この記事のデータは電通グループの有価証券報告書(2025年12月期)に基づいています。 有報データの面接活用法の基本は面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で押さえておくと、この記事がさらに活きます。
電通グループの面接対策で「日本最大の広告代理店」「グローバルネットワーク」といったキーワードを並べる就活生は少なくありません。しかし面接官が知りたいのは、「あなたが電通グループの変革期を理解し、そこに自分を重ねられるかどうか」です。のれん減損3,961億円と日本事業マージン24.4%という光と影の両面を語れるかどうかで、企業理解の深さが測られます。
この記事では、有価証券報告書が示す電通グループの投資方向性と「One dentsu」戦略から「求める人材像」を逆算し、ガクチカ・自己PR・志望動機を一貫したストーリーにする方法を解説します。
有報が示す電通グループの方向性

電通グループが今どこに向かっているのか。有報のセグメント情報と中期経営計画から、3つの方向性が浮かび上がります。
海外事業の抜本改革|のれん減損3,961億円からの再構築
2025年12月期、Americas・EMEAを対象にのれん減損3,961億円を計上しました。これは過去のM&A偏重戦略で積み上がったのれん(累計約9,000億円の減損)の清算です。海外法人数は1,000超から約半分に削減する計画で、3,400人の人員削減のうち2,100人は実行済みです。中期経営計画では2027年に年間500億円のコスト削減を目標としています(2025年12月期 セグメント情報・戦略ハイライト)。
IGS(統合ソリューション)とAI内部投資|3年450億円
「マーケティング×テクノロジー×コンサルティング」を融合した統合ソリューション(IGS)が電通グループの成長戦略の核です。3年で450億円の内部投資計画を掲げ、2025年にはdentsu.Connect等のデータ&テクノロジーツール開発に80億円を投資しました。海外メディア事業は2年連続プラスのオーガニック成長を達成しており、IGS戦略が数字に表れ始めています(2025年12月期 設備投資・内部投資計画)。
日本事業の持続的成長|マージン24.4%で5年連続過去最高
日本セグメントの売上総利益は4,956億円、調整後営業利益は1,211億円(マージン24.4%)と、5年連続で過去最高を更新しました。オーガニック成長率は+6.2%で、11四半期連続の成長を達成しています。インターネット広告、ブランドエクスペリエンス(BX)、DXコンサルティングが成長を牽引しています(2025年12月期 セグメント情報)。
見落とせないリスク|独禁法有罪確定と個別債務超過
電通グループには、方向性の理解と同じくらい重要なリスク認識が求められます。東京五輪関連の独禁法違反で2025年12月に最高裁が上告を棄却し、有罪判決が確定しました。個別決算では関係会社株式評価損2,867億円と貸倒引当金繰入1,719億円を計上し債務超過に陥っています。自己資本比率は19.9%から11.7%に急低下し、2025年度・2026年度とも無配が決まっています(2025年12月期 事業等のリスク・個別財務諸表・配当方針)。面接でこのリスクを理解していることは、「それでも電通を選ぶ理由」を語る上で不可欠です。
MVVとの接続: 「One dentsu」戦略は海外法人の統合・標準化と直結しています。IGS(統合ソリューション)はマーケティング×テクノロジー×コンサルの融合そのもの。日本事業のBX・DXはクライアントのビジネス変革を支援するという理念が数字に表れた形です。
数値の詳細な分析は電通グループの企業分析記事で確認できます。
この方向性が求める人材像

電通グループの3つの方向性から、「今どんな人材を求めているか」を逆算します。
3方向に共通して求められるのが、変革期の組織で自ら動ける胆力と行動力です。電通グループは持株会社135名で連結67,454名のグローバル組織を統括する構造です(2025年12月期 従業員の状況)。「広告をつくる」会社から「ビジネスを変える」会社へのシフトを理解し、コンプライアンスへの高い意識を持つことも、独禁法有罪確定を踏まえた必須条件です。
海外構造改革が求める人材
海外法人の統合・再編プロジェクトやクロスボーダー案件を推進できるグローバル人材が求められます。3,400人削減が進む中での組織マネジメント、赤字マーケットの黒字化判断など、不確実性の高い環境で成果を出せる胆力が問われます。
IGS×AI投資が求める人材
広告の枠を超えて、データ・AI・テクノロジーを活用し顧客のビジネス課題を解決するコンサルティング志向の人材です。3年450億円の内部投資が示す通り、テクノロジーへの投資は電通グループの本気度を表しており、マーケティングの知見とテクノロジーの実装力を併せ持つ人材への需要が高まっています。
日本事業の成長が求める人材
日本市場を深く理解し、インターネット広告・BX・DXの知見を掛け合わせてクライアントの成長に貢献できる人材です。マージン24.4%を5年連続で更新し続けている実績は、日本事業がグループの利益の大半を稼ぐエンジンであることを意味しています。この成長を維持・拡大する力が求められます。
ガクチカの切り取り方

ガクチカは「何をしたか」の事実より、「それをどう語るか」の切り取り方で印象が変わります。電通グループの方向性に合わせた切り取りの考え方を整理します。
海外構造改革に合わせる
変革期の組織で困難な状況を乗り越えた経験を中心に語ります。
- 組織改革プロジェクト | サークルや部活で非効率な運営体制を立て直した経験が、海外法人の統合・再編プロジェクトと重なる
- 異文化環境での協働 | 留学先やインターンで異なる価値観のメンバーと成果を出した経験は、グローバル組織の変革推進力の証明になる
- 逆境での意思決定 | リソースが限られた状況や反対意見がある中で判断し行動した経験が、3,400人削減が進む変革期の胆力と接続する
「困難な状況で逃げずに動いた」プロセスがあれば、のれん減損3,961億円からの再構築を進める電通グループの方向性と接続できます。
IGS×AI投資に合わせる
テクノロジーとマーケティングの掛け算で課題を解決した経験が響きます。
- データ分析プロジェクト | データを活用して課題を可視化し解決策を提案した経験が、dentsu.Connect等のデータ&テクノロジーツール開発と重なる
- マーケティング施策の企画・実行 | SNS運用やイベント集客でデジタルツールを活用した経験は、IGSのマーケ×テクノロジー融合と接続する
- プロダクト開発・ハッカソン | テクノロジーで社会課題やビジネス課題を解決するプロトタイプを作った経験が、AI内部投資450億円の方向性と合致する
「テクノロジーを使って何かを変えた」エピソードが、IGS戦略を推進する人材像と直結します。
日本事業の成長に合わせる
クライアントや顧客の課題を理解し、成長に貢献した経験が有効です。
- 企業インターンシップ | クライアントワークの現場でビジネス課題を理解し提案した経験は、日本事業のマージン24.4%を支える提案力と重なる
- 広告・PRプロジェクト | 学園祭やイベントの集客戦略を企画・実行した経験が、BX(ブランドエクスペリエンス)のクリエイティビティと接続する
- 営業・接客での成果 | 顧客のニーズを掘り下げて提案し成果を出した経験は、クライアントビジネスの成長支援と直結する
共通ポイント: いずれの場合も、「変革の当事者として自ら動いた」場面を含めることが大切です。電通グループはのれん減損3,961億円を計上しながらも日本事業で過去最高を更新し続けている、光と影が共存する組織です。「安定した大企業に入りたい」ではなく、「変革期だからこそ成長できる」という覚悟を示しましょう。
自己PRの組み立て方
自己PRは「あなたの強み」と「電通グループの方向性」の交差点を見つけることから始まります。
3ステップで組み立てる
- 強みを一言で定義する — 例: 「困難な状況でも前に進む推進力と、テクノロジーを活用して解決策を形にする力」
- 裏付けるエピソードを選ぶ — ガクチカと重なってもOK。具体的な数字や変化を含めると説得力が増します
- 電通グループの方向性と接続する — 有報データを使って「なぜ電通グループで活かせるか」を示す
ステップ3の具体例:
「この力は、御社が3年で450億円の内部投資を計画し、dentsu.Connectに80億円を投じてマーケティング×テクノロジーの融合を進めている方向性に通じると考えています。日本事業のマージンが24.4%と5年連続で過去最高を更新している環境で、テクノロジーを活用した新しいソリューションの開発に自分の強みを活かしたいと考えています。」
電通グループの組織構造を理解する
電通グループは持株会社(135名)が連結67,454名のグローバル組織を統括する構造です(2025年12月期 従業員の状況)。就活で「電通に入りたい」と言うとき、持株会社の電通グループと事業会社の電通(日本事業の中核)は別の会社です。どちらに応募するかで業務内容は大きく異なります。地域別の従業員数は日本23,874名、Americas 12,819名、EMEA 14,095名、APAC 11,289名と、海外比率が高いグローバル組織であることも理解しておく必要があります。
人的資本の取り組みを活用する
電通グループは変革期の人材投資を進めています(2025年12月期 人的資本に関する情報)。
- IGS人材への育成投資(マーケティング×テクノロジー×コンサルの複合スキル開発)
- dentsu.Connect等のAI・データツール開発への80億円投資(社員の生産性向上)
- コンプライアンス体制の再構築(独禁法有罪確定を受けた組織文化改革)
自己PRの中で、変革期の組織で成長する意欲やコンプライアンスへの意識を示すことも有効です。
志望動機|なぜ電通グループか
「なぜ広告・マーケティングか」の組み立て
企業のビジネス成長をマーケティングの力で支援できること、テクノロジーとクリエイティビティの掛け算で社会に影響を与えられること、など業界全体の魅力を簡潔に述べます。ここは深掘りしすぎず、次の「なぜ電通グループか」に重点を置きます。
「なぜ電通グループか」を他社との違いで示す

ここで同業他社との違いを有報データで示せるかが勝負どころです。
博報堂DYとの違い
博報堂DYホールディングスは国内中心の安定成長路線で、海外売上比率は電通グループと比べて限定的です。電通グループは売上総利益の約6割が海外事業であり、のれん減損3,961億円という痛みを伴う構造改革の真っ只中にあります。「安定した国内広告会社」を求めるなら博報堂DY、「グローバル変革に参加したい」なら電通グループという軸で差別化できます。
サイバーエージェントとの違い
サイバーエージェントはインターネット広告・メディア(ABEMA)・ゲームを柱とするIT企業です。電通グループはマス広告からデジタル、コンサルティングまで幅広いサービスラインを持つ総合マーケティング企業であり、連結67,454名のグローバルネットワークとナショナルクライアントとの取引基盤が強みです。「デジタルネイティブのIT企業」か「総合マーケティング企業の変革」かで方向性が分かれます。
アクセンチュアとの違い
アクセンチュアはITコンサルティングからマーケティング領域へ進出しています。電通グループは逆に広告・マーケティングからコンサルティング領域へ進出しています。進む方向は逆ですが、到達点は似ています。電通グループの強みはクリエイティブ制作力とメディアバイイングの知見であり、「マーケティングを起点にビジネスを変えたい」のか「コンサルを起点にマーケティングも手がけたい」のかが選択の基準になります。
電通総研との違い
電通総研(証券コード4812)は電通グループ傘下のIT・コンサル子会社であり、SI×4セグメント横断のソリューションを提供しています。電通グループ本体はグローバルマーケティング事業全体を統括する持株会社です。「ITの実装まで手がけたい」なら電通総研、「マーケティング戦略の上流で動きたい」なら電通グループという切り分けが有効です。
のれん減損3,961億円と日本マージン24.4%の両面を理解し、「それでも電通グループを選ぶ理由」を自分の言葉で語れることが志望動機の核です。広告業界の企業をデータで整理したい方は広告業界の有報データ比較が参考になります。ESに有報データを織り込む具体的な方法は、ESの志望動機に差をつける|有報データの活用法もあわせてご覧ください。
同業他社の面接対策もあわせて確認すると、自分がどの企業の方向性に最もフィットするか見えてきます。電通総研の面接対策、サイバーエージェントの面接対策もご覧ください。
電通グループの面接で差がつく逆質問
逆質問は「何を聞くか」で企業理解の深さが表れます。有報の記述を具体的に引用した質問は、面接官に強い印象を残します。
1. 海外事業の再構築と若手の役割
「有報でのれん減損3,961億円の計上と海外法人数の半減を確認しました。この構造改革の中で、新卒入社の若手にはどのような役割や成長機会がありますか?」
この質問のポイント: 海外事業の痛みを正確に把握した上で、前向きにキャリアを描こうとする姿勢を示せます。変革期をリスクとしてだけでなくチャンスとして捉えていることが伝わります(2025年12月期 のれん・セグメント情報・戦略ハイライト)。
2. 日本事業マージン24.4%の源泉
「日本事業の調整後営業利益マージンが24.4%と5年連続過去最高ですが、インターネット広告・BX・DXのうちどの領域が最も利益率の向上に貢献していますか?」
この質問のポイント: 日本事業が過去最高を更新し続けている事実をセグメント情報から正確に引用し、成長ドライバーの解像度を上げようとする姿勢を示せます(2025年12月期 日本セグメント情報)。
3. IGSとAI投資の実態
「中計で3年450億円の内部投資を計画し、2025年にはdentsu.Connectに80億円を投資されていますが、AI・データテクノロジーの活用で若手が関われるプロジェクトにはどのようなものがありますか?」
この質問のポイント: 内部投資の具体的な金額を引用し、テクノロジー投資への関心と入社後のキャリアイメージを結びつけた質問です。450億円と80億円の両方を出すことで、中計全体を読み込んでいることが伝わります(2025年12月期 設備投資・内部投資計画)。
4. コンプライアンス改革の進捗
「東京五輪関連の独禁法違反で有罪判決が確定していますが、その後のコンプライアンス体制の改革はどの程度進んでいますか?入社後の行動規範としてどのような変化がありますか?」
この質問のポイント: 多くの就活生が避けるテーマにあえて踏み込むことで、リスクを直視する誠実さを示せます。コンプライアンスを他人事ではなく自分の行動規範として捉えている姿勢が面接官に好印象を与えます(2025年12月期 事業等のリスク・コーポレートガバナンス)。
5. 財務基盤の改善見通し
「個別決算で債務超過・2025-2026年度とも無配とのことですが、調整後営業利益1,725億円を踏まえて、財務基盤の回復と配当再開はどのようなタイムラインで考えておられますか?」
この質問のポイント: IFRS営業損失と調整後営業利益の違いを理解していることを示し、表面的な赤字報道に流されていないことをアピールできます。無配と債務超過の現実を受け止めた上での前向きな質問です(2025年12月期 連結・個別財務諸表・配当方針)。
逆質問のさらに詳しい組み立て方は面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で解説しています。
まとめ
電通グループの面接対策の核心は、有報が示す3つの方向性(海外事業の抜本改革、IGS×AI内部投資、日本事業の持続的成長)と「One dentsu」戦略から「求める人材像」を逆算し、ガクチカ・自己PR・志望動機を一貫したストーリーにすることです。のれん減損3,961億円と個別債務超過というリスクを理解した上で、「それでも電通を選ぶ理由」を語れるかが、他の就活生との決定的な差になります。
表面的な「日本最大の広告代理店」というキーワードではなく、日本マージン24.4%の5年連続過去最高や3年450億円のIGS内部投資、海外法人半減の構造改革といった有報の具体的な数字を使いこなすこと。それが、面接官に「この学生は電通グループを理解している」と思わせる最短ルートです。
次のアクション:
- 事業構造を深掘りしたい方は → 電通グループの企業分析記事で有報データの詳細を確認できます
- 面接での有報活用の基本を押さえたい方は → 面接で差をつける企業分析|有報データの活用術で汎用テクニックを学べます
- ESに有報データを織り込みたい方は → ESの志望動機に差をつける|有報データの活用法が参考になります
- 同業他社の面接対策と比較したい方は → 電通総研・サイバーエージェントの面接対策で「なぜ電通グループか」の答えがさらに磨かれます
- 広告業界をデータで比較したい方は → 広告業界の有報データ比較で俯瞰できます
本記事のデータは株式会社電通グループの有価証券報告書(2025年12月期・EDINET)に基づいています。投資判断を目的としたものではありません。企業の将来の業績を保証するものではなく、最新情報は企業の公式IR資料をご確認ください。社風や職場の雰囲気、上司との関係性は有報ではわかりません。OpenWork等の口コミサイトやOB/OG訪問を併用して判断しましょう。