電通総研の有報分析 要点: 売上約1,526億円・営業利益率13.8%・ROE 17.4%の4セグメント型IT企業。Vision 2030で売上3,000億円・営業利益率20%を掲げ、SIerから「X Innovator」への変革を推進中。(2024年12月期有報に基づく)
電通総研は「電通グループのIT会社」ではありません。有報を読むと、金融・製造・マーケティングを横断する4セグメント体制と、シンクタンク+コンサル+SIの三機能統合で独自のポジションを築いていることが数字で見えてきます。
有報の読み方は有価証券報告書の読み方完全ガイドで押さえてからこの記事を読むと効果的です。
電通総研のビジネスの実態|会社概要と収益構造
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 株式会社電通総研 |
| 証券コード | 4812(東証プライム) |
| EDINETコード | E05147 |
| 決算期 | 12月期 |
| 業種分類 | 情報・通信業 |
| 主要事業 | ITコンサルティング、SI、ソフトウェア製品・商品販売、運用保守 |
| 親会社 | 株式会社電通グループ(持株比率61.8%) |
電通総研は2024年に商号変更(旧・電通国際情報サービス=ISID)し、コンサルティング子会社2社の統合とシンクタンク機能の移管を実施しています。有報を読むうえで押さえるべきは、この「SIerからの自己変革」が数字にどう表れているかです。
事業は4つのセグメントで構成されています(2024年12月期有報セグメント情報より)。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 利益率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 金融ソリューション | 319億円 | 37億円 | 11.5% | 金融機関向けITソリューション |
| ビジネスソリューション | 233億円 | 55億円 | 23.6% | 会計・人事の経営管理IT |
| 製造ソリューション | 474億円 | 54億円 | 11.4% | 製品ライフサイクル全般のIT |
| コミュニケーションIT | 501億円 | 64億円 | 12.9% | マーケ〜基幹業務のIT最適化 |
| 合計 | 1,526億円 | 210億円 | 13.8% | — |
ビジネスソリューション|利益率23.6%の稼ぎ頭
注目すべきは、ビジネスソリューションの営業利益率23.6%です。売上規模は4セグメント中最小の233億円ながら、会計ソリューション「Ci*X」やHCM(人的資本管理)領域の自社製品が高い利益率を生んでいます。3年間の年平均成長率(CAGR)は16.0%と全セグメント中最高で、電通総研の収益の質を支える中核事業です。
製造ソリューション・コミュニケーションIT|売上の両輪
売上の大きな柱は製造ソリューション(474億円)とコミュニケーションIT(501億円)の2つで、合わせて全体の約64%を占めます。
製造ソリューションは製品ライフサイクル全般をカバーするCAD/PLMソリューションが主力で、仕入先のシーメンスとの関係が事業基盤です。3年間のCAGRは13.9%と高い成長を維持しています。
コミュニケーションITは電通グループとのシナジーが活きる領域で、マーケティングから基幹業務までのバリューチェーン最適化を手がけます。電通グループ向け売上は約214億円(2024年12月期)で、この大半がコミュニケーションITに関連しています。
金融ソリューション|安定成長基盤
金融ソリューション(319億円)は金融機関向けの業務支援ITを提供しています。融資ソリューション「Bank・R」のCRM強化や金融機関向け会計ソリューション事業を戦略的に拡大中で、3年間のCAGRは8.2%の安定成長です。
電通総研は何に賭けているのか|Vision 2030と成長投資
Vision 2030: SIerから「X Innovator」へ
電通総研が有報で掲げる最も重要な戦略が、長期経営ビジョン「Vision 2030」です。
| 項目 | 現在(2024年12月期) | 2030年目標 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,526億円 | 3,000億円 |
| 営業利益率 | 13.8% | 20% |
つまり、6年間で売上をほぼ倍増させながら利益率も6ポイント以上引き上げるという、量と質の両立を目指す計画です。この目標達成のために電通総研は自らを「X Innovator(社会と企業の変革を実現する存在)」と再定義し、従来のSIer(システムインテグレータ)からの脱却を明確に宣言しています。
Vision 2030は4つの自己変革で構成されています。
| 変革テーマ | 内容 |
|---|---|
| 拓くチカラ | 個別業務課題→企業全体・社会変革へ事業領域を拡張 |
| 創るチカラ | テクノロジー実装+社会変革を導くケイパビリティを獲得 |
| 稼ぐチカラ | 収益モデルの多様化と収益性向上 |
| 支えるチカラ | 経営基盤の刷新・変化適応力の獲得 |
新中期経営計画「社会進化実装 2027」
Vision 2030の第2フェーズとして、2025年から3か年の中期経営計画「社会進化実装 2027」が始動しています。
| 指標 | 2024年12月期実績 | 2027年12月期目標 | CAGR |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,526億円 | 2,100億円 | 11.2% |
| 営業利益 | 210億円 | 315億円 | 14.4% |
| 営業利益率 | 13.8% | 15.0% | — |
| ROE | 17.4% | 18.0%以上 | — |
| 就業人員数 | 4,413名 | 6,000名 | 10.8% |
3年間で約1,600名の純増(4,413名→6,000名)を計画しており、積極的な採用が続くことを示しています。さらに、3か年累計750億円の成長投資枠をR&D・M&A・生産性向上に振り向ける方針です。
前中期経営計画の達成実績
「社会進化実装 2027」の前身である「X Innovation 2024」(2022〜2024年)は、当初目標をすべて上回って着地しました。
| 項目 | 当初目標 | 実績(2024年12月期) |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,500億円 | 1,526億円 |
| 営業利益 | 180億円 | 210億円 |
| 営業利益率 | 12.0% | 13.8% |
| ROE | 15.0% | 17.4% |
5年間の売上推移を見ると、着実な成長トレンドが確認できます(2024年12月期有報より)。
| 期 | 売上高 | 経常利益 | ROE |
|---|---|---|---|
| 4期前(2020年12月期) | 1,087億円 | 115億円 | 12.9% |
| 3期前(2021年12月期) | 1,121億円 | 132億円 | 14.3% |
| 2期前(2022年12月期) | 1,291億円 | 184億円 | 18.1% |
| 前期(2023年12月期) | 1,426億円 | 212億円 | 18.7% |
| 当期(2024年12月期) | 1,526億円 | 211億円 | 17.4% |
5年間で売上は約1.4倍、経常利益は約1.8倍に拡大しています。
研究開発と設備投資
| 投資区分 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 研究開発費 | 約19億円 | 生成AI活用、自社ソリューション強化、Trusted Web実証等 |
| 設備投資 | 約3.4億円 | オフィス環境整備、通信・電気設備等 |
研究開発費約19億円のセグメント別内訳は、金融ソリューション約4.9億円、ビジネスソリューション約3.6億円、製造ソリューション約2.7億円、コミュニケーションIT約1.1億円、その他約6.9億円です。「その他」にはTrusted Web(インターネット信頼性向上の仕組み)の社会実装研究や都市OSソリューション「CIVILIOS」など、既存セグメントの枠を超えた先端領域が含まれます。
電通総研が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報
| リスク項目 | 内容 | 就活での読み方 |
|---|---|---|
| 電通グループとの資本関係 | 持株比率61.8%。親会社の方針変更リスク | 独立性の確保状況を確認 |
| システム開発リスク | 開発工程のトラブルによる収益性低下 | プロジェクト管理体制(PMO委員会)を確認 |
| 人材確保・育成 | IT人材の獲得競争激化 | 6,000名体制に向けた採用・育成施策を確認 |
| 仕入先リスク | シーメンスの経営方針変化で製造ソリューションに影響 | 仕入先への依存度と代替策を確認 |
| M&Aリスク | 750億円の成長投資枠でM&A推進、事業計画未達の可能性 | 投資委員会によるモニタリング体制を確認 |
| 情報セキュリティ | サイバー攻撃や情報漏洩のリスク | ISO/IEC27001認証・プライバシーマーク取得済 |
特に注目すべきは「電通グループとの資本関係」です。電通グループが61.8%を保有する親会社であり、グループ向け売上は約214億円(全体の約14%)に達します。電通総研はこのリスクに対し、独立社外取締役が過半数を占める取締役会で経営の自主性を確保していると説明しています。
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従業員データ
| 項目 | データ(2024年12月期) | 読み方 |
|---|---|---|
| 従業員数(連結) | 4,413名 | 中堅IT企業の規模。2027年に6,000名目標 |
| 従業員数(単体) | 2,402名 | 連結の約54%が本体所属 |
| 平均年齢 | 40.1歳 | IT業界では標準的 |
| 平均勤続年数 | 10.8年 | 一定の定着率を示す |
| 平均年間給与 | 約1,123万円 | IT/コンサル業界でもトップクラス |
平均年間給与約1,123万円は、IT/コンサル業界の中でも高水準です。電通総研は前中期経営計画期間中に基本給の引き上げを実施しており、人的資本への投資姿勢が給与に反映されています。
サービス別売上構成
有報では4セグメントとは別に、サービス種別の売上構成も開示されています(2024年12月期)。
| サービス種別 | 売上高 |
|---|---|
| コンサルティングサービス | 約105億円 |
| 受託システム開発 | 約310億円 |
| ソフトウェア製品 | 約301億円 |
| ソフトウェア商品 | 約544億円 |
| 運用保守サービス | 約185億円 |
| 情報機器販売・その他 | 約82億円 |
コンサルティングサービス(約105億円)は前期の約86億円から約22%増加しており、シンクタンク・コンサル機能の統合効果が数字に表れ始めています。ソフトウェア商品(約544億円)が最大で、製造ソリューションにおけるシーメンス製品等の仕入販売が中心です。
面接で使える有報ポイント
志望動機での活用
「御社の有報で、Vision 2030においてSIerから『X Innovator』への自己変革を掲げていることを確認しました。シンクタンク・コンサル機能の統合とSI実装力の組み合わせで社会変革を実現するという方向性に強く共感しています。」
逆質問での活用
「有報で新中期経営計画の就業人員数目標が6,000名と記載されていますが、約1,600名の純増はどの領域の人材を中心に考えていますか?」
「ビジネスソリューションの営業利益率が23.6%と他セグメントより突出していますが、この高収益モデルを他セグメントに展開する計画はありますか?」
同業比較のポイント
| 比較軸 | 電通総研 | NRI | ベイカレント |
|---|---|---|---|
| 売上規模 | 約1,526億円 | 約7,648億円 | 約1,047億円 |
| 営業利益率 | 13.8% | 約17.5% | 約30% |
| 従業員数(連結) | 4,413名 | 約16,700名 | 約5,500名 |
| 特徴 | 4業界横断×SI+コンサル | 金融IT+三層構造 | コンサル特化・高収益 |
※各社の詳細比較は有報記事を参照: NRIの有報分析、ベイカレントの有報分析
有報データから逆算して今から学ぶべき分野
| 分野 | 根拠(有報) | 具体的アクション |
|---|---|---|
| 会計・ERP知識 | ビジネスソリューション(利益率23.6%)が会計ソリューション「Ci*X」中心(2024年12月期) | 簿記3級、ERPの基礎知識 |
| 製造業の基礎 | 製造ソリューション(474億円)でCAD/PLM領域をカバー(2024年12月期) | 製造プロセスの基礎、PLM概念の理解 |
| デジタルマーケティング | コミュニケーションIT(501億円)で電通グループとのシナジー(2024年12月期) | GA4やCRM基礎、マーケティング概論 |
| 生成AI・先端技術 | R&D費約19億円で生成AI活用やTrusted Web研究を推進(2024年12月期) | Python基礎、生成AIサービスの活用体験 |
まとめ
| 項目 | 電通総研の特徴 |
|---|---|
| 最大の強み | 4業界横断セグメント×シンクタンク・コンサル・SI三機能統合 |
| 収益の質 | ビジネスソリューション利益率23.6%が全社を牽引 |
| 成長戦略 | Vision 2030で売上3,000億円・営業利益率20%。3か年750億円の成長投資 |
| 待遇 | 平均年収約1,123万円。6,000名体制に向けた積極採用 |
電通総研は「電通のIT子会社」から「社会変革を実装するX Innovator」への転換期にある企業です。4セグメントによる業界分散、ビジネスソリューションの高収益性、そして750億円の成長投資枠が示す攻めの姿勢を理解した上で志望理由を語りましょう。
前中期経営計画「X Innovation 2024」で当初目標をすべて達成した実績は、経営の実行力を裏付けるデータです。新中期経営計画「社会進化実装 2027」で売上2,100億円・営業利益率15%を達成できるかが、Vision 2030の実現可能性を測る試金石になります。
- コンサル・SIer業界の比較 → コンサル・SIer業界の有報比較
- NRIとの比較 → NRIの有報分析
- 有報の読み方 → 有価証券報告書の読み方完全ガイド
本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。