| この記事でわかること |
|---|
| 1. 電通グループ×博報堂DYの収益構造の違い(売上総利益で比較する理由) |
| 2. グローバル展開の差──海外GP比率60% vs 海外売上比率27% |
| 3. 2社の戦略フェーズの違いと就活でのキャリアマッチ |
「電通と博報堂、何が違うの?」──就活生からよく聞かれる質問ですが、有報を読むと2社は全く異なるフェーズにあることがわかります。
電通グループは売上総利益1.20兆円の約60%を海外で稼ぐグローバル企業でありながら、のれん減損2,353億円で最終赤字に転落し再建フェーズにあります。博報堂DYホールディングスは売上総利益3,996億円の国内基盤を持ち、デジタル統合とITコンサル参入による構造変革フェーズにあります。
有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
結論|2社は「規模」も「フェーズ」も異なる
| 比較項目 | 電通グループ | 博報堂DYホールディングス |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 1兆2,016億円 | 3,996億円 |
| 営業利益 | -1,250億円(IFRS) | 376億円 |
| 調整後営業利益 | 1,762億円 | ―(日本基準) |
| 最終損益 | -1,922億円 | 108億円 |
| 海外比率 | GP約60% | 売上約27% |
| 連結従業員数 | 67,667人 | 29,386人 |
| 会計基準 | IFRS(12月決算) | 日本基準(3月決算) |
| 戦略フェーズ | グローバル再建 | 国内構造変革 |
出典: 電通グループ 有価証券報告書 2024年12月期 / 博報堂DYHD 有価証券報告書 2025年3月期
電通のIFRS営業利益-1,250億円は、のれん減損2,353億円や構造改革費用107億円などの一時的要因を含んだ数値です。これらを除いた調整後営業利益は1,762億円で、事業としての収益力は維持されています。
収益構造の比較|売上総利益で読む2社の実力
広告業界の有報を読む際、最も重要な指標は売上総利益(Gross Profit)です。売上高にはメディア費用のパススルー(広告主から預かったメディア枠の代金)が含まれるため、売上高の比較では2社の実力差を正しく反映できません。
| 指標 | 電通グループ | 博報堂DYHD |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,110億円 | 9,533億円 |
| 売上総利益 | 1兆2,016億円 | 3,996億円 |
| 営業利益 | -1,250億円 | 376億円 |
| 調整後OP / GP | 14.7% | ―(参考: OP/GP 9.4%) |
| 自己資本比率 | 19.9% | 37.2% |
出典: 各社 有価証券報告書
売上総利益ベースでは電通が博報堂DYの約3倍の規模です。ただし、電通はIFRS適用であるのに対し博報堂DYは日本基準を採用しており、収益の認識方法が異なるため、この比率は概算として捉える必要があります。
電通の調整後営業利益マージン(売上総利益に対する比率)は14.7%です。日本事業に限ると調整後営業利益1,142億円に対しGP 4,667億円でマージン24.5%と高水準ですが、海外事業、特にAPACの調整後営業利益率が0.9%と低迷しており、全社マージンを押し下げています。
博報堂DYは営業利益376億円に対しGP 3,996億円でマージン9.4%です。中期目標として調整後のれん償却前オペレーティング・マージン13%以上を掲げています。
グローバル展開の比較|4リージョン体制 vs 国内中心
2社のグローバル展開には大きな差があります。
電通グループ|売上総利益の約60%が海外
電通は日本・Americas・EMEA・APACの4地域セグメントで事業を展開しています(2024年12月期有報)。
| リージョン | 売上総利益 | 調整後OP | マージン |
|---|---|---|---|
| 日本 | 4,667億円 | 1,142億円 | 24.5% |
| Americas | 3,346億円 | 752億円 | 22.5% |
| EMEA | 2,693億円 | 385億円 | 14.3% |
| APAC | 1,164億円 | 11億円 | 0.9% |
出典: 電通グループ 有価証券報告書 2024年12月期 セグメント情報
日本事業のマージンが24.5%と突出して高く、海外事業のマージン改善が全社業績の鍵です。APAC地域ではのれん減損144億円を計上しており、立て直しが急務となっています。
博報堂DYホールディングス|国内売上比率73%
博報堂DYは単一セグメント報告ですが、地域別売上高が開示されています(2025年3月期有報)。
| 地域 | 売上高 | 構成比 |
|---|---|---|
| 日本 | 6,954億円 | 72.9% |
| 海外 | 2,579億円 | 27.1% |
出典: 博報堂DYHD 有価証券報告書 2025年3月期
海外事業は戦略事業組織kyuを中心に展開していますが、kyu構造改革として機能の統廃合と固定費削減に取り組んでいる段階です。マーケティング領域でのグローバル連携を強化するkyu Pulseを組成し、競争力の再構築を図っています。
戦略の方向性|再建フェーズ vs 構造変革フェーズ
電通グループ|M&A偏重からの転換
電通は新中期経営計画(2025-2027年)で、過去のM&A偏重の成長戦略を明確に転換しました(2024年12月期有報「経営方針」)。
- 不振ビジネスの立て直し: 2026年度中に赤字マーケットをなくす目標
- コスト削減: 2027年度に最大年間500億円規模の効果見込み(本部機能統合・AI活用)
- 定量目標: オーガニック成長率4%、マージン16-17%、ROE10%台中盤(2027年度)
- 事業フォーカス: IGS(マーケティング×テクノロジー×コンサルティング)とスポーツ&エンタメのグローバル展開
→ 電通グループの有報分析で個社の詳細を解説しています
博報堂DYホールディングス|広告会社からクリエイティビティ・プラットフォームへ
博報堂DYはグローバルパーパス「Aspirations Unleashed」のもと、6つの事業領域(マーケティング・コンサルティング・テクノロジー・コンテンツ・インキュベーション・グローバル)への展開を進めています(2025年3月期有報「経営方針」)。
- デジタル統合: 2024年4月にHakuhodo DY ONE設立(デジタルマーケティング集約)
- フルファネル化: 博報堂×博報堂DYメディアパートナーズを2025年4月に統合
- ITコンサル参入: HAKUHODO ITTENI(デマンドチェーン)、HAKUHODO BRIDGE(デジタルサービス)を2025年4月設立
- 中期目標: 調整後のれん償却前OP成長率+10%/年、GP成長率+5%/年、マージン13%以上
→ 博報堂DYの有報分析で個社の詳細を解説しています
リスクの比較|共通リスクと固有リスク
共通リスク:東京五輪独禁法事案
2社に共通する経営リスクとして、東京2020オリンピック・パラリンピックに関する独占禁止法違反事案があります。電通・博報堂ともに有罪判決を受け控訴中です(各社有報「事業等のリスク」)。両社とも再発防止策の完了を報告していますが、コンプライアンス改革の定着が引き続き経営課題です。
各社固有のリスク
| 項目 | 電通グループ | 博報堂DYHD |
|---|---|---|
| 財務リスク | 自己資本比率19.9%と低水準。のれん減損が業績を大きく振らす構造 | 自己資本比率37.2%と安定。ただしROE 2.8%と資本効率が低い |
| 競合リスク | テック・コンサル企業のAI投資による競争激化を有報で明記 | プラットフォーマーとコンサル企業の参入を有報で明記 |
| 人材リスク | 海外67,667人の大組織。One dentsuモデルの浸透が課題 | 取引慣行上、正式契約書を締結しないことが多いと有報で開示 |
| 構造リスク | 海外事業のマージン改善失敗リスク | kyu構造改革の成否。新設3社の立ち上がりリスク |
出典: 各社 有価証券報告書「事業等のリスク」
就活での活用法|キャリアマッチと面接ポイント
キャリアマッチの判断基準
| 志向 | マッチする企業 | 有報データに基づく理由 |
|---|---|---|
| グローバルで働きたい | 電通グループ | 海外GP比率約60%。Americas・EMEA・APACの4リージョン体制 |
| 国内で基盤を築きたい | 博報堂DY | 国内売上比率73%。博報堂の生活者発想が事業の根幹 |
| テクノロジー領域に興味 | 両社 | 電通はIGS戦略、博報堂DYはHakuhodo DY ONE・ITコンサル新設 |
| 安定した財務基盤を重視 | 博報堂DY | 自己資本比率37.2%。電通の19.9%と差がある |
| 大きな変革に関わりたい | 電通グループ | グローバル再建フェーズ。コスト500億円削減と事業立て直しの渦中 |
面接での活用例
電通グループの面接で「なぜ電通か」と聞かれたとき:
「有報を拝見し、日本事業の調整後営業利益マージン24.5%という高い収益力に対し、海外APAC地域のマージンが0.9%と改善余地が大きい点に注目しました。中計で掲げる2027年度マージン16-17%の達成には海外事業の立て直しが不可欠であり、そのプロセスに関わりたいと考えています。」
博報堂DYの面接で「博報堂のどこに魅力を感じたか」と聞かれたとき:
「有報で、2024年4月のHakuhodo DY ONE設立に続き、2025年4月にはITコンサル領域への本格参入としてHAKUHODO ITTENIとHAKUHODO BRIDGEを設立された点に注目しました。広告会社から6つの事業領域を持つクリエイティビティ・プラットフォームへの転換という戦略に共感しています。」
→ 有報データの面接活用テクニックでさらに詳しい活用法を解説しています
まとめ
電通グループと博報堂DYは、同じ広告業界でありながら規模・グローバル展開・戦略フェーズが大きく異なります。
| 観点 | 電通グループ | 博報堂DYHD |
|---|---|---|
| 収益規模(GP) | 1兆2,016億円 | 3,996億円 |
| 海外展開 | GP約60%が海外 | 売上約27%が海外 |
| 業績局面 | 減損で最終赤字 | 黒字維持 |
| 戦略の核 | グローバル再建×IGS | 構造変革×6事業領域 |
| 財務安定性 | 自己資本比率19.9% | 自己資本比率37.2% |
就活において重要なのは、どちらの企業が「良い」かではなく、自分のキャリア志向とどちらの戦略フェーズがマッチするかです。
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本記事のデータは各社の有価証券報告書(EDINET)に基づいています。電通グループはIFRS・2024年12月期、博報堂DYは日本基準・2025年3月期のため、会計基準と決算期の違いにより単純比較には限界があります。投資判断を目的としたものではなく、就職活動の参考情報として提供しています。