DeNAを「モバゲーの会社」「ベイスターズの親会社」として面接に臨む就活生は多い。しかし有報を開くと、2026年3月期に起きている3つの構造変化が鮮明に見える。ゲーム事業は売上が17.7%減少しながらも利益率46.2%を維持、ライブストリーミング事業(Pococha)が初の本格黒字を達成、BASEGATE横浜関内の開業でスポーツ×不動産×スマートシティ事業が動き始めた。この3点を自分の言葉で語れれば、「有報を読んだ就活生」として明確に差がつく。
株式会社ディー・エヌ・エー(2432)は、ゲーム・ライブストリーミング・スポーツ・スマートシティ・ヘルスケアの5セグメント体制。売上1,477億円・営業利益187億円(IFRS・2026年03月期)。「永久ベンチャー」を掲げる少数精鋭2,483名の組織で、平均年収1,118万円はIT業界最高水準の一つです。

このページのデータは株式会社ディー・エヌ・エーの有価証券報告書(2026年03月期・IFRS)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
出典: 株式会社ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 2026年03月期
DeNAのビジネスの実態|5セグメントの利益構造
結論を先に示す。DeNAはゲーム事業の利益296億円が連結営業利益187億円を上回る(調整前セグメント合計)という特異な構造を持つ。ゲーム以外の4セグメントを合計すると損益が差し引かれ、最終的な連結営業利益は187億円になる。「多角化企業」に見えるが、利益の安全弁はゲーム事業1本に依存している実態がある。

| セグメント | 売上収益 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| ゲーム | 641億円 | 296億円 | 46.2% |
| ライブストリーミング | 398億円 | 40億円 | 10.0% |
| スポーツ・スマートシティ | 326億円 | 17億円 | 5.5% |
| ヘルスケア・メディカル | 87億円 | △23億円 | — |
| 新規事業・その他 | 23億円 | △15億円 | — |
| 合計(5セグメント合計) | 1,477億円 | 315億円 | — |
出典: 株式会社ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 2026年03月期 セグメント情報
※IFRS連結営業利益(187億円)= セグメント利益合計315億円 − 調整額39億円(セグメント間内部取引消去等)− その他の収益・費用(純額)90億円(減損損失等)。セグメント利益と連結営業利益は別指標。
pie title セグメント別売上構成(2026年03月期)
"ゲーム" : 641
"ライブストリーミング" : 398
"スポーツ・スマートシティ" : 326
"ヘルスケア・メディカル" : 87
"新規事業・その他" : 23
5期間の財務推移
業績変動の大きさを確認しておく。DeNAの過去5期は「黒字→薄利→大赤字→V字→再減益」という振れ幅が特徴的だ。
| 決算期 | 売上収益 | 営業利益(IFRS) |
|---|---|---|
| FY2022(2022年03月期) | 1,309億円 | 115億円 |
| FY2023(2023年03月期) | 1,349億円 | 42億円 |
| FY2024(2024年03月期) | 1,367億円 | △283億円 |
| FY2025(2025年03月期) | 1,640億円 | 290億円 |
| FY2026(2026年03月期) | 1,477億円 | 187億円 |
出典: 株式会社ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 2026年03月期 主要な経営指標等の推移
FY2024の△283億円の大赤字は全セグメントにわたる大規模減損が要因で、翌FY2025にV字回復したもの。FY2026は再び減益となったが、これはゲーム売上の縮小とヘルスケア減損96億円が主因。過去の変動幅を正確に把握することが、志望動機の説得力を高める。
5つのセグメントの全体像を把握したところで、次はDeNAが今後の成長に向けて何に賭けているかを見ていきます。
DeNAは何に賭けているのか|3つの投資と経営方針

| 賭け | 投資規模 | 時間軸 | 財務インパクト |
|---|---|---|---|
| ゲーム利益率46%高収益体質維持 | R&D費536百万円(全体の85.8%)集中 | 継続 | ゲーム利益296億円が全社利益187億円を支える |
| ライブストリーミング黒字化・安定化 | ソフトウェア継続投資 | 継続 | 売上398億円・利益40億円でグループ第二の利益事業 |
| スポーツ・スマートシティ長期インフラ | 設備投資147億円(建物・構築物) | 長期 | 売上326億円・利益17億円・設備投資回収は複数年 |
出典: 株式会社ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 2026年03月期 経営方針・研究開発活動・設備投資等の概要
:::callout{type=“betting”} DeNAは「永久ベンチャー」を掲げ、ゲーム事業の高収益を原動力にライブストリーミングとスポーツ・スマートシティへの多角化を推進している。3つの賭けはそれぞれ異なる時間軸と確度を持つ。 :::
::section-divider[Segment 01 / ゲーム事業]{sub=“売上641億円・利益296億円・利益率46.2%(2026年03月期)“}
賭け1:ゲーム事業の利益率46%高収益体質を守る
ゲーム事業の売上は641億円(前期780億円から-17.7%)と大幅に縮小したが、セグメント利益は296億円・利益率46.2%を維持している。単純に「売上が減った」と見るより、「どれだけの売上減でも利益率を守り切れるか」という経営能力の試問として捉えるべき局面だ。
有報には「ボラティリティによるリスク軽減を主眼に、新しい開発アプローチへの挑戦等を進めております」と明記されている。量より利益率を優先する構造転換の宣言であり、この方針を面接で自分の言葉で語れると深い企業理解が伝わる。
研究開発費536百万円(全体625百万円の85.8%)がゲーム事業に集中投下されており、外部パートナーとの協業継続がゲーム収益を支える仕組みは変わっていない。今期有報でも株式会社ポケモンが「主要な顧客」として開示されており、売上収益は31,056百万円(310億円)(前期35,505百万円(355億円)から-12.5%)。このポケモン関連売上の縮小がゲーム事業の減収に直結している(2026年03月期 セグメント情報・主要な顧客)。
:::callout{type=“insight”} 両面性で見る:ゲーム利益率46%の強みと裏にあるリスク 利益率46%は業界最高水準の高収益体質だが、売上が-17.7%と継続縮小している点は軽視できない。「選択と集中」の局面にあるDeNAで、何を学ぶかを明確に持つことが入社後のキャリア設計の鍵になる。 :::
::section-divider[Segment 02 / ライブストリーミング事業]{sub=“売上398億円・利益40億円・利益率10%(2026年03月期)“}
賭け2:Pococha・IRIAMの黒字化達成と安定化
ライブストリーミング事業(Pococha・IRIAM)は、前期△2億円の赤字から今期40億円(3,984百万円)の黒字に転換した。有報では「健全な収益性の確保に努めております」という経営方針目標の達成を示唆する表現が登場しており、一つのマイルストーンをクリアした段階だ。
売上398億円(前期406億円から-1.9%)とほぼ横ばいで利益40億円・利益率10%を達成したのは、海外展開の縮小と収益性重視へのシフトが奏功したと有報から読み取れる。ゲームに次ぐ第二の利益事業として27%の売上シェアを持つ事業が黒字転換したことは、DeNAの収益安定に寄与する構造変化だ。
就活生向けには「ライバー支援・コンテンツモデレーション・プラットフォーム運営という新しいIT職域」への入口であり、黒字転換後の安定事業でキャリアを積める点が魅力になる。
::section-divider[Segment 03 / スポーツ・スマートシティ事業]{sub=“売上326億円・設備投資147億円(2026年03月期)“}
賭け3:BASEGATE横浜関内開業でスポーツ興行を超えた長期インフラ事業へ
スポーツ・スマートシティ事業の売上は326億円(前期比+4.8%)、利益は17億円(利益率5.5%)。利益率は低いが、2026年3月にBASEGATE横浜関内が開業したことが今期最大のトピックだ。
有報の設備投資等の概要には「主としてスポーツ・スマートシティ事業における建物及び構築物等」が全社147億円の設備投資の主体と記載されている。スタジアム・アリーナから複合型スマートシティへの転換を、DeNAが大規模設備投資で実行しているフェーズにある。
横浜DeNAベイスターズ・横浜スタジアム・川崎ブレイブサンダース・SC相模原の4チーム体制に加え、BASEGATE横浜関内というリアルインフラが加わったことで「スポーツ×不動産×IT」という業界でも稀有な事業ドメインが形成された。有報では「スポーツ興行を超えた事業の広がりを目指してまいります」と明記されており、長期的な都市インフラ企業への転換意図が読み取れる。
減価償却費2,511百万円の重さが利益率5.5%に直結しており、投資回収は複数年を要する。この点を理解したうえで「スポーツビジネス×スマートシティで先行投資フェーズに入れる」と志望動機を描けると、表面的な「ベイスターズが好き」との差が明確になる。
3つの賭けの全体像が見えたところで、次はDeNAが有報で正直に開示しているリスクと課題を確認します。
DeNAが自ら語るリスクと課題

| リスク | 就活生との関連度 | 有報の根拠 |
|---|---|---|
| ゲーム売上の減少継続(-17.7%) | 高:ゲーム配属枠に影響する可能性 | セグメント情報(641億円←前期780億円) |
| ヘルスケア減損9,614百万円と赤字 | 高:ヘルスケア配属希望者は事前確認必須 | ヘルスケア・メディカルセグメント△23億円+減損96億円 |
| 業績の大幅変動 | 中:安定志向の人に不向き | 5期推移:115億→42億→△283億→290億→187億 |
| AI進展による市場構造変化 | 中:ゲーム事業の新規参入リスクを有報が明記 | 事業等のリスク(市場の構造変化) |
出典: 株式会社ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 2026年03月期 セグメント情報・事業等のリスク
::section-divider[Risk 01 / ゲーム売上の減少]{sub=“売上641億円(前期780億円から-17.7%)(2026年03月期)“}
リスク1:ゲーム事業の売上減少継続とモバイルゲーム市場の成熟
ゲーム事業の売上は641億円(前期780億円から-17.7%)と大幅減収。ゲーム事業が全社セグメント利益の107%(調整前)を担う現状では、ゲーム売上のさらなる下落が全社業績に直結する。
有報は「新しい開発アプローチへの挑戦」を記載するが、モバイルゲーム市場自体の成熟と競争激化は業界全体の課題だ。AI技術の進展により「市場における新規参入によるシェアの急変や新たなビジネスモデルの登場等」と有報に明記されている構造変化リスクも加わる。「利益率は高い」という強みを守り続けるための経営能力が試されている段階と見るのが実態に近い。
::section-divider[Risk 02 / ヘルスケア減損]{sub=“減損損失9,614百万円(前期も4,156百万円)(2026年03月期)“}
リスク2:ヘルスケア・メディカル事業の減損9,614百万円と赤字継続
ヘルスケア・メディカル事業は△23億円(2,329百万円)の赤字に加え、96億円(9,614百万円)の減損損失を計上した。前期も42億円(4,156百万円)の減損を計上しており、2期連続の大規模減損は事業価値の持続的下振れを示している。
有報では「早期の黒字化を図ってまいります」と記載されているが、計画通りに進んでいない現状が数字で確認できる。ISO27001認証取得済みで医療DXサービス(Join等)を展開する事業だが、黒字化の道筋は今なお不透明だ。ヘルスケア部門での就職を志望する場合は、このリスクを理解したうえで「それでも携わりたい理由」を語れるようにしておく必要がある。
::section-divider[Risk 03 / 業績変動]{sub=“5期間で大幅変動(2期前△283億円・今期-35.5%減益)“}
リスク3:業績の大幅変動リスク(5年間で赤字年を1度経験)
DeNAの最大のリスクは業績変動の大きさだ。5期間の営業利益推移(115億→42億→△283億→290億→187億)が示す通り、単年で数百億円単位の変動が起きる企業だ。
FY2026(今期)の減益は主に「その他の収益・費用(純額)△90億円」がIFRS連結営業利益を押し下げたことが要因で、ヘルスケアの減損が主体だ。「不安定な企業」と一概に切り捨てるのは正確ではなく、「変化が大きい企業」と捉えると実態に近い。変化の速さに自ら適応できる人には機会があり、安定した環境を求める人には適さない。
:::callout{type=“insight”} 両面性で見る:業績変動の「リスク」と「機会」 5年間の大幅変動は確かなリスクだが、FY2024の大赤字から翌年に290億円の黒字に回復する回復力も有報が証明している。「変化の局面に入れる」という強みを持つDeNAの歴史として捉える視点が、志望動機に厚みを与える。 :::
リスクの全体像が見えたところで、次はあなた自身がDeNAに合うかを判断する材料を見ていきます。
あなたのキャリアとDeNAはマッチするか
| 合う人 | 合わない人 |
|---|---|
| モバイルゲームの企画・開発・運営に携わりたい | 安定した業績の企業を望む(業績変動が大きい) |
| スポーツ×テクノロジー×不動産でキャリアを築きたい | グローバルに活躍したい(国内依存型の収益構造) |
| ライブストリーミング・クリエイターエコノミーに関心がある | 大規模R&D環境を求める(R&D費6.25億円と規模が小さい) |
| 少数精鋭(2,483名)で多角化事業に携わりたい | ヘルスケアを急成長分野として経験したい(赤字・減損が継続) |
| 高年収(1,118万円)環境で成長したい |
従業員データ(2026年03月期)
| 項目 | 単体(DeNA) | 連結 |
|---|---|---|
| 従業員数 | 1,400名 | 2,483名 |
| 平均年齢 | 38.6歳 | — |
| 平均勤続年数 | 7.1年 | — |
| 平均年間給与 | 1,118万円 | — |
出典: 株式会社ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 2026年03月期 従業員の状況
平均年収1,118万円(前期883万円から大幅増)は少数精鋭モデルの証左だ。連結2,483名(前期2,572名から減少)と組織が引き締まる中で、1人あたりが生み出す付加価値を高める戦略が有報の数字に表れている。
今から学ぶべき分野
| 志望方向 | 有報で確認できる方向性 | 優先アクション |
|---|---|---|
| ゲーム事業 | ゲーム利益率46%高収益体質・R&D費85.8%集中(2026年03月期) | モバイルゲームUX・ゲームエンジン基礎・GDC資料 |
| スポーツ・スマートシティ | BASEGATE横浜関内開業・設備投資147億円(2026年03月期) | スポーツマネジメント入門・施設運営ケーススタディ |
| ライブストリーミング | Pococha黒字化40億円・「健全な収益性の確保」達成(2026年03月期) | プラットフォームビジネス・コンテンツモデレーション基礎 |
面接で使える有報ポイント
30秒志望動機の構成(ゲーム志望の例):
「有報でDeNAのゲーム事業を確認しました。売上641億円(前期比-17.7%)と縮小する中で利益率46.2%(296億円)を維持しているのは、『ボラティリティリスク軽減を主眼に新しい開発アプローチに挑戦する』という有報の経営方針の実行結果と理解しています。私は〔自分のエピソード〕を通じてゲームコンテンツの企画力を磨いてきており、量より質を重視するDeNAの転換期に貢献したいと考えています。」
逆質問の例:
「有報では『新しい開発アプローチへの挑戦』と記載されていましたが、具体的にどのような取り組みが進んでいますか?」
「ライブストリーミング事業が黒字転換しましたが、今後の海外展開の方針はどのようにお考えですか?」
「BASEGATE横浜関内の開業後、スマートシティ事業の具体的な収益化スキームとして想定されているものを教えていただけますか?」
まとめ
DeNA(2026年03月期)の核心は「3つの構造変化の同時進行」だ。ゲーム事業は売上641億円(-17.7%)と縮小しながら利益率46.2%を維持し、ライブストリーミング事業は前期赤字から40億円の黒字へ転換、スポーツ・スマートシティ事業はBASEGATE横浜関内の開業でリアルインフラ事業に踏み込んだ。一方で、ヘルスケア事業の2期連続大規模減損(96億円)と5年間の業績変動幅の大きさは直視すべきリスクだ。
「永久ベンチャー」を体現する少数精鋭2,483名・平均年収1,118万円の組織で、変化を主導する立場を求める人材に向く。安定志向ではなく、多角化事業の転換期に自ら手を挙げられる人にとって、有報が示す構造変化は最大の志望動機材料になる。