| この記事でわかること |
|---|
| 1. 損害保険と生命保険のビジネスモデルの根本的な違い |
| 2. 東京海上と第一生命の収益構造・海外戦略の比較 |
| 3. 損保vs生保のキャリアの違いと面接での活用法 |
「保険会社」と一括りにされがちですが、有報を読むと損害保険と生命保険は全く別のビジネスです。
東京海上ホールディングス(損保)は保険引受と再保険で利益を上げ、海外M&Aで利益の約50%を海外から稼ぎます。一方、第一生命ホールディングス(生保)は長期契約で集めた保険料を総資産約70兆円(2025年3月期有報)で運用し、資産運用が収益の柱です。
この違いを理解することが、保険業界の面接での差別化につながります。
有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
結論|損保と生保は「別の産業」
| 比較項目 | 東京海上HD(損保) | 第一生命HD(生保) |
|---|---|---|
| 収益の源泉 | 保険引受利益+再保険 | 資産運用(総資産約70兆円) |
| 契約の期間 | 短期(1年更新が主) | 長期(終身・数十年) |
| 純利益 | 約1兆553億円 | 約4,296億円 |
| 海外利益比率 | 約50% | 成長途上 |
| 主な海外戦略 | M&A(スペシャルティ保険) | 子会社(Protective, TAL) |
| 重要指標 | コンバインドレシオ | ソルベンシーマージン比率 |
| 最大のリスク | 気候変動・自然災害 | 金利変動・長寿リスク |
出典: 各社 有価証券報告書 2025年3月期
ビジネスモデルの違い|収益の源泉が根本的に異なる
損保(東京海上): 保険引受×リスク分散で稼ぐ
損害保険のビジネスモデルは「リスクを引き受け、分散させること」です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 収益の柱 | 保険引受利益(保険料 − 保険金支払い − 経費) |
| 重要指標 | コンバインドレシオ(保険金+経費 ÷ 保険料。100%未満で黒字) |
| 契約サイクル | 1年更新が主。環境変化に料率を毎年調整可能 |
| リスク管理 | 再保険で巨大リスクを分散 |
東京海上のスペシャルティ保険(サイバー保険、D&O保険等)は通常の保険より高い利益率を実現しています。北米を中心にこの分野を拡大中です(2025年3月期有報)。
生保(第一生命): 長期契約×資産運用で稼ぐ
生命保険のビジネスモデルは「長期契約で集めた保険料を数十年単位で運用すること」です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 収益の柱 | 資産運用益(総資産約70兆円の運用) |
| 重要指標 | ソルベンシーマージン比率(保険金支払い能力。高いほど安定) |
| 契約サイクル | 長期(終身保険は数十年) |
| リスク管理 | ALM(資産負債管理)で長期の負債と運用をマッチング |
第一生命の総資産約70兆円(2025年3月期有報)は、日本の金融機関でも有数の規模です。この資産をどう運用するかが経営の最重要課題であり、金利環境が収益に直結します。
海外戦略の比較|両社とも海外に賭けるが手法が異なる
東京海上: M&Aでスペシャルティ保険を買い集める
| 海外拠点 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| Philadelphia Insurance等(米国) | スペシャルティ保険 | 高利益率の専門保険 |
| 欧州・豪州・アジア | 約40カ国で事業展開 | 地域分散でリスクヘッジ |
| 海外利益比率 | 約50% | 日本の保険会社で最高水準 |
東京海上は積極的なM&Aで海外損保を買収し、10年間で海外利益比率を急拡大させました。純利益が5年で6.5倍(約1,618億円→約1兆553億円、2025年3月期有報)に成長した最大の要因は海外事業です。
第一生命: Protective Life+TALで生保をグローバル展開
| 海外拠点 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| Protective Life(米国) | 北米の生命保険 | 団体保険・年金に強み |
| TAL(豪州) | 豪州の生命保険 | 豪州市場でトップクラス |
| ベトナム等(アジア) | 成長市場への展開 | 新興国の保険普及率の低さが成長余地 |
第一生命の海外展開は東京海上に比べるとまだ成長途上です。しかし、国内の少子高齢化で新規契約が減少する中、海外生保市場が将来の成長ドライバーとして位置付けられています。
リスクの対比|有報の「事業等のリスク」に本音が出る
| リスク | 東京海上(損保) | 第一生命(生保) |
|---|---|---|
| 最大のリスク | 気候変動・自然災害 | 金利変動 |
| 市場構造リスク | 国内自動車保険の縮小 | 国内新規契約の減少 |
| 運用リスク | 保険引受リスク(巨大災害) | 資産運用リスク(株価・金利) |
| 対策 | 海外M&Aで地域分散 | 資産運用の高度化+海外展開 |
損保固有のリスク: 気候変動による自然災害の頻発化は、損保にとって保険金支払いの急増を意味します。東京海上は再保険と地域分散(約40カ国)でリスクを管理しています。ただし、気候変動が加速すれば従来の統計モデルでは予測できないリスクが生じます。
生保固有のリスク: 生保は数十年にわたる長期契約のため、金利環境の変化が直接的に運用収益に影響します。低金利環境では運用利回りが低下し、逆ざや(約束した利回りが実際の運用利回りを上回る状態)のリスクがあります。日本の金利上昇は第一生命にとって追い風です。
キャリアマッチ|損保と生保、あなたに合うのはどちら
| キャリア志向 | 最適な業態 | 根拠 |
|---|---|---|
| グローバルに働きたい | 損保 | 海外利益50%、約40カ国展開 |
| 金融の専門性を磨きたい | 生保 | 約70兆円の資産運用、ALM |
| リスク管理に興味がある | 損保 | 自然災害リスクの定量分析が核心業務 |
| 機関投資家的な仕事がしたい | 生保 | 巨大な資産運用ポートフォリオの運営 |
| M&A・事業開発に関心がある | 損保 | 海外M&Aが成長戦略の中核 |
| 長期的な顧客関係を重視 | 生保 | 終身契約で数十年の顧客接点 |
就活での活用法
ES: 損保・生保の違いを踏まえた志望動機
東京海上向け:
「御社の有報で海外利益比率約50%、北米スペシャルティ保険での高収益体制に注目しました。M&Aを通じてグローバルに保険事業を拡大する戦略に共感し、海外事業の成長に貢献したいです。」
第一生命向け:
「御社の有報で総資産約70兆円の資産運用力に注目しました。長期的な視点で巨大な資産を運用し、契約者の利益と社会的責任を両立する事業に携わりたいと考えています。」
逆質問
「有報で海外利益比率が約50%と拝見しましたが、今後さらに海外比率を引き上げる計画はありますか?国内損保市場の縮小にどう対応されますか?」(東京海上向け)
「総資産約70兆円の運用において、金利上昇局面で運用戦略はどのように変化しますか?ESG投資の比率目標はありますか?」(第一生命向け)
まとめ
| ポイント | 東京海上(損保) | 第一生命(生保) |
|---|---|---|
| ビジネスの本質 | リスク引受×再保険 | 長期契約×資産運用 |
| 最大の強み | 海外利益50%+スペシャルティ保険 | 総資産約70兆円の運用力 |
| 海外戦略 | M&A主導で約40カ国 | Protective Life+TAL |
| 最大のリスク | 気候変動・自然災害 | 金利変動・長寿リスク |
| 向いている人 | グローバル×リスク管理志向 | 金融専門×長期運用志向 |
「保険会社」の面接で損保と生保の違いを有報の数字で語れる就活生はほとんどいません。この記事の比較軸を使って、業態の本質を理解した志望動機を作りましょう。
本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。