この記事のデータはテルモの有価証券報告書(2025年03月期)に基づいています。 有報データの面接活用法の基本は面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で押さえておくと、この記事がさらに活きます。
テルモの面接対策で「グローバル医療機器メーカー」「体温計の会社」といったキーワードを並べる就活生は少なくありません。しかし面接官が知りたいのは、「あなたがテルモの方向性を理解し、そこに自分を重ねられるかどうか」です。
この記事では、有価証券報告書が示すテルモの投資方向性とGS26戦略から「求める人材像」を逆算し、ガクチカ・自己PR・志望動機を一貫したストーリーにする方法を解説します。
有報が示すテルモの方向性

テルモが今どこに向かっているのか。有報のセグメント利益・R&D費・設備投資の配分から、3つの方向性が浮かび上がります。
心臓血管カンパニーへの圧倒的集中
テルモの経営資源は心臓血管カンパニーに圧倒的に集中しています。売上6,244億円(構成比60.3%)、R&D費509億円(全体の68.6%)、設備投資436億円(同52.8%)と、テルモ全体の過半数がこの一事業に投下されています。ラジアル手技(手首の橈骨動脈からカテーテルを挿入する低侵襲治療)の全身血管への展開が成長戦略の中核であり、薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster Nagomi」が出血性合併症リスクの高い患者向けの適応拡大でMDR承認を取得しています(2025年3月期有報 セグメント情報・研究開発活動)。
GS26「デバイスからソリューションへ」3D戦略
GS26は2021年12月に策定された5カ年成長戦略で、医療機器単品を売る会社から治療ソリューションを提供する会社への転換を目指します。3つのDがその柱です。1つ目のDeliveryは低侵襲治療の普及率60%から100%を目指す方向性。2つ目のDigitalは米国カリフォルニアのD-TECT拠点とテルモベンチャーズCVC(5年間75百万米ドルの投資枠)によるデジタル治療の推進。3つ目のDeviceuticalsは医療機器と薬剤の融合で、CDMO甲府新棟建設や丸石製薬との共同開発が具体例です(2025年3月期有報 経営方針・研究開発活動)。
海外比率79.0%のグローバル体制
テルモの売上の79.0%は海外から生まれています。米州38.2%(うち米国33.1%で3,428億円)、欧州21.1%、日本は21.0%にとどまります。生産拠点もコスタリカ・日本・ベトナムの三極体制を敷き、連結従業員30,689名のうち約82%が海外拠点に所属しています(2025年3月期有報 セグメント情報)。
MVVとの接続: GS26「デバイスからソリューションへ」は3つの方向性すべてを貫くビジョンです。心臓血管カンパニーへの集中はDelivery(低侵襲治療100%)の実現手段であり、3D戦略はDigitalとDeviceuticalsで事業構造を転換する設計図です。海外79%の事業構造は、このビジョンをグローバルに展開する基盤です。
数値の詳細な分析はテルモの企業分析記事で確認できます。
この方向性が求める人材像

テルモの3つの方向性から、「今どんな人材を求めているか」を逆算します。
3方向に共通して求められるのが、医療を通じて社会に貢献する使命感です。テルモは単体5,633名で連結30,689名のグループを動かしており、一人ひとりが専門性を持ちながらも領域を越えて協働する姿勢が問われます(2025年3月期有報 従業員の状況)。
心臓血管カンパニーが求める人材
カテーテル治療・低侵襲医療への専門的な関心が不可欠です。R&D費509億円(テルモ全体の68.6%)が投下されるこの事業では、医療現場の課題を技術で解決する志向と、規制対応を含む長期的な製品開発サイクルに耐えられる粘り強さが求められます。Ultimaster Nagomi適応拡大やバスクテック社の英国王賞受賞のように、技術を極めて臨床成果に結びつける力が評価されます。
GS26の3D戦略が求める人材
デバイス・デジタル・薬剤の3領域を横断できる発想力が鍵です。D-TECT拠点でのDX推進、テルモベンチャーズCVC(5年間75百万米ドル枠)でのスタートアップ投資、CDMO事業における製薬企業との協業など、従来の医療機器メーカーの枠を超えた活動が進んでいます。異分野の知見を組み合わせて新しい治療ソリューションを構想できる人材が求められます。
グローバル体制が求める人材
英語力と異文化マネジメント力は前提条件です。売上の79.0%が海外であり、連結の約82%が海外拠点の従業員です。三極生産体制(コスタリカ・日本・ベトナム)での品質管理・生産技術の最適化を推進できる適応力と、海外赴任への覚悟が問われます。
ガクチカの切り取り方

ガクチカは「何をしたか」の事実より、「それをどう語るか」の切り取り方で印象が変わります。テルモの方向性に合わせた切り取りの考え方を整理します。
心臓血管カンパニーに合わせる
課題を発見し、粘り強く解決に導いた経験を中心に語ります。
- 研究活動(理系の実験・卒論)| 仮説検証を繰り返して結果を出す過程は、カテーテル治療や医療機器の長期開発サイクルと構造が重なる
- 医療・福祉のボランティア | 医療現場の課題を肌で感じた経験は、「低侵襲治療で患者の負担を減らす」というテルモの使命と直接接続できる
- 品質改善・課題解決プロジェクト | プロセスの非効率を発見し改善した経験は、医療機器の品質管理と製品改良の思考法と重なる
カテーテル治療の世界では、わずかな改善が患者の負担軽減に直結します。「小さな課題に気づき、粘り強く改善した」経験があれば、心臓血管カンパニーの仕事の進め方と接続しやすくなります。
GS26の3D戦略に合わせる
異なる分野を組み合わせて新しい価値を生み出した経験が響きます。
- 異分野の知識を統合した活動 | 例えば理系と文系の知見を掛け合わせた研究やプロジェクトは、デバイス×デジタル×薬剤の融合を目指すDeviceuticalsの発想と通じる
- デジタルツール活用プロジェクト | データ分析やアプリ開発でチームの課題を解決した経験は、D-TECT拠点が推進するデジタル治療との接続点になる
- 新規事業・新企画の立ち上げ | ゼロから企画を構想し実行に移した経験は、CVCやオープンイノベーションで新事業を創出する姿勢と重なる
「既存の枠を超えて複数の要素を組み合わせた」構造が、GS26のビジョン「デバイスからソリューションへ」と接続する切り口になります。
グローバル体制に合わせる
異文化環境で信頼関係を構築した経験が有効です。
- 海外留学・交換留学 | 異なる言語・文化背景の中で成果を出した経験は、海外比率79.0%の事業環境で即戦力になる素養を示せる
- 多国籍チームでの協働 | 日常的に異文化環境で動いた経験は、三極生産体制のグローバルチームとの協働力と直結する
- 語学力を活かした実務経験 | 通訳・翻訳・海外インターンなど語学を実務に活かした経験は、英語が事実上の社内公用語であるグローバル環境への適性を示せる
テルモの連結従業員の約82%が海外拠点に所属しています。「異文化で信頼を築き、一緒に成果を出した」経験があれば、このグローバル構造への適応力を示せます。
共通ポイント: いずれの場合も、「医療への社会貢献意識」と「自分で考え動いた」場面を含めることが大切です。テルモは「医療を通じて社会に貢献する」企業であり、その使命感は全方向に共通する基盤です。単体5,633名で連結30,689名を動かす組織では、指示待ちではなく自走できる人材が求められています。
自己PRの組み立て方
自己PRは「あなたの強み」と「テルモの方向性」の交差点を見つけることから始まります。
3ステップで組み立てる
- 強みを一言で定義する — 例: 「異なる分野の知見を組み合わせて、課題の解決策を構想する力」
- 裏付けるエピソードを選ぶ — ガクチカと重なってもOK。具体的な数字や変化を含めると説得力が増します
- テルモの方向性と接続する — 有報データを使って「なぜテルモで活かせるか」を示す
ステップ3の具体例:
「この力は、御社のGS26が掲げる『デバイスからソリューションへ』という方向性に通じると考えています。有報でR&D費742億円のうち心臓血管カンパニーが509億円(68.6%)を占めていることを確認しました。デバイスの技術をデジタルや薬剤と融合させる3D戦略の中で、異分野を横断して解決策を構想する力を活かしたいと考えています。」
テルモの組織文化を理解する
単体5,633名で連結30,689名を動かす構造(2025年3月期有報 従業員の状況)は、日本国内の本社・工場に在籍する社員の一人ひとりがグローバル事業に影響を持つことを意味します。平均年齢40.3歳、平均勤続年数15.7年という長期勤続傾向は、じっくりと専門性を磨きながらキャリアを積む組織文化を示しています。「短期的な成果よりも、長期的に専門性を深めて貢献する」という自己PRの方が、テルモの組織文化と合致します。
人的資本の取り組みを活用する
テルモは医療を通じた社会貢献を組織文化の基盤としています(2025年3月期有報 人的資本に関する戦略)。
- GS26では生産イノベーション(個別工場の自動化・省力化ノウハウをグローバル展開)を推進
- 三極生産体制(コスタリカ・日本・ベトナム)でのグローバル人材育成
- D-TECT拠点設立やテルモベンチャーズCVC設立による米国でのオープンイノベーション推進
自己PRの中で、こうした組織の方向性への共感を示すことも有効です。
志望動機|なぜテルモか
「なぜ医療機器か」の組み立て
医療機器は薬剤とは異なるアプローチで患者の治療に貢献できる分野です。カテーテルやステントなどのデバイスで低侵襲治療を実現し、患者の身体的負担を直接減らせること、デジタル技術との融合で治療の質を高められることなど、業界全体の魅力を簡潔に述べます。ここは深掘りしすぎず、次の「なぜテルモか」に重点を置きます。
「なぜテルモか」を他社との違いで示す

ここで製薬企業や他の医療機器メーカーとの違いを有報データで示せるかが勝負どころです。
武田薬品工業との違い
武田薬品は創薬研究が中核であり、R&D費7,302億円を新薬パイプラインに投入する製薬企業です。対してテルモは創薬ではなく、カテーテルやステントなどのデバイスで治療そのものを変えるアプローチです。「薬で治す」のではなく「デバイスとソリューションで治療を変える」というGS26のビジョンに共感するなら、テルモを選ぶ理由が明確になります。
第一三共との違い
第一三共はADC(抗体薬物複合体)のエンハーツを成長ドライバーとする製薬企業です。テルモのDeviceuticals戦略は、薬を作るのではなく、医療機器と薬剤を組み合わせたコンビネーション製品(プレフィルドシリンジ製剤など)で新しい治療法を創出します。「薬そのものを開発する」第一三共と、「機器と薬剤を融合する」テルモでは、関わり方の質が異なります。
オリンパスとの違い
オリンパスは消化器内視鏡で世界シェア約7割を持つ医療機器メーカーです。テルモは心臓血管カテーテルが中核であり、「消化器領域」のオリンパスに対し「心臓血管領域」のテルモという棲み分けがあります。ラジアル手技の全身血管への展開に関心があるなら、テルモを選ぶ理由になります。
ジョンソン・エンド・ジョンソンとの違い
J&Jは整形外科・外科など幅広い領域をカバーする医療機器のグローバルリーダーです。テルモは「ラジアル手技の全身展開」に特化し、心臓血管カンパニーに売上の60.3%を集中させています。幅広いJ&Jに対し、カテーテル低侵襲治療の深堀り戦略で差別化しているのがテルモの特徴です。
GS26「デバイスからソリューションへ」と自分の価値観の接続を言語化できると、志望動機に一本の軸が通ります。ESに有報データを織り込む具体的な方法は、ESの志望動機に差をつける|有報データの活用法もあわせてご覧ください。
同業他社の面接対策もあわせて確認すると、自分がどの企業の方向性に最もフィットするか見えてきます。武田薬品の面接対策、第一三共の面接対策、アステラス製薬の面接対策もご覧ください。
テルモの面接で差がつく逆質問
逆質問は「何を聞くか」で企業理解の深さが表れます。有報の記述を具体的に引用した質問は、面接官に強い印象を残します。
1. R&D費集中と若手の役割を問う
「有報でR&D費742億円のうち心臓血管カンパニーが509億円(68.6%)を占めていますが、ラジアル手技の全身血管への展開で若手社員にはどのような役割が期待されますか?」
この質問のポイント: R&D費の集中度を正確に把握していることと、入社後のキャリアイメージを同時に示せます(2025年3月期有報 研究開発活動、心臓血管カンパニーR&D費509億円)。
2. Deviceuticals戦略の拡大方針を問う
「GS26のDeviceuticals戦略としてCDMO甲府新棟の建設が進んでいますが、製薬企業とのコンビネーション製品パートナーシップは今後どのように拡大する方針ですか?」
この質問のポイント: 3D戦略の具体的な投資案件を把握していることを示し、「デバイスからソリューションへ」の事業構造転換への深い関心をアピールできます(2025年3月期有報 経営方針・設備投資等の概要)。
3. D-TECTとCVCへの若手関与を問う
「米国カリフォルニアのD-TECT拠点とテルモベンチャーズCVC(5年間75百万米ドルの投資枠)が始動していますが、スタートアップ投資の領域で若手社員が関わる機会はどのような形がありますか?」
この質問のポイント: Digital戦略の具体的施策を把握し、オープンイノベーションへの関心と入社後の成長機会を同時に確認できます(2025年3月期有報 研究開発活動)。
4. GS26目標とROEギャップを問う
「GS26ではROE10%以上・営業利益率20%以上が目標に掲げられていますが、2025年3月期のROEは8.7%です。目標達成に向けた収益性改善で最も重要なドライバーは何でしょうか?」
この質問のポイント: 目標と現状のギャップを正確に理解していることを示し、経営課題への深い関心をアピールできます(2025年3月期有報 経営方針)。
5. 三極生産体制の現場を問う
「コスタリカ・日本・ベトナムの三極生産体制で生産イノベーションを推進されていますが、個別工場の自動化・省力化ノウハウをグローバルに展開する際、現場ではどのような課題がありますか?」
この質問のポイント: 三極生産体制の具体的な運営課題に関心を示し、ものづくりとグローバル展開の両面への理解をアピールできます(2025年3月期有報 経営方針・設備投資等の概要)。
逆質問のさらに詳しい組み立て方は面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で解説しています。
まとめ
テルモの面接対策の核心は、有報が示す3つの方向性(心臓血管カンパニーへの圧倒的集中、GS26「デバイスからソリューションへ」の3D戦略、海外比率79.0%のグローバル体制)から「求める人材像」を逆算し、ガクチカ・自己PR・志望動機を一貫したストーリーにすることです。
表面的な「グローバル医療機器メーカー」というキーワードではなく、R&D費509億円(68.6%)の心臓血管カンパニー集中や、D-TECT拠点・テルモベンチャーズCVCの設立、CDMO甲府新棟建設といった有報の具体的な数字と施策を使いこなすこと。それが、面接官に「この学生はテルモを理解している」と思わせる最短ルートです。
次のアクション:
- 事業構造を深掘りしたい方は → テルモの企業分析記事で有報データの詳細を確認できます
- 面接での有報活用の基本を押さえたい方は → 面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で汎用テクニックを学べます
- ESに有報データを織り込みたい方は → ESの志望動機に差をつける|有報データの活用法が参考になります
- 同業他社の面接対策と比較したい方は → 武田薬品・第一三共・アステラス製薬の面接対策で「なぜテルモか」の答えがさらに磨かれます
- 医療機器業界を俯瞰したい方は → 医薬品・医療機器業界の有報分析で業界全体の構造を把握できます
本記事のデータはテルモ株式会社の有価証券報告書(2025年03月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。企業の将来の業績を保証するものではなく、最新情報は企業の公式IR資料をご確認ください。社風や職場の雰囲気、上司との関係性は有報ではわかりません。OpenWork等の口コミサイトやOB/OG訪問を併用して判断しましょう。