この記事のデータはTISの有価証券報告書(2024年3月期)に基づいています。 有報データの面接活用法の基本は面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で押さえておくと、この記事がさらに活きます。
TISの面接対策で「独立系SIer」「受託開発」といったキーワードだけを並べる就活生は少なくありません。しかし面接官が知りたいのは、「あなたがTISの自社投資型ビジネスとASEAN展開の方向性を理解し、そこに自分を重ねられるかどうか」です。
この記事では、有価証券報告書が示すTISの投資方向性と4戦略ドメインの構造転換から「求める人材像」を逆算し、ガクチカ・自己PR・志望動機を一貫したストーリーにする方法を解説します。
有報が示すTISの方向性
TISが今どこに向かっているのか。有報のセグメント利益と中期経営計画から、3つの方向性が浮かび上がります。
オファリングサービスの自社投資拡大
オファリングサービスは売上1,161億円(前期比+17.1%)で全セグメント中最大の伸び率を記録しています。決済・キャッシュレス領域を中心とした自社投資型のITサービスで、のれん残高が6億円から96億円に急増していることからM&Aによる事業拡大が加速していることがわかります。減価償却費85億円は全セグメント中最大で、自社投資の厚みを示しています(2024年3月期有報 セグメント情報)。
ASEAN中心のグローバル展開
中期経営計画(2024-2026)で「ASEANでのビジネス拡大をさせ、2026年度に連結売上高1,000億円を目指す」と明記しています。現地企業との資本・業務提携やM&Aを推進し、東南アジアでの事業基盤を構築しています。現時点では国内売上が90%超ですが、国内SIerの中でも東南アジア展開に最も積極的な企業の一つです(2024年3月期有報 経営方針)。
4戦略ドメインへの構造転換
中計最終年度に売上6,200億円・営業利益率13.1%・ROE16%超を目標に掲げ、4つの戦略ドメイン(ソーシャルイノベーション、コ・クリエーション、ストラテジックパートナーシップ、IT&ビジネスオファリング)への構造転換を推進しています。3年累計1,000億円の成長投資を計画し、DXコンサルタント・ITアーキテクト・高度営業人材の拡充を重点課題としています(2024年3月期有報 中期経営計画)。
見落とせない産業IT・金融ITの高利益率
利益率では産業IT(15.1%)と金融IT(14.5%)が群を抜き、この2セグメントで利益の半分以上を稼ぎ出しています。オファリングサービスの利益率は6.6%と低めですが、これは先行投資期にあるためです。TISの収益基盤は従来型SIの産業IT・金融ITが支えており、その安定収益がオファリングやASEANへの投資原資になっています(2024年3月期有報 セグメント情報)。
MVVとの接続: 「デジタル社会の実現を通じてお客様と社会の課題を解決する」というミッションがそのまま3方向と対応しています。オファリングサービスは「社会課題領域に事業主体として進出」、ASEAN展開はデジタル社会の実現をアジアに広げる取り組み、構造転換は顧客と共にデジタル社会を創るための事業モデルの進化です。
数値の詳細な分析はTISの企業分析記事で確認できます。
この方向性が求める人材像
TISの3つの方向性から、「今どんな人材を求めているか」を逆算します。
| 方向性 | 根拠データ | 求める人材像 |
|---|---|---|
| オファリング自社投資 | 売上+17.1%・のれん6億→96億円(2024年3月期) | 受託開発ではなく自社サービスの企画・開発・運営を推進できる事業主体型の人材 |
| ASEAN展開 | 2026年度連結売上1,000億円目標(2024年3月期) | 東南アジアでの事業拡大を担える異文化適応力と事業開発力のある人材 |
| 構造転換 | 中計で売上6,200億円・ROE16%超・成長投資1,000億円(2024年3月期) | DXコンサルタント・ITアーキテクトとして専門性を深化し、変化を推進できる人材 |
3方向に共通して求められるのが「独立系SIerならではの自律性」です。特定の親会社に依存しない自由度を活かし、幅広い業界の顧客に価値を提供できる力が問われます。連結21,972名・単体5,834名の組織で、平均年齢40.5歳、平均勤続年数14.5年、平均年収803万円と、SIer業界の中でも安定した待遇です(2024年3月期 従業員の状況)。
オファリング自社投資が求める人材
SIerの受託開発ではなく、自社サービスの企画・開発・運営に関わりたい人に向いています。決済・キャッシュレス領域で事業主体として動ける自律性が求められます。のれん96億円のM&A実績が示す通り、新規事業の立ち上げに関わる機会があります。
ASEAN展開が求める人材
東南アジアでの事業拡大を担える人材です。現地企業との資本・業務提携やM&Aを推進する営業力・コミュニケーション力、異文化環境での適応力が求められます。国内SIerの中でも東南アジア展開に積極的な点がTISの独自性です。
構造転換が求める人材
従来型SIの受託開発からサービス型・コンサル型への転換を推進できる人材です。中計で重点育成としているDXコンサルタント・ITアーキテクト・高度営業人材の育成方針が示す通り、専門性の深化と変化への適応力の両方が問われます。
ガクチカの切り取り方
ガクチカは「何をしたか」の事実より、「それをどう語るか」の切り取り方で印象が変わります。TISの方向性に合わせた切り取りの考え方を整理します。
オファリング自社投資に合わせる
サービスやプロダクトを自ら企画・開発した経験を中心に語ります。
- サービス企画・開発 | アプリやWebサービスを企画し開発した経験が、オファリングサービスの「事業主体として自社サービスを創る」方向性と直結する
- 決済・フィンテックへの関心 | キャッシュレス決済や金融テクノロジーに関心を持ち学んだ経験が、オファリング事業の主力領域と接続する
- ビジネスモデル設計 | ビジネスコンテストや起業活動で収益モデルを設計した経験は、受託ではない自社サービスの事業開発と重なる
「言われたものを作る」のではなく「自ら考えて作った」プロセスがあれば、オファリングサービスの方向性と接続できます。
ASEAN展開に合わせる
異文化環境で成果を出した経験が響きます。
- 留学・海外インターン | 東南アジアでの留学や就業体験があれば、ASEAN展開の方向性に直接つながる
- 多国籍チームでの協働 | 異なる文化背景のメンバーと共同プロジェクトを進めた経験が、現地パートナーシップ構築の素養と接続する
- 語学力の活用 | 英語やアジア言語を実際のプロジェクトで使った経験は、ASEAN事業で求められるコミュニケーション力の証明になる
「アジアに関心がある」だけでなく、具体的な異文化経験を示すことが重要です。
構造転換に合わせる
既存の仕組みを変革した経験が有効です。
- 組織やプロセスの改革 | サークルやアルバイト先で既存のやり方を見直し改善した経験は、SIerから構造転換を進めるTISの方向性と重なる
- DX・テクノロジー活用 | デジタルツールやプログラミングで業務効率化を推進した経験が、DXコンサルタントとしての素養と接続する
- 新しい分野への挑戦 | 未経験の領域に飛び込んで成果を出した経験は、4戦略ドメインという新しい事業構造への適応力と合致する
共通ポイント: いずれの場合も、「自律的に課題を見つけて解決した」場面を含めることが大切です。独立系SIerのTISでは、特定の親会社からの指示ではなく自ら判断し動ける力が組織文化の根幹にあります。受け身ではなく能動的に動いたエピソードを選びましょう。
自己PRの組み立て方
自己PRは「あなたの強み」と「TISの方向性」の交差点を見つけることから始まります。
3ステップで組み立てる
- 強みを一言で定義する — 例: 「課題を構造的に分析し、テクノロジーを使って解決策を実装する力」
- 裏付けるエピソードを選ぶ — ガクチカと重なってもOK。具体的な数字や変化を含めると説得力が増します
- TISの方向性と接続する — 有報データを使って「なぜTISで活かせるか」を示す
ステップ3の具体例:
「この力は、御社のオファリングサービスが前期比17.1%増と急成長している方向性に通じると考えています。有報で決済・キャッシュレス領域での自社投資拡大を確認し、受託開発にとどまらず事業主体としてサービスを創る御社の姿勢に共感しました。課題を構造的に分析しテクノロジーで解決する自分の強みを、御社のオファリングサービスの現場で活かしたいと考えています。」
TISの組織文化を理解する
連結21,972名・単体5,834名の組織規模はSIerとしては大手です(2024年3月期 従業員の状況)。平均年齢40.5歳・平均勤続年数14.5年は、長期的にキャリアを構築する文化を示しています。独立系ゆえに特定の業界や親会社に縛られず、5セグメントの幅広い領域でキャリアを積める環境です。
人的資本の取り組みを活用する
TISは人材への投資を中計の重点課題としています(2024年3月期有報)。
- DXコンサルタント・ITアーキテクト・高度営業人材の重点育成(構造転換を担う専門人材)
- 3年累計1,000億円の成長投資(人材投資を含む)
- R&D費29億円で量子コンピュータ・XR・生成AIの研究を推進(先端技術への投資)
自己PRの中で、専門性を深め続ける意欲や先端技術への関心を示すことも有効です。
志望動機|なぜTISか
「なぜSIer/ITか」の組み立て
企業のデジタル変革を支援できるやりがい、幅広い業界の課題に技術で取り組めること、など業界全体の魅力を簡潔に述べます。ここは深掘りしすぎず、次の「なぜTISか」に重点を置きます。
「なぜTISか」を他社との違いで示す
ここで同業他社との違いを有報データで示せるかが勝負どころです。
| 比較対象 | 相手の特徴 | TISの差別化ポイント |
|---|---|---|
| NRI | コンサル×SI×運用の三層構造、金融IT特化、売上7,648億円 | 独立系の幅広い顧客基盤と自社投資型オファリングサービス(決済・キャッシュレス) |
| SCSK | 住友商事系SIer、M&A(ネットワン子会社化)で規模拡大 | 独立系の自由度とASEAN展開で差別化、自社サービスの事業主体として活動 |
| NTTデータ | 官公庁・大規模SI中心、売上4兆円超 | 中堅規模(5,490億円)で独立系の自由度、自社投資型サービスで事業主体になれる |
| 電通総研 | 電通グループのシナジー×4業界横断、売上1,526億円 | 独立系で親会社に依存せず、ASEAN展開とオファリング自社投資で独自成長 |
NRIとの違い: NRIはコンサル×SI×運用の三層構造で金融IT領域に強い「金融に深い総合IT企業」です。TISは独立系SIerとして特定の業界に依存しない幅広い顧客基盤を持ち、オファリングサービス(決済・キャッシュレス)で事業主体として自社サービスを展開しています。「受託ではなく自社サービスを創りたい」人はTISが合います。
SCSKとの違い: SCSKは住友商事グループの安定基盤の上でM&A(ネットワン子会社化)による規模拡大を推進しています。TISは独立系ゆえの自由度を活かし、自社投資型ビジネスとASEAN展開で成長を目指しています。「グループの安定より独立系の自由度を活かしたい」人に向いています。
NTTデータとの違い: NTTデータは売上4兆円超の国内最大手SIerで、官公庁や大規模システムに強みを持ちます。TISは5,490億円の中堅規模で、オファリングサービスの事業主体として自社サービスの企画から運営まで関われる環境です。「大規模受託ではなく、自社サービスに関わりたい」人に適しています。
電通総研との違い: 電通総研は電通グループのシナジーを活かした4業界横断型SIerです。TISは独立系で特定グループに依存せず、ASEAN展開という海外戦略とオファリングの自社投資で独自の成長路線を追求しています。「海外事業に関わりたい」人や「独立系の自由度を重視する」人はTISが合います。
「デジタル社会の実現を通じて社会の課題を解決する」というミッションと、自分の価値観が重なる部分を言語化できると、志望動機に一本の軸が通ります。SIer各社の比較はコンサル・SIer比較が参考になります。ESに有報データを織り込む具体的な方法は、ESの志望動機に差をつける|有報データの活用法もあわせてご覧ください。
同業他社の面接対策もあわせて確認すると、自分がどの企業の方向性に最もフィットするか見えてきます。NRIの面接対策、SCSKの面接対策、NTTデータの面接対策、ベイカレントの面接対策もご覧ください。
TISの面接で差がつく逆質問
逆質問は「何を聞くか」で企業理解の深さが表れます。有報の記述を具体的に引用した質問は、面接官に強い印象を残します。
1. オファリングサービスのM&A戦略を問う
「オファリングサービスののれんが前期6億円から96億円に急増していますが、どのような企業のM&Aが中心でしたか?今後の優先領域は決済以外にもありますか?」
この質問のポイント: のれんの急増という具体的な数値変化を引用し、自社投資型ビジネスの拡大戦略への深い関心を示せます。M&Aの優先領域を聞くことで入社後のキャリア機会も確認できます(2024年3月期有報 セグメント情報)。
2. ASEAN展開への新卒の関わり方を聞く
「ASEAN展開で2026年度に連結売上1,000億円を目指されていますが、新卒社員が海外事業に関わる機会はどの程度ありますか?」
この質問のポイント: 中計の具体的な目標を引用し、グローバルキャリアへの関心を示せます。TISのASEAN展開は国内SIerの中でも積極的で、この点への質問は他の就活生と差別化になります(2024年3月期有報 中期経営計画)。
3. 4戦略ドメインの配属を聞く
「4戦略ドメイン(ソーシャルイノベーション・コ・クリエーション等)への構造転換を進めていますが、新卒社員が最初に配属される可能性が高い領域はどこですか?」
この質問のポイント: 中計の戦略ドメインを正確に理解した上で、入社後のキャリアパスを具体的に確認する質問です。構造転換への関心と入社後の貢献イメージを示せます(2024年3月期有報 中期経営計画)。
4. 成長投資の人材還元を聞く
「3年累計1,000億円の成長投資を計画されていますが、このうち人材投資はどのような形で新卒の成長機会に還元されていますか?」
この質問のポイント: 成長投資の総額を把握した上で、自分の成長にどう還元されるかを確認する質問です。人材育成への投資方針を知ることで入社後の成長環境を具体化できます(2024年3月期有報 中期経営計画)。
5. R&Dの事業実装を問う
「R&D費29億円で量子コンピュータやXR、生成AIの研究をされていますが、この研究成果が実際の事業やサービスに実装された具体例はありますか?」
この質問のポイント: R&D投資の内容を把握した上で、研究と事業の接続を確認する質問です。先端技術への関心と、実装まで見据えた実践的な視点を示せます(2024年3月期有報 研究開発活動)。
逆質問のさらに詳しい組み立て方は面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で解説しています。
まとめ
TISの面接対策の核心は、有報が示す3つの方向性(オファリングサービスの自社投資拡大、ASEAN中心のグローバル展開、4戦略ドメインへの構造転換)と「デジタル社会の実現を通じて社会の課題を解決する」ミッションから「求める人材像」を逆算し、ガクチカ・自己PR・志望動機を一貫したストーリーにすることです。
表面的な「独立系SIer」「受託開発」というキーワードではなく、オファリングサービスの+17.1%成長やのれん96億円への急増、ASEAN売上1,000億円目標、3年1,000億円の成長投資といった有報の具体的な数字を使いこなすこと。それが、面接官に「この学生はTISを理解している」と思わせる最短ルートです。
次のアクション:
- 事業構造を深掘りしたい方は → TISの企業分析記事で有報データの詳細を確認できます
- 面接での有報活用の基本を押さえたい方は → 面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で汎用テクニックを学べます
- ESに有報データを織り込みたい方は → ESの志望動機に差をつける|有報データの活用法が参考になります
- 同業他社の面接対策と比較したい方は → NRI・SCSK・NTTデータ・ベイカレントの面接対策で「なぜTISか」の答えがさらに磨かれます
- SIer各社をデータで比較したい方は → コンサル・SIer比較で俯瞰できます
本記事のデータはTIS株式会社の有価証券報告書(2024年3月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。企業の将来の業績を保証するものではなく、最新情報は企業の公式IR資料をご確認ください。社風や職場の雰囲気、上司との関係性は有報ではわかりません。OpenWork等の口コミサイトやOB/OG訪問を併用して判断しましょう。