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小売3社を有報で比較|イオン・セブン&アイ・ファーストリテイリング

(更新: ) 約10分で読了
#小売業界 #有報 #就活 #業界比較 #イオン #セブンイレブン #ユニクロ #流通
この記事でわかること
1. 3社の「表のイメージ」と「有報で見える実態」の違い
2. セグメント別収益構造・成長戦略の違い
3. 就活・キャリアマッチの観点から3社をどう選ぶか

「小売業はどこも同じ」──就活生からよく聞く言葉ですが、有報を読むと3社はまったく異なるビジネスモデルの企業であることがわかります。

イオンは「スーパー」に見えて、利益の約25%が金融から生まれる「金融複合体」です。セブン&アイは「コンビニ」に見えて、売上の60%が北米7-Eleven(ガソリン+コンビニ)の「グローバル企業」です。ファーストリテイリングは「洋服屋」に見えて、営業利益率16.1%という製造業水準の高収益を誇る「SPA企業」です。

この3社の違いを面接で語れれば、「なぜこの会社を選んだのか」の説得力は格段に上がります。

有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

結論|3社は「3つの異なるビジネスモデル」

まず3社の主要指標を横並びで見てみましょう。

比較項目イオンセブン&アイHDファーストリテイリング
連結売上約8.3兆円約9.85兆円約3.1兆円
営業利益約2,508億円約5,342億円約5,009億円
営業利益率約3.0%約5.4%16.1%
海外売上比率約15%約60%約54%
ビジネスモデル小売+金融+不動産コンビニ+ガソリンSPA(垂直統合)
戦略キーワード金融×アジア複合体グローバルコンビニ高収益SPA
平均年収(単体正社員)約862万円約819万円※約1,179万円
従業員数(連結)約163,584人約77,902人約60,454人
参照有報2024年2月期2024年2月期2024年8月期

出典: 各社 有価証券報告書(EDINET)。※セブン&アイHDは持株会社のため参考値。

この表だけで、3社が全く異なる企業であることが見えてきます。規模ではセブン&アイが最大、利益率ではファーストリテイリングが突出、年収・連結規模ではそれぞれ異なる特徴があります。以下では各比較軸を深堀りします。

3社の規模・収益性を有報で比較

規模 vs 利益率のトレードオフ

小売3社の財務データで最も印象的な対比は、「規模と利益率のトレードオフ」です。

指標イオンセブン&アイHDファーストリテイリング
連結売上約8兆3,000億円約9兆8,500億円約3兆1,000億円
営業利益約2,508億円約5,342億円約5,009億円
営業利益率約3.0%約5.4%16.1%
設備投資額約4,000億円約3,000億円約710億円

出典: 各社 有価証券報告書。イオン・セブン&アイ2024年2月期、ファーストリテイリング2024年8月期。

売上規模はイオン・セブン&アイが約2〜3倍大きいにもかかわらず、営業利益額はファーストリテイリングとほぼ同水準(セブン&アイとファストリはともに約5,000億円台)です。これは「規模で稼ぐ小売業(薄利多売)」と「高収益モデルで稼ぐSPA(少量高利益)」の本質的な違いを示しています。

就活視点のポイント: ファーストリテイリングの16.1%という利益率は、製造業(5〜10%台)を上回る水準です。「洋服屋なのになぜこれほど儲かるのか」を有報で説明できれば、企業研究の本質を理解していることが伝わります。営業利益率ランキングで業界横断比較も確認しておきましょう。

事業構造の違い|「何で稼いでいるか」は全く違う

3社の最大の違いは、事業構造(セグメント別の売上・利益比率)にあります。有報のセグメント情報を読むと、表のイメージとは異なる「本当の稼ぎ方」が見えてきます。

イオン|小売の顔をした金融・不動産複合体

セグメント売上構成比(概算)営業利益構成比(概算)特徴
GMS(総合スーパー)約38%約10%中核だが薄利。競争が激しい
SM(スーパーマーケット)約28%約12%マックスバリュ・マルエツ等
ドラッグ・ファーマシー約12%約8%ウエルシア薬局。成長中
金融約5%約25%イオン銀行・クレジット。高収益の隠れた柱
デベロッパー約6%約20%イオンモール。テナント賃料で高利益率
海外・その他約11%約25%東南アジア・専門店

出典: イオン株式会社 有価証券報告書(2024年2月期)セグメント情報(概算値)

金融セグメントは売上の約5%しかありません。しかし営業利益の約25%を生み出しています。「スーパー」のイメージで入社すると、入社後に「金融・不動産が利益の約半分を稼ぐ会社」という実態に驚くことになります。

詳細はイオンの有報分析をご覧ください。

セブン&アイHD|「日本のコンビニ」より「北米ガソリン+コンビニ」

セグメント売上比率(概算)営業利益貢献(概算)特徴
海外コンビニ(7-Eleven, Inc.)約60%約50%北米約13,000店舗。ガソリン・食品販売
国内コンビニ(セブン-イレブン・ジャパン)約15%約35%国内約2.1万店。FC収入で高利益率
スーパーストア(イトーヨーカドー等)約18%約5%構造改革中。不採算店閉鎖を継続
金融(セブン銀行)約3%約8%ATM約2.6万台。売上3%で利益8%の高収益

出典: セブン&アイ・ホールディングス 有価証券報告書(2024年2月期)セグメント情報(概算値)

「コンビニの会社」と思って入社しても、連結業績の約60%を左右するのは北米7-Eleven(ガソリン小売含む)です。国内コンビニは売上15%ですが利益35%を担う「高収益コア」であり、逆にイトーヨーカドーは縮小中。同じ「セブン&アイ」という看板でも、事業によって全く状況が異なります。

また、セブン銀行(ATM約2.6万台)は「売上3%で利益8%」という超効率経営を実現しており、コンビニ内に埋め込まれた高収益金融インフラとして独自の価値を持ちます。

詳細はセブン&アイの有報分析をご覧ください。

ファーストリテイリング|海外が既に過半を占めるグローバルSPA

セグメント売上比率利益比率特徴
国内ユニクロ約30%約30%約855店舗。成熟市場で安定収益
海外ユニクロ約54%約55%中国が最大市場(約850店舗)。欧米・インドが次
GU約10%約10%低価格帯。トレンド訴求
グローバルブランド約6%少額THEORY等欧米系ブランド群

出典: ファーストリテイリング 有価証券報告書(2024年8月期)セグメント情報

ファーストリテイリングは「日本のアパレル企業」のイメージとは異なり、収益の過半がすでに海外で生まれています。SPAモデルにより企画・素材・製造・販売を一気通貫で管理することで、一般小売業の3倍以上に相当する営業利益率16.1%を実現しています。

詳細はファーストリテイリングの有報分析をご覧ください。

成長戦略の違い|M&A vs コンビニ特化 vs SPA直営展開

3社の成長戦略は、方向性が根本的に異なります。有報の設備投資・経営方針・対処すべき課題から読み取れる「賭けの方向性」を比較します。

戦略軸イオンセブン&アイHDファーストリテイリング
主な成長手法M&A+出店型M&A→選択と集中直営SPA展開
海外の重点地域東南アジア(マレーシア・ベトナム等)北米(Speedway買収済み)欧米・インド(次のフロンティア)
国内戦略金融・デベロッパー強化・DXコンビニ特化・ヨーカドー縮小国内ユニクロ安定収益
デジタル投資iAEONスーパーアプリ・ネットスーパーセブン銀行ATM更新・コンビニ決済RFID・AI需要予測・倉庫自動化
大型投資事例設備投資年間約4,000億円(国内+東南アジア)Speedway買収(約2.3兆円・2021年)設備投資約710億円(デジタル中心)
長期目標東南アジア・グループ金融事業の拡大コンビニ特化ポートフォリオへの転換2030年売上10兆円(現在の約3倍)

出典: 各社 有価証券報告書。各社の経営方針・対処すべき課題・設備投資の状況より。

イオン: 「足場を広げながら金融・デジタルで収益性を高める」戦略

イオンは年間約4,000億円の設備投資を、国内既存店舗の改装・東南アジアへの新規出店・iAEONアプリ開発に配分しています。「スーパーで集客し、金融で高収益を得る」という二層構造をさらに深化させながら、東南アジアの人口ボーナスを取り込む戦略です。

セブン&アイ: 「大型M&Aで規模を確立→コンビニ特化で収益性を高める」戦略

2021年のSpeedway買収(約2.3兆円)で北米のガソリン・コンビニ大手を傘下に収め、売上を約1.8倍に拡大しました。その後、そごう・西武売却(2023年)・イトーヨーカドー縮小という「選択と集中」でコンビニ特化のポートフォリオへ転換中です。

ファーストリテイリング: 「SPA直営展開で2030年売上10兆円を目指す」戦略

有報の経営方針に「2030年売上収益10兆円・営業利益率15%以上」という目標が明記されています(2024年8月期)。現在の約3.1兆円・営業利益率16.1%から10兆円は約3倍の規模拡大で、欧米・インドへの直営出店とRFID・AI物流への継続投資がその手段です。利益率は既に目標水準を超えており、成長投資と利益率維持の両立が課題です。

就活・採用・キャリアマッチ

3社の採用文化・職種・年収・求めている人材像は大きく異なります。有報の従業員データと事業構造から逆算したキャリアマッチを整理します。

採用・従業員データの比較

指標イオンセブン&アイHDファーストリテイリング
連結従業員数約163,584人約77,902人約60,454人
平均年収約862万円約819万円※約1,179万円
採用の特徴総合職(多様なローテーション)・現地採用も持株会社・事業会社を選択グローバル幹部候補採用
グローバル度海外赴任機会あり(東南アジア)英語必須化が進む(北米60%)早期海外赴任が前提
組織文化大企業型・安定・段階的成長事業ごとに文化が異なる成果主義・スピード感・高い要求水準

出典: 各社 有価証券報告書。※セブン&アイHDは持株会社のため参考値。実際の配属先事業会社とは異なる。

タイプ別キャリアマッチ

あなたの志向最もフィットする企業根拠(有報データ)
スケールの大きい仕事・多様な職種を経験イオン連結59万人・GMS・金融・不動産・海外と職種が最多
金融×小売のハイブリッドキャリアイオン金融が利益25%。銀行・クレジット部門への異動機会
東南アジアでグローバルキャリアイオンマレーシア・ベトナム等への継続出店。海外売上15%
グローバル小売・英語を活かしたいセブン&アイ売上60%が北米事業。英語力が重要性を増す
フィンテック・決済インフラセブン&アイセブン銀行ATM2.6万台・コンビニ×金融融合
食品・商品開発(コンビニPB)セブン&アイセブンプレミアム等PB開発で業界トップ水準
高収益環境・早期グローバルキャリアファーストリテイリング利益率16.1%・平均年収1,179万円・海外54%
デジタル×物流変革に携わりたいファーストリテイリングRFID・AI需要予測・倉庫自動化への積極投資

面接での有報活用例

イオン志望の場合:

「有報のセグメント情報で、金融事業が売上約5%に対して営業利益の約25%を担っていることを確認しました。イオンが小売業の集客力を金融収益に転換するビジネスモデルを構築している点に注目しており、この金融×小売融合をさらに発展させる仕事に携わりたいと考えています。」(2024年2月期有報)

セブン&アイ志望の場合:

「有報のセグメント情報を確認したところ、連結売上の約60%が北米7-Eleven事業であることを把握しました。2021年のSpeedway買収以降、セブン&アイが事実上のグローバルコンビニ企業に変貌していることを理解した上で、このグローバル展開に携わりたいと考えています。」

ファーストリテイリング志望の場合:

「有報で海外ユニクロが売上の54%・利益の55%を占め、営業利益率16.1%という製造業水準を超える高収益を実現していることを確認しました。SPAモデルが生み出すこの高収益構造の中で、RFID・AI需要予測等のデジタル投資を活かした役割を担いたいと考えています。」(2024年8月期有報)

まとめ|「表のイメージ」を超えた3社の本質

ポイントイオンセブン&アイHDファーストリテイリング
表のイメージスーパーコンビニ洋服屋
有報で見える実態金融×小売×アジア複合体北米ガソリン+コンビニのグローバル企業利益率16.1%の高収益グローバルSPA
最大の強み金融25%・不動産20%という二層構造国内コンビニ(売上15%・利益35%)の超高収益SPAモデルによる業界最高水準の利益率
成長の賭け東南アジア出店・iAEON・金融拡大コンビニ特化・北米7-Eleven高付加価値化2030年10兆円・欧米インド展開
向いている人スケール×多様性×金融ハイブリッドグローバル小売×フィンテック×商品開発高収益×グローバル×デジタル変革

「どの企業が良い・悪い」ではありません。3社はそれぞれ異なる未来に賭けており、自分のキャリア志向とどの「賭け」が合うかで選ぶことが重要です。

有報の具体的な数字を使って3社の違いを語れる就活生は、面接において確実に差別化できます。まずは3社それぞれの有報を読み、自分の志向と重ね合わせてみましょう。

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  • イオンの詳細分析 → [イオンの有報分析]
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  • 業界横断で利益率を比較 → [営業利益率ランキング]
  • 海外売上比率で比較 → 海外売上比率ランキング

本記事のデータは各社の有価証券報告書に基づいています。イオン・セブン&アイは2024年2月期、ファーストリテイリングは2024年8月期を参照しています。投資判断を目的としたものではありません。

よくある質問

小売3社(イオン・セブン&アイ・ファーストリテイリング)で就活するならどの会社が向いていますか?

有報の事業構造から考えると、スケールの大きな仕事・金融×小売・東南アジアに関心があるならイオン、グローバル小売・フィンテック・コンビニ商品開発に関心があるならセブン&アイ、高収益環境・早期グローバルキャリア・SPA全体に関与したいならファーストリテイリングが適しています。いずれも「表のイメージ」と「有報で見える実態」が大きく異なる企業です。

3社の年収はどれくらい違いますか?

有報の単体正社員データによると、イオンは約862万円(2024年2月期)、セブン&アイHDは持株会社で約819万円(ただし配属先事業会社とは異なる)、ファーストリテイリングは約1,179万円(2024年8月期・グローバル幹部候補採用が前提)です。ファーストリテイリングは小売業の中で突出した水準ですが、求められるコミットメントも異なります。

ファーストリテイリングはなぜ他の小売より営業利益率が高いのですか?

ファーストリテイリングが営業利益率16.1%(2024年8月期)を実現できる理由は、SPA(製造小売業)モデルにあります。企画・素材調達・製造委託・物流・販売を一気通貫で管理し、中間業者のマージンを排除しています。さらにヒートテック・エアリズム等の機能性素材で差別化し、値引き競争に巻き込まれない仕組みを構築しています。一般的な小売業(スーパー・コンビニ等)の利益率が3〜5%程度であるのに対し、その3倍以上の水準です。

セブン&アイHDはコンビニの会社ではないのですか?

表のイメージではコンビニ企業ですが、有報のセグメント情報(2024年2月期)を見ると、連結売上約11兆円のうち約60%が北米の7-Eleven事業(ガソリンスタンド併設コンビニ)です。2021年のSpeedway買収(約2.3兆円)で北米事業が急拡大しました。国内コンビニ(セブン-イレブン・ジャパン)は売上15%ですが利益35%を担う高収益コアです。セブン&アイは実態として北米ガソリン+コンビニを中心とするグローバル企業です。

小売業の有報でどこを重点的に読むべきですか?

就活目的であれば、①セグメント情報(何で稼いでいるかの売上・利益比率)、②設備投資の状況(どこに資金を投じているか)、③事業等のリスク(競合・地政学・ビジネスモデルの課題)の3点が最も重要です。特にセグメント情報は、表のイメージと実態の乖離を把握するための鍵になります。読み方の詳細は有価証券報告書の読み方完全ガイドで解説しています。

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