「ECの会社」のつもりで入ると面食らう。利益の柱は金融、最大の賭けはモバイル、社内公用語は英語──この3つを知らずに面接に臨むと、志望動機がズレます。あなたが楽天のどの軸でキャリアを張るのか、この記事を押さえれば根拠を持って語れるようになります。
楽天グループ株式会社は、売上高2兆4,966億円・連結従業員約29,400名の日本最大級のインターネットサービス企業です。「楽天市場で買い物をしたことがある」という就活生は多いでしょう。しかし有報を読むと、ECの会社と思われがちな楽天が、実は通信キャリア事業に累計1兆円超を投じ、70以上のサービスを束ねた「唯一無二の経済圏企業」を目指している姿が数字で浮かび上がります。2025年12月期、Non-GAAP営業利益は前年比15倍の1,063億円に急伸。エコシステム全体の収益力がいよいよ形になり始めています。

この記事のデータは楽天グループ株式会社(証券コード: 4755)の有価証券報告書(2025年12月期・IFRS)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
IT業界全体の動向と比較すると、他のIT企業がAI・DXに投資を集中させる中で、楽天は自前の通信インフラに賭けるという異色の戦略を取っていることがわかります。
楽天グループのビジネスの実態|何で稼いでいるのか
楽天グループは「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の3セグメントで事業を展開しています。

出典: 楽天グループ有価証券報告書(2025年12月期)。利益はNon-GAAPセグメント利益ベース。セグメント間取引があるため構成比合計は100%を超える。
就活ポイント: 売上の柱はインターネットサービス(EC等)ですが、利益の柱はフィンテックです。楽天カード・楽天銀行・楽天証券などの金融サービスが、利益率20.5%という高い収益性でグループ全体を支えています。モバイルは△1,618億円の赤字が続いていますが、前年から471億円改善し、EBITDA黒字化も達成しました。
全社業績の推移|Non-GAAP営業利益が前年比15倍
楽天グループの連結業績推移を見ると、モバイル参入による赤字からの回復軌道が鮮明です。
| 期 | 売上収益 | IFRS営業利益 | Non-GAAP営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年12月期 | 1兆6,818億円 | △1,947億円 | — | モバイル赤字拡大 |
| 2022年12月期 | 1兆9,209億円 | △3,684億円 | — | 赤字ピーク |
| 2023年12月期 | 2兆0,713億円 | △2,129億円 | — | 赤字縮小開始 |
| 2024年12月期 | 2兆2,792億円 | 530億円 | 70億円 | 5年ぶりIFRS黒字 |
| 2025年12月期 | 2兆4,966億円 | 144億円 | 1,063億円 | Non-GAAP利益15倍 |
出典: 楽天グループ有価証券報告書(2025年12月期)
2025年12月期のIFRS営業利益が144億円にとどまったのは、前年のAST SpaceMobile再測定益1,069億円の反動と、ネットスーパー・ロジスティクス・楽天シンフォニーなど計584億円の減損処理を計上したためです。これらの一時要因を除いたNon-GAAP営業利益は1,063億円と、実質的な収益力は大幅に改善しています。
ただし、親会社帰属の当期純損失は△1,779億円と赤字が継続しています。金融事業の特性(銀行の資金調達コスト等)を含む構造的な要因も影響しています。
メルカリの有報分析でも赤字期からの回復事例が見られますが、楽天のモバイル投資は規模が桁違いです。
セグメント情報の詳しい読み方はセグメント情報の読み方で解説しています。
楽天グループは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

賭け1: 楽天モバイル|1,000万回線突破・EBITDA黒字化
楽天モバイルへの投資は、日本のIT企業が行った新規事業投資として最大級の規模です。2025年12月期に2つの大きなマイルストンを達成しました。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 全契約回線数 | 800万回線超 | 1,000万回線超 | 200万回線増 |
| セグメント損失 | △2,089億円 | △1,618億円 | 471億円改善 |
| EBITDA | 月次黒字化(12月) | 通期黒字化達成 | 年間での黒字化 |
| 売上収益 | 4,407億円 | 4,828億円 | +9.6% |
| 設備投資 | 930億円 | — | 2026年計画: 2,000億円強 |
なぜ楽天はこれほどの投資を行うのか。有報を読むと、モバイルはエコシステム全体の「接着剤」であることが見えてきます。
ソフトバンクの有報分析と比較すると、ソフトバンクは既存の通信インフラからAI・DXに投資を振り向けているのに対し、楽天はゼロから通信インフラを構築した後発組です。完全仮想化(クラウドネイティブ)ネットワークという最新技術を採用している点が楽天モバイルの独自性です。
ただし、楽天シンフォニーのOpen RAN事業で205億円の減損を計上しており、通信技術の海外展開には課題も見えています。
賭け2: フィンテック|利益1,999億円のグループ最大利益源
フィンテックの急成長が2025年12月期の最大のハイライトです。
| フィンテック事業 | 主な指標 |
|---|---|
| セグメント売上 | 9,759億円(前年比19.0%増) |
| セグメント利益 | 1,999億円(前年比30.3%増) |
| 利益率 | 20.5%(前年の18.7%から改善) |
| 楽天銀行 | 政策金利引き上げで金利収益が大幅拡大 |
| 楽天カード | 会員基盤・ショッピング取扱高の継続拡大 |
出典: 楽天グループ有価証券報告書(2025年12月期)
楽天銀行は政策金利の引き上げを追い風に金利収益が大幅拡大し、フィンテック全体の利益成長を牽引しました。楽天カードは会員基盤・ショッピング取扱高の継続拡大で増収。利益率はインターネットサービスの6.5%を大きく上回る20.5%です。
賭け3: 楽天エコシステム|70超サービスの経済圏
楽天の本質的な強みは、個々のサービスではなくエコシステム全体にあります。
| 指標 | 規模 |
|---|---|
| 楽天会員 | 大規模な会員基盤 |
| サービス数 | 70超 |
| R&D費 | 219億円(AI・AR/VR/MR・5G/Open RAN関連) |
楽天ポイントを軸に、EC・旅行・カード・銀行・証券・モバイルを相互に送客する仕組みが「楽天経済圏」です。この経済圏の深さは、サイバーエージェントの有報分析で見られる広告×メディア型とは全く異なるビジネスモデルです。
R&D費219億円はAI関連技術、ユーザーインタラクション(AR/VR/MR)、移動通信システム関連技術及びIoT技術の3領域に投じられています。
一方、ネットスーパー事業で279億円、ロジスティクス事業で100億円の減損を計上しており、エコシステム拡張の中で「選択と集中」が進んでいます。
楽天グループが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

就活ポイント: 自己資本比率3.4%は上場企業としては極めて低い水準です。これはモバイル事業への巨額投資の結果であり、楽天が取っているリスクの大きさを端的に示しています。「安定した大企業」を求める方は、この財務状況を十分に理解した上で判断すべきです。一方で、Non-GAAP営業利益が前年比15倍の1,063億円に急伸しているように、エコシステム全体の収益力は急改善しています。
あなたのキャリアとマッチするか
合う人
- EC・フィンテック・モバイルなど複数事業を横断して経験を積みたい
- 1,000万回線の会員データを使ったデータ駆動型の仕事がしたい
- 大企業でありながらスタートアップ的な挑戦(モバイル事業)を経験したい
- 英語を日常的に使う環境で働きたい(社内公用語が英語)
- 金融×テクノロジーの領域に関心がある(フィンテック利益1,999億円)
従業員データ
| 項目 | データ(2025年12月期) | 読み方 |
|---|---|---|
| 従業員数(単体) | 9,989名 | 前年比104名増 |
| 従業員数(連結) | 29,419名 | 前年比約85名増。安定化フェーズ |
| 平均年齢 | 36.0歳 | IT企業として標準的 |
| 平均勤続年数 | 6.3年 | 前年5.8年から上昇。定着率改善 |
| 平均年間給与 | 851万円 | 前年820万円から上昇 |
| 女性管理職比率 | 33.5% | IT業界で高い水準 |
出典: 楽天グループ有価証券報告書(2025年12月期)
就活ポイント: 平均勤続年数が5.8年→6.3年に上昇しており、組織の定着率が改善傾向にあります。社内公用語が英語(Englishnization)であること、女性管理職比率33.5%という多様性の高さも特徴です。業界の年収比較は平均年収ランキングで確認できます。
有報データから逆算して今から学ぶべき分野
| 分野 | 根拠(有報) | 具体的アクション |
|---|---|---|
| データサイエンス・ML | 楽天エコシステムの大規模会員データが最大の資産 | Python・SQL・統計学入門。Kaggle等でデータ分析経験を積む |
| フィンテック・決済の基礎 | フィンテックセグメントが利益の柱(利益率20.5%・前年比30.3%増) | クレジットカードビジネスモデル・銀行業務の基礎理解 |
| 英語力(ビジネスレベル) | 社内公用語英語化・外国籍社員多数在籍 | TOEIC 800点以上を目標に。英語プレゼン力の強化 |
面接で使える有報ポイント
志望動機での活用
「御社をECの会社としてではなく、フィンテックが利益の柱で、モバイルが経済圏の接着剤になっている複合プラットフォーム企業として捉えています。EC・金融・通信という3つの軸が相互に送客し合う構造は他社にないもので、私はその中でもフィンテック領域のデータ活用に携わりたいと考えています。モバイルのEBITDA黒字化によってエコシステム全体の収益力が急改善しているタイミングで参画し、データ駆動型の事業成長に貢献したいです。」(2025年12月期有報)
逆質問での活用
「有報でモバイル事業のEBITDA黒字化が達成され、全契約回線数が1,000万を超えたと確認しました。通期セグメント黒字化に向けた最大の課題はネットワーク品質の向上と契約者獲得のどちらですか?」
「フィンテックセグメントの利益が前年比30.3%増の1,999億円と急成長していますが、楽天銀行の金利収益拡大以外に、今後特に成長を見込んでいる金融サービスはどの領域ですか?」
「有報でネットスーパー事業やロジスティクス事業の減損を計上されていましたが、EC物流の楽天最強配送戦略は今後どのように進化しますか?」
同業比較のポイント
| 比較軸 | 楽天グループ | メルカリ | ソフトバンク |
|---|---|---|---|
| 事業モデル | EC×フィンテック×モバイルの経済圏 | CtoC特化のマーケットプレイス | 通信インフラ×AI・DX |
| 利益の柱 | フィンテック(利益率20.5%) | 国内フリマ事業 | コンシューマ通信 |
| 最大の賭け | モバイル(EBITDA黒字化達成) | 米国展開 | 生成AI法人DX |
| 従業員数(連結) | 約29,400名 | 約2,200名 | 約49,500名 |
| 平均年間給与 | 851万円 | 約1,176万円 | 約916万円 |
出典: 各社有価証券報告書
楽天の独自性は「エコシステム」にあります。70以上のサービスを束ねた経済圏全体で勝負する戦略は、メルカリのマーケットプレイス特化やソフトバンクの通信×AI戦略とは根本的に異なります。詳しくはIT業界の有報比較で横断分析しています。
AI・DX投資ランキングでは、IT各社の投資方針の違いをさらに詳しく比較しています。
まとめ
| 項目 | 楽天グループの特徴 |
|---|---|
| 財務状況 | 売上2兆4,966億円・Non-GAAP営業利益1,063億円(前年比15倍)(2025年12月期) |
| 稼ぎ頭 | フィンテック(利益1,999億円・利益率20.5%・前年比30.3%増) |
| 最大の賭け | 楽天モバイル(1,000万回線突破・EBITDA黒字化達成・セグメント損失△1,618億円) |
| 独自性 | 70超サービスの楽天エコシステム。EC×フィンテック×モバイルの三位一体 |
| 最大のリスク | 自己資本比率3.4%・減損計584億円(ネットスーパー・ロジスティクス・楽天シンフォニー) |
| 注目指標 | 英語公用語・平均勤続6.3年(上昇傾向)・平均年収851万円・女性管理職33.5% |
楽天グループは「楽天市場のEC企業」というイメージで片付けてはもったいない企業です。有報を読むと、フィンテックで稼ぎ、モバイルで経済圏の接着剤を作り、Non-GAAP営業利益を前年比15倍に伸ばした──その構造が見えてきます。モバイルEBITDA黒字化を達成し、通期セグメント黒字化が視野に入った今、有報のデータで事業構造を理解した上で、自分のキャリアとのマッチを判断しましょう。
次のアクション: まずは有価証券報告書の読み方完全ガイドで有報の基本を押さえ、IT業界の有報比較で楽天の立ち位置を業界全体の中で確認してみてください。面接準備には楽天グループの面接対策が役立ちます。
本記事のデータは楽天グループ株式会社の有価証券報告書(2025年12月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。