OB訪問でよくある質問「仕事のやりがいは何ですか?」「一日のスケジュールを教えてください」──これらは誰でも聞ける質問です。
有報のデータを元にした質問は、OBから「この学生は本気だ」と思われる質問になります。なぜなら、有報を読んでOB訪問に臨む就活生はほぼゼロだからです。
有報の読み方は有価証券報告書の読み方完全ガイドで押さえてからこの記事を読むと効果的です。
OB訪問で有報データが効く理由
有報データを入口にすると、OBは「具体的な経験」を話しやすくなります。抽象的な質問には抽象的な回答しか返ってきませんが、具体的なデータを起点にすると具体的なエピソードが引き出せます。
| 一般的な質問 | 有報ベースの質問 | OBの反応 |
|---|---|---|
| 「仕事のやりがいは?」 | 「音楽事業が利益率19.4%と全セグメント最高ですが、この事業の現場ではどんなやりがいがありますか?」 | 具体的なエピソードが出やすい |
| 「御社の強みは?」 | 「R&D費が売上比14.8%と業界平均より高いですが、研究開発の現場で感じる強みは?」 | 数字を起点に実感を語れる |
| 「今後の成長は?」 | 「電池関連に約4,000億円投資していますが、現場ではその効果を感じますか?」 | 投資の実態を語れる |
ポイントは「有報の数字」と「現場のリアル」のギャップを聞くことです。有報は経営の全体像を示しますが、現場の温度感は書かれていません。その「書かれていない部分」をOBから引き出すのが、有報を使ったOB訪問の真価です。
テーマ別質問テンプレート
セグメント情報ベースの質問
有報のセグメント情報を読んだ上での質問です。「何で稼いでいるか」を知った上で、現場の実態を聞きます。
テンプレート:
「有報で{セグメントA}が利益の{X}%を占めている一方、{セグメントB}が前年比{Y}%で成長していることがわかりました。{OBの所属部門}では、この変化を日常業務で感じることはありますか?」
ソニーのOBに聞く場合の実践例:
ソニーの有報を読むと、音楽事業の利益率が19.4%で全セグメント最高、I&SS(イメージセンサー)が利益+34.9%で急成長していることがわかります。
「御社の有報で、音楽事業の営業利益率が19.4%と全セグメント中最高であることに驚きました。売上ではゲーム事業が最大ですが、利益で見ると音楽がトップなんですね。○○さんの部署では、エンタメシフトを日常的に感じる場面はありますか?」
「I&SS事業の利益が前年比+34.9%と急成長していますが、センサー事業に携わる方の採用や社内の注目度は変わってきていますか?」
三菱商事のOBに聞く場合の実践例:
三菱商事の有報を読むと、S.L.C.(ローソン等の生活産業)が前年比+80.1%の急伸で、食品産業も赤字からV字回復していることがわかります。
「御社の有報で、S.L.C.セグメントの利益が前年比+80.1%と急成長していることがわかりました。商社というと資源のイメージが強いですが、生活産業の存在感が急速に高まっていますね。○○さんの周りでも、非資源分野への注力を実感される場面はありますか?」
追加のセグメント質問:
「御社のセグメントが{X}個あり多角的ですが、部門間の異動は実際にどの程度ありますか?」
「{高利益率セグメント}が御社の稼ぎ頭だとわかりましたが、この事業部にはどんなキャリアパスで配属されるのですか?」
→ [セグメント情報の読み方]
投資方針ベースの質問
設備投資やR&D費のデータから作る質問です。「何に賭けているか」を知った上で、現場の実態を聞きます。
テンプレート:
「御社がR&D費に売上比{X}%を投じていることを有報で確認しました。{具体的な投資先}に重点配分されていますが、現場ではどのような変化を感じますか?」
トヨタのOBに聞く場合の実践例:
トヨタの有報を読むと、電池関連(Toyota Battery Manufacturing + プライムプラネットエナジー&ソリューションズ)に約4,030億円を投資していることがわかります。
「御社の有報で、電池関連の設備投資が約4,000億円と設備投資総額の約19%を占めていることがわかりました。電動化への本気度を感じましたが、○○さんの部署では電動化シフトの影響を感じる場面はありますか?」
「有報で金融事業が前年比+28.6%と急成長していることを知りました。『クルマを売る会社』から『モビリティサービスの会社』への変化を、現場ではどの程度実感していますか?」
追加の投資質問:
「御社が{分野}に賭けていることが投資データからわかるのですが、この分野に関わるにはどのようなスキルが必要ですか?」
「設備投資で{投資先}に重点配分されていますが、現場で新しい設備やシステムが導入される実感はありますか?」
→ [設備投資・R&D費の読み方] | R&D投資ランキング
リスク情報ベースの質問
事業等のリスクから作る質問です。OBの本音を引き出しやすいテーマです。リスクについて聞かれると、OBは建前ではなく現場目線で答えてくれることが多くなります。
テンプレート:
「有報で{リスク項目}が挙げられていますが、現場ではこのリスクをどの程度意識していますか?」
商社のOBに聞く場合の実践例:
商社の有報には資源価格変動リスク、カントリーリスク、気候変動リスクなどが記載されています。
「御社の有報で資源価格の変動リスクが記載されていますが、資源セグメントの方は市況の変動をどのくらい日常的に意識していますか?」
「有報でカントリーリスクについて触れられていましたが、海外駐在の方はこのリスクを肌で感じることはありますか?」
追加のリスク質問:
「{業界固有のリスク}に対して、現場レベルではどのような対策が取られていますか?」
「有報で見ると{リスクA}と{リスクB}が大きな課題に見えますが、○○さんの部門ではどちらの方が影響が大きいですか?」
→ [事業等のリスクの読み方] | 25社のリスク比較
キャリア・働き方ベースの質問
有報の従業員情報や人的資本データから作る質問です。数字と現場の実態のギャップを聞きます。
「有報で平均勤続年数が{X}年と拝見しました。長く働ける環境だと思いますが、キャリアの転機になるのは入社何年目くらいですか?」
「有報の人的資本情報で男性育休取得率が{X}%とのことですが、実際に取得された方は周りにいますか?取得しやすい雰囲気ですか?」
「有報で女性管理職比率が{X}%と記載されていましたが、○○さんの部署では女性のマネージャーは実際にどのくらいいらっしゃいますか?」
OB訪問の準備手順(所要時間15分)
有報を使ったOB訪問の準備は、以下の4ステップで15分あれば完了します。
| ステップ | やること | 所要時間 |
|---|---|---|
| 1 | EDINETで志望企業の有報を開く | 2分 |
| 2 | セグメント情報を確認──何で稼いでいるか | 5分 |
| 3 | 経営方針・中期計画を確認──どこに向かっているか | 3分 |
| 4 | 上記から質問を3〜5個作る | 5分 |
質問を作るコツ: 有報の「数字」と「現場のリアル」のギャップを質問にします。有報からわかる事実を述べた上で、「現場ではどうですか?」と聞く形がもっとも自然です。
避けるべきNG質問
有報データを使う場合でも、以下のような質問は避けましょう。
| NG質問 | 理由 | 改善例 |
|---|---|---|
| 「御社の営業利益率が○%ですが低くないですか?」 | 否定的な印象を与える | 「利益率の向上に向けてどのような取り組みがありますか?」 |
| 「有報によると赤字セグメントがありますが大丈夫ですか?」 | 不安を煽る聞き方 | 「このセグメントの今後の方向性について教えてください」 |
| 「役員報酬が○億円ですが高すぎませんか?」 | 失礼にあたる | 「役員報酬の業績連動比率から成果主義の文化を感じましたが、若手の評価でもそうですか?」 |
共通するポイントは、批判ではなく理解の姿勢で聞くことです。「有報を読んで理解したい」というスタンスが伝わる質問を心がけてください。
OB訪問→面接→ESの好循環
有報でOB訪問の質問を準備する最大のメリットは、面接・ESで使える「現場のリアル」が手に入ることです。
| ステップ | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1. 有報を読む | 数字で企業の構造を理解 | ソニーの音楽事業が利益率19.4%と知る |
| 2. OB訪問で質問 | 数字の裏にある現場のリアルを聞く | 「音楽事業のグローバル展開が加速している」と聞く |
| 3. 面接・ESで活用 | 「有報の数字+OBから聞いた話」で説得力が倍増 | 「有報のデータとOBの方のお話を通じて、御社のエンタメシフトの本気度を確信しました」 |
この好循環を回すことで、企業研究の深さが段違いになります。
面接での活用例:
「御社の有報で音楽事業の利益率が19.4%と全セグメント最高であることを確認し、OB訪問で現場の方にもお話を伺いました。データと現場の声の両方から、御社がエンタメとテクノロジーの融合で新しい価値を生み出していると確信し、志望いたしました。」
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 質問の作り方 | 有報の「数字」を入口に、「現場のリアル」を引き出す |
| 準備時間 | 15分(有報の2セクションを読む+質問3〜5個作成) |
| 効果 | OBから具体的なエピソードを引き出せる。面接・ESにも活用可能 |
| 注意点 | 批判ではなく理解の姿勢で聞く。数字の羅列はNG |
有報データを元にしたOB訪問は、企業研究の質を一段上げる最も効率的な方法です。15分の準備で「この学生は本気だ」と思われる質問ができるようになります。
- 有報の読み方 → [有価証券報告書の読み方完全ガイド]
- 面接での活用 → [有報データを面接で使いこなす方法]
- 業界研究 → 有報で業界研究チェックリスト
本記事の情報は有価証券報告書(EDINET)に基づく企業分析手法の解説です。投資判断を目的としたものではありません。