示しています。一方で、伊藤忠の平均年間給与が突出しているのは、同社の高い収益性と成果主義的な報酬体系の表れです。

ただし、社風や働き方は有報からは読み取れません。「組織の三菱」「人の三井」「商売の伊藤忠」といった文化的な違いは、OB/OG訪問やインターンシップで確認することをお勧めします。

面接で使える比較ポイント

五大商社を横断的に比較した知識は、面接で「業界理解の深さ」をアピールする最強の武器になります。

「なぜ三菱商事か」を聞かれたら

「五大商社の有報を比較して、御社の8セグメント分散型のポートフォリオに注目しました。三井物産は資源60%、伊藤忠は非資源80%と特定領域に強みを持つ一方、御社は上位3セグメントがそれぞれ20%前後で最もバランスが良い。多様な事業を経営する力が求められる御社で、幅広い産業を横断的に見る力を磨きたいと考えています。」

「なぜ伊藤忠か」を聞かれたら

「有報で五大商社の資源依存度を比較した結果、御社の非資源比率80%は群を抜いていました。繊維の純利益が前年比+173.3%とデサント効果で急伸していることからも、消費者ビジネスへの『利は川下にあり』の哲学が数字で裏付けられていると感じています。」

「なぜ三井物産か」を聞かれたら

「五大商社の中で御社は資源依存度約60%と最も高く、LNG権益や鉄鉱石のVale権益など世界規模のプロジェクトが利益の柱です。業績の振れ幅も大きいですが、その分スケールの大きい仕事に携われる環境に魅力を感じています。」

有報の比較データを使うことで、単なる「御社が好きです」を超えた根拠のある志望動機になります。

投資方針から逆算した「今から学ぶべき分野」

志望先学ぶべき分野根拠(有報データ)
三菱商事エネルギートランジションLNGカナダ等への大型投資、事業ポートフォリオ転換(2025年3月期)
三井物産資源ビジネス・プロジェクトファイナンスLNG・鉄鉱石権益が利益の中核(2025年3月期)
伊藤忠消費者ビジネス・マーケティング非資源約80%、川下・消費者接点が強み(2025年3月期)
住友商事メディア・デジタルJCOM・SCSK等の独自ポートフォリオ(2025年3月期)
丸紅食料・農業・電力ビジネス穀物バリューチェーンと海外IPPが二大柱(2025年3月期)
全社共通英語力海外駐在・グローバルプロジェクトが商社の本質
全社共通会計・財務分析力事業投資のROE・ROIC管理が商社の経営基盤

まとめ

五大商社の有報を比較すると、「商社」という一括りでは見えない各社の個性が浮かび上がります。

三菱商事伊藤忠三井物産住友商事丸紅
勝ちパターン分散×経営力川下×消費者資源権益×スケールデジタル×非鉄穀物×電力
資源依存度約45%約20%約60%約60%約35%
未来の賭けLNG Canada+Enecoファミマ×メディアモザンビークLNG銅・ニッケル+JCOMGavilon+海外IPP

「自分はどの商社の賭けに共感するか」を考えることが、商社選びの第一歩です。

各社の有報をさらに深く読みたい方は、個別の分析記事をご覧ください。

  • [三菱商事の有報分析]
  • [伊藤忠の有報分析]
  • [三井物産の有報分析]
  • [住友商事の有報分析]
  • [丸紅の有報分析]
  • 有報の基本を押さえたい方 → [有価証券報告書の読み方完全ガイド]

本記事のデータは各社の有価証券報告書(2025年03月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。企業の将来の業績を保証するものではなく、最新情報は各社の公式IR資料をご確認ください。

よくある質問

五大商社の最大の違いは何ですか?

資源依存度が最も大きな違いです。三井物産は利益の約60%が資源(LNG・鉄鉱石)、伊藤忠は約80%が非資源(消費・食料・繊維)。同じ「商社」でも景気サイクルへの感応度が全く異なり、キャリアで経験する事業領域も大きく変わります。

五大商社の有報で就活生が見るべきポイントは?

セグメント別利益(何で稼いでいるか)、投資計画(何に賭けているか)、市況感応度(業績がどう振れるか)の3つです。売上高ではなく純利益のセグメント構成を見ると、各社の本当の稼ぎ頭がわかります。

商社の面接で有報の知識はどう活かせますか?

他社との比較データを使うことで『なぜ御社か』に根拠が生まれます。例えば『伊藤忠の非資源比率80%は五大商社で最も高く、消費者に近いビジネスモデルに共感した』と言えれば、業界理解の深さを示せます。

五大商社で年収が最も高いのはどこですか?

有報の平均年間給与では伊藤忠が約1,805万円で最も高い水準です。ただし平均年齢・勤続年数が各社で異なるため単純比較はできません。また、有報の数値は単体(本社採用社員)のみで、グループ会社出向者は含まれない点に注意が必要です。

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