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物流業界の全体像|有報で見るヤマトHD・SGHDの業界構造

最終更新: 約15分で読了
#物流業界 #有報 #就活 #業界比較 #ヤマトHD #SGホールディングス #佐川急便 #2024年問題

「ヤマトと佐川、どっちがいいですか?」──物流業界を志望する就活生がよく聞かれる質問です。しかし、ヤマトHDのエクスプレス事業は128億円の赤字、一方SGホールディングス(佐川急便の親会社)のデリバリー事業は692億円の安定利益(いずれも2025年3月期)という状況を知っている就活生は多くありません。同じ「宅配便」を主力としながら、収益構造と成長戦略がまったく異なるのです。

この記事では、物流業界の宅配便2強であるヤマトHDとSGホールディングスを、有価証券報告書で比較します。読み終わる頃には「2社の稼ぎ方と投資方向性の違い」「2024年問題という業界共通の課題」「どちらの会社に向いているか」がわかる状態になります

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有報の読み方がわからない方は有価証券報告書の読み方完全ガイドをご覧ください。記事中の専門用語は用語集で確認できます。

Map / 業界の全体像 ヤマトHD売上1.76兆円・SGHD売上1.48兆円・両社で連結従業員23万人超

物流業界とは|数字で見る業界の全体像

宅配便市場はヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の大手3社で大部分を占める寡占市場です。EC化の進展で取扱個数は増加傾向にあるものの、2024年問題(ドライバーの時間外労働規制)やコスト上昇など構造的な課題に直面しています

特徴内容
市場環境EC化で宅配便需要は増加傾向。ただし人口減少で個人・小口法人市場は影響を受ける
収益構造宅配便収入が中核。法人向け物流ソリューションや国際物流が成長領域
コスト構造労働集約型。人件費・外注費・燃料費が主要コスト
規制環境2024年問題(時間外労働上限規制)がドライバー不足とコスト上昇を加速

両社の有報に共通して記載されているのが「適正運賃収受」というキーワードです。コスト上昇を運賃に反映できるかどうかが、物流企業の利益率を左右する最大の要因となっています。

指標ヤマトHDSGホールディングス
連結売上高1兆7,626億円1兆4,792億円
経常利益195億円888億円
純利益379億円581億円
自己資本比率46.5%55.8%
ROE6.5%10.0%
連結従業員数172,822名58,271名
設備投資額846億円532億円

各社2025年3月期有価証券報告書に基づく。

注目すべきは利益率の差です。売上ではヤマトHDが上回りますが、経常利益ではSGHDが約4.5倍の差をつけています。ヤマトHDの経常利益は4期前の約940億円から195億円へ大幅に縮小しており、構造改革の途上にあることがわかります。

面接で使うなら: 「物流業界は、ヤマトHDとSGホールディングスで収益構造が大きく異なると認識しています。売上ではヤマトHDが上回りますが、経常利益ではSGHDが約4.5倍です。ヤマトHDはエクスプレス事業が構造改革の途上にあり、SGHDはデリバリー事業で安定した利益を確保しています。自分は〇〇な環境で経験を積みたいと考えており、御社の事業構造に惹かれました」

Model / 2社のビジネスモデル ヤマト:エクスプレス赤字△128億円 / SGHD:デリバリー黒字692億円

物流業界は何で稼いでいるか|2社のビジネスモデル比較

両社のセグメント構成を比較すると、稼ぎ方の違いが鮮明になります。

ヤマトHD|エクスプレス事業赤字転落、成長はグローバル事業

ヤマトHDのセグメント(2025年3月期):

セグメント外部売上高セグメント利益利益率
エクスプレス事業1兆5,347億円△128億円赤字
コントラクト・ロジスティクス事業970億円55億円5.7%
グローバル事業859億円90億円10.5%
モビリティ事業205億円37億円18.4%

ヤマトHD 2025年3月期有報に基づく。

主力のエクスプレス事業(宅急便等)が128億円の赤字に転落しています。有報には「EC化の進展と人口動態の変化に伴い、ラストマイル領域における集荷と配達の業務量や輸送領域における都市部・地方部間の荷物の流動量が変化しており、宅急便ネットワークの収益性は低下傾向」と記載されています。

一方、グローバル事業は利益率10.5%で成長しており、コントラクト・ロジスティクス(CL)事業もナカノ商会のM&Aで拡大中です。

サイトで読む場合: ヤマトHDのセグメント詳細・構造改革の進捗はヤマトHDの有報分析で深掘りしています。

SGホールディングス|デリバリー事業で692億円の安定利益

SGホールディングスのセグメント(2025年3月期):

セグメント外部売上高セグメント利益利益率
デリバリー事業1兆211億円692億円6.8%
ロジスティクス事業3,813億円68億円1.8%
不動産事業239億円105億円43.9%

SGホールディングス 2025年3月期有報に基づく。

デリバリー事業(佐川急便等)が連結営業収益の約7割を占め、692億円の安定した利益を確保しています。ロジスティクス事業は前期の赤字から68億円の黒字に転換しており、C&Fロジホールディングス(名糖運輸)の連結化による低温物流領域の拡大が寄与しています。不動産事業も物流施設開発により利益105億円と好調です。

サイトで読む場合: SGホールディングスの5SBU構造・GOAL戦略はSGホールディングスの有報分析で詳述しています。

Investment / 投資方向性の対比 ヤマト設備投資846億円 vs SGHD設備投資532億円

投資方向性の対比|2社が何に賭けているか

有報の投資データは、各社が何に経営資源を集中しているかを数字で示します。

項目ヤマトHDSGホールディングス
設備投資の重点宅急便ネットワーク強靭化、拠点戦略、ナカノ商会M&A物流施設の新設(Xフロンティア等)、車両更新、DX
成長領域CL事業・グローバル事業の拡大TMS・3PL・国際物流のソリューション拡充
脱炭素投資EV23,500台導入・太陽光発電設備810基EV化・再生可能エネルギー施設投資
M&Aナカノ商会の連結子会社化(CL事業拡大)EXPOLANKA非上場化(国際フォワーディング強化)

ヤマトHD|宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオ変革

ヤマトHDの中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」(最終年度: 2027年3月期)では、以下の目標を掲げています。

指標目標値(2027年3月期)当期実績(2025年3月期)
連結営業収益2兆〜2兆4,000億円1兆7,626億円
連結営業利益率6%以上約1.1%
ROE12%以上6.5%

当期実績と中計目標の乖離は大きく、特にエクスプレス事業の赤字転落が課題です。この状況に対してヤマトHDが打ち出している成長戦略は3つの柱です。

  1. 基盤領域の立て直し: プライシング適正化、「営業所改革」、地域密着型店舗「ネコサポ」展開
  2. 法人ビジネス拡大: ナカノ商会の連結子会社化によるCL事業拡大、グローバル事業(利益率10.5%)の成長加速
  3. 新規ビジネスモデル: EVライフサイクルサービス、共同輸送のオープンプラットフォーム、オンライン医療サービス

SGホールディングス|総合物流ソリューション(GOAL)の高度化

SGHDは長期ビジョン「Grow the New Story.」のもと、2030年度の営業収益2兆2,000億円を目指しています。中期経営計画「SGH Story 2024」の重点戦略は以下の3つです。

  1. 総合物流ソリューション(GOAL)の高度化: TMS(宅配便に次ぐ第二の主力商品)、3PL、国際物流の拡充
  2. 競争優位の経営資源拡充: 中継センター拡充(Xフロンティア等)、DX投資、人的資本への投資
  3. ガバナンスの高度化: EXPOLANKA HOLDINGS PLCの非上場化による国際物流のガバナンス強化
両社の方向性を整理すると、ヤマトHDは「宅急便依存からの脱却」、SGHDは「宅配便基盤の上に総合ソリューションを構築」という対照的な戦略が見えます。ヤマトHDは主力事業が赤字という危機的状況から多角化を急ぎ、SGHDは安定した主力事業を土台に着実な拡大を図っています。この違いは、入社後に経験する事業環境を直接決めます。

面接で使うなら: 「ヤマトHDはエクスプレス事業の構造改革を進めながら、グローバル事業やCL事業で第二の柱を育てていると認識しています。SGHDはデリバリー事業の安定した利益を基盤に、GOAL戦略でTMS・3PLを拡大しています。自分は〇〇という環境で働きたいと考えており、御社の戦略に共感しています」

Risk / 業界共通の構造課題 2024年問題/労働力不足/燃料価格変動の3軸

業界共通のリスク|有報が語る業界全体の課題

物流業界に共通するリスクと、各社固有のリスクを有報から読み解きます。

リスク1|2024年問題

2024年4月から適用された自動車運転業務の時間外労働上限規制が、物流業界の最大の課題です。ドライバーの労働時間が制限されるため、輸送力不足やコスト上昇が懸念されています。両社の有報では、この問題への対応として適正運賃収受やDX投資、輸送効率化が重点課題として記載されています。

リスク2|労働力不足

少子高齢化による人材確保難は業界全体の構造的課題です。ヤマトHDは172,822名、SGHDは52,309名の連結従業員を抱える労働集約型事業であり、人件費上昇と人材確保の両方が経営を圧迫しています。

リスク3|燃料価格変動・EC自社物流化

軽油等の燃料価格上昇がコストを圧迫しています。また、大手ECプラットフォーマーの自社配送網拡大も脅威です。ヤマトHDの有報には、この点が明記されています。

ヤマトHD固有の課題

エクスプレス事業の赤字転落は深刻な課題です。有報には「宅急便ネットワークの収益性は低下傾向」と記載されており、構造改革が急務となっています。中計目標(営業利益率6%以上)と当期実績(約1.1%)の乖離が大きく、改革の成否が会社の将来を左右します。

SGホールディングス固有の課題

デリバリー事業が連結営業収益の約8割を占める依存度の高さがリスクです。有報には「景気低迷等による個人の消費や企業物流の減少等により、これらの取組みが想定どおりに進展しない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性」と記載されています。

物流業界の構造的課題は「人手不足×コスト上昇×価格転嫁の難しさ」の三重苦です。しかし、この課題は「解決に貢献する余地が大きい」という裏返しでもあります。DXによる効率化、適正運賃収受の推進、新たな物流ソリューションの開発など、就活生が入社後に取り組める領域は広い業界です。
Career / どちらの会社に向いているか 構造改革の渦中 vs 安定基盤の着実成長

キャリア選びの軸|どちらの会社に向いているか

有報のデータから見える両社の実態を踏まえ、どちらの会社に向いているかを整理します。

ヤマトHDが合う可能性が高い人

  • 物流の構造改革に挑みたい人。エクスプレス事業の赤字転落からの立て直し、宅急便ネットワーク強靭化という大きな変革の渦中にあります
  • 国際物流・グローバル展開に関心がある人。グローバル事業は利益率10.5%で成長中、フレイター運航も開始しています
  • 脱炭素・環境ビジネスに関心がある人。EV23,500台導入計画、EVライフサイクルサービス事業化を推進中です

SGホールディングスが合う可能性が高い人

  • 安定した宅配便基盤で着実に成長したい人。デリバリー事業が692億円の安定利益を確保し、適正運賃収受で単価上昇中です
  • 法人向け物流ソリューションに関心がある人。GOAL戦略でTMS・3PLを第二の主力に育成中です
  • 不動産・物流施設開発に関心がある人。SGリアルティによる物流施設開発・売却事業は利益率56.6%です

両社に共通して学ぶと有利な分野

分野理由
サプライチェーン・3PL両社とも法人向け物流ソリューションが成長領域
DX・データ分析両社ともDX投資を加速、オペレーション効率化が重点課題
脱炭素・エネルギーヤマトEV23,500台計画、SGはCO2 46%削減目標を掲げる

面接で使うなら: 「ヤマトHDはエクスプレス事業の構造改革という大きな変革の渦中にあり、そこに加わりたいと考えています」「SGHDはデリバリー事業の安定利益を基盤に、GOAL戦略で着実に成長しています。自分は〇〇を重視しているので、御社のキャリア環境に惹かれました」

Interview / 業界全体を語れるフレーズ 3つのフレームで業界研究の深さを示す

面接で使える業界知識|業界全体を語れるフレーズ集

面接で「物流業界をどう見ていますか?」と聞かれたら、以下のような話ができると差がつきます。

話題1|2社の収益構造の違いを語る

「物流業界は、ヤマトHDとSGホールディングスで収益構造が大きく異なると認識しています。ヤマトHDはエクスプレス事業が128億円の赤字に転落し、構造改革を進めています。SGHDはデリバリー事業が692億円の安定利益を確保しています。自分は〇〇という環境で働きたいと考えており、御社の事業構造に惹かれました」

話題2|投資方向性の違いを語る

「ヤマトHDはグローバル事業が利益率10.5%で成長しており、CL事業もナカノ商会のM&Aで拡大中です。SGHDはGOAL戦略でTMS・3PLを第二の主力商品として育てています。宅配便だけでなく、法人向け物流ソリューションへの転換を両社とも進めていると理解しています」

話題3|業界のリスクと構造課題を語る

「物流業界は2024年問題でドライバーの労働時間が制限され、輸送力不足とコスト上昇が課題になっています。両社とも適正運賃収受とDX投資で対応していますが、この課題は『解決に貢献する余地が大きい』という裏返しでもあると捉えています。御社が〇〇という取り組みを進めている点に関心を持っています」

逆質問での活用

「有報で2024年問題への対応として適正運賃収受を進められていることを確認しました。価格交渉の現場では、若手社員はどのような役割を担っていますか?」

「有報の設備投資でDX投資を加速されていますが、物流現場のデジタル化で最も効果が出ている分野はどこですか?」

この業界の企業分析記事一覧

物流業界の各企業を有報データで個別に深掘りした記事です。気になる企業の記事から読んでみてください。

まとめ|次のアクション

物流業界の有報を比較すると、同じ「宅配便」を主力としながら、ヤマトHDとSGホールディングスで収益構造と成長戦略が大きく異なることがわかります。本記事のkeyInsightsを再確認します。

  1. ヤマトHDは売上1.76兆円・エクスプレス事業赤字転落、SGHDは売上1.48兆円・デリバリー事業692億円の安定利益──収益構造が正反対
  2. ヤマトHDはCL・グローバル事業への多角化、SGHDはデリバリー基盤の上にTMS・3PLの総合ソリューションを構築──成長戦略の方向性が異なる
  3. 2024年問題は両社共通の課題。適正運賃収受とDX投資が利益率の鍵──業界構造の課題を理解した上でキャリアを選ぶ

業界全体の俯瞰ができたら、次は自分のフェーズに合わせて深掘りに進んでください。

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物流業界は「モノを運ぶ」仕事というイメージで語られがちですが、有報を読むとその裏側にある事業ポートフォリオの転換、国際展開、脱炭素対応、DX投資といった経営戦略の全体像が見えてきます。イメージではなく事実で会社を選ぶ──そのための入口として本記事を使ってください。

本記事のデータは各社の有価証券報告書(2025年3月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではなく、就職活動の参考情報として提供しています。意思決定は必ずご自身の判断で行ってください。

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よくある質問

物流業界の有報は他の業界と何が違いますか?

物流業界の有報では、宅配便の取扱個数や平均単価など業界固有の指標が開示されています。また労働集約型事業のため従業員・外部委託に関する記載が詳しく、2024年問題(時間外労働の上限規制)への対応が経営課題として大きく取り上げられている点が特徴です。

ヤマトHDとSGホールディングスの一番の違いは何ですか?

ヤマトHDはエクスプレス事業の収益性低下を受けてコントラクト・ロジスティクスやグローバル事業への多角化を進めています。SGHDはデリバリー事業が売上の約8割を占め、その基盤の上でTMS・3PLなど総合物流ソリューションの拡大を図っています。セグメント構成の違いが戦略の違いに直結しています。

物流業界の2024年問題とは何ですか?

2024年4月から適用された自動車運転業務の時間外労働上限規制のことです。ドライバーの労働時間が制限されるため、輸送力不足やコスト上昇が懸念されています。両社の有報ではこの問題への対応として、適正運賃収受やDX投資、輸送効率化が重点課題として記載されています。

物流業界は将来性がありますか?

EC化の進展で宅配便需要は緩やかに増加する見通しですが、人口減少・労働力不足・コスト上昇という構造的課題があります。各社は宅配便だけに頼らず、法人向け物流ソリューションや国際物流、脱炭素ビジネスなど新たな成長領域への転換を進めています。

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