通信・IT大手3社 比較の要点: 売上規模が近い(4〜6兆円)ソフトバンク・KDDI・NTTデータも、有報を読むと「賭けている分野」が全く異なる。ソフトバンクはAI×通信転換、KDDIは衛星×DX×経済圏構築、NTTデータはグローバルITサービスへの集中という3つの異なる未来への投資が見えてくる。(各社2025年3月期有報に基づく)
この記事のデータはソフトバンク(9434)・KDDI(9433)・NTTデータグループ(9613)の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいています。会計基準はソフトバンク・NTTデータがIFRS、KDDIが日本基準(JGAAP)と異なるため、数値の単純比較には限界があります。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
「NTT・KDDI・ソフトバンクのどれにしようか」──通信業界への就職を考える就活生から最もよく聞かれる質問です。3社を並べると「どれも似たような通信会社」に見えてしまいます。しかし有報を読むと、売上規模が近いにもかかわらず、3社の「稼ぎ方」と「賭け方」は根本的に異なることがわかります。
| この記事でわかること |
|---|
| 1. 3社の主要指標比較(売上・利益率・設備投資・R&D費・年収) |
| 2. 有報が示す3社の「賭けている分野」の根本的な違い |
| 3. キャリア志向別の3社マッチング(AI志向・衛星×多角化志向・グローバルIT志向) |
| 4. 面接で使える3社比較の具体的な切り口 |
3社比較で見えた「通信×デジタル戦略の3つの賭け方」
通信×IT大手3社の比較とは、表面的なキャリアブランドの比較ではなく、有報に記録された設備投資・R&D費・セグメント構造から読み取る「会社の未来への意思」の比較です。
ソフトバンク・KDDI・NTTデータの3社を有報で横断比較すると、際立つのは「売上がほぼ同規模(4〜6兆円台)にもかかわらず、投資の方向性が全く異なる」という事実です。
- ソフトバンク(9434): 「通信×AI企業」への転換に最も積極的。NVIDIAと日本最大級のAI計算基盤を共同構築し、SoftBank AIを法人300社超に導入。スマホキャリアという表看板の裏で、AIデータセンターと法人DXが急成長エンジンになっています(2025年3月期 経営方針)。
- KDDI(9433): 「通信×衛星×生活設計」の3軸で事業を広げる多角化型。スペースXとのスターリンク代理店契約を活かし、世界初の地上×衛星自動切替商用サービスを2024年に開始。auじぶん銀行(三菱UFJ合弁)・auカブコム証券・auでんきというau経済圏を構築し、通信料金以外の収益源を拡大しています。
- NTTデータ(9613): 「グローバルITインフラ企業」として独自の立ち位置。売上の約59%が海外で、設備投資6,757億円のうち61%(4,130億円)をデータセンターに集中投下。通信キャリアではなく、国内外の官公庁・金融機関・大企業のITシステムを支えるSIer兼ITインフラ企業です(2025年3月期 設備の状況)。
3社に共通する課題は「通信料金収入への依存からの脱却」です。政府の料金値下げ要請や競争激化を背景に、通信料金だけでは成長が困難になっています。その脱却戦略の「方向性の違い」が、この記事の核心です。
IT業界全体の構造変化と合わせて読むと、3社がなぜこの方向に賭けているかがより理解しやすくなります。
主要指標比較表|売上・利益率・設備投資・R&D費・従業員・年収
主要指標比較とは、企業の規模・収益力・投資姿勢・人材規模を一覧で確認し、会社の「体格と体力」を把握することです。
| 指標 | ソフトバンク(9434) | KDDI(9433) | NTTデータ(9613) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 約5.97兆円 | 約5.97兆円 | 約4.64兆円 |
| 営業利益 | 約9,837億円 | 約1.14兆円 | 約3,243億円 |
| 営業利益率 | 約16.5% | 約19.2% | 約7.0% |
| 設備投資総額 | 約5,846億円 | 約6,300億円 | 約6,757億円 |
| R&D費 | 約194億円(売上比0.3%) | 約520億円(売上比0.9%) | 約283億円(売上比0.6%) |
| 連結従業員数 | 約4.95万人 | 約5.0万人 | 約19.8万人 |
| 平均年収(参考) | 約916万円(単体) | ※連結開示中心 | 約923万円(持株会社) |
| 会計基準 | IFRS | 日本基準 | IFRS |
| 主な事業 | 通信・法人DX・AI | 通信・衛星・金融 | ITサービス・DC |
出典: 各社 有価証券報告書 2025年3月期。単純比較には限界があります。
注意事項:
- KDDIは日本基準、ソフトバンクとNTTデータはIFRS採用のため、利益等の単純比較には限界があります
- NTTデータの年収は持株会社(1,592人)のみの数値。実際の就職先となる事業子会社(株式会社NTTデータ等)の処遇は別途確認が必要です
- 設備投資額にはデータセンター・ネットワーク等が含まれ、各社の内訳構成が異なります
比較表から読み取れること
この表で最も注目すべきは利益率の差です。KDDIの19.2%はソフトバンクの16.5%を上回り、NTTデータの7.0%とは大きな開きがあります。この差が意味するのは:
- KDDIが最も高利益率の理由: 個人セグメント(利益率約24%)が売上の52%を占め、安定した通信収益基盤を維持しながら法人・グローバルへの成長投資ができている。5期連続増収増益を達成した安定経営の結果です(2025年3月期 セグメント情報)。
- NTTデータの利益率が低い理由: 設備投資6,757億円(売上比14.6%)という超積極投資と、海外利益率3.6%(日本10.6%)という収益性格差が全体を押し下げています。「今は利益より未来への投資を優先する」という経営判断の表れと読めます。
AI・DX投資ランキングと合わせて読むと、3社がAI・DX分野にどれだけ本気で投資しているかがより明確になります。
各社の「賭けている分野」詳細
ソフトバンク|AI×通信転換という賭け
ソフトバンクの最大の投資方針は、通信インフラを土台にしたAI企業への転換です。
| 賭け | 内容 | 有報の根拠 |
|---|---|---|
| NVIDIA提携×AI計算基盤 | 日本最大級のAI計算基盤を共同構築 | 2025年3月期 経営方針 |
| SoftBank AI法人展開 | 2024年度に300社超の法人に導入 | 2025年3月期 経営方針 |
| 5G高度化 | 設備投資約5,846億円・全国基地局約26万局 | 2025年3月期 設備の状況 |
| デジタルエコシステム | PayPay月間アクティブ約2,200万人・LY Corporation連携 | 2025年3月期 経営方針 |
出典: ソフトバンク株式会社 有価証券報告書 2025年3月期
ソフトバンクのセグメント構造を見ると、売上の45%を占めるコンシューマ(個人向け通信)は料金値下げ圧力を受けながらも営業利益率21%を維持しています。一方、法人セグメント(売上24%・利益率20%超)が前年比10%超の高成長を達成しており、AI・クラウド・セキュリティを束ねた法人DXのワンストップ提案が評価されています。
R&D費は約194億円と低く見えますが、通信会社の場合は「研究」より「ネットワーク設備への先行投資」がビジネスモデルの中心です。設備投資5,846億円のうち相当部分をAIデータセンター向けGPUサーバーに充当しており、この投資がAI事業の基盤になっています。
キャリアのヒント: SoftBank AIや法人DXワンストップ提案は、AI・クラウドの技術知識とビジネス提案力を掛け合わせる仕事です。「AIを作る」エンジニアだけでなく、「AIを使って企業課題を解決する」営業・コンサルタント職にも大きな需要が生まれています。
詳細はソフトバンクの有報分析をご覧ください。
KDDI|スターリンク×au経済圏という賭け
KDDIの最大の特徴は、通信大手3社の中で唯一「宇宙×地上の統合通信」に本格参入していることです。
| 賭け | 内容 | 有報の根拠 |
|---|---|---|
| スターリンク衛星通信 | 2024年に世界初の地上×衛星自動切替商用化 | 2025年3月期 経営方針 |
| 設備投資6,300億円 | 5G整備・衛星通信・データセンター拡充 | 2025年3月期 設備の状況 |
| 法人DX・AI | KDDI AI asist・Telco LLM独自開発・スマートシティ | 2025年3月期 研究開発活動 |
| au経済圏 | auじぶん銀行・auカブコム証券・auでんき | 2025年3月期 経営方針 |
出典: KDDI株式会社 有価証券報告書 2025年3月期
KDDIのセグメント構造は個人(売上52%・利益率24%)・法人(売上28%・利益率18%)・グローバル(売上19%・利益率6%)の3本柱です。個人セグメントの高利益率(24%)がKDDI全体の高収益を支えており、この安定収益を原資に設備投資6,300億円をおこなっています。
スターリンクはスペースXとの独占的な代理店契約であり、ソフトバンクやNTTドコモには提供できないユニークな強みです。地上の5G基地局が届かない山間部・離島・海上でも衛星から直接スマートフォンに接続できる技術は、防災・産業IoT・航空などの新用途を開くポテンシャルを持っています(2025年3月期 研究開発活動)。
R&D費は約520億円で3社中最も高く、通信技術の独自研究への姿勢が表れています。
キャリアのヒント: 「衛星通信×地上通信の統合」は他の通信会社にはない固有の仕事領域です。NTN(非地上系ネットワーク)の知識はキャリア市場での希少価値が高く、KDDIならではのフィールドで専門性を磨くことができます。また金融・エネルギー・エンタメにまたがるau経済圏は、通信以外の事業領域でも活躍できる多様なキャリアパスを提供しています。
詳細はKDDIの有報分析をご覧ください。
NTTデータ|グローバルITインフラという賭け
NTTデータは通信キャリアではなく、NTTグループのITサービス・DX実装の中核企業です。3社の中で最も異なるビジネスモデルを持っています。
| 賭け | 内容 | 有報の根拠 |
|---|---|---|
| データセンター年間4,130億円 | 設備投資の61%をDCに集中投下 | 2025年3月期 設備の状況 |
| 生成AI SmartAgent | 2027年度3,000億円売上目標 | 2025年3月期 研究開発活動 |
| グローバル展開 | 海外売上59%・連結約19.8万人 | 2025年3月期 セグメント情報 |
| アセットベース転換 | 労働集約型SIerから資産活用型インフラへ | 2025年3月期 経営方針 |
出典: NTTデータグループ 有価証券報告書 2025年3月期
NTTデータの収益構造は日本セグメント(売上41%・利益率10.6%)と海外セグメント(売上59%・利益率3.6%)の2本柱です。売上の59%が海外にもかかわらず、利益の約67%は日本が稼いでいるという「日本高収益・海外低収益」構造が最大の特徴です。
設備投資6,757億円のうち4,130億円(61%)がデータセンター投資というのは、日本のITサービス業界では断トツのスケールです。グローバルDC総容量約1,500MWというインフラ資産は、AIとクラウドの需要拡大に伴い収益化が見込める「将来の稼ぎ頭」として位置づけられています。
生成AI「SmartAgent」は「AIエージェントを新たな労働力として位置づける」というコンセプトで開発されており、2027年度にグローバルで3,000億円の売上を目指しています。
キャリアのヒント: 約19.8万人という規模は「1社で多様なキャリアパスが存在する」ことを意味します。官公庁・金融向けの大型システム開発から、海外DC運営、SmartAgent開発、グローバルSAP導入まで、ITサービスの幅の広さが最大の特徴です。ただし、組織規模が大きい分、ベンチャーのような意思決定スピードは期待しにくい環境です。
詳細はNTTデータの有報分析をご覧ください。
キャリア選択の視点|どの会社がどんな人に向いているか
有報の数字から読み取れる3社の「賭け方の違い」を踏まえると、キャリアマッチは以下のように整理できます。
| キャリア志向 | 最もフィットしそうな会社 | 有報の根拠 |
|---|---|---|
| AI・最先端技術の実装(法人DX×AI) | ソフトバンク | NVIDIA提携・SoftBank AI300社超・法人セグメント前年比10%超成長 |
| 衛星通信・固有技術×多角化(金融・エネルギー) | KDDI | スターリンク世界初商用化・au経済圏構築・個人利益率24% |
| グローバルITサービス・大型PJ・DC | NTTデータ | 海外売上59%・DC投資4,130億円・約19.8万人規模 |
| 通信インフラ×社会インフラの交点 | KDDI / ソフトバンク | 5G設備投資(両社合計約1.2兆円) |
| 国内大企業・官公庁向けシステム開発 | NTTデータ | 日本セグメント利益率10.6%・安定顧客基盤 |
各社の「合う人・合わない可能性がある人」
| 会社 | 合いそうな人 | 合わない可能性がある人 |
|---|---|---|
| ソフトバンク | AI×ビジネスの融合に関心がある人 / PayPay等のデジタルエコシステムに興味がある人 / 安定基盤を持ちながらスピード感も求める人 | 海外駐在を主目標にしている人 / 純粋なハードウェア・ものづくり志向の人 |
| KDDI | 宇宙・衛星という固有技術に魅力を感じる人 / 金融・エネルギーなど通信以外の多角事業にも挑戦したい人 / 安定収益と成長投資の両立を重視する人 | 最先端AI研究の最前線に立ちたい人 / 小規模ベンチャー的な完全裁量環境を求める人 |
| NTTデータ | グローバルに大規模プロジェクトを担いたい人 / 官公庁・金融など社会インフラのITを支えたい人 / AIエージェント・データセンターの最先端インフラに関心がある人 | 消費者向けプロダクトを作りたい人 / 意思決定が速い環境でスタートアップ的に動きたい人 |
ただし、有報ではわからないこともあります。社内の雰囲気・具体的な配属先・日常の仕事内容は有報の守備範囲外です。ソフトバンクであれば「コンシューマ営業」と「法人AI担当」では全く異なる日常があり、NTTデータであれば「日本の官公庁向けPJ」と「海外DCの運営部門」でも環境が大きく異なります。OB/OG訪問や口コミサイト(OpenWork等)との併用で確認しましょう。
今から学ぶべき分野(各社の投資方針から逆算)
| 志望する会社 | 今から学ぶべきこと |
|---|---|
| ソフトバンク | ChatGPT・Claude等の生成AI活用体験 + 法人AIソリューションの事例3〜5社を説明できる水準 / AWS・Azureのクラウド基礎 |
| KDDI | 5G・NTN(衛星通信)の基礎概念 / fintech(auじぶん銀行のビジネスモデル)の基礎 / スマートシティ・IoTの産業活用事例 |
| NTTデータ | クラウドインフラ(AWS/Azure/GCP)の基礎資格 / Python・プロンプトエンジニアリングの基礎 / 英語力(TOEIC等)・グローバルプロジェクト経験 |
各項目の根拠: 各社 有価証券報告書 2025年3月期 経営方針・研究開発活動・設備の状況
面接で使える3社比較の切り口
ほとんどの就活生は「なんとなく通信業界に興味がある」レベルで面接に臨みます。3社の有報を横断比較した上で「なぜこの会社なのか」を語れると、企業研究の深さで大きな差がつきます。
ソフトバンク向け発言例
「御社の有報を拝見し、法人セグメントが前年比10%超成長し、NVIDIAとの日本最大級AI計算基盤の共同構築を進めていることに注目しました。通信インフラとAI計算資源を垂直統合して法人に提供できる強みは、競合他社には真似のできない差別化だと理解しています。AI×法人DXの最前線で働きたいと考えており、御社の成長分野に貢献したいです。」
KDDI向け発言例
「御社がスペースXとのスターリンク代理店契約を活かし、2024年に世界初の地上×衛星自動切替商用サービスを開始したことを拝見しました。山間部・離島・海上での通信カバレッジは既存の地上インフラでは解決できない課題であり、KDDIならではの固有技術だと理解しています。衛星×地上通信の統合という新領域で、社会インフラを支える仕事に関わりたいです。」
NTTデータ向け発言例
「御社の有報で設備投資6,757億円のうち61%がデータセンター投資であることに注目しました。労働集約型のSIerから資産活用型のインフラ企業への転換は、AIとクラウドの需要拡大という時代の流れを正確に捉えた戦略だと感じます。グローバル19.8万人の組織で、スケールの大きいプロジェクトに挑戦したいです。」
逆質問で使えるネタ(3社共通)
- 「有報では通信料金収入への依存から〔AI / 衛星 / グローバルDC〕への転換が戦略として明記されていますが、現場の社員がこの転換を実感する場面はどのような状況ですか?」
- 「有報では〔NVIDIAとのAI基盤共同構築 / スターリンク世界初商用化 / SmartAgent3,000億円目標〕が明記されていますが、新卒入社後にどのようにこのプロジェクトに関われますか?」
- 「有報の事業等のリスクに〔AI投資のROI不確実性 / スターリンク依存リスク / 海外利益率改善〕が記載されていましたが、会社としてどのようにリスクを管理していますか?」
有報に記載された具体的な数字や戦略を引用した逆質問は「本当に調べてきた」という印象を与えます。[有報を使った面接対策ガイド]も合わせて確認しておきましょう。
まとめ
3社の有報を横断比較すると、「通信×デジタル戦略の3つの賭け方」が鮮明になります。
| ポイント | ソフトバンク | KDDI | NTTデータ |
|---|---|---|---|
| 戦略の本質 | AI×通信転換 | 衛星×多角化×経済圏 | グローバルITインフラ |
| 最大の強み | NVIDIA提携・法人AI10%超成長 | スターリンク世界初・au経済圏 | DC投資4,130億円・約20万人 |
| 利益率 | 約16.5% | 約19.2% | 約7.0% |
| 向いている人 | AI×法人DX志向 | 衛星×多角化×金融志向 | グローバルIT×大型PJ志向 |
「どの会社が良いか・悪いか」ではありません。有報を読めば、3社はそれぞれ異なる未来に賭けていることがわかります。自分のキャリア志向とどの「賭け方」が合うかで選びましょう。
- ソフトバンクの詳細 → [ソフトバンクの有報分析]
- KDDIの詳細 → [KDDIの有報分析]
- NTTデータの詳細 → [NTTデータの有報分析]
- IT業界の全体像 → [IT業界の有報比較]
- AI・DX投資の横断比較 → [AI・DX投資ランキング]
本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET・2025年3月期)に基づいています。各社の会計基準・セグメント区分が異なるため、数値の単純比較には限界があります。投資判断を目的としたものではなく、最新情報は各社の公式IR資料をご確認ください。