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有報の読み方

有報の人的資本情報の読み方|会社の「人への本気度」がわかる

約7分で読了
#人的資本 #有価証券報告書 #有報 #就活 #読み方 #ダイバーシティ

「当社はダイバーシティを推進しています」「働きやすい環境づくりに取り組んでいます」──こうした採用HPの言葉が本当かどうか、2023年から有報の数字で確認できるようになりました。

人的資本開示の3指標を読むことで、企業が人材にどれだけ本気で向き合っているかが客観的にわかります。

有報全体の読み方を押さえたい方は、先に有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。

人的資本開示とは?

人的資本開示とは、企業が従業員に関する情報を数値で公開する制度です。

2023年3月期決算から、上場企業の有報に以下の3指標の記載が義務化されました。

指標内容わかること
女性管理職比率管理職に占める女性の割合女性がキャリアを築ける組織か
男性育児休業取得率男性従業員の育休取得割合ワークライフバランスの実態
男女間賃金差異女性の賃金÷男性の賃金(%)報酬の公平性

これらは法定開示であり、PRではありません。数字に嘘はつけないため、企業の「建前」と「本音」のギャップが見えるデータです。

どこに書いてあるか

有報の「従業員の状況」セクション内に記載されています。従来の従業員数・平均年齢・平均年収のデータに加え、人的資本の3指標が追加されています。

義務3指標の読み方

指標1: 女性管理職比率|「ガラスの天井」の高さ

女性管理職比率は、女性がその企業でどこまでキャリアを築けるかを示す指標です。

水準読み方
30%以上先進的。女性リーダーの育成が組織文化に定着
15〜30%積極的に取り組んでいる段階
5〜15%取り組み開始段階。改善の余地が大きい
5%未満構造的に女性の登用が遅れている

主要企業の女性管理職比率

企業女性管理職比率背景
ソニーグループ約14%グローバル基準でD&I推進。エンタメ部門が牽引
NTTデータ約10%IT業界としては標準的。グローバル部門は高い
トヨタ自動車約5%製造業の構造的課題。工場の女性比率が低い

出典: 各社 有価証券報告書 2025年03月期

読み方のポイント: 数字の高低だけでなく「前年からの変化率」を見ることが重要です。数字は低くても急速に改善している企業は、本気で取り組んでいる証拠です。

指標2: 男性育児休業取得率|「制度」と「文化」のギャップ

男性育休取得率は、制度が整っているだけでなく、実際に使われているかを示します。

水準読み方
80%以上育休取得が当たり前の文化
50〜80%取得しやすい環境。ただし部門差がある可能性
30〜50%制度はあるが取得しにくい雰囲気が残る
30%未満制度はあるが文化的に取得しにくい

注意点: 取得率が高くても「取得日数が1〜2日」のケースがあります。企業によっては取得日数の内訳も開示しており、実質的な育休かどうかを確認できます。

指標3: 男女間賃金差異|報酬の公平性

男女間賃金差異は、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で割った数値(%)です。100%なら完全に同額です。

水準読み方
80%以上差は小さい方。同一職種での差は少ない
70〜80%一般的な水準。管理職比率の差が主因
60〜70%差が大きい。構造的な課題あり

重要な読み方: 男女間賃金差異は「同じ仕事で給料が違う」ことだけを意味しません。以下の構造的要因が影響しています。

要因影響
管理職比率の差管理職に女性が少ない→女性平均が下がる
職種構成の差製造業で女性が事務職中心→賃金テーブルが異なる
勤続年数の差女性の平均勤続年数が短い→年功的な昇給が少ない
雇用形態の差パート・契約社員に女性が多い→平均が下がる

だからこそ、数字だけで「差別がある」と即断するのではなく、背景の構造を理解した上で評価することが大切です。企業によっては正社員のみ・全従業員の両方を開示している場合があり、比較の際は対象範囲を揃える必要があります。

任意開示情報|「義務以上」にどこまで開示しているか

義務3指標に加えて、自主的に開示している情報の量と質が、企業の本気度を示します。

任意開示の例わかること開示している企業例
研修投資額(一人当たり)人材育成への投資姿勢NTTデータ、ソニー
エンゲージメントスコア従業員満足度トヨタ、ソニー
離職率実際の定着状況IT企業に多い
海外従業員比率グローバル人材の多様性商社、製造業
障がい者雇用率法定雇用率の達成状況多くの大企業

任意開示が充実している企業は、人的資本を経営の重要課題と位置づけている証拠です。逆に義務3指標しか開示していない企業は、開示姿勢としては消極的と言えます。

業界別の傾向

人的資本データは業界によって構造的に異なるため、同業他社との比較が最も有効です。

業界女性管理職の傾向男性育休の傾向背景
IT・通信10〜20%高め(60〜90%)柔軟な働き方が普及
商社8〜15%中程度(40〜70%)海外駐在との両立が課題
製造業3〜10%低〜中(30〜60%)工場の交替勤務が障壁
金融15〜25%中〜高(50〜80%)女性活躍推進が先行

製造業の女性管理職比率が低いのは、工場の製造ラインに女性が少ないという構造的な理由が大きいです。この数字だけで「女性に不利な企業」と判断するのは早計です。

人的資本データを就活で使うテクニック

テクニック1: 「PR」と「数字」のギャップを指摘する

採用HPで「ダイバーシティ推進」を掲げている企業の、実際の数字を確認します。

確認ポイント読み方
採用HPで「女性活躍」→ 女性管理職比率は?5%未満なら実態が伴っていない可能性
採用HPで「ワークライフバランス」→ 男性育休取得率は?30%未満なら制度はあるが文化が追いついていない
「同一労働同一賃金」→ 男女間賃金差異は?60%台なら構造的課題が残っている

面接での活用例:

「御社の有報で男性育児休業取得率が{X}%と拝見しました。{前年からの変化}も確認し、この分野への取り組みが加速していると理解しています。将来的に育児と仕事を両立しながらキャリアを築きたいと考えており、御社の環境に関心を持っています。」

テクニック2: 同業2社の人的資本を比較する

同業他社の人的資本データを比較すると、企業の人材戦略の違いが鮮明になります。

比較ポイントわかること
女性管理職比率の差どちらが女性のキャリアパスを重視しているか
男性育休取得率の差どちらがワークライフバランスを実質的に推進しているか
任意開示の充実度どちらが人的資本を経営課題として認識しているか

テクニック3: 「変化率」に注目する

人的資本データは絶対値より変化率が重要です。

パターン読み方
数値は低いが急改善中経営の意思が明確。今まさに変わろうとしている
数値は高いが横ばい一定水準に達して安定。維持フェーズ
数値が低く変化なし優先順位が低い可能性。改善の意思が見えない

就活では「現在の数字が高い企業」より「改善の意思が明確な企業」の方が、入社後の環境が良くなる可能性があります。

逆質問テンプレート

「有報で女性管理職比率が{X}%と拝見しました。この比率を高めるために現在取り組まれている施策があれば教えてください。」

「有報で男性育児休業取得率が{X}%に向上されていることに注目しました。実際に取得された方の平均取得期間はどの程度ですか?」

読み方の注意点

注意1: 数字の対象範囲を確認する

人的資本データは企業によって計算の対象範囲が異なります。

対象影響
単体のみ vs 連結単体のみだとグループ実態が見えない
正社員のみ vs 全従業員パート含むと数値が大きく変わる
日本のみ vs グローバルグローバルだと多様性の数値が高く出やすい

注意2: 「高い=良い」と即断しない

男性育休取得率が100%でも、取得日数が平均2日では実質的な育休とは言えません。また女性管理職比率が高くても、管理職の定義が企業によって異なります。数字の背景を読む姿勢が大切です。

まとめ

人的資本開示は、企業の「人への投資の本気度」を数字で見せてくれるデータです。

指標読み方就活での活かし方
女性管理職比率キャリアの天井があるか長期キャリア形成の判断材料
男性育休取得率ワークライフバランスの実態働き方への関心をアピール
男女間賃金差異報酬の公平性構造的理由まで踏み込んで語る
任意開示の充実度企業の本気度開示姿勢そのものを評価

「ダイバーシティを推進しています」の一言ではなく、有報の数字でその実態を確認する──これが2023年以降にできるようになった、就活生の新しい武器です。

本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。

よくある質問

人的資本開示とは何ですか?

企業が従業員に関する情報(多様性、育成、働き方など)を数値で公開することです。2023年3月期から、上場企業は有価証券報告書で女性管理職比率・男性育児休業取得率・男女間賃金差異の3指標を開示することが義務化されました。

人的資本情報は有報のどこに書いてありますか?

有報の第一部『企業情報』内の『従業員の状況』セクションに記載されています。従来の従業員数・平均年齢・平均年収に加え、2023年以降は人的資本の3指標が追加されています。EDINETの目次から直接アクセスできます。

就活で人的資本データはどう役立ちますか?

企業の採用HPでは『多様性を重視』『働きやすい環境』と書かれていますが、人的資本データはその実態を数字で示します。面接で具体的な数値に触れることで、企業理解の深さをアピールできます。特に女性活躍やワークライフバランスに関心がある方には必見のデータです。

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