電通総研で働くということは、金融・製造・マーケティング・会計人事の4業界を横断するIT企業でキャリアを築くということです。特定業界に閉じず、広い視野で社会の仕組みを変える側に立ちたい人にとって、その選択が合うかどうかを、有報の4セグメント構成と中計1年目の実績を通じて数字で確認できます。面接で「なぜ電通総研か」を具体的に語る土台にもなります。
電通総研は「電通グループのIT会社」ではありません。金融機関のシステムから、製造業のCAD/PLM、マーケティングのデジタル変革、会計・人事の経営管理まで、4つのセグメントで幅広く展開するIT企業です。有報を読むと、売上に占める電通グループ向けは13.6%にとどまり、独立したビジネスを展開していることが数字で確認できます。

この記事のデータは電通総研の有価証券報告書(2025年12月期)に基づいています。 有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。
電通総研のビジネスの実態|会社概要と収益構造
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 株式会社電通総研 |
| 証券コード | 4812(東証プライム) |
| EDINETコード | E05147 |
| 決算期 | 12月期 |
| 業種分類 | 情報・通信業 |
| 主要事業 | ITコンサルティング、SI、ソフトウェア製品・商品販売、運用保守 |
| 親会社 | 株式会社電通グループ(持株比率61.8%) |
電通総研は2024年に商号変更(旧・電通国際情報サービス=ISID)し、コンサルティング子会社2社の統合とシンクタンク機能の移管を実施しました。さらに2025年には中期経営計画に合わせてセグメント配下の事業区分を再編しています。
事業は4つのセグメントで構成されています(2025年12月期有報セグメント情報より)。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 金融ソリューション | 348億円 | 21.1% | 45億円 | 12.8% |
| ビジネスソリューション | 280億円 | 17.0% | 70億円 | 25.0% |
| 製造ソリューション | 610億円 | 37.0% | 75億円 | 12.4% |
| コミュニケー��ョンIT | 410億円 | 24.9% | 39億円 | 9.5% |
| 合計 | 1,649億円 | 100% | 229億円 | 13.9% |
pie title セグメント別利益構成(2025年12月期)
"金融ソリューション" : 45
"ビジネスソリューション" : 70
"製造ソリューション" : 75
"コミュニケーションIT" : 39
4セグメントの利益構成を見ると、製造ソリューションとビジネスソリューションで全社利益の約63%を占めています。売上規模では製造ソリューション(610億円)が最大ですが、利益額ではビジネスソリューション(70億円)が製造に迫る水準まで成長しています。
ビジネスソリューション|利益率25.0%の稼ぎ頭
注目すべきは、ビジネスソリューションの営業利益率25.0%です。売上規模は4セグメント中最小の280億円ながら、会計ソリューション「Ci*X」やHCM(人的資本管理)領域の自社製品が高い利益率を生んでいます。前期比で売上+18.6%・利益+31.5%(組替後ベース)と全セグメント中最も高い成長率を記録しており、電通総研の収益の質を支える中核事業です。
製造ソリューション|売上最大だが利益率は低下傾向
製造ソリューション(610億円)は売上規模で全セグメントを上回りますが、利益率は12.4%と前期の14.2%から低下しています(利益は前期比-12.0%、組替後ベース)。仕入先であるシーメンスのCAD/PLM製品の販売が主力で、ソフトウェア商品(仕入販売)の比率が高いことが利益率の構造的な制約になっています。
コミュニケーションIT|高成長だが利益率は課題
コミュニケーションIT(410億円)は電通グループとのシナジーが活きる領域で、売上は前期比+19.1%(組替後ベース)と高成長を維持しています。自治体向けCRM「minnect cBase」や地域通貨アプリ「Cuuvel」など、官庁・自治体領域への展開も進めています。ただし利益率は9.5%と4セグメント中最も低く、収益性の改善が今後の課題です。
金融ソリューション|安定成長基盤
金融ソリューション(348億円)は金融機関向けの業務支援ITを提供しています。地域金融機関向けCRM/SFAシステム「D-NEXUS」の新規開発を進めており、R&D費4.18億円を投入しています(2025年12月期有報)。
電通総研は何に賭けているのか|Vision 2030と成長投資

賭け1: 中計「社会進化実装 2027」の1年目実績
電通総研が有報で掲げる最も重要な戦略が、長期経営ビジョン「Vision 2030」です。2030年に売上3,000億円・営業利益率20%を目指し、自らを「X Innovator(社会と企業の変革を実現する存在)」と再定義しています。
Vision 2030の第2フェーズとして2025年から始動した中計「社会進化実装 2027」の1年目実績は以下の通りです。
| 指標 | 1年目実績(2025年12月期) | 3年目標(2027年12月期) | 達成率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,649億円 | 2,100億円 | 78.5% |
| 営業利益 | 229億円 | 315億円 | 72.7% |
| 営業利益率 | 13.9% | 15.0% | — |
| ROE | 17.1% | 18.0%以上 | — |
| 就業人員数 | 4,618名 | 6,000名 | 77.0% |
3年間で約1,400名の純増(4,618名→6,000名)を計画しており、積極的な採用が続くことを示しています。さらに、3か年累計750億円の成長投資枠をR&D・M&A・生産性向上に振り向ける方針です。
賭け2: 前中期経営計画の達成実績
「社会進化実装 2027」の前身である「X Innovation 2024」(2022〜2024年)は、当初目標をすべて上回って着地しました。
| 項目 | 当初目標 | 実績(2024年12月期) |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,500億円 | 1,526億円 |
| 営業利益 | 180億円 | 210億円 |
| 営業利益率 | 12.0% | 13.8% |
| ROE | 15.0% | 17.4% |
前中計の全目標達成は「目標を掲げるだけでなく実行できる会社」であることの裏付けです。
5年間の売上推移を見ると、着実な成長トレンドが確認できます(2025年12月期有報より)。
| 期 | 売上高 | 経常利益 | ROE |
|---|---|---|---|
| 4期前(2021年12月期) | 1,121億円 | 132億円 | 14.3% |
| 3期前(2022年12月期) | 1,291億円 | 184億円 | 18.1% |
| 2期前(2023年12月期) | 1,426億円 | 212億円 | 18.7% |
| 前期(2024年12月期) | 1,526億円 | 211億円 | 17.4% |
| 当期(2025年12月期) | 1,649億円 | 236億円 | 17.1% |
5年間で売上は約1.47倍、経常利益は約1.79倍に拡大しています。
賭け3: R&D費25.2億円(前期比+33%)と成長投資
| 投資区分 | 金額 | 前期比 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 研究開発費 | 25.2億円 | +33% | 生成AI活用、HCM新製品、D-NEXUS、Ci*X Treasury等 |
| 設備投資 | 4.31億円 | — | オフィス環境整備、通信・電気設備等 |
R&D費の内訳を見ると、セグメント横断の全社共通研究が19.98億円と大半を占めています。生活者の意識調査や先端技術に関する研究、HCM領域の新製品開発、エンタープライズIT基盤の機能拡張など、既存セグメントの枠を超えた先端領域への投資を加速しています。
セグメント別では金融ソリューション(4.18億円)が最大で、地域金融機関向けCRM/SFAシステム「D-NEXUS」やオルタナティブ資産向けファンド管理ソリューションの開発を推進。ビジネスソリューション(0.38億円)では会計ソリューション「CiX」シリーズ第5弾となる資金管理システム「CiX Treasury」を開発中です。
電通総研が自ら語るリスクと課題|PRでは絶対に出ない情報

リスク1: 電通グループとの資本関係|持株比率61.8%
電通グループが61.8%を保有する親会社であり、グループ向け売上は約225億円(全体の13.6%)に達します(2025年12月期有報)。前期の約214億円(14%)から金額は増加していますが、売上全体に占める比率は低下傾向にあります。
電通総研はこのリスクに対し、独立社外取締役が過半数を占める取締役会で経営の自主性を確保していると説明しています。ただし、親会社の経営方針変更が事業戦略に影響を与える可能性は、構造的に残り続けるリスクです。
リスク2: 製造ソリューションの利益率低下|シーメンス依存
製造ソリューションの営業利益が前期比-12.0%(組替後ベース)と減益に転じた点は注視が必要です。このセグメントはシーメンスのCAD/PLM製品の仕入販売が事業基盤であり、シーメンスの経営方針変化が直接的に影響します。有報でも「特定の仕入先との取引に依存」をリスク要因に挙げています。
リスク3: 人材確保・育成|6,000名体制への急拡大
2027年12月期に6,000名体制を目指すには、残り2年間で約1,400名の純増が必要です。1年目は205名の増加にとどまっており、ペースの加速が求められます。IT人材の獲得競争が激化する中、採用計画の達成と新規人材の育成を両立できるかが中計の成否を左右します。
あなたのキャリアとマッチするか
合う人
- 複数業界を横断して広い視野を持ちたい人(4セグメントで金融・製造・マーケティング・会計人事を網羅)
- コンサルとSIの両方に興味がある人(シンクタンク・コンサル・SI三機能統合)
- 組織拡大期に早期のキャリアアップを狙いたい人(2年で約1,400名純増計画)
- 高い報酬水準を重視する人(平均年収1,125万円)
従業員データ
| 項目 | データ(2025年12月期) | 読み方 |
|---|---|---|
| 従業員数(連結) | 4,618名 | 中堅IT企業の規模。2027年に6,000名目標 |
| 従業員数(単体) | 2,492名 | 連結の約54%が本体所属 |
| 平均年齢 | 39.9歳 | IT業界では標準的 |
| 平均勤続年数 | 10.7年 | 一定の定着率を示す |
| 平均年間給与 | 約1,125万円 | IT/コンサル業界でもトップクラス |
サービス別売上構成
有報では4セグメントとは別に、サービス種別の売上構成も開示されています(2025年12月期)。
| サービス種別 | 売上高 | 前期比 |
|---|---|---|
| コンサルティングサービス | 約109億円 | +3.7% |
| 受託システム開発 | 約351億円 | +13.1% |
| ソフトウェア製品 | 約340億円 | +12.9% |
| ソフトウェア商品 | 約542億円 | -0.3% |
| 運用保守サービス | 約211億円 | +14.1% |
| 情報機器販売・その他 | 約96億円 | +17.5% |
受託システム開発(+13.1%)とソフトウェア製品(+12.9%)が大きく成長しており、SI本業と自社製品の双方が伸びています。運用保守サービス(+14.1%)の成長はストック型収益の拡大を示しており、収益基盤の安定化につながります。一方、ソフトウェア商品(542億円、主にシーメンス製品の仕入販売)はほぼ横ばいです。
今から学ぶべき分野
| 分野 | 根拠(有報) | 具体的アクション |
|---|---|---|
| 会計・ERP知識 | ビジネスソリューション(利益率25.0%、利益+31.5%成長)が会計ソリューション「Ci*X」中心(2025年12月期) | 簿記3級、ERPの基礎知識 |
| 製造業の基礎 | 製造ソリューション(610億円、売上最大セグメント)でCAD/PLM領域をカバー(2025年12月期) | 製造プロセスの基礎、PLM概念の理解 |
| デジタルマーケティング | コミュニケーションIT(410億円、売上+19.1%成長)で電通グループとのシナジー(2025年12月期) | GA4やCRM基礎、マーケティング概論 |
| 生成AI・先端技術 | R&D費25.2億円(前期比+33%)で生成AI活用やHCM新製品を推進(2025年12月期) | Python基礎、生成AIサービスの活用体験 |
面接で使える有報ポイント
志望動機での活用
「御社の有報で、Vision 2030の中計『社会進化実装 2027』の1年目で売上1,649億円を達成し、前中計は全目標を上回ったことを確認しました。SIerから『X Innovator』への自己変革を着実に実行されている点に強く共感しています。」
逆質問での活用
「有報で2025年1月に営業統括本部と技術統括本部を新設されたと記載がありますが、事業部横断のプロジェクトアサインは新卒にも機会がありますか?」
「ビジネスソリューションの営業利益率が25.0%と他セグメントより突出していますが、この高収益モデルを他セグメントに展開する計画はありますか?」
同業比較のポイント
| 比較軸 | 電通総研 | NRI | ベイカレント |
|---|---|---|---|
| 売上規模 | 約1,649億円 | 約7,648億円 | 約1,161億円 |
| 営業利益率 | 13.9% | 約17.5% | 約30% |
| 従業員数(連結) | 4,618名 | 約16,700名 | 約5,500名 |
| 特徴 | 4業界横断×SI+コンサル | 金融IT+三層構造 | コンサル特化・高収益 |
※各社の詳細比較は有報記事を参照: NRIの有報分析、ベイカレントの有報分析
まとめ
| 項目 | 電通総研の特徴 |
|---|---|
| 最大の強み | 4業界横断セグメント×シンクタンク・コンサル・SI三機能統合 |
| 収益の質 | ビジネスソリューション利益率25.0%が全社を牽引(前期比利益+31.5%) |
| 成長戦略 | Vision 2030で売上3,000億円・営業利益率20%。中計1年目で売上1,649億円を達成 |
| 待遇 | 平均年収約1,125万円。6,000名体制に向けた積極採用 |
電通総研は「電通のIT子会社」から「社会変革を実装するX Innovator」への転換期にある企業です。前中計で全目標を達成した実行力を武器に、中計「社会進化実装 2027」では売上2,100億円・営業利益率15%を目指しています。
2025年1月に営業統括本部と技術統括本部を新設し、事業部の壁を超えた全社横断体制への移行も進行中です。4セグメントによる業界分散、ビジネスソリューションの高収益性、そして750億円の成長投資枠が示す攻めの姿勢を理解した上で志望理由を語りましょう。
製造ソリューションの利益率低下と、6,000名体制に向けた人員増のペース(1年目+205名)が計画通りに進むかどうかが、Vision 2030の実現可能性を測る試金石になります。
本記事のデータは有価証券報告書(EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたも��ではありません。