ネクソンで働くということは、20年以上愛されるゲームIPをグローバルに運営し続けるチームの一員になるということです。あなたは「長く遊ばれるゲーム」を育てる仕事と、「新作を次々リリースする」仕事、どちらに面白みを感じるでしょうか。この記事を押さえれば、根拠を持って語れるようになります。
ネクソンは、アラド戦記・メイプルストーリー・EA SPORTS FCの三大フランチャイズを柱とするグローバルオンラインゲーム企業です。日本に上場していますが、開発投資の92%以上が韓国に集中する「韓国開発・世界配信」モデルで、売上収益4,751億円を稼いでいます。

この記事のデータは株式会社ネクソンの有価証券報告書(2025年12月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
ネクソンのビジネスの実態|何で稼いでいるのか
事業構造|韓国発・世界配信のオンラインゲーム企業
ネクソンのビジネスモデルとは、マルチプレイヤー・オンラインゲームを開発し、世界各国で配信・運営する事業です。収益の中心はアイテム課金モデル。ゲーム自体は無料で提供し、仮想の服・武器・アクセサリー等のアイテム販売で収益を得る構造です。
有報の設備投資とR&Dの地域別内訳から、ネクソンの事業構造が鮮明に浮かび上がります。

| 地域 | 設備投資 | 構成比 | R&D費 |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 327.5億円 | 92.4% | 241.8億円 |
| 北米 | 12.6億円 | 3.6% | - |
| その他 | 11.6億円 | 3.3% | 23.3億円 |
| 日本 | 1.9億円 | 0.5% | - |
| 中国 | 1.0億円 | 0.3% | - |
| 合計(連結) | 354.5億円 | 100% | 264.3億円 |
(出典:2025年12月期有報 設備投資等の概要・研究開発活動)
前期と比較して注目すべき変化が2つあります。設備投資の韓国集中度は95.8%から92.4%にやや下がった一方、北米への設備投資が3.5億円から12.6億円へ3.6倍に拡大しました。韓国が開発の中心であることは変わりませんが、北米への投資強化が進んでいます。
一方、R&Dの韓国集中度は87.2%から91.5%に上昇しました。北米のR&D計上がなくなり、韓国の開発人員がさらに中核化しています(2025年12月期有報)。
全体業績推移(5期分)
| 指標 | 4期前 | 3期前 | 2期前 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,745億円 | 3,537億円 | 4,234億円 | 4,462億円 | 4,751億円 |
| 当期純利益 | 1,149億円 | 1,003億円 | 706億円 | 1,348億円 | 921億円 |
(出典:2025年12月期有報 主要な経営指標等の推移、IFRS基準。4期前=2021年12月期、当期=2025年12月期)
売上収益は2,745億円から4,751億円へ5期で+73.1%成長しています。4期連続の増収です。
しかし当期の注目点は利益にあります。当期純利益921億円は前期の1,348億円から-31.7%の大幅減少です。売上は+6.5%伸びたのに、利益はほぼ3割減。この乖離が2025年12月期有報の最も重要な読みどころです。
利益が減った背景には、設備投資が243億円から354億円へ+45.7%拡大したことがあります。R&D費264億円とあわせた総投資618億円は前期492億円から+25.6%増。ネクソンは売上成長で得たキャッシュを、将来の成長へ積極的に振り向けたフェーズにあることが有報から読み取れます(2025年12月期有報)。
三大フランチャイズが収益の柱
有報では「三大フランチャイズ」として以下の3タイトルを明示しています。
| フランチャイズ | 特徴 |
|---|---|
| アラド戦記(Dungeon&Fighter) | 世界的大ヒットアクションRPG。特に中国市場で高い人気。中国ではライセンス供与で配信 |
| メイプルストーリー(MapleStory) | 横スクロールMMORPGの代表作。韓国・日本・北米等グローバルに展開 |
| EA SPORTS FC | EA社との提携によるサッカーゲーム。旧FIFA Onlineシリーズの後継 |
有報には「三大フランチャイズから生み出される売上収益及びキャッシュ・フローをもとに、次世代の大ヒットIP創出へ投資する」と記載されています。この3タイトルが収益基盤であり、ここから生まれるキャッシュで次の成長を買うという構造です(2025年12月期有報)。
ゲーム業界といっても、企業ごとにビジネスモデルが根本的に異なります。任天堂はハード×ソフトの一体モデル、カプコンは自社IPの買い切り+DLC、スクウェア・エニックスはRPGを中心としたパッケージ+デジタル販売。対してネクソンはF2P(基本プレイ無料)×アイテム課金×ライブ運用で、月額課金ではなくゲーム内アイテムの個別販売が収益源です。この違いは、求められるスキルや働き方にも直結するため、ゲーム業界比較もあわせて確認しておくと業界研究の精度が上がります。
ネクソンは何に賭けているのか|投資と研究開発の方向性

賭け1: 三大フランチャイズの垂直成長
ネクソンの成長戦略は「垂直×水平」の二軸で構成されています。垂直成長とは、既存の三大フランチャイズをさらに大きく育てることです。
有報では具体的に4つの施策を掲げています。
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 既存IPの新規タイトル展開 | 既存IPを基にした新作ゲームで収益の多層化 |
| プラットフォーム拡大 | PC→モバイル→コンソールへの展開拡大 |
| 新市場への進出 | 未開拓の地域・市場への配信開始 |
| ハイパーローカライゼーション | 各国の嗜好に最適化したゲーム運用 |
有報には「当社最大の強みであるマルチプレイヤー・オンラインゲームに対する需要が世界中で高まっており、今後この動きは益々加速していく」という見通しが記載されています。
さらに「面白いゲームを作り、持続的に成長させる運用力を持つ企業は世界でも非常に稀」と自社の競合優位性を明確に位置づけています。ライブサービス(継続的なアップデートによるゲーム運営)の運用力こそがネクソンの核心的な強みです(2025年12月期有報)。
賭け2: 次世代IP育成による水平成長
水平成長とは、三大フランチャイズに続く4つ目・5つ目の収益の柱を作ることです。
有報には具体的に以下の名前が挙がっています。
- マビノギ(Mabinogi): ネクソン初期からの人気MMORPG。新規タイトルで再活性化を狙う
- ブルーアーカイブ(Blue Archive): 近年急成長のモバイルゲーム。日本市場でも高い人気
- ARC Raiders: 開発中の新規IP。完全新作タイトルとしての成長を期待
三大フランチャイズが安定的な収益とキャッシュ・フローを生み、そこから次世代IPに投資するという循環構造です(2025年12月期有報)。
賭け3: 総投資618億円で成長加速|北米投資3.6倍の意味
2025年12月期の総投資額は618億円(設備投資354億円+R&D費264億円)。前期の492億円から+25.6%の大幅増です。
特に設備投資354億円は前期243億円から+45.7%拡大しました。注目すべきは投資配分の変化です。
韓国への設備投資は232.9億円から327.5億円へ拡大しつつ、構成比は95.8%から92.4%にやや低下。代わりに北米への投資が3.5億円から12.6億円へ3.6倍に急拡大しました(2025年12月期有報)。
韓国を開発の中心としながらも、北米市場への本格的な投資拡大が始まっている兆候です。有報には「潜在的市場規模はPC保有の数億人からモバイル端末の数十億人規模に拡大」とあり、北米はその最重要市場のひとつです。
R&D費264億円は売上収益の5.6%に相当します。コナミの売上比率と比較すると低く見えますが、ネクソンのR&Dは「ゲームコンテンツの企画承認から商用化までの費用」と定義されており、独立した研究開発組織を持たない点が特徴です。通常の開発業務の中にR&Dが組み込まれているため、実質的な開発投資はR&D費の数字以上と考えられます(2025年12月期有報)。
ネクソンが自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

リスク1: 主要フランチャイズへの売上集中
有報には「一部の主要フランチャイズへの依存度が高くなっており、アラド戦記、メイプルストーリー及びEA SPORTS FCが連結売上収益のうち、一定の高い割合を占めております」と明記されています。
三大フランチャイズが収益の柱であることは強みであると同時に、リスクでもあります。「ユーザー嗜好の変化、サーバー等システムにおける予期できない障害、知的財産に関わる紛争等が発生した場合」に業績全体に直結する構造です(2025年12月期有報)。
リスク2: MapleStory: Idle RPG確率表示不具合|信頼回復が課題
2025年12月期に発覚した新たなリスクです。『MapleStory: Idle RPG』で確率表示に不具合があり、表示されていた確率と実際の確率が異なっていたことが判明しました。
有報によると、ネクソンはこの問題に対して全課金の補償・返金対応を実施。さらに再発防止策として経営責任を明確化し、社長の報酬減額も行っています(2025年12月期有報)。
確率型アイテムはF2Pゲームの収益の根幹です。ユーザーの信頼を損なう問題が起きたことは、ビジネスモデルの信頼性に関わる重大なリスクです。加えて、韓国では2024年3月22日に確率型アイテムの確率表示を義務化する「ゲーム産業振興に関する法律」の一部改正が施行されています。規制環境の厳格化と自社の信頼回復、両面での対応が求められています。
リスク3: 中国における法的規制
ネクソンにとって中国市場は極めて重要です。アラド戦記は中国で現地企業にライセンス供与して配信しており、中国の規制変更が直接的な影響を及ぼします。
有報には「中国当局のゲームの認可手続が遅延ないしは凍結された場合」「未成年者がオンラインゲームをプレイする時間を金曜日、土曜日、日曜日及び祝日の午後8時から午後9時の間の各1時間に限定」という厳格な規制が記載されています。中国政府の方針次第で事業環境が大きく変わるリスクは、就活生も認識しておくべきです(2025年12月期有報)。
リスク4: 為替変動と特定人物依存
有報には「主として韓国ウォン、米ドル、人民元の為替レート変動による影響を受けます」と記載されています。開発費の大半は韓国ウォン建て、売上は日本円・人民元・米ドル等の複数通貨建てです。グローバル企業であるがゆえの構造的なリスクです。
また「PCオンラインゲーム及びモバイルゲームサービスに関する豊富な経験と知識を有した一部の役員及び主要ゲーム開発者を始めとする従業員が極めて重要な役割を担っており」と記載されています。筆頭株主NXC Corporation(議決権比率31.3%)との関係も注目すべき点で、「NEXON」の社名商標はNXC Corporationが保有しており、ネクソンは使用料を支払う契約です(2025年12月期有報)。
あなたのキャリアとマッチするか
ネクソンの方向性に合う人・合わない人
合う人
- 韓国・北米等の海外開発チームと日常的に連携し、グローバルな環境で成果を出したい人
- 同じゲームIPを数年単位でデータ分析しながら改善し続けることに達成感を感じる人
- 20年以上の歴史を持つIPをさらに世界に広げる仕事に面白みを感じる人
合わない人
- 日本語だけで完結する開発環境を求める人 → カプコンやコーエーテクモ
- 1本の作品を完成させて次に行きたい人(買い切り型志向) → スクウェア・エニックス
- ゲーム開発の現場に直接携わりたい人(日本法人は持株会社233名) → カプコンやバンダイナムコ
従業員データ(2025年12月期有報)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 連結従業員数 | 9,834名 |
| 単体従業員数 | 233名(持株会社) |
| 平均年齢 | 40.1歳 |
| 平均勤続年数 | 8.1年 |
| 平均年間給与 | 約910万円(単体) |
(出典:2025年12月期有報 従業員の状況)
前期と比較すると、連結従業員は9,329名から9,834名へ+5.4%増加。平均年間給与は726万円から910万円へ+25.3%の大幅増です。
連結9,834名に対して単体はわずか233名。この大きな差が「日本は持株会社、事業の実態は海外子会社」というネクソンの構造を端的に示しています。平均年間給与約910万円も持株会社の数値であり、主力開発子会社NEXON Korea Corporationの水準は有報からは直接読み取れません。
有報の限界: 有報の従業員データは日本の持株会社(233名)の数値です。ゲーム開発を担うNEXON Korea等の海外子会社の待遇・働き方は有報からは直接わかりません。実際の開発現場の雰囲気はOB/OG訪問や採用イベントで確認することをお勧めします。
今から学ぶべき分野
ネクソンの投資方針から逆算すると、以下のスキルと経験が選考で活きる可能性があります。
- ライブサービス運用の実体験: 三大フランチャイズの垂直成長には、データ分析に基づくコンテンツ改善が不可欠です。実際にF2Pゲームをプレイし、アップデートの頻度・内容・ユーザー反応を分析してみることが第一歩。SQLやPythonでのデータ分析スキルがあれば実務でも即戦力になります
- 韓国語または英語: 設備投資の92.4%が韓国に集中する開発体制のため、韓国語ができると社内コミュニケーションで圧倒的な強みになります。英語はグローバル配信の共通言語。TOPIK(韓国語能力試験)やTOEIC等の資格は客観的なアピール材料になります
- F2Pの収益構造を自分の言葉で説明できること: アイテム課金モデルでは「なぜユーザーが課金するのか」の理解が核心です。行動経済学の入門書を読み、実際のゲーム内課金設計と照合してみると理解が深まります
- モバイルアプリ開発の基礎: 「潜在的市場規模がPC数億人からモバイル数十億人に拡大」が戦略の核心です。UnityやUnreal Engineでのモバイル向け開発経験があれば強みになります
面接で使える有報ポイント
志望動機での活用例
NG: 「子どもの頃からメイプルストーリーが好きでネクソンに入りたいと思いました」(ファン目線で終わっている)
OK: 「御社の有報を拝見し、売上収益4,751億円と成長を続けながら、設備投資354億円・R&D費264億円の合計618億円を成長投資に振り向けている点に注目しました。北米への投資が前期比3.6倍に拡大する中で、私は大学で培った○○のスキルを活かし、グローバル展開の一翼を担いたいと考えています」
逆質問例(有報ベース)
- 「有報では売上収益が+6.5%成長した一方で当期純利益が-31.7%減少していますが、この投資フェーズはいつ頃まで続く見通しですか?」
- 「北米への設備投資が前期比3.6倍に拡大していますが、北米拠点ではどのような業務を担っているのですか?」
- 「『MapleStory: Idle RPG』の確率表示問題を受けて、品質管理体制はどのように変わりましたか?」
- 「有報に『ライブ運用力を持つ企業は世界でも非常に稀』とありますが、この運用力を支えている組織の仕組みについて教えてください」
有報を面接で活用する方法もあわせてご覧ください。
まとめ
ネクソンの有報(2025年12月期)が示す「この会社が賭けているもの」は以下の3つです。
- 三大フランチャイズの垂直成長: アラド戦記・メイプルストーリー・EA SPORTS FCを、マルチプラットフォーム展開・ハイパーローカライゼーションでさらに拡大
- 次世代IP育成による水平成長: マビノギ・ブルーアーカイブ・ARC Raiders等を4つ目・5つ目の収益の柱へ育成
- 総投資618億円で成長加速: 設備投資354億円(前期比+45.7%)+R&D費264億円。北米投資3.6倍拡大で市場開拓を加速
売上収益4,751億円(5期で+73.1%成長)は好調ですが、当期純利益921億円(前期比-31.7%)という数字が示すのは、ネクソンが「今の利益」よりも「将来の成長」に資源を振り向けているフェーズだということです。平均年間給与910万円(前期比+25.3%)は人材投資の姿勢も表しています。
一方で、三大フランチャイズへの売上集中リスク、MapleStory: Idle RPGの確率表示問題による信頼回復の課題、中国の規制リスク、為替変動リスクは見逃せません。日本上場ながら事業実態は韓国中心という独特の構造も理解しておく必要があります。
有報の数字で「企業の本当の姿」を掴み、面接での差別化に活かしてください。
※本記事は有価証券報告書の公開情報に基づく分析であり、特定の企業への就職を推奨するものではありません。投資判断を目的とした情報提供でもありません。就職活動における企業研究の一助としてご活用ください。