メインコンテンツへスキップ
就活×有報ナビ
製薬 2024年12月期期

中外製薬の将来性|有報で見るロシュ提携×抗体技術×創薬集中投資

約15分で読了
#製薬 #有報 #就活 #中外製薬 #ロシュ #抗体エンジニアリング #バイオ医薬品 #R&D

企業名

中外製薬

業種

医薬品

証券コード

4519

対象事業年度

2024年12月期

中外製薬の有報分析 要点: 中外製薬はCore売上収益1兆1,706億円・Core営業利益5,561億円(利益率47.5%)の高収益製薬企業。ロシュ(スイス)の子会社でありながら独立経営と東証プライム上場を維持するという世界唯一のアライアンスモデルを持ち、自社の抗体エンジニアリング技術で生み出したヘムライブラ等をロシュのグローバル販売網で世界に届ける。R&D費1,769億円をパイプライン約57件に投下し、自社創製グローバル品の毎年上市を目指す。(2024年12月期有報に基づく)

この会社が賭けているもの
1. 独自の抗体エンジニアリング技術基盤──ヘムライブラに代表される革新的抗体で、パイプラインの約70%が抗体医薬
2. ロシュとの戦略的アライアンス──株式59.89%保有の子会社でありながら独立経営を維持し、安定収益+グローバル販売網の「いいとこ取り」
3. 成長戦略「TOP I 2030」──R&D費1,769億円で自社グローバル品を毎年上市し、創薬力を倍増させる
中外製薬=ロシュの日本子会社。多くの就活生が持つこのイメージは、半分は正しく、半分は大きく間違っています。有報を読むと、ロシュが株式の59.89%を保有する子会社でありながら経営の独立性と東証プライム上場を維持し、自社の創薬技術で生み出した製品をロシュの世界販売網で80カ国以上に届けるという、世界に類を見ないアライアンスモデルの実態が浮かび上がってきます。その結果がCore営業利益率47.5%という国内製薬でぶっちぎりの収益性です。「ロシュの日本法人」ではなく、「ロシュのR&Dエンジン」という理解が、中外製薬の実態に最も近い表現です。

この記事のデータは中外製薬株式会社の有価証券報告書(2024年12月期・EDINET)および決算短信に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

中外製薬のビジネスの実態|何で稼いでいるのか

ビジネスの実態とは、有報のセグメント情報と損益計算書から読み解く、企業の収益構造の全体像のことです。中外製薬の場合、ロシュとの戦略的アライアンスがビジネスモデルの根幹にあり、それが一般的な製薬会社とは全く異なる収益構造を生んでいます。

項目内容
社名中外製薬株式会社
証券コード4519(東証プライム)
EDINETコードE00932
決算期12月期(IFRS採用)
業種分類医薬品
Core売上収益(2024年12月期)1兆1,706億円
Core営業利益(2024年12月期)5,561億円
Core当期利益(2024年12月期)3,971億円
研究開発費(2024年12月期)1,769億円(売上比約15.1%)
従業員数(提出会社)5,026名
平均年間給与約1,207万円
親会社エフ・ホフマン・ラ・ロシュ(株式保有59.89%)

売上構成|3つの収益の柱

中外製薬の売上構成は、一般的な製薬会社と大きく異なります。ロシュとのアライアンスが生み出す独自の収益構造を理解することが、この会社を語る出発点です。

収益区分金額(2024年12月期)構成比内容
国内製商品売上4,611億円約39%国内でのヘムライブラ・アクテムラ・テセントリク等の販売。自社MRが医師に情報提供
海外製商品売上5,368億円約46%自社創製品(ヘムライブラ等)をロシュに輸出。ロシュが世界80カ国以上で販売
その他の売上収益1,527億円約13%ロシュからのロイヤルティ収入・プロフィットシェア収入等
合計1兆1,706億円100%3期連続1兆円超

出典: 中外製薬株式会社 決算短信(2024年12月期)

ここで注目すべきは、海外製商品売上(5,368億円)が国内製商品売上(4,611億円)を初めて上回り、海外売上比率が5割超に到達したという事実です。中外製薬は自社では海外に営業拠点を持たず、自社創製品をロシュに製造・輸出する形でグローバル市場にアクセスしています。

Core営業利益率47.5%の秘密|なぜこれほど高いのか

中外製薬のCore営業利益率47.5%は、武田薬品の約16%、第一三共の約15%、アステラス製薬の約15%と比較して約3倍の水準です。なぜこれほどの差が生まれるのか。その答えはロシュとの戦略的アライアンスの構造にあります。

一般的な製薬企業中外製薬
研究開発 → 製造 → 国内営業 → 海外営業 → 利益研究開発 → 製造 → 国内営業 → ロシュに輸出(海外営業コスト不要) → 利益
海外販売網の構築・維持に巨額の販管費が必要海外販売はロシュが担うため、販管費比率が低い
営業利益率10-20%程度営業利益率47.5%

中外製薬は海外市場でのマーケティング・営業を自社で行う必要がありません。その代わり、ロシュが世界で販売した自社創製品の利益の一部をロイヤルティ・プロフィットシェアとして受け取ります。この構造により、中外製薬は研究開発と製造に経営資源を集中でき、結果として異次元の利益率が実現しています。

就活ポイント: 面接で「中外製薬の利益率が高い理由」を聞かれた場合、単に「良い薬を作っているから」ではなく「ロシュとのアライアンスにより海外販売コストを負担せず、R&D・製造に集中できるビジネスモデルだから」と答えられると、有報を読み込んだ深い理解を示せます。

有報の投資・R&D費の読み方については有報の設備投資・R&D費の読み方で詳しく解説しています。

ロシュとの戦略的アライアンス|世界唯一のビジネスモデル

2002年にロシュが中外製薬の株式の過半数を取得し、中外製薬はロシュ・グループの一員となりました。しかし一般的なM&Aとは異なり、社名変更も経営者交代もなく、東証上場も維持されています。この「戦略的アライアンス」の構造を正確に理解することが、中外製薬を語る上で不可欠です。

アライアンスの項目内容
ロシュの持株比率59.89%(議決権比率61.12%、2024年12月末)
経営の独立性合意に基づき自主独立経営を維持。代表者はロシュから派遣されない
上場維持ロシュは中外製薬の東証プライム上場維持に協力する合意
導入権中外製薬はロシュの医薬品を日本で独占販売する権利を保有
導出権中外製薬の自社創製品をロシュに導出し、グローバルで展開する権利
収益分配ロシュの世界販売からロイヤルティ・プロフィットシェアを受領

このモデルのメリットは三重構造になっています。第一に、ロシュの画期的な医薬品(テセントリク等)を日本で独占販売できること。第二に、自社で創った薬をロシュの世界販売網で届けられること。第三に、安定的な収益基盤の上で研究開発に大胆に投資できることです。

経済産業省の資料でも「世界で類を見ないビジネスモデル」として紹介されたこのアライアンスは、20年以上にわたって中外製薬の成長を支えてきました。

中外製薬は何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

「何に賭けているのか」とは、企業が有限のリソース(資本・人材・時間)をどこに集中投下しているかを示す、経営の意思決定の方向性のことです。中外製薬の有報を分析すると、3つの明確な投資方向性が見えてきます。

賭け1: 抗体エンジニアリング技術|パイプラインの70%が抗体医薬

中外製薬の最大の競争優位は、独自の抗体エンジニアリング技術基盤です。

抗体エンジニアリングとは、抗体(免疫の働きを利用した医薬品)の設計を独自技術で最適化し、従来の抗体では実現できなかった機能を持たせる技術です。中外製薬はこの分野で世界トップクラスの技術力を持ち、以下の独自技術を開発しています。

技術名概要代表的な成果
リサイクリング抗体技術抗体を体内で「リサイクル」して再利用する技術。投与頻度を減らし、効果を持続させるアクテムラの次世代改良品等に応用
バイスペシフィック抗体技術1つの抗体で2つの異なる標的を同時に認識する技術ヘムライブラ(血友病A治療薬)の創出
スイッチング抗体技術特定の環境下でのみ活性化する「スイッチ」を持つ抗体の設計がん領域等で開発中

出典: 中外製薬株式会社 有価証券報告書(2024年12月期)研究開発活動

ヘムライブラは中外製薬の抗体エンジニアリング技術から生まれた代表作です。従来の血友病A治療は欠乏した血液凝固因子を定期的に注射で補充する方法が主流でしたが、ヘムライブラはバイスペシフィック抗体技術を用いて凝固因子の役割を代替する全く新しいアプローチで治療に革新をもたらしました。ロシュが世界80カ国以上で販売し、海外製商品売上5,368億円の大きな部分を占めています。

パイプライン全体を見ると、約57件のうち約70%が抗体医薬品であり、P1(臨床試験第1相)からP2(第2相)段階に限ると自社創製品の比率は約7割に達します。2021年以降の4年間で9件が新規臨床入りしており、研究開発のペースも加速しています。

主要パイプラインターゲット疾患開発段階特徴
NXT007血友病P2次世代ヘムライブラ。さらに改良された抗体設計
AMY109好酸球関連疾患P2自社創製の新規作用機序
クレバルマブパーキンソン病P1神経疾患領域への展開
その他多数がん・免疫・眼科等P1-P3抗体医薬品を中心とした多様なパイプライン

出典: 中外製薬株式会社 開発パイプライン(2025年1月時点)

賭け2: ロシュとのアライアンス深化|自社創製品のグローバル展開

中外製薬の海外戦略は、「自社で海外販売網を構築する」のではなく「ロシュを通じてグローバル展開する」という方針です。

これは他の国内製薬大手とは根本的に異なるアプローチです。[武田薬品]はシャイア買収(約6.8兆円)で自社のグローバル販売網を獲得しました。[第一三共]はアストラゼネカとの提携(最大約6,900億円)でグローバル展開を図っています。中外製薬の場合、ロシュという世界最大級の製薬企業のインフラを20年以上にわたって活用し続けています。

このモデルの強みは、「自社は創薬と製造に集中し、販売はロシュに任せる」という明確な役割分担にあります。海外営業・マーケティング組織を自前で抱えないため、固定費が抑制され、Core営業利益率47.5%という高収益が実現できています。

一方で、海外売上のほぼ全量がロシュ経由であることは、アライアンス関係への依存度の高さを意味します。この点は有報の「事業等のリスク」にも記載されています。

賭け3: 成長戦略「TOP I 2030」|R&D費1,769億円で創薬力倍増

中外製薬は成長戦略「TOP I 2030」のもと、R&D費1,769億円/年を投じて「自社グローバル品の毎年上市」を目指しています。

「TOP I 2030」は2021年に策定された中外製薬の成長戦略です。「I」は「Innovation」を意味し、「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」を2つの柱に掲げています。

TOP I 2030の主要目標内容
R&Dアウトプットの倍増臨床入りする自社創製プロジェクトの数を倍増させる
自社グローバル品の毎年上市自社で創った薬を毎年世界に届ける体制を構築
DXの推進AI創薬・デジタルバイオマーカー等のデジタル技術を研究開発に融合
研究基盤の強化中外ライフサイエンスパーク横浜の全面稼働(2023年完了)

出典: 中外製薬株式会社 成長戦略「TOP I 2030」公開情報

2024年12月期のR&D費1,769億円(前期比+8.7%)は、この戦略を実行するための投資です。売上比約15.1%という比率は[武田薬品]の約17.1%、[第一三共]の約22.8%と比較するとやや低く見えますが、中外製薬のR&D費には海外の臨床試験費用(ロシュが負担)が含まれていない点を考慮する必要があります。実質的なR&D投資の厚みは数字以上です。

設備投資面では、宇都宮工場のバイオ原薬製造棟(UT3)、藤枝工場の合成原薬製造棟(FJ3)への大型投資が進行中です。長期純営業資産は前期比206億円増の4,989億円に拡大しており、製造能力の増強にも積極的です。

有報の事業リスクの読み方については有報の事業等のリスクの読み方を参考にしてください。

中外製薬が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

事業等のリスクとは、有報で企業が自ら開示する経営上のリスク要因のことです。中外製薬の有報には、以下の重要なリスクが明記されています。就活生にとってリスク情報は「会社が何を恐れているか」を知る貴重な手がかりです。

リスク1: ロシュとのアライアンスへの依存

海外製商品売上5,368億円のほぼ全量がロシュ経由の輸出です。仮にロシュが経営戦略を変更し、中外製薬との提携関係を見直すことになれば、事業モデル全体に大きな影響が及びます。有報の「事業等のリスク」にもアライアンス関係の変化が明示されています。

ただし、2002年以来20年以上にわたりアライアンスが機能していること、ロシュにとっても中外製薬の創薬技術(抗体エンジニアリング)が価値ある資産であることから、短期的に関係が大きく変わる可能性は低いと考えられます。

リスク2: パイプラインリスク|新薬開発の不確実性

医薬品の研究開発は成功確率が非常に低く、臨床試験段階で中止になるプロジェクトは珍しくありません。中外製薬は2024年に5件のパイプラインを一括中止した実績があり、「止める力」を経営判断として積極的に行使しています。これはリスク管理として評価できる一方、大型パイプラインの中止は業績計画に影響を与えます。

リスク3: 薬価引き下げ政策

日本の薬価制度は改定のたびに医薬品の価格が引き下げられる傾向にあります。2年に1回の薬価改定に加え、中間年改定も導入されており、国内製商品売上への構造的な下押し圧力が続いています。2024年12月期の国内製商品売上が前期比△17.4%となった背景にも、薬価改定の影響があります。

リスク4: 主力製品の特許切れ・バイオシミラー参入

ヘムライブラ・アクテムラ等の主力製品は将来的にバイオシミラー(後発品)の参入を受ける可能性があります。次世代パイプライン(NXT007等)の成功が、長期的な成長を左右する最重要課題です。

就活ポイント: 面接で「中外製薬のリスク」を聞かれた際、「ロシュ依存」「パイプラインリスク」を具体的に答えた上で、「しかしロシュにとっても中外の創薬技術は価値ある資産であり、5件一括中止は止める力というリスク管理の表れである」という両面からの分析ができると、有報を深く読み込んだ理解を示せます。

あなたのキャリアとマッチするか

キャリアマッチとは、企業の事業構造・投資方向性・組織文化と、就活生の志向性・価値観の合致度を判断する軸のことです。

中外製薬に合うと考えられる人

志向性中外製薬との対応
創薬研究(特に抗体工学)の最前線で専門性を磨きたい抗体エンジニアリング技術は世界トップクラス。研究者にとって最高の環境の一つ
日本発の自社創製品で世界の患者に届ける使命感があるヘムライブラのように、中外製薬発の薬がロシュ経由で世界80カ国以上に届く
少数精鋭・高収益の環境で密度の高いキャリアを積みたい約5,000名で売上1兆円超。一人あたり売上は国内製薬トップクラス
サイエンスに基づく合理的な意思決定の組織文化を好む研究者出身の経営陣。創薬の科学的根拠を重視する文化
安定した収益基盤の上で挑戦的な研究開発に携わりたいロシュとのアライアンスで収益基盤が安定。利益率47.5%の余裕が研究投資を支える

中外製薬に合わないと考えられる人

志向性理由
完全に独立した日本企業で働きたいロシュが株式59.89%を保有する事実は変わらない。親会社の経営判断が影響する可能性
海外赴任・グローバル転勤を重視する海外販売はロシュが担うため、中外製薬からの海外ポジションは他のグローバル製薬に比べ限定的
幅広い疾患領域・モダリティで経験を積みたい抗体医薬品に特化した事業構造。低分子化合物・核酸医薬等は限定的
大規模MR組織でのキャリアを希望する少数精鋭のためMR数は武田薬品等の大手より少ない

従業員データ|少数精鋭の意味

項目データ(2024年12月期)読み方
従業員数5,026名武田薬品(連結約49,000名)の約1/10。少数精鋭の典型
平均年間給与約1,207万円新薬大手5社(武田・第一三共・アステラス・エーザイ・中外)で4年連続トップ
平均年齢42.6歳製薬業界の平均的な水準
平均勤続年数15.5年定着率の高さを示す

年収約1,207万円が意味すること: この数字は提出会社(単体)の平均であり、基準外賃金と賞与を含みます。売上収益1兆円超を約5,000名で生み出す少数精鋭の生産性の高さが、この業界トップの年収水準を支えています。業界の年収比較は平均年収ランキング(有報データ)で詳しく確認できます。

有報の人的資本情報の読み方については有報の人的資本情報の読み方を参考にしてください。

面接で使える有報ポイント

面接で使える有報ポイントとは、有価証券報告書のデータを根拠として、志望動機・逆質問・企業理解を具体的に示すための切り口のことです。

志望動機での活用例

「有報でCore営業利益率47.5%という国内製薬トップの収益性を確認し、その源泉がロシュとの戦略的アライアンスにあることを理解しました。中外製薬が自社の抗体エンジニアリング技術で創り出した薬をロシュのグローバル販売網で世界に届けるという構造は、『創薬に集中できる環境』として非常に魅力的です。研究開発費1,769億円が抗体エンジニアリング技術の深化とパイプライン拡充に投じられている点からも、創薬に対する本気度を感じています。」(2024年12月期有報)

逆質問での活用例

「有報で海外製商品売上が初めて国内を上回り、海外売上比率が5割超に到達したと確認しました。ロシュ向け輸出が今後さらに拡大する中で、製造部門・品質管理部門の体制強化はどのように進められていますか?」

「成長戦略『TOP I 2030』の柱である『R&Dアウトプットの倍増』について、4年間で9件の新規臨床入りという加速ペースが有報に記載されていました。若手研究者がこの加速に貢献するためにはどのようなキャリアパスがありますか?」

「有報で2024年に5件のパイプラインが一括中止されたことを確認しました。この『止める力』という意思決定プロセスはどのような基準で行われているのですか?」

面接でのNG理解

「ロシュの子会社だから安定している」「外資系なので給与が高い」といった理解は、中外製薬の本質を捉えていません。面接官が評価するのは、ロシュとのアライアンスがなぜ機能しているのか、中外製薬が何を武器にこの関係を維持・深化させているのかという構造的な理解です。

今から学ぶべきこと(投資方針から逆算)

中外製薬の3つの賭け(抗体技術×ロシュ提携×TOP I 2030)から逆算すると、以下の準備が有効です。

  1. 抗体工学・バイオ医薬品の基礎知識: リサイクリング抗体・バイスペシフィック抗体の原理を理解しておくと面接で深みが出る
  2. ロシュとのアライアンスの歴史と構造: 2002年の提携開始から現在までの経緯と、なぜ独立経営が維持されているかの理解
  3. IFRS財務諸表とCore指標の読み方: 中外製薬はIFRS採用。Core営業利益の定義と意味を正確に把握する
  4. DX・AI創薬のトレンド: TOP I 2030ではデジタル技術の活用を重要課題に据えている。製薬DXの基礎知識があると有利

まとめ

視点中外製薬の特徴
事業の核心ロシュとの戦略的アライアンスで安定収益を確保しつつ、自社の抗体エンジニアリング技術で革新的な医薬品を創出。世界唯一のビジネスモデル
成長の方向抗体エンジニアリング技術の深化×パイプライン約57件×「TOP I 2030」でR&Dアウトプット倍増を目指す
収益構造Core営業利益率47.5%(5,561億円)は国内製薬でぶっちぎりのトップ。海外販売コストをロシュが負担する構造が源泉(2024年12月期)
グローバル度海外売上比率5割超。ただしグローバル展開はロシュ経由。自社の海外拠点は限定的
年収水準約1,207万円(単体)。新薬大手5社で4年連続最高。約5,000名の少数精鋭が支える高水準(2024年12月期)
キャリアの特徴少数精鋭・サイエンス志向の組織文化。抗体工学の研究者にとって最高の環境の一つ。海外赴任は限定的

中外製薬は「ロシュの日本子会社」ではなく「ロシュのR&Dエンジンとして機能するイノベーション創出企業」です。有報のセグメント情報で売上構成の実態を、損益計算書でCore営業利益率47.5%の異次元収益性を、研究開発欄で抗体エンジニアリング技術への集中投資を確認することで、他の就活生との差別化は明確になります。

関連記事:

  • 有報の読み方を基礎から → [有価証券報告書の読み方完全ガイド]
  • R&D費・設備投資の読み方 → [有報の設備投資・R&D費の読み方]
  • 事業リスクの読み方 → [有報の事業等のリスクの読み方]
  • 年収の業界比較 → [平均年収ランキング]
  • 人的資本情報の読み方 → [有報の人的資本情報の読み方]
  • 武田薬品の有報分析 → [武田薬品の有報分析]
  • 第一三共の有報分析 → [第一三共の有報分析]
  • アステラス製薬の有報分析 → [アステラス製薬の有報分析]

本記事のデータは中外製薬株式会社の有価証券報告書(EDINET)および決算短信に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。

よくある質問

中外製薬の有価証券報告書はどこで読めますか?

EDINET(金融庁の電子開示システム)でEDINETコード「E00932」を検索するか、中外製薬の公式IRサイトから無料で閲覧できます。2024年12月期の有報が最新版で、2025年3月24日に提出されています。有報の「経営方針」「研究開発活動」「従業員の状況」セクションが就活の企業研究に特に有用です。中外製薬はIFRS(国際財務報告基準)を採用しているため、Core営業利益というIFRS調整指標の見方に注意が必要です。

中外製薬とロシュの関係を有報からどう読めますか?

有報の「大株主の状況」欄でロシュ・ホールディングが発行済株式の59.89%(議決権比率61.12%)を保有していることが確認できます。さらに「経営方針」欄には、ロシュ・グループの一員でありながら経営の独立性と東証プライム上場を維持するという戦略的アライアンスの基本構造が明記されています。ロシュ導入品の国内独占販売権と、自社創製品のロシュへの導出権という双方向のメリットが収益構造の核心です。(2024年12月期有報)

中外製薬の抗体エンジニアリング技術とは何ですか?

中外製薬独自の技術基盤で、抗体の体内挙動(細胞への取り込みやすさ、血液中の滞在時間等)を精密に制御する技術群です。リサイクリング抗体技術(抗体を体内で再利用して効果を持続させる)、バイスペシフィック抗体技術(2つの標的を同時に認識する抗体の設計)が代表例です。ヘムライブラ(血友病A治療薬)はバイスペシフィック抗体技術から生まれた世界的ブロックバスターであり、この技術力が中外製薬の競争優位の源泉です。

中外製薬のCore営業利益率47.5%は業界でどの程度の水準ですか?

国内製薬会社で圧倒的トップの水準です。比較すると、武田薬品のコア営業利益率は約16%、第一三共は約15%、アステラスは約15%(いずれも概算・2024年3月期)であり、中外製薬の47.5%は他社の約3倍の水準です。この異次元の利益率は、ロシュとのアライアンスにより海外販売コスト(営業・マーケティング費用)をロシュが負担し、中外製薬はR&D・製造に集中できるビジネスモデルが生み出す構造的優位性です。(2024年12月期)

中外製薬の平均年収は有報でわかりますか?

はい、有報の「従業員の状況」欄によると、提出会社(単体)の平均年間給与は約1,207万円です(2024年12月期)。平均年齢42.6歳、平均勤続年数15.5年、従業員数5,026名のデータも確認できます。この1,207万円は売上収益5,000億円超の新薬大手5社の中で4年連続トップの水準です。ただし基準外賃金と賞与を含む数字であり、職種・等級による個人差が大きい点に注意が必要です。

中外製薬は「外資系」なのですか?就活ではどう位置づければよいですか?

株式保有の面ではロシュが59.89%を保有するためロシュ・グループの一員ですが、一般的な外資系製薬の日本法人(ファイザー日本法人等)とは全く異なる位置づけです。中外製薬は自社で創薬研究から製造まで行い、自社ブランドで日本市場に販売し、東証プライムに上場する独立した事業会社です。面接では「ロシュの子会社だから安定している」ではなく「ロシュのグローバル販売網を活用して自社創製品を世界に届けるモデル」という理解を示すことが重要です。

中外製薬の面接で有報データをどう活かせますか?

最も効果的なのは、Core営業利益率47.5%という数字を「なぜこれほど高いのか」をロシュとのアライアンス構造から説明できることです。具体的には「有報で、中外製薬のCore営業利益率47.5%が国内製薬トップであること、その源泉がロシュとのアライアンスによる効率的な事業構造にあること、さらにR&D費1,769億円(売上比約15.1%)が抗体エンジニアリング技術への集中投資であることを確認しました」という発言は有報を読み込んだ証拠として強い差別化になります。(2024年12月期有報)

中外製薬と武田薬品・第一三共の違いは何ですか?

3社の戦略は明確に異なります。武田薬品はシャイア買収(約6.8兆円)で規模拡大を選択したグローバルメジャー路線(売上約4.3兆円・海外80%)。第一三共はADC技術への集中特化とアストラゼネカ提携(最大約6,900億円)による成長賭け。中外製薬はロシュとのアライアンスで安定収益基盤を確保した上での自社創薬集中路線(Core営業利益率47.5%)。規模は最小ですが収益性は最高であり、「量より質」「提携による効率経営」という独自モデルです。

中外製薬の将来性を有報から読むとどう見えますか?

有報からは3つの成長ドライバーが読み取れます。第一に、パイプライン約57件(抗体比率70%・自社創製比率P1-P2段階で約7割)の充実。NXT007(次世代ヘムライブラ)等の大型候補が臨床試験を進展中です。第二に、海外売上比率が初めて5割超に到達し、ロシュ経由のグローバル展開が加速しています。第三に、中外ライフサイエンスパーク横浜の全面稼働やDX推進によるR&D生産性の向上です。一方、ロシュ依存・パイプラインリスク・薬価引き下げという3つのリスクも有報に明記されています。(2024年12月期有報)

製薬の他社分析

製薬の全記事を見る →

関連記事

次に読む