コーエーテクモの有報分析 要点: 売上高832億円、連結営業利益321億円、営業利益率38.6%。「信長の野望」「三國志」「無双」等の独自IPで、ゲーム業界でも異例の高収益体質を維持。エンタテインメント事業が売上の93.5%を占める一本足経営だが、自己資本比率89.9%と財務基盤も極めて強固。(2025年3月期有報に基づく)
有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
「コーエーテクモ」は、ゲーム好きなら誰もが知る「信長の野望」「三國志」「無双シリーズ」の開発元です。しかし有報を開くと、この会社が単なるゲームメーカーではなく、売上高営業利益率30%以上を経営目標に掲げ、2025年3月期は連結営業利益率38.6%を達成した「高収益IP企業」であることがわかります。さらに令和8年3月期からは3カ年累計営業利益1,000億円以上を掲げる第4次中期経営計画が始動します。
コーエーテクモの業績推移
| 期 | 売上高 | 純利益 | ROE | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|
| 4期前 | 604億円 | 296億円 | 20.6% | 86.4% |
| 3期前 | 728億円 | 354億円 | 23.4% | 62.6% |
| 2期前 | 784億円 | 309億円 | 22.1% | 67.4% |
| 前期 | 846億円 | 338億円 | 21.3% | 71.1% |
| 当期 | 832億円 | 376億円 | 20.7% | 89.9% |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 主要な経営指標等の推移
売上高は5期で604億円から832億円へ拡大。純利益は296億円から376億円へ伸長し、当期は前期の338億円から+11.4%の増益となりました。売上高は前期比-1.7%とほぼ横ばいですが、収益性は大きく改善しています。自己資本比率は当期に89.9%へ大きく上昇し、財務基盤はゲーム業界でも異例の堅牢さです。
連結営業利益率は前期33.7%→当期38.6%へ改善
| 指標 | 前期(2024/3) | 当期(2025/3) |
|---|---|---|
| 売上高 | 845.8億円 | 831.5億円 |
| 連結営業利益 | 284.9億円 | 321.2億円 |
| 連結営業利益率 | 33.7% | 38.6% |
| 経常利益 | 457.4億円 | 499.9億円 |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 連結損益計算書・セグメント情報
連結営業利益は285億円から321億円へ約36億円増加。ヒットタイトルの構成変化により、売上はほぼ横ばいでも収益効率が大幅に改善した形です。経営目標の「売上高営業利益率30%以上」を当期もクリアしています。
ビジネスの実態|エンタメ一本足の超高収益モデル

| セグメント | 売上高 | 構成比 | セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| エンタテインメント | 777億円 | 93.5% | 315億円 |
| アミューズメント | 42億円 | 5.0% | 5億円 |
| 不動産 | 12億円 | 1.5% | 3億円 |
| 合計(連結営業利益) | 832億円 | 100% | 321億円 |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 セグメント情報
エンタテインメント事業が売上の93.5%、利益のほぼ全てを占めています。前期(売上794億円・93.9%)と比較すると、エンタメ事業は構成比でわずかに低下しつつも、セグメント利益は283億円→315億円と+32億円改善しました。タイトルラインナップの変化で売上は減少しても、利益は伸びる構造になっています。
アミューズメント事業(業務用機器・ゲームセンター運営)は42億円、不動産事業(KT Zepp Yokohama等の賃貸不動産)は12億円と小規模で、副次的な安定収益源にとどまっています。
地域別売上|海外比率40.8%、北米が大幅伸長
| 地域 | 売上高 | 構成比 | 前期からの変化 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 492億円 | 59.2% | 508億円→減少 |
| アジア他 | 190億円 | 22.9% | 224億円→減少 |
| 北米 | 109億円 | 13.1% | 78億円→大幅増 |
| 欧州 | 40億円 | 4.8% | 35億円→微増 |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 関連情報(地域ごとの情報)
海外売上比率は40.8%。前期は北米9.2%・欧州4.2%・アジア他26.5%だった構成が、当期は北米13.1%・欧州4.8%・アジア他22.9%と、北米の存在感が大きく増しています。アジア依存からの分散が進む一方、グローバル展開の主戦場が北米に拡大していることが読み取れます。
主要顧客の変化|SIEとValveが新たにランクイン
| 顧客 | 当期売上 | 前期売上 |
|---|---|---|
| Apple Inc. | 147億円 | 182億円 |
| ソニー・インタラクティブエンタテインメント | 108億円 | 記載なし |
| Lingxi Games(中国) | 92億円 | 130億円 |
| Valve Corporation | 86億円 | 記載なし |
| Google LLC | 84億円 | 101億円 |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 関連情報(主要な顧客ごとの情報)
注目すべきは、当期からソニー・インタラクティブエンタテインメント(PlayStation)とValve(Steam)が主要顧客として新規に開示された点です。コンソール・PCプラットフォーム経由の売上が拡大し、モバイル・中国依存からの分散が進んでいます。一方、最大顧客のLingxi Games(中国)は130億円→92億円と大きく減少しています。
コーエーテクモは何に賭けているのか|第4次中計と新経営体制

有報には、令和8年3月期から始まる「第4次中期経営計画」の方針が記載されています。テーマは「成長のための基盤づくり」。3カ年累計営業利益1,000億円以上、そして第3次中計で達成できなかった単年度営業利益400億円への再挑戦を掲げています。
賭け1: 経営基盤強化|新CEO体制と独立社外取締役過半数
有報には次の記載があります。
令和7年6月に、当社グループの業務執行の最高責任者として新たに社長執行役員CEOを設けるとともに、取締役会において独立社外取締役が過半数を占める体制にすることで経営の監督と執行の分離を進めます。
創業家経営から監督と執行を分離するガバナンス改革が、第4次中計の出発点に置かれています。人材戦略は「クリエイティブ&ビジネス」を掲げ、クリエイターと経営の両方の素養を持つ人材育成を方針としています。
賭け2: 事業戦略|IP創造×多方面展開×プラットフォーム分散
エンタテインメント事業では、コンソール・PC分野、オンライン・モバイル分野、ゲームIPの多方面展開への積極投資を行うと明記されています。「IPを作る力・売る力・生かす力・支える力」の4つを強化し、グローバルIPの価値最大化を目指す方針です。
主要顧客にSIEとValveが新規ランクインしたことは、この戦略がすでに数字に表れ始めている証拠と読み取れます。
賭け3: キャッシュアロケーション|成長投資と還元の好循環
有報の利益還元方針は以下の通りです。
配当金に自社株買付けを加えた連結年間総配分性向50%、あるいは1株当たり年間配当50円
人的資本中心の成長投資を拡大して営業利益目標を達成し、その成果でさらなる成長投資と株主還元を行う、という好循環を目指すと記載されています。グループファイナンス機能を集約する「株式会社コーエーテクモコーポレートファイナンス」も令和7年度に新設されました。
設備投資・R&Dから見る成長戦略
R&D費:111億円(売上比13.3%)
有報によると、当期のR&D費は111億円で、全額がエンタテインメント事業に計上されています。前期の79億円から大幅に増額されており、売上比は約13%まで上昇しています。
当社グループは開発部署において、多岐にわたるゲーム開発を行い、独創的なコンテンツを創出しております。また、研究開発を行う専任部署において先端技術を研究し、自社ゲームエンジン「KATANA ENGINE™」を開発しております。
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 研究開発活動
自社ゲームエンジン「KATANA ENGINE™」の開発が明記されており、外部エンジンに依存しない技術基盤を構築しています。R&D投資の拡大は、AAAタイトル開発体制の強化と整合しています。
設備投資:19億円の内訳
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物・備品 | 9.3億円 |
| アミューズメント機器 | 2.6億円 |
| 開発機材等 | 2.5億円 |
| その他 | 4.2億円 |
| 合計 | 19億円 |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 設備投資等の概要
設備投資は19億円とコンパクト。R&D 111億円との対比から、コーエーテクモは「物理設備よりも人と知財に投資する」企業構造であることがわかります。
R&D費や設備投資の読み方をもっと詳しく知りたい方は設備投資・R&Dの読み方ガイドをご覧ください。
有報から見えるリスク要因

リスク1: タイトル発売時期による業績変動
ゲーム業界特有のリスクとして、大型タイトルの発売時期によって売上・利益が大きく変動します。実際、当期は売上が前期比-1.7%となる一方、収益効率の改善でセグメント利益は+32億円増えており、タイトル構成の変化が経営成績を左右する構造です。
リスク2: 一本足経営
エンタテインメント事業が売上の93.5%・利益のほぼ全てを占める構造は、ゲーム市場の調整局面に直接さらされることを意味します。アミューズメントと不動産では補完しきれない規模感です。
リスク3: 中国市場依存の縮小過程
最大顧客だったLingxi Games(中国)への売上は前期130億円→当期92億円と大幅に減少しました。中国規制やパートナー戦略の変化が直接業績に影響する構造は依然として残っています。一方で、SIEやValveなど北米プラットフォームへの分散も進んでおり、過渡期にあると言えます。
リスク4: 単年度営業利益400億円目標の達成可能性
第3次中計で達成できなかった単年度営業利益400億円を、第4次中計でも目標として再設定しています。当期の連結営業利益は321億円であり、目標達成にはあと約80億円のギャップがあります。
有報のリスク情報の読み方は事業リスクの読み方ガイドで詳しく解説しています。
あなたのキャリアとマッチするか
従業員データ
| 指標 | 数値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 連結従業員数 | 2,684人 | ゲーム大手としてはコンパクト |
| 単体従業員数 | 113人 | 持株会社は少数精鋭 |
| 平均年齢 | 38.2歳 | 業界平均並み |
| 平均勤続年数 | 9.4年 | クリエイター系企業としては長め |
| 平均年間給与 | 794万円 | ゲーム業界では高水準 |
出典: コーエーテクモホールディングス 有価証券報告書 2025年3月期 従業員の状況
連結2,684名、単体113名という数字は、コーエーテクモがホールディングス体制であることを示しています。実際の開発は傘下の事業子会社(コーエーテクモゲームス等)で行われます。前期(連結2,531名)から153名増えており、人的資本拡大が第4次中計の方針と整合しています。
コーエーテクモが合う人
| 志向 | 有報の根拠 |
|---|---|
| 独自IPの創造に携わりたい | 信長の野望・三國志・無双等の歴史的IPを自社開発(2025年3月期) |
| 高い利益率の環境で働きたい | 連結営業利益率38.6%、経営目標30%以上を維持(2025年3月期) |
| グローバル展開に関わりたい | 海外売上比率40.8%、北米が前期比+31億円伸長(2025年3月期) |
| 安定した財務基盤を求める | 自己資本比率89.9%・純利益376億円(2025年3月期) |
| 経営改革の現場に関わりたい | 第4次中計で新CEO体制・独立社外取締役過半数(令和7年6月) |
コーエーテクモが合わないかもしれない人
| 志向 | 理由 |
|---|---|
| 多様な事業に携わりたい | エンタテインメント事業が93.5%の一本足構造(2025年3月期) |
| 安定した業績を重視する | タイトル発売時期で売上が年間ベースで上下する構造 |
| 大規模な組織で働きたい | 連結2,684名と比較的コンパクト(2025年3月期) |
面接で使える有報ポイント
志望動機で使える例
「御社の有報で、2025年3月期の連結営業利益率が38.6%まで改善し、経営目標の30%以上を大きく上回っていることに注目しました。独自IPを自社で開発し、シリーズ展開からコラボ、IP許諾まで重層的に収益化するビジネスモデルが、この高い利益率を支えていると有報から読み取れます。」
逆質問で使える例
「第4次中期経営計画で3カ年累計営業利益1,000億円・単年400億円達成への再挑戦を掲げ、独立社外取締役過半数の新体制を発足されていますが、新卒社員のうちからこの経営改革に貢献するためには、どのような姿勢や経験が求められるとお考えでしょうか?」
他社比較で使える例
「御社はエンタテインメント事業に93.5%を集中させる一本足戦略ですが、有報の経営方針では売上高営業利益率30%以上を明確に目標化されています。多角化よりも独自IPの深掘りで高収益を実現する戦略が、他のゲーム会社との大きな違いだと感じています。さらに当期はSIEやValveが主要顧客に新規ランクインし、プラットフォーム分散も進んでいると読み取れました。」
有報データから今から学ぶべき分野
| 分野 | 根拠(有報) | 具体的アクション |
|---|---|---|
| ゲームエンジン開発 | R&D費111億円・自社エンジンKATANA ENGINE™(2025年3月期) | プログラミング・3DCG技術の基礎理解 |
| グローバルビジネス | 海外売上比率40.8%、北米109億円・アジア他190億円(2025年3月期) | 英語の学習、北米・アジアゲーム市場の動向把握 |
| IP・コンテンツビジネス | IPを作る・売る・生かす・支える4つの力を強化(2025年3月期) | 著作権・IP戦略の基礎知識 |
| コーポレートガバナンス | 新CEO体制・独立社外取締役過半数(令和7年6月) | ガバナンス改革・経営機能の分離に関する基礎知識 |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勝ちパターン | 独自IPの自社開発×重層的収益化で連結営業利益率38.6% |
| 未来の賭け | 第4次中計|3カ年営業利益1,000億円・単年400億円再挑戦 |
| 最大のリスク | 一本足経営×タイトル発売時期変動×中国市場の縮小過程 |
| 合う人材像 | 独自IPの創造に情熱を持ち、高収益・財務堅牢な環境でグローバル展開と経営改革に携わりたい人 |
コーエーテクモの2025年3月期有報が示すのは、「独自IPを極め、重層的に収益化する」モデルが利益率の改善という形で機能していること、そして第4次中計で新たな経営体制と1,000億円目標に挑む転換期にあることです。エンタメ一本足のリスクはあるものの、自己資本比率89.9%という極端な財務体力と、SIE・Valveへのプラットフォーム分散の兆しが、その一本足の太さをさらに支えています。
本記事のデータは有価証券報告書(2025年3月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではなく、企業の将来の業績を保証するものではありません。最新情報はコーエーテクモホールディングスの公式IR資料をご確認ください。